総合健康ガイド

看護技術

褥瘡:予防と対策について

- 褥瘡とは褥瘡は、一般的に「床ずれ」として知られる症状です。これは、長時間同じ姿勢を続けることで、特定の部位、特に骨が出っ張っている部分に体重がかかり続け、その部分の血流が悪くなることで発生します。皮膚やその下の組織が、まるで押しつぶされたように傷ついてしまうのです。褥瘡は、寝たきりの方や車椅子を利用している方など、長時間体を動かすことが難しい方に多く見られます。このような状態では、体重がかかりやすいお尻や背中、かかとなどに褥瘡ができやすくなります。また、栄養状態の悪化や、糖尿病などの病気によって、皮膚の抵抗力が弱まっている場合も、褥瘡ができやすくなるため注意が必要です。褥瘡は、初期段階では皮膚が赤くなる、または紫色に変色するなどの症状が現れます。さらに悪化すると、水ぶくれや皮膚のびらん、潰瘍などが生じ、場合によっては、そこから細菌が侵入し、感染症を引き起こすこともあります。感染症を合併すると、発熱や悪寒、患部の痛みや腫れなどの症状が現れ、重症化すると命に関わることもあります。褥瘡を予防するためには、体位変換をこまめに行い、圧迫されている部分を解放することが重要です。また、栄養バランスの取れた食事を心がけ、皮膚を清潔に保つことも大切です。褥瘡が疑われる症状が見られた場合は、自己判断せずに、速やかに医師に相談しましょう。

睡眠ホルモン、メラトニンの役割とは?

私たちの体は、約24時間周期で変化する体内時計を持っています。そして、この体内時計に合わせて、睡眠と覚醒のリズムを刻んでいるのが、メラトニンと呼ばれるホルモンです。 メラトニンは、脳の中にある「松果体」という小さな器官で作られます。日中は、太陽の光を浴びることで分泌が抑えられますが、夜になると分泌量が増え、自然な眠気を誘います。 まるでオーケストラの指揮者のように、メラトニンは体のさまざまな機能に働きかけ、眠りにつく準備を整えます。体温を低下させたり、心拍数をゆっくりにしたりすることで、リラックス状態へと導きます。そして、深い眠りへと誘い、朝までぐっすりと眠れるようにサポートしてくれるのです。 しかし、夜遅くまで明るい光を浴び続けたり、寝る直前までスマートフォンやパソコンを使ったりすると、メラトニンの分泌が阻害されてしまいます。その結果、体内時計が乱れてしまい、睡眠不足や質の悪い睡眠につながる可能性があります。 質の高い睡眠を得るためには、メラトニンの分泌リズムを整えることが重要です。規則正しい生活を心がけ、夜になったら部屋の照明を落とし、リラックスして過ごすようにしましょう。
外科

整形外科:運動器のスペシャリスト

整形外科は、私たちが日常生活を送る上で欠かせない、体を支え、動かす機能を担う器官を専門的に扱う診療科です。この診療科では、骨、関節、靭帯、末梢神経、筋肉など、運動に関わる様々な組織の異常や損傷を診断し、治療を行います。 整形外科が対象とする病気や怪我は多岐にわたります。例えば、骨折や捻挫、打撲、切り傷といった外傷、スポーツによる障害、関節リウマチ、変形性関節症などの慢性的な病気、脊椎疾患、骨粗鬆症、骨腫瘍など、様々な症状に対応します。 治療法としては、保存療法と手術療法があります。保存療法には、安静、投薬、注射、リハビリテーションなどがあり、症状に合わせて適切な方法が選択されます。手術が必要な場合には、骨折の整復固定術、関節鏡手術、人工関節置換術など、様々な術式があります。 整形外科は、患者さんの年齢や症状、生活背景などを考慮しながら、日常生活への早期復帰、痛みの軽減、運動機能の改善を目指します。
脳・神経

