看護技術

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清潔操作の基礎:ドレーピングとは?

- ドレーピングの定義医療現場で行われる手術や、腹水・胸水穿刺、中心静脈穿刺などの医療処置において、患者さんの体を清潔な状態に保つことは非常に重要です。これらの処置では、体内や血管などに針やメスなどの医療器具を挿入するため、細菌などの微生物が体内に入り込むことで感染症を引き起こすリスクがあります。そこで、処置を行う部分を清潔な状態に保ち、感染症のリスクを最小限に抑えるために行われるのが「ドレーピング」です。ドレーピングとは、特殊な滅菌処理が施された布(ドレープ)を用いて、患者さんの体の一部や周囲を覆う行為を指します。ドレープには、手術部位のみに穴が開いたものや、体全体を覆う大きなものなど、様々な種類があります。使用するドレープの種類や覆い方は、手術や処置の内容や部位、患者さんの体格などによって異なります。ドレーピングを行う上で最も重要なことは、処置を行う部分を適切に露出させると同時に、清潔に保つべき範囲(清潔野)を可能な限り広くとることです。細菌は目に見えないため、清潔野が狭いと、気づかないうちに細菌が侵入し、感染症を引き起こす可能性があります。このように、ドレーピングは患者さんの安全を守る上で欠かせない行為と言えます。
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ハイケアユニット:高度な医療を提供する場

- ハイケアユニットとはハイケアユニット(HCU)は、入院患者に対して、一般病棟よりも手厚い治療や看護を行うことを目的とした特別な病棟です。一般病棟では対応が難しい、より専門的な医療や看護を必要とする患者のために設けられています。では、具体的にどのような患者さんがHCUに入院するのでしょうか?例えば、外科手術後に集中的な管理が必要な方や、重篤な病気の治療中で、容体が急変する可能性がある方が挙げられます。これらの患者さんは、継続的な監視や、状態に応じた迅速な処置が必要となるため、専門性の高いHCUで治療を受けることが適切と判断されます。HCUは、一般病棟と集中治療室(ICU)の中間に位置付けられる病棟とも言えます。ICUほどは状態が安定していないものの、一般病棟で過ごすには不安がある患者さんにとって、HCUは安心できる医療環境を提供しています。
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看護の診断:NANDA-Iとは?

皆さんは、「看護診断の国際化」という言葉を聞いたことがありますか?看護師の世界では、世界中のどこで看護を受けても、質の高い看護を提供するために、看護診断を統一していくことが重要な課題となっています。 看護診断とは、患者さんが抱える健康上の問題を、看護師が専門的な知識や技術を用いて判断することを指します。この診断に基づいて、看護師は個別的なケアの計画を立て、患者さんを支援していきます。 しかし、国や地域によって、看護師の教育内容や文化、医療制度などが異なるため、同じような患者さんの状態に対しても、異なる診断がなされることがあります。このような状況は、患者さんにとって最適な看護の提供を難しくする可能性も孕んでいます。 そこで、看護診断の統一を図るために活躍している国際的な組織が、NANDA-I(North American Nursing Diagnosis Association International北米看護診断協会国際版)です。NANDA-Iは、世界中の看護師と協力しながら、看護診断の定義や分類を標準化し、共通の言語として使えるように活動しています。 NANDA-Iが作成した看護診断リストは、多くの国々で翻訳され、使用されています。日本でも、看護師国家試験や看護教育の現場で広く活用されています。このように、NANDA-Iは国際的な看護の質向上に大きく貢献しています。看護診断の統一は、看護師がより質の高い看護を提供するために、そして、患者さんが安心して適切な看護を受けられるようにするために、今後も重要な課題であり続けるでしょう。
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看護の標準化を目指して:NANDA-Iとは

