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命のバトン:移植医療の現状と未来

- 移植とは何か移植とは、病気やけが、あるいは生まれつきの異常などによって、本来の働きを失ってしまった臓器や組織を、健康な臓器や組織と取り替える治療法のことです。たとえば、心臓病で心臓の働きが弱ってしまった場合、健康な心臓をほかの人から提供してもらい、移植することで再び健康な生活を送れる可能性があります。移植が必要となる臓器や組織はさまざまです。心臓や肺、肝臓、腎臓といった重要な臓器だけでなく、角膜や骨髄、皮膚なども移植の対象となります。これらの臓器や組織を提供してくれるのは、脳死と判定された方や、心停止後に臓器を提供することを承諾していた方です。移植手術は、高度な技術と専門知識を必要とする大変難しい手術です。しかし、移植によって、失われた体の機能を取り戻し、再び社会復帰できる可能性があります。また、場合によっては、移植が唯一の治療法となることもあります。移植は、まさに「命のバトン」をつなぐ医療と言えるでしょう。しかし、日本では、臓器提供を希望する人が少なく、移植を希望していても、なかなか順番が回ってこないのが現状です。臓器移植は、提供してくれる人がいて初めて成り立つ医療です。臓器移植について、一人ひとりが深く考え、自分自身の意思を明確にすることが大切です。
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体に優しい手術:ラパロとは?

「ラパロ」という言葉、耳にしたことがありますか? 医療現場では日常的に使われる言葉ですが、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。 正式には「腹腔鏡」と言い、英語では「laparoscopy」と表記します。 「腹腔鏡」は、お腹の中を調べるため、あるいは手術を行うために用いる特別な内視鏡のことです。 お腹を大きく切開する代わりに、数ミリ程度の小さな穴を数カ所開け、そこから腹腔鏡や手術器具を挿入します。 腹腔鏡の先端には高性能なカメラが搭載されており、お腹の中の状態を鮮明な映像で見ることができます。 従来の開腹手術に比べて、傷が小さく、体への負担が少ないため、患者さんの回復が早く、術後の痛みが軽いというメリットがあります。そのため、近年では様々な手術に腹腔鏡が用いられるようになっています。
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心臓手術の立役者: 人工心肺装置

- 人工心肺装置とは人工心肺装置とは、心臓手術を行う際に欠かせない医療機器です。 私たちの体にとって心臓と肺は、まるで車のエンジンとガソリンのような関係です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を、肺は血液中の不要な二酸化炭素と新鮮な酸素を交換する役割を担っています。心臓手術中は、心臓を停止させて行う手術が多くあります。 しかし、心臓が止まると血液が体内を循環しなくなり、酸素が体の隅々まで行き渡らなくなります。 そのため、心臓手術中には人工心肺装置を用いて、心臓と肺の働きを一時的に代行する必要があるのです。人工心肺装置は、心臓の代わりにポンプを使って血液を循環させ、肺の代わりに血液中の二酸化炭素と酸素を交換します。 いわば、人工心肺装置は体外に設置された「もう一つの心臓と肺」として機能するのです。 これにより、心臓を停止させた状態でも手術を行うことができ、患者さんの生命を維持することができます。人工心肺装置は、心臓外科医にとってまさに「右腕」とも呼べる存在であり、心臓手術の安全性を飛躍的に向上させました。 人工心肺装置の登場により、これまで不可能だった複雑な心臓手術も可能となり、多くの患者さんの命が救われています。
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医療現場における「トラカール」とは?

- トラカールとは?医療現場において、体内に安全かつ容易に管を挿入するために欠かせない医療器具、それがトラカールです。英語では「Trocar」と表記され、套管針という別名も持ちます。トラカールは、主に二つの部分から構成されています。一つは、先端が鋭く尖った針です。この針を用いることで、皮膚や組織を容易に穿刺することができます。もう一つは、その針を覆うように設計された筒状の器具です。この筒状の部分は、カニューレと呼ばれ、針を体内に刺した後、針だけを抜き取り、カニューレを体内に残すことで、安全に管を挿入するための経路を確保します。トラカールは、主に胸腔や腹腔といった体腔内にチューブやカテーテルを留置する際に使用されます。例えば、肺に水が溜まってしまった場合に、その水を排出するためのチューブを挿入する際や、お腹の中に溜まった血液や膿などを排出するためのカテーテルを挿入する際に、トラカールが活躍します。このように、トラカールは、医療現場において欠かせない医療器具であり、患者さんの負担を軽減し、安全な医療を提供するために大きく貢献しています。
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鎖骨骨折におけるクラビクルバンド