もやもや病:原因不明の難病

- もやもや病とはもやもや病は、脳の血管に異常が生じる病気です。 私たちの脳は、常にたくさんの酸素を必要としています。酸素を脳に届けるために、心臓から送り出された血液は、太い血管から枝分かれしながら脳全体に行き渡ります。この血管の中で、特に重要な役割を担っているのが「ウィリス動脈輪」と呼ばれる部分です。ウィリス動脈輪は、脳の底部に位置し、まるで環状道路のように主要な血管を繋いでいます。 もやもや病では、このウィリス動脈輪の周辺にある血管が、狭くなったり詰まったりしてしまいます。すると、脳の細胞に十分な血液が行き渡らなくなり、様々な症状が現れます。 私たちの体は、不足した血液を補おうとする働きがあります。そのため、もやもや病になると、脳は細い血管を新たに作り出して、血液を届けようとします。しかし、この新たに作られた血管は非常に脆く、破れやすいという特徴があります。 この脆い血管は、まるで煙や霧のように見えることから、「もやもや血管」と呼ばれ、病名もこの特徴的な血管の姿に由来しています。もやもや血管は、脳血管造影検査という特殊なレントゲン検査を行うことで、確認することができます。
外科

医療現場で使われる略語:オルトってなに?

病院で働く医療従事者たちは、患者さんとのやり取りの中で専門的な医療用語を用いる一方で、医師や看護師同士では、より簡潔な言葉を使って情報交換を行う場面が多く見られます。これは、医療現場の慌ただしい環境下において、迅速かつ円滑なコミュニケーションを図るための工夫の一つと言えるでしょう。例えば、内科を指す「内科的疾患」を「ないかの病気」と表現したり、「外科手術」を「げかしゅじゅつ」と略したりすることは、日常的に耳にする会話の一例です。このように、診療科名を短縮して伝えることで、忙しい業務中でもスムーズに情報共有が行われ、患者さんへの対応が遅れることなく、より質の高い医療サービスの提供につながると考えられています。
脳・神経

重症筋無力症:体の信号の異常が招く筋力低下の謎

- 重症筋無力症とは重症筋無力症は、体の筋肉が異常に疲れやすく、力が入りにくくなる病気です。その名の通り、重症化すると日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 この病気は、筋肉を動かす指令を脳から伝える神経と筋肉の接合部である神経筋接合部において、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きが阻害されることで発症すると考えられています。通常、私達が体を動かそうとすると、脳から神経を通じて筋肉へ指令が送られます。この指令を筋肉に伝える役割を担っているのが、神経筋接合部から放出されるアセチルコリンという物質です。ところが、重症筋無力症の患者さんの場合、このアセチルコリンの働きを阻害する物質(抗アセチルコリン受容体抗体)が体内で作られてしまいます。その結果、神経からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなり、筋力低下や疲労が生じると考えられています。具体的には、まぶたが垂れ下がる、ものが二重に見える、うまく話せなくなる、飲み込みにくくなる、首が支えられない、腕が上がらない、呼吸が苦しいなどの症状が現れます。これらの症状は、時間帯や体調によって変動することが多く、朝起きた時は症状が軽くても、夕方や疲れているときには悪化しやすい傾向があります。また、症状が現れる部位や程度は患者さん一人ひとり異なり、同じ症状が続くことは稀です。
外科

失われた歩行を取り戻す義足

- 義足とは義足とは、事故や病気などによって片足または両足の全部または一部を失ってしまった方が、再び歩行できるように、あるいは運動を楽しめるように装着する人工の足のことです。身体の一部を補完するという意味では、眼鏡や入れ歯なども人工装具と言えますが、義足は単なる代替品ではありません。義足は、使用する方の身体機能、生活スタイル、そして目標に合わせてオーダーメイドで作られることがほとんどです。例えば、日常生活で快適に歩きたい、スポーツを楽しみたい、仕事で重い物を持ち上げたいなど、目的や状況は人それぞれです。そのため、義足の素材や形状、関節の仕組みなどは、使用者のニーズに合わせて細かく調整されます。近年では、技術の進歩により、より軽量で耐久性の高い素材が使用されるようになったり、コンピューター制御で動きをサポートする電動義足なども開発されています。これらの技術革新により、義足を使用する方の生活の質は飛躍的に向上しています。義足は、使用する方が再び自分の足で歩ける喜びを感じ、社会に積極的に参加していくための大きな助けとなっています。
目・眼科