医療現場において、看護師は患者さんの状態を的確に把握し、それぞれの状況に応じた適切なケアを提供することが求められます。しかし、看護師によって症状の見立てや判断基準が異なってしまうと、患者さんへの対応にばらつきが生じてしまう可能性があります。質の高い看護を提供するためには、看護師間で共通の認識に基づいた診断を行うことが不可欠です。 このような背景から、看護診断の統一を図るために設立された国際的な組織がNANDA-I(North American Nursing Diagnosis Association-International)です。NANDA-Iは、看護師が使用する診断用語を標準化し、世界中の医療現場で統一された看護診断を可能にすることを目指しています。これにより、看護師間だけでなく、医師や薬剤師など、他の医療従事者との連携も円滑に進めることが期待できます。 NANDA-Iが提供する標準化された看護診断は、看護師の専門性を高め、より質の高い看護を提供するための基盤となるものです。看護師は、NANDA-Iの診断基準を用いることで、患者さんの状態をより正確に把握し、根拠に基づいたケアを提供することができます。また、NANDA-Iは、看護教育の分野においても重要な役割を担っており、世界中の看護学生が共通の診断基準を学ぶことで、質の高い看護師の育成に貢献しています。
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中心静脈栄養法:口からの食事が難しいときの選択肢

- 中心静脈栄養法とは中心静脈栄養法(TPN)は、口から十分な栄養を摂取することが難しい患者さんに対して、必要な栄養を直接血液中に送り込む治療法です。私たちの体は、健康を維持し、活動するためのエネルギー源として、また、組織の成長や修復のために栄養が必要です。 通常、私たちは食事から必要な栄養を摂取しますが、病気や怪我など様々な理由で、口から十分な栄養を摂取できない場合があります。 このような場合に、中心静脈栄養法が用いられます。 中心静脈栄養法では、心臓に近い太い静脈である中心静脈にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入します。カテーテルは、通常、鎖骨の下を通る鎖骨下静脈や首にある内頚静脈から挿入され、その先端は心臓の近くにある上大静脈という大きな静脈に位置します。 そして、このカテーテルを通じて、糖分、アミノ酸、脂質、ビタミン、ミネラルなど、体に必要な栄養素をバランス良く含んだ高カロリーの栄養輸液を直接血液中に送り込みます。中心静脈栄養法は、生命維持に不可欠な場合もあれば、患者さんの栄養状態を改善し、回復を早めることを目的とする場合もあります。
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医療現場における側臥位の重要性

- 側臥位とは側臥位とは、その名の通り、身体を横にしている姿勢のことを指します。多くの人にとって、眠るときや休んでいるときに、自然とる姿勢の一つでしょう。 右側を下にするか左側を下にするかで、「右側臥位」「左側臥位」と区別することもあります。この姿勢は、楽に呼吸ができる、身体への負担が少ないといった利点があるため、リラックスするのに適しています。 実際、多くの人が、無意識のうちに睡眠中にこの姿勢をとっているのではないでしょうか。しかしながら、医療の現場においては、患者さんの状態によっては、注意が必要な姿勢となる場合もあります。 例えば、体の片側に麻痺がある患者さんや、褥瘡(床ずれ)のリスクが高い患者さんの場合、体重がかかる部分に負担が集中し、症状が悪化する可能性があります。 そのため、医療従事者は、患者さんの状態を適切に判断し、必要があれば、枕やクッションなどを用いて身体を支え、負担を軽減するなどの配慮を行う必要があります。また、妊娠中の女性、特に後期には、左側臥位が推奨されることがあります。 これは、左側臥位をとることで、心臓への負担を軽減し、胎児への血流を良くする効果があるとされているためです。このように、側臥位は、自然で楽な姿勢である一方、医療現場においては、患者さんの状態に合わせて、注意深く対応していく必要があります。
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ファウラー位:目的と注意点

