高齢化社会における認知症
病院での用語を教えて
先生、「認知症」って昔は「痴呆症」って言われてたって本当ですか?どうして名前が変わったんですか?
体の健康研究家
はい、その通りです。昔は「痴呆症」という言葉が使われていましたが、2004年から「認知症」に変わりました。これは、「痴呆症」という言葉が差別や偏見を招きやすいとされ、病気に対する正しい理解を深めるために、より適切な表現として「認知症」が使われるようになったんだよ。
病院での用語を教えて
なるほど。「痴呆症」だと病気の症状や本人の苦しみが伝わらないですもんね。
体の健康研究家
その通りです。病気への理解を深めることは、病気の人へのサポートにも繋がります。言葉の使い方一つとっても、よく考えていきたいですね。
認知症とは。
「認知症」って何かというと、歳をとってから脳が病気になったり傷ついたりすることで、今まで普通にできていた「覚える」「学ぶ」「考える」「計画を立てる」といったことができにくくなってしまい、普段の生活や社会生活に困ってしまう状態のことです。昔は「痴呆症」と呼ばれていましたが、2004年に「認知症」という名前に変わりました。認知症になる人は高齢になるほど増え続け、今では65歳以上の10人に1人、85歳以上になると3~5人に1人が認知症になっています。
認知症とは
– 認知症とは認知症は、脳の機能が低下することによって、記憶力や思考力、判断力など、さまざまな知的機能が衰え、日常生活に支障が出てしまう状態を指します。以前は「痴呆症」と呼称されていましたが、2004年以降、厚生労働省の提唱により「認知症」という名称に統一されました。これは、病気に対する偏見や差別をなくし、患者さんとその家族が安心して暮らせる社会を実現するためです。認知症は、単一の病気ではなく、様々な原因によって引き起こされる症候群です。代表的な原因としては、アルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などが挙げられます。これらの病気によって脳の神経細胞が損傷を受けたり、働きが阻害されたりすることで、認知機能の低下や行動の変化が現れます。認知症の症状は、中核症状と周辺症状に大別されます。中核症状は、記憶障害、見当識障害、実行機能障害、言語障害など、認知機能そのものの低下を指します。一方、周辺症状は、不安や抑うつ、幻覚、妄想、徘徊、攻撃性など、精神・行動面の変化を指します。これらの症状は、個人差が大きく、現れ方や程度も人それぞれです。認知症は、早期発見・早期治療が重要です。認知症の症状に気付いたら、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。そして、周囲の人々は、認知症に対する正しい知識を持ち、偏見や差別のない、温かい社会を築いていくことが大切です。
項目 | 説明 |
---|---|
定義 | 脳機能の低下により、記憶力や思考力、判断力などの知的機能が衰え、日常生活に支障が出る状態 |
旧称 | 痴呆症(2004年以降、「認知症」に統一) |
原因 | 単一の病気ではなく、様々な原因による症候群 例:アルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など |
症状 |
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重要性 | 早期発見・早期治療が重要 |
認知症の原因
認知症は、物忘れや判断力の低下など、さまざまな認知機能の障害が続くことで、日常生活に支障が出てくる状態を指します。その原因は一つではなく、さまざまな要因が考えられますが、中でも最も患者数が多いのはアルツハイマー病です。
アルツハイマー病では、脳の中に「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれる異常なタンパク質が蓄積していきます。これらのタンパク質が蓄積すると、神経細胞同士の情報伝達がうまくいかなくなり、神経細胞が徐々に壊れてしまうと考えられています。この神経細胞の壊れは、最初は記憶を司る海馬という部位から始まり、徐々に他の部位へと広がっていきます。そのため、初期には物忘れが目立ちますが、病気が進行すると、判断力や理解力、言葉の能力など、さまざまな認知機能が低下していきます。