見え方の異変に潜む病気:黒内障

- 黒内障とは黒内障は、一時的に視力が低下したり、視野の一部が欠けて見えなくなったりする病気です。多くは片方の目に起こり、まるでカーテンが閉まるように、あるいは墨を流したように視界が暗くなっていくのが特徴です。この症状は、通常数分から数十分で自然に回復します。しかし、まれに数時間続く場合もあり、注意が必要です。黒内障自体は命に関わる病気ではありません。ただし、放置すると失明のリスクがある病気の前兆である可能性があります。例えば、網膜剥離、網膜動脈閉塞症、視神経炎といった病気は、放置すると失明に至る可能性のある病気です。 これらの病気は、初期症状として黒内障が現れることがあります。また、片頭痛に伴って黒内障が起きる場合もあります。 この場合は、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる、ギザギザとした光が見える症状を伴うことがあります。黒内障は、一時的な症状とはいえ、重大な病気のリスクを秘めている可能性があります。そのため、症状が出た場合は自己判断せずに、速やかに眼科を受診し、適切な検査を受けることが重要です。
検査

医療現場の業界用語:ゼク

「ゼク」とは、医療現場で使われる言葉で、「解剖」や「剖検」、「病理解剖」を指す場合に用いられます。亡くなった方の死因を特定したり、病気の原因を詳しく調べたりするために、ご遺体を解剖することを指す言葉です。 医学の進歩や医療の質向上のためには、ご遺体を解剖して、病気の原因や治療法を探求することが欠かせません。解剖によって得られた情報は、将来、同じ病気で苦しむ人を救うことに繋がる可能性があります。 しかしながら、「ゼク」は決して医療従事者にとって軽々しく口にする言葉ではありません。ご遺族にとっては大切な家族を亡くされた直後であり、深い悲しみの中にいることを忘れてはなりません。 医療従事者は、ご遺族に対して解剖の必要性を丁寧に説明し、理解と同意を得ることが重要です。また、解剖を行う際には、故人の尊厳を最大限に尊重し、感謝の気持ちを持って、真摯に向き合わなければなりません。
脳・神経

よくある頭痛、緊張型頭痛とは?

- 緊張型頭痛とは緊張型頭痛は、多くの人が経験するありふれた頭痛の一種です。この頭痛の特徴は、頭全体をぎゅっと締め付けられるような感覚を伴う痛みです。痛みの程度は個人差があり、鈍く感じる程度から、日常生活に影響が出るほど強い場合まで様々です。「まるで帽子をきつく被ったような」「頭の上に重りが乗っているような」と表現されることが多く、分かりやすい例えと言えるでしょう。また、緊張型頭痛は、肩や首のこわばりを伴うことも少なくありません。これらの症状は、デスクワークや長時間のスマホ操作など、同じ姿勢を長時間続けることによって引き起こされる筋肉の緊張が原因と考えられています。ただし、緊張型頭痛は命に関わる病気ではありませんので、過度に心配する必要はありません。しかし、痛みが続いたり、頻繁に起こる場合は、日常生活に支障をきたす可能性があります。我慢せずに医療機関を受診し、適切なアドバイスや治療を受けるようにしましょう。
検査