- ファウラー位とは ファウラー位とは、患者さんをあおむけに寝かせた状態(仰臥位)から、上半身を45度程度に起こしてベッドの背もたれにもたれさせた姿勢のことです。この姿勢は、ベッドの背もたれの角度を調整するだけで簡単にできます。 ファウラー位は、手術後や呼吸が苦しい時、口や鼻からチューブを入れて栄養を補給する必要がある時など、様々な場面で利用されます。 上半身を起こすことで、肺が広がりやすくなるため、呼吸が楽になります。また、心臓への負担も軽減されるため、心臓や肺の病気を持つ患者さんによく用いられます。 さらに、食事を摂る際や経管栄養を行う際にも、この姿勢は有効です。重力の影響で食べ物が食道に流れ込みやすくなるため、誤嚥を防ぐことができます。 ファウラー位は、患者さんの状態に合わせて、角度を調整することができます。角度が浅いものをセミファウラー位、角度が深いものをハイファウラー位と呼びます。 このように、ファウラー位は医療現場において、患者さんの負担を軽減し、様々な症状を改善するために用いられる、重要な体位の一つです。
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チームで支える医療:チームナーシングのススメ

- チームナーシングとはチームナーシングとは、複数の医療スタッフが一つのチームとなり、それぞれの専門知識や技術を活かして患者さんの看護にあたる看護体制のことです。従来の看護体制では、一人の看護師が担当する患者さんの数も多く、一人ひとりの患者さんに寄り添った丁寧な看護を提供することが難しい状況もありました。しかし、チームナーシングでは、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士など、様々な専門家がそれぞれの得意分野を活かして、患者さんのケアにあたります。 例えば、医師は患者さんの病気の診断や治療を担当し、看護師は患者さんの日常生活の援助や健康状態の観察、薬の管理などを行います。理学療法士は、身体の機能回復を目的としたリハビリテーションを行い、作業療法士は、日常生活動作の改善を支援します。言語聴覚士は、言葉や聴覚に問題のある患者さんのコミュニケーションをサポートし、栄養士は、患者さんの状態に合わせた食事の指導を行います。このように、それぞれの専門家がそれぞれの役割を果たすことで、質の高い医療・看護を効率的に提供することが可能となります。チームナーシングでは、患者さん一人ひとりの状態やニーズを把握し、チーム全体で情報を共有しながら、患者さんに最適なケアを提供します。また、患者さんやご家族の意見を尊重し、患者さんも治療やケアに参加する姿勢を大切にします。チームで協力し、患者さんと共に治療やケアを進めていくことが、チームナーシングの大きな特徴と言えるでしょう。
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患者の快適と回復を支える体位変換

- 体位変換とは何か体位変換とは、寝ている人の体の向きや姿勢を定期的に変えるケアのことです。特に、病気や怪我などで長時間ベッドで過ごす必要がある方にとって、このケアは非常に重要です。人は誰でも、同じ姿勢を長時間続けていると、体に負担がかかってしまいます。例えば、椅子に座り続けていると、お尻や腰が痛くなってくることがありますよね。これは、体重が特定の場所に集中し続けることで、血行が悪くなったり、皮膚が圧迫されたりするためです。寝たきりの方の場合、自分で体の向きや姿勢を変えることが難しい場合が多く、長時間同じ姿勢を強いられることになります。すると、お尻や背中、かかとなどに負担が集中し、床ずれ(褥瘡)と呼ばれる皮膚の潰瘍ができてしまうことがあります。床ずれは、重症化すると治癒が難しく、痛みや不快感を伴うため、予防が何よりも重要です。また、体位変換には、床ずれの予防以外にも、肺炎や尿路感染症などの合併症を防ぐ効果もあります。体の向きを変えることで、肺に空気が入りやすくなったり、尿の流れが良くなったりするためです。さらに、筋肉や関節の萎縮や拘縮を予防する効果も期待できます。体位変換は、患者さんの体の状態や、医師や看護師の指示に従って行う必要があります。具体的には、どのような姿勢にするか、どのくらいの頻度で変えるか、などが異なります。家族や介護者が体位変換を行う場合は、正しい方法を習得しておくことが大切です。
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静脈注射:その役割と利点