- クラビクルバンドとはクラビクルバンドは、鎖骨が骨折してしまった際に、手術を行わずに骨がくっつくのを促すために用いる医療用の装具です。特に鎖骨の中央部分である鎖骨骨幹部骨折に効果を発揮します。鎖骨骨折が起こると、骨が本来の位置からずれてしまうことがあります。クラビクルバンドは、このずれた鎖骨を正しい位置に安定させることで、肩甲骨が不自然に出っ張ったり、鎖骨が短くなってしまったりするのを防ぎます。 また、鎖骨への負担を軽減することで、骨がスムーズに、かつ正常な形でくっつくようにサポートします。装着方法は、まず背中にあたる部分からベルトを伸ばし、肩と脇の下を通します。そして、背中でベルトを固定します。こうすることで、まるで胸を張っているような状態になり、鎖骨への負担を軽減することができるのです。 クラビクルバンドは、骨折した鎖骨を適切な位置に固定し、身体への負担を軽減することで、日常生活における不便さを和らげながら、自然治癒を促すための有効な手段と言えるでしょう。
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コルセット:その役割と種類、注意点

- コルセットとはコルセットは、背中の胸椎から腰の骨盤までの体幹部分を支えるための医療用装具です。体幹は身体の中心となる部分で、コルセットはこの重要な部分を外部からしっかりと支える役割を担います。コルセットは、主に背骨の病気や怪我の治療に用いられます。背骨は私たちの体を支える柱のような存在ですが、様々な原因で病気や怪我を負うことがあります。コルセットは、そんな傷ついた背骨を保護し、治療効果を高めるために使用されます。コルセットを装着することで期待できる効果は、患部の安定化、変形の予防、痛みの軽減などです。背骨が不安定な状態だと、痛みが増したり、症状が悪化したりする可能性があります。コルセットは背骨を固定することで、このような悪化を防ぎ、回復を助けます。また、背骨の変形が進行している場合は、その予防にも効果を発揮します。さらに、コルセットは背骨への負担を軽減することで、痛みを和らげる効果もあります。コルセットには、素材や形状、硬さなどが異なる様々な種類があります。症状や治療段階に応じて、医師が患者さんに最適なコルセットを選択します。軽度の症状の場合には、柔らかい素材で動きを制限しないタイプのものが選ばれます。一方、重症の場合や手術後には、硬い素材でしっかりと固定するタイプのものが使用されます。コルセットは、医師の指導のもと、正しく使用することが大切です。自己判断で使用すると、症状が悪化したり、予期せぬ副作用が出たりする可能性もあります。医師の指示に従い、適切なコルセットを選び、正しく装着することで、治療効果を最大限に引き出すことができます。
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腰痛治療の必需品:ダーメンコルセット

腰の痛みを和らげたり、腰への負担を軽くしたりするために用いられる医療用のコルセットをご存知でしょうか。それが「ダーメンコルセット」です。 ダーメンコルセットは、腰痛持ちの方だけでなく、腰を痛めた後や手術後にも用いられます。 コルセットには、その硬さによって、「硬性」、「半硬性」、「軟性」の3つの種類があります。この中で、ダーメンコルセットは、「軟性コルセット」に分類されます。 ダーメンコルセットは、特に柔らかい素材で作られているため、体に優しくフィットするのが特徴です。そのため、長時間装着していても、比較的快適に過ごすことができます。 しかし、コルセットはあくまで補助的なものです。装着すれば痛みが全てなくなるというわけではありません。 ダーメンコルセットを使用する際は、必ず医師の指示に従い、適切なサイズのものを選びましょう。また、装着方法を間違えると、効果が得られないばかりか、逆に身体に負担をかけてしまう可能性もあります。 医師や専門家の指導のもと、正しく使用することで、ダーメンコルセットは腰痛改善の心強い味方となってくれるでしょう。
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肋骨骨折後の強い味方:バストバンドの効果と使い方