穿刺:医療におけるその役割と種類

- 穿刺とは穿刺とは、診断や治療を目的として、体外から針を刺し、体内の組織や臓器から液体や細胞などを採取する医療行為です。注射や採血で用いる針よりも太く長い針を用いることが多く、患者さんの状態をより詳しく把握したり、病気の原因を特定したりするために欠かせない検査の一つです。穿刺によって採取されるものは、血液、体液、組織など多岐に渡ります。例えば、胸水や腹水などの体液を採取してその成分を分析することで、感染症やがんなどの病気を診断することができます。また、肝臓や腎臓などの臓器に直接針を刺して組織を採取する生検では、がんの確定診断や病状の進行度を評価することができます。穿刺は、患者さんにとって負担の少ない検査ではありますが、出血や感染などのリスクもゼロではありません。そのため、穿刺を行う際には、事前に患者さんの状態や持病などを十分に確認し、安全に配慮しながら行うことが重要です。また、穿刺後は安静にするように指示が出されることが多く、場合によっては入院が必要となることもあります。穿刺は、現代医療において欠かせない検査の一つであり、患者さんの健康を守る上で重要な役割を担っています。穿刺を受ける際には、医師や看護師から十分な説明を受け、安心して検査を受けるようにしましょう。
目・眼科

眼の構造と機能:前房の役割

眼球は、外界のものを見て認識するために、光を捉えて脳に情報を送る、カメラのような役割を担っています。 その複雑な構造の中で、前房は角膜と虹彩の間に存在する、房水と呼ばれる透明な液体で満たされた空間を指します。 前房は、単なる空間ではなく、眼の健康維持において重要な役割を担っています。 第一に、前房は角膜や水晶体といった眼の組織に栄養を供給し、老廃物を除去する役割を担っています。 房水は、眼球内の代謝を維持するために、これらの組織に必要な酸素や栄養素を運び、不要なものを運び出す役割を担っています。 第二に、前房は、眼球内圧を一定に保つことで、眼球の形状を維持し、視覚機能を正常に保つ役割を担っています。 眼球内圧は、眼球が適切な形状を維持するために必要な圧力で、前房内の房水の量によって調節されています。 第三に、前房は、外部からの衝撃を吸収し、眼球内部の組織を保護する役割を担っています。 前房は、クッションのような役割を果たすことで、外部からの衝撃を和らげ、眼球内部の繊細な組織を守っています。 このように、前房は、その存在が眼球の健康維持に大きく貢献しています。
検査

生体組織診断:病気の真相に迫る顕微鏡検査

- 生体組織診断とは生体組織診断とは、患者さんの体から採取した組織の一部を顕微鏡などで詳しく調べることで、病気の原因や状態を明らかにする検査方法です。 例えるならば、皆さんは名探偵シャーロック・ホームズをご存知でしょうか? ホームズが虫眼鏡を使って事件の手がかりを探すように、医師は顕微鏡を使って病気の手がかりを探します。具体的には、手術で患部を切除したり、内視鏡を使って組織の一部を採取します。採取した組織は特殊な方法で処理され、薄くスライスされてプレパラートと呼ばれる観察用の試料となります。このプレパラートを顕微鏡で観察することで、組織や細胞の形や状態を詳しく調べることができます。生体組織診断によって、がん、炎症、感染症など、様々な病気を正確に診断することができます。 また、がんの場合には、がんの進行度合いや種類を特定することも可能です。 これらの情報は、適切な治療法を選択するために非常に重要となります。生体組織診断は、病気の診断に欠かせない重要な検査方法と言えるでしょう。
脳・神経

硬膜下血腫:頭部外傷後のリスク

硬膜下血腫は、頭蓋骨と脳の間にある硬膜という膜と、脳の表面を覆うくも膜の間に血液が溜まる病気です。 私たちの頭蓋骨と脳の間には、脳を保護するために硬膜とくも膜という二つの薄い膜があります。硬膜下血腫は、この二つの膜の間に血液が流れ出て溜まってしまうことで起こります。 血液が溜まることで脳が圧迫され、様々な神経症状が現れます。症状は、頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害、半身麻痺など様々です。 硬膜下血腫は、交通事故や転倒など、頭を強く打った際に発症することが多いです。特に、高齢者は脳が萎縮し、硬膜とくも膜の間が広がりやすくなっているため、軽い衝撃でも発症するリスクが高くなります。 硬膜下血腫は、早期に発見し適切な治療を行えば、多くの場合後遺症を残さずに回復することができます。そのため、頭を強く打った後、少しでも異常を感じたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。
その他