- 静脈注射とは静脈注射とは、読んで字のごとく、静脈の中に直接薬剤を注入する方法です。注射器を用いて一度に投与する注射と、点滴のように時間をかけてゆっくりと投与する方法があります。いずれの方法であっても、薬剤が血管に直接入るため、効果があらわれるまでの時間が非常に短いことが大きな特徴です。では、なぜ静脈注射は、内服薬のように口から飲んだり、筋肉注射のように筋肉に注射したりするのではなく、静脈から直接投与する必要があるのでしょうか? それは、大きく分けて二つ理由があります。一つ目は、患者さんの状態によっては、口から薬を飲むことが難しい場合があるためです。例えば、意識がない場合や、吐き気がひどい場合などは、口から薬を飲むことができません。また、消化管の手術後などで、口から摂取したものが吸収されにくい状態の場合も同様です。このような場合、静脈注射は、必要な薬剤を確実に体内に届けるための有効な手段となります。二つ目は、迅速な効果が求められる場合です。静脈注射では、薬剤が血液に直接混ざるため、効果が非常に早く現れます。例えば、緊急性の高い病気や症状に対しては、一刻も早く効果を得るために静脈注射が選択されます。このように、静脈注射は、状況に応じて、患者さんの負担を軽減し、より効果的に治療を行うために欠かせない方法です。
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生命の指標、バイタルサイン

- バイタルサインとは人間の身体が正常に機能しているかを判断する上で、重要な指標となるのがバイタルサインです。これは、心拍数、呼吸数、血圧、体温という四つの基本的な測定値を指します。健康診断や病院を受診した際、必ずと言っていいほどこれらの数値が測定されるのは、私たちの体の状態を把握する上で非常に重要だからです。心拍数は、心臓が一分間に何回拍動しているかを示す数値です。安静時の成人の場合、通常は一分間に60回から100回程度です。運動やストレス、病気などによって変動します。呼吸数は、一分間に何回呼吸をしているかを示す数値です。健康な成人の場合、通常は一分間に12回から20回程度です。心拍数と同様に、運動や精神状態、病気などによって変化します。血圧とは、血液が血管を押す圧力のことです。心臓が収縮した時の圧力を収縮期血圧(最高血圧)、心臓が拡張した時の圧力を拡張期血圧(最低血圧)と言います。一般的に、成人の正常な血圧は、収縮期血圧が120mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満とされています。血圧は、加齢や塩分の摂り過ぎ、ストレス、病気などによって上昇しやすくなります。体温は、体の内部の温度のことです。人間の体は、常に一定の体温を保とうとする働きがあります。一般的に、健康な人の体温は36度台です。体温は、時間帯や環境、運動、病気などによって変動します。これらのバイタルサインは、私たちの体の状態を反映する鏡と言えるでしょう。これらの数値に異常が見られる場合は、体に何らかの異常が起きている可能性があります。日頃から自身のバイタルサインを把握しておくことが、健康管理に繋がると言えるでしょう。
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モジュールナーシング:日本独自の看護提供方式