- バストバンドとはバストバンドは、骨折した肋骨を固定し、胸部の安定性を保つために使われる医療用の帯状の装具です。別名でチェストバンドやリブバンドとも呼ばれます。 -# 使用目的と効果バストバンドは、主に肋骨を骨折した場合に用いられます。折れた骨が動いてしまうのを防ぎ、周辺の組織へのダメージを最小限に抑えることが目的です。また、骨折による痛みを和らげ、呼吸を楽にする効果もあります。-# 適応となる症状バストバンドは肋骨骨折以外にも、様々な状況で使用されます。例えば、胸部の手術後や鎖骨骨折、上腕骨の付け根の骨折などにも用いられます。さらに、胸郭の変形を防いだり、関節を正しい位置に保ったりする効果も期待できるため、幅広い症状に適応できます。-# 使用上の注意点バストバンドは医師の指示に従って、正しく装着することが重要です。締め付け過ぎると血行が悪くなる可能性がありますし、緩すぎると固定効果が十分に得られません。また、長時間の使用は筋肉の衰えや皮膚のトラブルに繋がる可能性もあるため、医師の指示に従って使用期間や装着時間を調整する必要があります。バストバンドは、怪我や手術後の回復を助ける上で重要な役割を果たします。正しく使用することで、痛みや不快感を軽減し、スムーズな回復を促すことができるでしょう。
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ガス壊疽:脅威の感染症

- ガス壊疽とはガス壊疽は、体内に侵入した特定の種類の細菌が原因で発症する、深刻な感染症です。主に、土壌などに広く生息するクロストリジウム属の細菌が、傷口などから体内に入り込むことで感染します。 この細菌は、酸素が少ない環境を好み、筋肉や皮下組織といった体の深い部分で増殖する特徴があります。そして、増殖する過程で、組織を壊死させる毒素と、特徴的な悪臭を放つガスを発生させることが、ガス壊疽の大きな特徴です。 ガス壊疽は急速に進行し、発症すると、患部が腫れ上がり、激しい痛みを伴います。 皮膚の色は、時間の経過とともに赤紫色から青黒く変化し、触ると皮下にガスが溜まっているため、パチパチという音がする場合もあります。 ガス壊疽は、命に関わることもあるため、早期の診断と治療が非常に重要です。
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人工股関節:痛みのない生活を取り戻す

- 人工股関節とは人工股関節とは、股関節の機能が損なわれた際に、その一部または全部を人工物で置き換える手術のことです。加齢や病気、怪我などが原因で股関節に痛みや動きの制限が生じ、日常生活に支障をきたす場合に検討されます。股関節は、骨盤側の臼蓋と呼ばれる受け皿と、大腿骨側の骨頭と呼ばれる球状の部分が組み合わさってできています。この関節部分の表面は軟骨と呼ばれる弾力のある組織で覆われており、滑らかな動きを可能にしています。しかし、変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨骨頭壊死症、骨折などが原因で股関節に障害が生じると、軟骨がすり減ったり、骨の形が変形したりして、激しい痛みや関節の動きが悪くなることがあります。このような場合、人工股関節置換術が有効な治療法となります。この手術では、損傷を受けた股関節を、耐久性に優れた金属やセラミック、ポリエチレンなどの素材で作られた人工関節に置き換えます。具体的には、骨盤側の臼蓋には人工臼蓋、大腿骨側の骨頭には人工骨頭を埋め込みます。人工骨頭は、ステムと呼ばれる棒状の部分に接続されており、このステムは大腿骨の骨髄内にしっかりと固定されます。人工股関節置換術によって、痛みが軽減され、股関節の動きが改善されるため、歩行動作や日常生活動作が楽になります。その結果、患者さんの生活の質(QOL)の向上に大きく貢献することができます。
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骨折治療の革新:髄内釘固定法とその利点