理学療法:身体の機能回復を目指す治療法

- 理学療法とは病気、怪我、加齢などが原因で、身体に障害を持つ方がいらっしゃいます。このような方々に対して、失われた身体機能の回復を支援する治療法、それが理学療法です。理学療法では、まず患者様一人ひとりの身体の状態を詳しく評価することから始めます。具体的には、関節の動きや筋肉の強さ、歩行能力、姿勢などを細かく検査します。そして、日常生活における困りごとなどを伺いながら、患者様の状態や目標に合わせた治療計画を立てていきます。治療計画に基づき、運動療法や物理療法といった様々な手法を用いて、身体機能の回復を目指します。運動療法では、関節の動く範囲を広げたり、筋力や持久力を高めたりする運動を行います。物理療法では、温熱や電気、光線などの物理的な刺激を用いて、痛みや炎症を抑えたり、組織の修復を促進したりします。理学療法の最終的な目標は、患者様が日常生活を自分らしく送れるようにサポートすることです。歩く、立つ、座るといった基本的な動作の回復はもちろんのこと、仕事や趣味など、患者様が望む活動に再び参加できるよう、身体機能の改善だけでなく、精神的なケアにも力を入れています。
目・眼科

アディー症候群:その症状と治療法

- アディー症候群とはアディー症候群は、眼と神経に影響を与えるまれな病気です。 多くの場合、左右どちらか一方の目にのみ症状が現れ、視力に影響が出ることもあります。-# 原因と症状この病気は、瞳孔の収縮をコントロールする神経がダメージを受けることで発症します。瞳孔は眼球の中心にあり、カメラのレンズのように光を調節する役割を担っています。健康な目では、明るい場所では瞳孔が小さく収縮し、暗い場所では大きく広がります。 これは、周囲の明るさに応じて瞳孔を通過する光の量を調整し、鮮明な視界を保つために重要な機能です。しかし、アディー症候群を発症すると、損傷を受けた神経は瞳孔を正しく収縮させることができなくなります。 そのため、患側の瞳孔は健常な側の瞳孔よりも大きくなり、光が当たってもすぐに反応しなくなります。また、近くの物を見るときに、両方の目でピントを合わせる機能(調節力)にも影響が出ることがあります。-# 診断と治療アディー症候群は、眼科医による診察と検査によって診断されます。 多くの場合、特別な治療法はありませんが、症状を和らげる方法はいくつかあります。例えば、明るい場所ではサングラスをかけることで、まぶしさを軽減することができます。 また、老眼鏡を使用することで、近くの物が見えにくくなる症状を改善できる場合があります。アディー症候群は進行性の病気である場合もありますが、多くの場合、視力に深刻な影響を与えることはありません。 気になる症状がある場合は、早めに眼科を受診し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
検査

剖検:死をみつめ、医療を学ぶ

- 剖検とは何か剖検とは、亡くなった方の身体を解剖し、病気の原因や経過を詳しく調べる医療行為です。亡くなった方の病気について、より深く理解するために実施されます。医学の分野では病理解剖とも呼ばれ、病気の診断や治療法の改善に役立てられています。剖検では、亡くなった方が生前にどのような病気を患い、どのように病気が進行したのか、治療は適切であったのか、亡くなった直接の原因は何かなどを明らかにします。具体的には、身体の外側から観察した後、開胸や開腹を行い、臓器の大きさや形、色、硬さなどを調べます。さらに、顕微鏡で組織や細胞を観察することで、病気の詳しい状態を把握します。剖検は、亡くなった方の家族の承諾を得た上で、医師の依頼に基づき、病理医とよばれる専門の医師によって行われます。剖検の結果は、ご家族に説明され、病気の診断や治療法の改善に役立てられます。しかし、剖検はあくまでも医学的な手続きであり、宗教的な儀式ではありません。そのため、剖検の実施については、ご家族の意向を尊重することが重要です。
外科