- モジュールナーシングとはモジュールナーシングとは、日本の病院で多く取り入れられている看護の提供方法の一つです。 従来の看護体制には、主に担当看護師制とチームナーシングという二つの方法がありました。担当看護師制は、一人の看護師が、入院から退院まで、患者さん一人ひとりに責任を持って継続的に看護を行うというものです。患者さんとの信頼関係を築きやすく、きめ細やかな看護を提供できるというメリットがある一方、看護師の負担が大きくなってしまうという課題もありました。 一方、チームナーシングは、複数の看護師がチームを組み、それぞれの得意分野を活かしながら、協力して患者さんの看護にあたるという方法です。多様なニーズに対応しやすく、看護師の負担も軽減できるというメリットがある一方、患者さんとの繋がりが希薄になりやすいという課題もありました。 モジュールナーシングは、それぞれの長所を取り入れ、弱点を補うことを目指した方法と言えます。 モジュールナーシングでは、まず病棟をいくつかのチームに分けます。そして、各チームを数名の看護師で構成される小さな単位(モジュール)に分けます。 各モジュールは、担当する患者さんの入院から退院まで、一貫して看護を担当します。 モジュールナーシングを行うことで、患者さん一人ひとりに合わせた継続的な看護を提供できるだけでなく、チーム全体で協力して、多様なニーズにも対応することができます。また、看護師同士が密に連携を取りながら働くことができるため、質の高い看護を提供することにも繋がります。
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患者さんの清潔を保つウォッシュクロス

- ウォッシュクロスとは病気や怪我などで、お風呂に入ることが難しい患者さんの体を清潔に保つために使うタオルをウォッシュクロスと呼びます。自分で体を洗うことが難しい、寝たきりの患者さんにとって、清潔を保ち、快適に過ごしていただくために欠かせないものです。ウォッシュクロスは、「清拭タオル」とも呼ばれ、看護師や介護士が日々のケアの中で使用しています。お風呂に入れない場合でも、ウォッシュクロスを使うことで、肌を清潔に保ち、細菌の繁殖を抑え、皮膚トラブルを予防することができます。また、温罨法や冷罨法など、患部を温めたり冷やしたりする治療にも用いられます。さらに、体を拭いてあげることで、患者さんに安らぎやリラックス効果を与えることも期待できます。ウォッシュクロスは、肌触りの良い素材で、吸水性や速乾性に優れているものが適しています。また、患者さんの状態や用途に合わせて、大きさや厚さを選ぶことも大切です。例えば、顔やデリケートゾーンを拭く場合は、柔らかく小さめのものが適していますし、体を拭く場合は、大きめでしっかりとしたものが適しています。ウォッシュクロスは、患者さんのQOL(生活の質)を高める上で、とても重要な役割を担っています。患者さんが安心して快適に過ごせるよう、適切なケアを提供するために、ウォッシュクロスを正しく理解し、使いこなせるようにすることが大切です。
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地域住民の健康を守る家庭訪問指導

- 家庭訪問指導とは家庭訪問指導とは、地域の皆さんの健康を保ち、より健康になっていただくこと、そして病気を防ぐことを目的としています。保健師や看護師などが皆さんの家を訪問し、直接顔を合わせて健康について様々なアドバイスを行うのが家庭訪問指導です。対象となるのは、赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで、年齢は問いません。健康に不安がある方だけでなく、今は健康に過ごしているという方も訪問の対象になります。具体的には、妊娠中のお母さんとそのご家族へのサポート、赤ちゃんやお子さんの成長と健康状態の確認、そして高齢の方々がいつまでも元気に過ごせるように介護予防などの支援など、様々な場面で皆さんの健康を支えるために幅広い分野で保健指導を行っています。家庭訪問指導では、皆さんの生活習慣や健康状態、家庭環境などを詳しくお伺いします。その上で、健康についての疑問や不安を解消するための情報提供やアドバイス、必要な場合は医療機関の紹介なども行います。地域の皆さんが、住み慣れた地域で安心して健康に過ごせるように、そして自分らしく生活を送れるように、寄り添いながらサポートをしていくことが家庭訪問指導の大きな役割です。
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看護の成果を分類するNOCとは?