- 骨折治療における髄内釘の役割骨が折れてしまった場合、その治療には、骨片を適切な位置に固定し、動かないようにすることが非常に重要です。この固定を確実に行うことで、骨は再びつながり、もとの状態へと回復していきます。 従来、骨折の治療といえば、ギプス固定が一般的でした。しかし近年、髄内釘を用いた治療法が注目を集めています。髄内釘とは、金属で作られた棒状のインプラントのことで、骨折した骨の髄腔と呼ばれる空洞部分に挿入し、骨を内側から固定します。髄内釘を用いることで、従来のギプス固定と比べて、多くの利点があります。まず、ギプスのように体の一部を大きく固定する必要がないため、患者さんの負担を大きく軽減することができます。自由に体を動かすことができるようになるため、日常生活への復帰を早めることが期待できます。また、骨を安定的に固定することで、骨癒合が促進され、早期の回復も見込めます。もちろん、全ての骨折に対して髄内釘が適応となるわけではありません。骨折の種類や程度、患者さんの状態などを総合的に判断し、最適な治療法が選択されます。しかし、従来の治療法と比べて多くの利点を持つ髄内釘は、骨折治療において重要な役割を担っていると言えるでしょう。
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手足に関節が腫れる?それはガングリオンかも

- ガングリオンとはガングリオンとは、関節付近にできる軟らかい腫瘤のことです。腫瘍というと悪い病気のように聞こえますが、ガングリオンは良性なので心配ありません。多くは手首にできますが、足首や指の関節にできることもあります。ガングリオンは、関節を包む組織や腱鞘(けんしょう)と呼ばれる腱を包む組織から、ゼリー状の液体が漏れ出てきて、それが風船のように膨らむことでできます。中身は透明か少し黄色っぽいゼリー状の液体で、触るとぷにぷにした感触があります。なぜガングリオンができるのか、その原因はまだはっきりとは解明されていません。しかし、関節を酷使したり、手首を捻ったりするような怪我がきっかけでできることが多いと考えられています。また、同じ場所に繰り返しガングリオンができる人もいます。多くの場合、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。そのため、小さく目立たない場合は、特に治療を行わずに様子を見ることも多いです。しかし、神経を圧迫することで痛みやしびれが出現したり、関節の動きが悪くなったりすることがあります。また、見た目が気になるという方もいます。ガングリオンは自然に消えることもありますが、再発することも少なくありません。症状が気になる場合や、大きくなって見た目が気になる場合は、病院を受診して治療について相談してみましょう。
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骨折治療の定番:キャストとは?

骨は身体を支える重要な組織ですが、強い衝撃や Belastung によって、その連続性が完全に、あるいは部分的に断たれてしまうことがあります。これが骨折と呼ばれる状態で、日常生活でしばしば遭遇する外傷の一つです。転倒やスポーツ中の事故など、骨折の原因は様々ですが、骨折が疑われる場合には、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが非常に重要となります。 骨折の治療において、重要な役割を担うのが患部を固定する装具であるキャストです。骨折した骨は、その部位や程度にもよりますが、多くの場合、自然に癒合する力を備えています。しかし、骨折した骨を適切に固定せずに放置すると、骨片が本来の位置からずれてしまい、痛みや変形の原因となるばかりか、骨が正しく癒合しない「偽関節」などを引き起こしてしまう可能性があります。 そこで、骨折の治療では、ギプスとも呼ばれるキャストを用いて患部をしっかりと固定し、骨片を正しい位置に保つことで、骨の癒合を促します。また、キャストを装着することで、骨折部位への外部からの衝撃を和らげ、痛みを軽減する効果も期待できます。さらに、患部を安静な状態に保つことで、骨折部の腫れや炎症を抑え、治癒を促進することができます。骨折の種類や程度、患者の年齢や健康状態などを考慮しながら、適切な治療法が選択されます。
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怪我の基礎知識:創傷の種類と適切な処置

私たちの体は、薄い皮膚という一枚の膜で覆われています。この皮膚は、体を守る大切な役割を果たしていますが、外部からの強い力によって傷ついてしまうことがあります。この、皮膚やその下の組織が損傷を受けた状態のことを「創傷」と呼びます。 創傷には、実に様々な種類があります。鋭い刃物で切ってしまった場合には「切創」、物が擦れて皮膚がむげてしまった場合には「擦過傷」、とがったもので刺してしまった場合には「刺創」、そして、高温の物体に触れて組織が損傷した場合には「熱傷」と呼ばれます。 これらの創傷は、日常生活のあらゆる場面で起こり得るものです。例えば、料理中にうっかり包丁で指を切ってしまったり、転倒して膝を擦りむいてしまったり、熱い鍋に触れて火傷を負ってしまったりすることがあります。また、スポーツ中にボールや相手にぶつかって怪我をすることもありますし、交通事故など、予期せぬ出来事によって大きな創傷を負ってしまう場合もあります。 このように、創傷は私たちの身近に潜む危険です。創傷の種類や程度によっては、適切な処置が必要となります。小さな創傷であれば、自宅で消毒や保護をすることで治癒を促せますが、深い傷や広範囲の傷、出血がひどい場合には、医療機関を受診する必要がある場合があります。
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チーム医療で立ち向かう四肢外傷