骨折のサイン? 意外な場所に感じる痛み「介達痛」

- 介達痛とは介達痛は、怪我をした場所を直接触れた時に感じる痛みとは異なる、少し変わった痛みのことを指します。骨折を例に考えてみましょう。例えば、足の指の骨が折れたとすると、当然ながら骨折した指を触れば鋭い痛みが走ります。これは誰もが経験する自然な反応です。しかし、介達痛の場合、骨折した指を直接触れなくても、踵や足の甲など、離れた場所を軽く押しただけで骨折部に痛みが生じることがあります。まるで、本来の痛みが別の場所に転移したかのようです。では、なぜこのような不思議な現象が起こるのでしょうか?これは、骨が折れた際に周囲の神経や組織も同時に傷ついてしまうためだと考えられています。骨折という衝撃は、骨だけに留まらず、その周辺にも広がり、神経や血管、筋肉などにダメージを与えます。その結果、本来は痛みを感じないはずの場所でも、神経を介して骨折部分の痛み信号が脳に伝わり、あたかもその場所で痛みが発生しているかのように感じてしまうのです。介達痛の発生メカニズムにはまだ不明な点も多いですが、怪我の程度や個人差など、様々な要因が影響すると考えられています。
脳・神経

不随意運動:意志とは無関係に起こる体の動き

- 不随意運動とは?私たちは普段、歩く、物を掴む、言葉を話すといった動作を自分の意思で行っています。このような動作は、脳からの指令が神経を通じて筋肉に伝わることで成り立っています。しかし、中には自分の意思とは関係なく、意図せずに体が動いてしまうことがあります。これが「不随意運動」です。不随意運動には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、心臓の鼓動や消化器官の運動のように、私たちが意識することなく、生命維持のために自然と行われているものです。これらは自律神経と呼ばれる神経が調節しており、生きていく上で欠かせないものです。もう一つは、本来は自分の意思でコントロールできるはずの体の動きが、思い通りに動かなくなってしまうものです。例えば、手足が震えたり、顔が引きつったり、首が傾いたりといった症状が現れます。これらの不随意運動は、病気や障害、薬の副作用などが原因で起こることがあります。具体的には、パーキンソン病や脳卒中、ジストニア、薬剤性パーキソニズムなどが挙げられます。不随意運動の大きな特徴は、意識的に止めようとしても、なかなか止めることが難しいという点です。症状が軽い場合は日常生活に支障がないこともありますが、重症化すると日常生活に大きな影響を及ぼす可能性もあります。そのため、原因に応じた適切な治療が必要となります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
検査

ガストロ検査:消化管を視る検査

「ガストロ」という言葉を耳にしたことがありますか? 病院で耳にすることはあっても、日常生活ではあまり馴染みがないかもしれませんね。 「ガストロ」は、正式には「ガストログラフィン」と呼ばれるお薬を使った検査のことを指します。 「ガストログラフィン」は、バリウムのようにレントゲン写真に写りやすい性質を持つ液体で、これを飲むことで、レントゲン写真に消化管がはっきりと写し出されるのです。 つまり、「ガストロ検査」とは、「ガストログラフィン」を使って、食道、胃、十二指腸などの消化管の状態を詳しく調べる検査のことを言います。 この検査では、消化管の形や動きを観察することで、潰瘍やポリープ、腫瘍などの病気がないか、また炎症が起きていないかなどを調べることができます。 「ガストロ」という言葉は、医療現場では日常的に使われていますが、一般的にはあまり知られていない言葉の一つと言えるでしょう。
目・眼科