- 看護成果分類(NOC)の概要 看護の現場では、患者さんの状態を把握し、個別性の高いケアを提供することが求められます。そのために、看護師は、患者さんがどのような状態になれば望ましいのか、どのような変化を期待するのかを明確にする必要があります。このような看護師が目指す患者さんの状態や変化を「看護成果」と呼びます。 看護成果分類(NOC Nursing Outcomes Classification)は、この看護成果を体系的に分類し、定義したものです。NOCは、患者さんの状態、行動、認識など、様々な側面から捉えた看護成果を網羅しており、看護師が共通の言葉で患者さんの状態や目標を共有することを可能にします。 NOCは、看護計画を立案する上で重要な役割を果たします。看護師は、まずアセスメントを通して患者さんの状態やニーズを把握します。そして、看護診断に基づいて、患者さんにとって適切なNOCを選択し、具体的な目標を設定します。この目標設定は、患者さんの状況や希望を考慮しながら、実現可能なものとして設定する必要があります。 NOCを用いることで、看護師はより明確な目標を持ってケアを提供することができ、患者さんの状態変化を客観的に評価することができます。また、看護師間や医療チーム全体で共通の認識を持ってケアを進めることができるため、より質の高い看護の提供につながると期待されています。
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清潔処置に欠かせないドレーピング:その重要性と基礎知識

- ドレーピングとは?手術や腹水・胸水穿刺、中心静脈穿刺など、医療現場で行われる様々な処置において、患者の体に針やメスを入れることがあります。このような医療行為を行う際には、細菌などの微生物が患部に入り込み、感染症を引き起こさないようにするための対策が何よりも重要となります。そのための重要な技術の一つが「ドレーピング」です。ドレーピングとは、滅菌処理を施した布(ドレープ)を用いて、患者の体を適切に覆うことを指します。医療現場では、清潔な部分を「清潔域」、清潔ではない部分を「不潔域」と呼びますが、ドレーピングを行うことで、この二つの領域を明確に区別します。具体的には、処置を行う部分のみを露出させ、それ以外の部分をドレープで覆うことで、清潔域を確保し、不潔域からの微生物の侵入を防ぎます。ドレーピングは、患者さんの安全を守る上で欠かせない処置であり、医療従事者には、状況に応じた適切なドレーピング技術が求められます。特に、手術室では、手術台や患者さんの体、医療機器など、広範囲にわたってドレーピングが行われます。適切なドレーピングを行うことで、手術部位を清潔に保ち、手術後の感染症のリスクを大幅に減らすことができます。
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医療現場の包交って?

病院で働く人たちの間で使われている専門用語に「包交」という言葉があります。患者さんの体から包帯やギプスなどを外すことを「包交」と呼びます。 たとえば、骨折した箇所に固定のために巻かれたギプス、手術後に傷口を保護するために巻かれた包帯、点滴を固定するために巻かれたテープなどを外す際に、「包交する」と表現します。 包交は、患者さんにとって治療がひと段落ついたことを実感できる瞬間であり、同時に日常生活に戻るための第一歩となる場合も多いです。しかし、長期間固定されていた場合、関節が硬くなっていたり、筋肉が衰えていたりするため、包交後もリハビリテーションが必要となることがあります。 包交は、単に包帯やギプスを外す作業ではなく、患者さんの回復過程における一つの節目となる重要な行為と言えるでしょう。
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看護の現場で活躍する半側臥位

- 半側臥位とは半側臥位とは、病気や怪我などで安静が必要な患者さんや、寝たきりの患者さんにとって、楽に過ごせるようにするための基本的な姿勢の一つです。この姿勢は、単に楽なだけでなく、体にかかる負担を減らし、呼吸を楽にしたり、床ずれのリスクを減らしたりする効果も期待できます。半側臥位にするには、まず患者さんを仰向けに寝かせた状態から始めます。そして、体を左右どちらか一方に、だいたい45度くらいの角度をつけて傾けていきます。この時、無理に傾けすぎないことが大切です。次に、体の向きに合わせて腕の位置を調整します。下になった方の腕は、体よりも前に出して、肘を軽く曲げてあげると楽になります。上になった方の腕は、体の後ろ側に回し、軽く曲げておきます。脚の位置も重要です。下になった方の脚は、股関節と膝の両方を軽く曲げてあげると、体が安定しやすくなります。上になった方の脚は、そのまままっすぐ伸ばしておきます。このように、半側臥位は、横向きと仰向けの中間のような姿勢をとることで、患者さんの状態を安定させ、負担を軽減することができます。ただし、患者さんの状態や状況によっては、他の姿勢の方が適している場合もあります。そのため、医師や看護師の指導のもと、適切な姿勢で行うことが重要です。
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姿勢と健康:長座位のメリット・デメリット