- 四肢外傷とは人間の身体は、大きく頭と胴体、そして腕と脚からなる四肢に分けることができます。このうち、腕と脚をまとめて四肢と呼びますが、この部分に負った怪我のことを四肢外傷と呼びます。つまり、腕の骨折や足の捻挫などは、すべて四肢外傷に含まれるのです。ただし、一口に四肢外傷と言っても、その程度は軽いものから生命に関わる重いものまで様々です。例えば、日常生活で起こりやすい打撲や捻挫なども四肢外傷に含まれます。多くの人は、これらの怪我を経験したことがあるのではないでしょうか。このように、四肢外傷は、私たちにとって決して珍しいものではなく、むしろ身近なものと言えるでしょう。一方で、医療現場において「四肢外傷」という言葉が使われる場合、骨折した骨が皮膚を突き破る開放骨折や、血管や神経に損傷を伴うような、重症な状態であることを指すことが多いです。このような重度の四肢外傷は、日常生活で起こることは稀ですが、交通事故や高所からの転落など、大きな衝撃が身体に加わることで発生する可能性があります。このように、四肢外傷は軽度のものから重度のものまで、幅広い怪我を含みます。そして、その治療法も怪我の程度によって大きく異なります。軽度の打撲や捻挫であれば、安静や湿布などの処置で自然に治癒することがほとんどですが、重度の場合は、手術が必要となることもあります。いずれにしても、適切な治療を受けることが、後遺症を残さずに回復するために重要です。
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潜む脅威:化膿性脊椎炎とは

- 脊椎を蝕む細菌感染症化膿性脊椎炎は、血液の流れに乗って細菌が脊椎に侵入し、炎症を引き起こす病気です。この病気は、肺炎や尿路感染症など、体の別の場所で起きた感染が原因となる場合があります。また、医療行為で使用するカテーテルから感染することもあります。感染の初期段階では、椎体と呼ばれる骨の周辺に位置する椎体終板に細菌が侵入し、膿が溜まった状態(膿瘍)を作ります。その後、椎体と椎体の間にあるクッションの役割を果たす椎間板を介して感染が広がっていきます。そして、最終的には骨髄にまで炎症が及ぶ骨髄炎を引き起こします。化膿性脊椎炎は、体の部位によって発症しやすい場所が異なり、胸椎と腰椎で発症することが多く、頸椎での発症は稀です。もし、化膿性脊椎炎が重症化すると、脊椎周辺の筋肉や、神経の通り道である脊柱管にまで膿瘍が拡大する可能性があります。その結果、麻痺などの重い合併症を引き起こす可能性があります。特に頸椎に感染した場合、気管や食道を圧迫するリスクがあり、非常に危険な状態となることがあります。高齢者や糖尿病患者、癌や血液疾患の治療を受けている方など、免疫力が低下している人は化膿性脊椎炎のリスクが高いため、特に注意が必要です。
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医療現場における「クランプ」:その役割と重要性

- クランプとは何か医療現場において、「クランプする」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。これは、血管や臓器などを一時的に閉鎖することを指す医療用語です。では、一体どのようにして閉鎖するのでしょうか?その答えとなるのが、「クランプ」と呼ばれる医療器具です。クランプは、元々はドイツ語で「鉗子」や「留め具」、「クリップ」といった意味を持ちます。まさに言葉の通り、手術などで血管や臓器を挟んで一時的に閉鎖したり、チューブなどを固定したりするために用いられます。クランプは、その形状や用途によって様々な種類が存在します。例えば、血管を挟んで止血する際に用いられる「血管クランプ」、腸管などを挟んで内容物の漏出を防ぐ「腸クランプ」などがあります。それぞれ、対象となる組織や臓器、目的によって最適な形状・材質のものが使い分けられます。このように、クランプは手術をはじめとする医療現場において、欠かせない医療器具と言えるでしょう。安全かつ確実な医療行為を行う上で、クランプは重要な役割を担っています。
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人体の要、股関節の構造と機能