アルツハイマー病以外に認知症の原因となる病気には、脳血管障害、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。脳血管障害は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、その部分の脳細胞が損傷を受ける病気です。レビー小体型認知症では、レビー小体と呼ばれる異常なタンパク質が脳に蓄積することで、神経細胞がダメージを受けます。前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉を中心に脳が萎縮していく病気で、比較的若い世代に発症することが多いのが特徴です。
このように、認知症の原因となる病気はさまざまですが、いずれも脳の神経細胞がダメージを受けることで、認知機能が低下していくという点では共通しています。
認知症の種類 | 特徴 |
---|---|
アルツハイマー病 | 脳内に「アミロイドβ」や「タウ」が蓄積し、神経細胞が壊れていく。記憶を司る海馬から症状が始まり、徐々に他の部位にも広がる。 |
脳血管障害 | 脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳細胞が損傷を受ける。 |
レビー小体型認知症 | 脳にレビー小体が蓄積し、神経細胞がダメージを受ける。 |
前頭側頭型認知症 | 前頭葉や側頭葉を中心に脳が萎縮する。比較的若い世代に発症しやすい。 |
認知症の症状
– 認知症の症状
認知症は、脳の細胞が損傷を受けることで記憶や思考、判断能力など、さまざまな認知機能が低下する病気です。その症状は、原因となる病気の種類や進行度合い、個人差によって大きく異なります。
認知症の初期症状としてよくみられるのが、物忘れです。例えば、約束を忘れたり、置き忘れが増えたり、同じことを何度も聞いてしまうなどです。また、時間や場所の見当識障害も現れ始めます。日付や曜日が分からなくなったり、自分がどこにいるのか分からなくなったりすることがあります。
認知症が進行すると、これらの症状はさらに悪化し、日常生活に支障をきたすようになります。周囲の家族や友人を認識できなくなったり、徘徊したり、妄想や興奮、暴言などの行動がみられることもあります。また、食事や入浴、着替えなどの日常生活動作が困難になるため、介護者の介助が必要となる場合もあります。
認知症は、早期発見・早期治療によって症状の進行を遅らせ、生活の質を維持することが可能です。少しでも気になる症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
段階 | 症状 |
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初期 | – 物忘れ(約束、置き忘れ、同じことを何度も聞くなど) – 時間や場所の見当識障害(日付や曜日の認識困難、自分がどこにいるのかわからないなど) |
進行期 | – 症状の悪化により日常生活に支障 – 周囲の人の認識困難 – 徘徊 – 妄想、興奮、暴言などの行動 – 食事、入浴、着替えなどの日常生活動作の困難 |
認知症の治療
– 認知症の治療残念ながら、認知症を完全に治癒させる治療法は、現在のところ確立されていません。しかし、だからといって何もできないわけではありません。薬物療法やリハビリテーション、そして生活環境を整えることなどによって、病気の進行を遅らせたり、患者さんの生活の質を維持したりすることが可能です。薬物療法では、主に認知機能の低下を抑えたり、行動心理症状を緩和したりする薬が用いられます。これらの薬は、病気の進行を遅らせる効果が期待できますが、残念ながら症状を完全に無くすことはできません。また、薬の効果や副作用には個人差があるため、医師とよく相談しながら、患者さんにとって最適な薬を選択していく必要があります。リハビリテーションは、低下した認知機能を維持・改善するために行われます。記憶力や注意力を高める訓練、日常生活動作の練習など、患者さんの状態に合わせたプログラムが組まれます。リハビリテーションは、専門のスタッフと共に行うことで、より効果が期待できます。生活環境の調整も、認知症の症状を緩和するために非常に重要です。患者さんが安心して過ごせるよう、住環境を整えたり、日中の活動量を増やしたりすることで、生活のリズムを整え、認知機能の低下や行動心理症状の出現を予防することができます。認知症の治療において最も大切なことは、早期発見・早期対応です。物忘れがひどくなった、今までできていたことができなくなったなど、少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、適切な治療を開始することが重要です。