- 長座位とは長座位とは、足をまっすぐ前に伸ばして座る姿勢のことを指します。床に足を伸ばして座る、椅子に座って足を前に投げ出すといった姿勢が、長座位の代表的な例です。この姿勢は、股関節が伸び、膝の裏側が縮んだ状態になります。一見すると楽な姿勢に思える長座位ですが、実は体への負担が大きい場合があり、注意が必要です。長座位を長時間続けると、腰や背中に負担がかかりやすくなります。これは、長座位によって骨盤が後ろに傾き、腰椎と呼ばれる腰の骨が自然なS字カーブを描けなくなるためです。その結果、腰痛や猫背の原因になる可能性があります。また、太ももの裏側の筋肉が硬くなりやすい点も長座位の特徴です。太ももの裏側の筋肉が硬くなると、骨盤の動きが悪くなり、腰痛や姿勢が悪くなるだけでなく、血行不良や冷え性の原因にも繋がることがあります。さらに、長座位は股関節の柔軟性を低下させる可能性も孕んでいます。股関節の柔軟性が低下すると、歩く、立つ、座るといった日常生活の動作に支障が出る可能性があります。長座位は、体の柔軟性や筋力、体の状態によって負担が大きく異なる姿勢です。長座位をとる際は、こまめな姿勢の変換やストレッチを取り入れるなど、体の負担を軽減するための工夫を心がけましょう。
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エンジェルメイク:最愛の人との最後の別れを支えるケア

- エンジェルメイクとは病院で息を引き取った後、患者さんの顔には、病気による苦痛の跡や、治療の際に付いた傷、体液などが見られることがあります。そこで、旅立ちゆく方が少しでも安らかに見えるよう、看護師など医療従事者が行う死化粧のことを「エンジェルメイク」と呼びます。エンジェルメイクは、まず清潔なガーゼやコットンを用いて、顔についた汚れや体液をやさしく拭き取ることから始まります。そして、顔色を整えるために、薄い色のファンデーションを顔全体に塗っていきます。ただし、生前の元気な姿を求めて、普段通りの濃い化粧を施すことは控えられます。あくまでも、自然で安らかな表情を作ることが目的だからです。エンジェルメイクは、故人にとって最後の身だしなみを整えるという意味合いがあります。また、残された家族が、穏やかな気持ちで最期の別れを迎えられるようにという配慮も込められています。最愛の人を亡くした家族にとって、安らかな顔で眠るように見えることは、深い悲しみの中でも、少しの慰めとなるからです。近年では、病院によっては、エンジェルメイクを専門とする業者に依頼するケースも増えています。しかし、エンジェルメイクは、単なる化粧ではなく、故人への敬意と、遺族への配慮から生まれる、温かい思いやりの心から生まれる行為と言えるでしょう。
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患者様中心の医療:看護計画とは