股関節は、私たちの体の中心部に位置し、上半身と下半身を繋ぐ、体重を支える上で非常に重要な関節です。 この関節は、骨盤の一部である寛骨臼という、ちょうどお椀のような形をした部分と、太ももの骨である大腿骨の先端にある丸い球状の大腿骨頭が組み合わさってできています。 寛骨臼は骨盤の両側に位置し、骨盤と大腿骨をつなぐことで、体のバランスを保ち、スムーズな歩行を可能にしています。 また、股関節は球関節と呼ばれる種類の関節に分類されます。 球関節は、関節を構成する骨の一方が球状で、もう一方がその球を受けるお椀状になっている構造をしています。 股関節の場合、大腿骨頭が球状、寛骨臼がお椀状にあたり、ちょうどドアノブがドアの枠にぴったりと収まっているような状態を想像すると分かりやすいでしょう。 この構造によって、股関節は前後左右さまざまな方向へ、大きく滑らかな動きを生み出すことができるのです。
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手術後を意味するPOとは?

手術は病気の治療において重要な役割を担っていますが、手術後も患者の状態を注意深く観察し、適切な処置を行うことが非常に重要です。 医療現場では、患者の状態や治療の経過を正確かつ簡潔に記録するために、様々な略語が使われています。特に手術後の記録には、これらの略語が数多く登場します。 これらの略語は、医療従事者間での情報共有を円滑にするための共通言語として機能しており、患者の状態を素早く把握するために不可欠です。例えば、手術後の患者の意識状態を表す「JCS」や、バイタルサインを示す「BT」など、多くの略語が使われています。 しかし、これらの略語を理解していなければ、患者の状態や治療の経過を正しく把握することができません。そのため、医療従事者は、日頃からこれらの略語の意味を正しく理解し、記録内容を正確に解釈できるようにしておく必要があります。また、患者やその家族に対しては、分かりやすい言葉で説明することが大切です。
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スポーツの敵!知っておきたい肉離れの基礎知識

- 肉離れとは何か?肉離れは、急な動作や無理な体勢によって筋肉に負担がかかりすぎ、筋肉の繊維やそれを包む膜が傷ついてしまう状態を指します。スポーツをしている最中に起こりやすく、特にサッカー、テニス、バスケットボールなど、瞬間的に動くことの多い競技で多く見られます。これらのスポーツでは、ダッシュやストップ、ジャンプといった動作を繰り返すため、筋肉に大きな負荷がかかりやすいためです。例えば、サッカーのシュート動作や、テニスのサーブ動作などが挙げられます。日常生活においても、重い物を持ち上げた時や、転倒して足を踏ん張った時などに、肉離れは起こり得ます。普段から運動習慣がない人が、急に激しい運動をした場合にも注意が必要です。肉離れの程度は、軽度のものから重度のものまで様々です。軽度の場合は、筋肉の軽い痛みや違和感程度で済むこともありますが、重度の場合は、筋肉の断裂や出血を伴い、激しい痛みや腫れ、運動制限などの症状が現れることもあります。肉離れを起こしたら、まずは安静にして患部を冷やすことが大切です。痛みが強い場合は、医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
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変形した足の親指:外反母趾について

- 外反母趾とは足の親指が小指の方へ曲がってしまう、つまり足の親指が体の外側へ向かって曲がってしまうことを外反母趾と呼びます。この変形は、親指の向きが変わるだけでなく、足の構造全体に影響を及ぼし、様々な症状が現れる原因となります。外反母趾になると、見た目に変化が生じるだけでなく、歩行時に痛みが生じたり、足に疲れを感じやすくなったりします。また、症状が悪化すると、膝や腰に負担がかかり、日常生活に支障をきたす場合もあります。外反母趾は、足の指の付け根にある関節が変形することで起こります。この関節は、足の親指が適切な方向に曲がるのを助ける役割を担っていますが、靴による圧迫や遺伝などの要因により、関節に負担がかかり続けると変形してしまうのです。外反母趾の初期症状としては、足の親指の付け根の出っ張りが挙げられます。また、足の親指が人差し指の方へ曲がっていく、靴を履くと足の親指の付け根が痛む、などの症状が現れることもあります。外反母趾は進行性の病気であるため、早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。症状が軽い場合は、ストレッチや足に合った靴選びなどのセルフケアである程度改善できる可能性があります。しかし、症状が進行している場合は、手術が必要となるケースもあります。外反母趾は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性のある病気です。足の痛みや変形を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
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骨折治療の基礎:骨接合術とは?