治療法 | 概要 | 効果 |
---|---|---|
薬物療法 | 認知機能の低下を抑えたり、行動心理症状を緩和したりする薬を使用 | 病気の進行を遅らせる効果が期待できるが、症状を完全に無くすことはできない。効果や副作用には個人差あり。 |
リハビリテーション | 低下した認知機能を維持・改善するための訓練(記憶力や注意力、日常生活動作など) | 専門スタッフとの訓練で効果が期待できる。 |
生活環境の調整 | 患者さんが安心して過ごせるよう、住環境を整えたり、日中の活動量を増やしたりする | 生活のリズムを整え、認知機能の低下や行動心理症状の出現を予防する。 |
認知症と共に生きる
認知症は、記憶や思考能力の低下によって日常生活に支障が生じる病気であり、患者さん本人にとって大きな不安を抱える病気です。しかし、その影響は患者さんに留まらず、家族もまた、介護や精神的な負担を抱え、苦悩することが少なくありません。
認知症と診断された後も、その人らしく、穏やかに日々を過ごせるように、周囲の温かい理解とサポートが何よりも大切です。認知症は進行性の病気であり、症状は少しずつ進行していきます。そのため、早期の診断と適切なケアが、患者さんの生活の質を維持し、穏やかな日々を送る上で非常に重要となります。
具体的なサポートとしては、患者さんのペースに合わせて、ゆっくりと話しかけ、わかりやすい言葉を選ぶことが大切です。また、患者さんの気持ちを尊重し、昔のことを懐かしんだり、好きなことを楽しんだりする時間を共有することで、心の繋がりを育むことができます。
認知症は決して恥ずべき病気ではありません。周囲の人々が認知症に対する理解を深め、患者さんとその家族を支える体制を整えることで、誰もが安心して暮らせる社会を実現していくことができるでしょう。
認知症とは | 認知症の人へのサポート |
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記憶や思考能力の低下によって日常生活に支障が生じる病気。 進行性の病気であり、症状は少しずつ進行していく。 |
患者さんのペースに合わせて、ゆっくりと話しかけ、わかりやすい言葉を選ぶ。 患者さんの気持ちを尊重し、昔のことを懐かしんだり、好きなことを楽しんだりする時間を共有する。 |
認知症予防の重要性
近年、世界的に高齢化が進展する中で、それに伴い増加しているのが認知症です。認知症は、記憶力や思考力、判断力といった認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。進行すると、家族や周囲の人々を認識することが困難になったり、身の回りのことができなくなったりするなど、本人だけでなく、家族や介護者にとっても大きな負担となる深刻な病気です。
認知症は、一度発症してしまうと完治が難しいという現実があります。しかし、明るい材料もあります。近年の研究では、認知症の発症を遅らせたり、予防したりできる可能性が示唆されているのです。つまり、日々の生活習慣を改善することで、認知症のリスクを減らせる可能性があるということです。
具体的には、バランスの取れた食事を心がけること、ウォーキングや軽い運動を習慣化すること、質の高い睡眠を十分にとることなどが重要です。また、地域活動や趣味のサークルなどを通して、積極的に人と交流し、社会とのつながりを保つことも認知症予防に効果が期待できます。
認知症は決して他人事ではありません。年齢を重ねても、いきいきと自立した生活を送るために、そして、自分らしく輝き続けるために、今から認知症予防に取り組んでいきましょう。
認知症とは | 予防と対策 |
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記憶力や思考力、判断力といった認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態 進行すると、家族を認識することが困難、身の回りのことができなくなることも 本人だけでなく、家族や介護者にとっても負担が大きい病気 |
完治は難しいが、発症を遅らせたり予防したりできる可能性あり バランスの取れた食事、適度な運動、質の高い睡眠 地域活動や趣味を通して、人と交流し、社会とのつながりを保つ |