- 看護計画の定義 看護計画とは、患者さん一人ひとりの状態やニーズに合わせて作成される、個別化された看護ケアの指針となるものです。まるで患者さん一人ひとりのためのオーダーメイドの治療計画書のようなもので、病気や怪我、障害などによって生じる様々な困難な状況や、患者さんが抱える様々な要望に対して、看護師が専門的な知識や技術を駆使して、どのようにケアを提供していくのかを具体的に示した計画書と言えます。 例えば、歩行が困難な患者さんに対しては、「安全に歩行できるように介助する」という一般的な目標だけでなく、「いつまでに」「どのような方法で」「どの程度の距離を」「何回」歩行練習を行うかなど、具体的な目標や方法が明確にされます。 看護計画は、患者さんが安全で安楽な入院生活を送れるように、そして一日も早く回復できるように、医師や理学療法士、栄養士など、他の医療専門職と連携しながら作成されます。そして、患者さんの状態の変化に合わせて随時見直しが加えられ、より適切な看護が提供されるよう努められます。
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吸引:その役割と重要性

- 吸引とは吸引とは、医療現場で患者さんの気道を確保し、呼吸を助けるための大切な処置です。口や鼻から肺に繋がる空気の通り道を気道と呼びますが、病気や怪我などによって、自力でこの気道を確保するのが難しい患者さんがいます。例えば、意識がはっきりしない患者さんや、手術後まもない患者さんは、唾液や痰をうまく吐き出すことができません。また、気管切開をしている患者さんは、気管に直接分泌物が溜まりやすくなります。こうした分泌物が気道を塞いでしまうと、呼吸が苦しくなったり、誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こす危険性があります。吸引はこのような事態を防ぐために行われます。具体的には、口や鼻、気管切開部などから細い管を入れ、専用の機械を使って分泌物を吸い出します。吸引を行うことで、気道が確保され、患者さんは楽に呼吸ができるようになります。吸引は、患者さんの状態に合わせて、頻度や方法を調整する必要があります。安全に吸引を行うためには、医療従事者の正しい知識と技術が不可欠です。
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自分で行う排尿ケア:間欠的自己導尿法とは

毎日の生活の中で、トイレに行って尿を出すことは、私たちにとってごく自然なことです。しかし、病気や怪我など、さまざまなことが原因で、自分の力だけではスムーズに尿を出せなくなることがあります。このような状態が長く続くと、日常生活に不便を感じるだけでなく、体や心の負担も大きくなってしまいます。 今回は、尿を出すことに困難を感じている方に向けて、「間欠的自己導尿法」という新しい排尿ケアの方法についてご紹介します。 「間欠的自己導尿法」とは、決まった時間に、ご自身で細い管を尿道から膀胱に挿入し、尿を体外に排出する方法です。この方法は、自分の力で尿を出せない方でも、自然に近い形で排尿を促すことができるため、近年注目されています。 この方法の大きなメリットは、尿を体内に溜め込まないため、尿路感染症などのリスクを減らすことができる点です。また、従来の留置カテーテルのように、常に管を挿入しておく必要がないため、日常生活の自由度も高まります。 「間欠的自己導尿法」は、医師や看護師の指導を受ければ、自宅でも安全に行うことができます。尿が出せないという悩みを抱えている方は、ぜひ一度、医療機関にご相談ください。
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フットポンプ:血栓を予防する医療機器

- フットポンプとは手術後など、病気や怪我の治療のために長時間ベッドで安静にしていなければならないことがあります。しかし、長時間じっとしていると、足の静脈に血液のかたまり(血栓)ができやすくなってしまいます。これを深部静脈血栓症といい、重症化すると肺塞栓症を引き起こし、命に関わる危険性もあるのです。このような事態を防ぐために用いられるのが、フットポンプです。フットポンプは、空気の力で足の筋肉をマッサージする医療機器です。足に装着したブーツのような形をした部分に、機械で空気を出し入れすることで、まるで足首からふくらはぎの筋肉をポンプのように動かしているような状態を作り出します。これにより、足の静脈を圧迫し、血液を心臓に戻す働きを助けます。その結果、足の静脈に血液が滞るのを防ぎ、血栓ができるリスクを減らすことができるのです。フットポンプは、間欠的空気圧迫装置、IPCポンプなどとも呼ばれています。主に手術後の患者さんを中心に、医療現場で広く活用されているものです。
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