- 骨接合術の概要骨接合術とは、骨折という骨が折れてしまった状態に対して行われる手術の一つです。この手術では、折れてしまった骨を本来の位置に戻し、再びくっつくように固定します。骨接合術は、骨折した骨を自然に治癒させる保存療法とは異なり、金属製のプレートやネジ、骨の中に埋め込む髄内釘といった固定器具を用いる点が特徴です。これらの器具を用いることで、骨折した部分をしっかりと固定し、骨がずれずに安定した状態でくっつくように促します。骨接合術の利点としては、骨折部の安定化、早期の機能回復、変形したまま骨がくっついてしまうこと(変形治癒)の予防などが挙げられます。固定器具によって骨がしっかりと固定されるため、痛みが軽減し、早期に日常生活に復帰できる可能性が高まります。また、骨を正しい位置で固定することで、変形が残らずにきれいに骨がくっつくことが期待できます。しかし、骨接合術は外科手術であるため、当然ながらリスクも伴います。感染症や神経損傷、血栓症などの合併症が起こる可能性もあります。そのため、手術を受けるかどうかは、骨折の状態や患者さんの年齢、健康状態などを考慮した上で、医師とよく相談して決めることが重要です。
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知らないと怖い!? 病的骨折

- 病気のサインかも? 病的骨折とは皆さんは「病的骨折」という言葉を知っていますか?「骨折」と聞くと、転倒や衝突などの強い衝撃が原因で骨が折れることをイメージするでしょう。しかし、病的骨折は、健康な骨であれば通常は骨折しない程度のわずかな力で骨折してしまうことを指します。つまり、骨自体に何らかの病気が隠れているサインかもしれないのです。では、なぜ骨がもろくなってしまうのでしょうか? それは、骨粗鬆症や骨腫瘍、骨髄炎などの病気が原因で、骨の強度が低下したり、骨の構造がもろくなったりするためです。例えば、骨粗鬆症は、骨の量が減少し、骨の構造がスカスカになる病気です。また、骨腫瘍は、骨にできる腫瘍が骨を破壊したり、骨の構造を弱くしたりします。病的骨折は、日常生活の中で、少しつまずいた、くしゃみをした、布団から起き上がったなど、普段の生活では考えられないようなきっかけで起こることがあります。骨折が起こったときはもちろんですが、このような些細なことで骨折をしてしまった場合は、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。病的骨折は、早期発見・早期治療が大切です。骨がもろくなる病気は、初期段階では自覚症状が現れにくい場合もあります。そのため、骨折をきっかけに病気の発見に繋がることもあります。日頃から、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、骨の健康を維持することが大切です。
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整形外科:運動器のスペシャリスト

整形外科は、私たちが日常生活を送る上で欠かせない、体を支え、動かす機能を担う器官を専門的に扱う診療科です。この診療科では、骨、関節、靭帯、末梢神経、筋肉など、運動に関わる様々な組織の異常や損傷を診断し、治療を行います。 整形外科が対象とする病気や怪我は多岐にわたります。例えば、骨折や捻挫、打撲、切り傷といった外傷、スポーツによる障害、関節リウマチ、変形性関節症などの慢性的な病気、脊椎疾患、骨粗鬆症、骨腫瘍など、様々な症状に対応します。 治療法としては、保存療法と手術療法があります。保存療法には、安静、投薬、注射、リハビリテーションなどがあり、症状に合わせて適切な方法が選択されます。手術が必要な場合には、骨折の整復固定術、関節鏡手術、人工関節置換術など、様々な術式があります。 整形外科は、患者さんの年齢や症状、生活背景などを考慮しながら、日常生活への早期復帰、痛みの軽減、運動機能の改善を目指します。
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