難病:カーンズ・セイヤー症候群を知る

- カーンズ・セイヤー症候群とは?カーンズ・セイヤー症候群は、眼球の動きをコントロールする筋肉や、視力に重要な役割を果たす網膜という部分に異常が生じる病気です。 私たちの体を作っている細胞の一つ一つには、エネルギーを作り出す工場のような役割を持つ「ミトコンドリア」という小さな器官が存在します。カーンズ・セイヤー症候群は、このミトコンドリアの働きが、遺伝子の変化によって低下してしまうことが原因で起こります。ミトコンドリアは、特に多くのエネルギーを必要とする臓器、例えば心臓、筋肉、脳などに多く存在します。カーンズ・セイヤー症候群では、眼球の動きや視力に関わる組織でミトコンドリアの機能が低下するため、眼球運動障害や網膜の異常といった症状が現れると考えられます。この病気は、10代で発症することが多いものの、非常にまれな病気であるため、診断が難しい場合もあります。また、現在のところ、カーンズ・セイヤー症候群は、親から子に遺伝する病気ではないと考えられています。そのため、家族に患者さんがいる場合でも、その家族が必ずしもこの病気を発症するわけではありません。
検査

腰痛の診察室:ラセーグ徴候って何?

- ラセーグ徴候とは腰痛には様々な原因が考えられますが、その中でも腰椎椎間板ヘルニアは、激しい痛みやしびれを引き起こす代表的な病気の一つです。腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッションの役割を果たす椎間板の一部が、何らかの原因で飛び出してしまい、神経を圧迫してしまうことで起こります。この腰椎椎間板ヘルニアを診断する上で、重要な検査の一つにラセーグ徴候があります。ラセーグ徴候は、腰から足にかけて伸びている坐骨神経の異常を調べる検査です。検査は、患者さんをベッドに仰向けに寝かせた状態で行います。医師が患者さんの片方の足をゆっくりと持ち上げていきます。もし、腰椎椎間板ヘルニアなどで坐骨神経が圧迫されている場合は、太ももの裏側からふくらはぎにかけて痛みやしびれが出現します。これがラセーグ徴候です。ラセーグ徴候は、腰痛の原因を特定する上で重要な手がかりとなります。しかし、ラセーグ徴候が出たとしても、必ずしも腰椎椎間板ヘルニアであるとは限りません。他の病気の可能性もありますので、医師の診察と、レントゲンやMRIなどの画像検査を組み合わせて、正確な診断を行う必要があります。
検査

健康診断のすすめ

メディカルチェックとは、病気の芽を早期に見つけたり、現在の体の状態を正しく知るために行う、一般的な医学検査のことを指します。健康診断と呼ばれることも多いですが、健康診断は会社や学校で皆が一緒に受けるものを指す場合があり、個人が自分の意思で受ける場合も含めた広い意味ではメディカルチェックと呼ぶ方がより適切と言えるでしょう。 メディカルチェックには、身長や体重、血圧、視力、聴力などの基本的な検査に加えて、血液検査や尿検査、心電図、胸部X線検査などが一般的です。検査項目は、年齢や性別、過去の病歴、生活習慣、そして目的などによって異なります。例えば、糖尿病の家族歴がある方は血糖値の検査を、喫煙習慣のある方は肺機能検査を重点的に行うことがあります。 メディカルチェックを受ける最大のメリットは、自覚症状のない病気の早期発見やリスクの把握ができることです。早期に発見することで、治療が容易になるばかりでなく、重症化するリスクを減らし、健康な状態を長く保つことにも繋がります。また、検査結果に基づいて生活習慣の改善など適切なアドバイスを受けることで、病気の予防にも役立ちます。
脳・神経

上肢拳上試験とバレー徴候

- バレー徴候とはバレー徴候は、脳卒中などの病気によって、手足の動きに麻痺が見られる際に、その麻痺の程度を詳しく調べるために行う検査で現れる体の反応のことです。 フランスの神経学者であるジャン・アレクサンドル・バレーの名前から名付けられました。この検査は、患者さんに両腕をまっすぐ前に伸ばしてもらい、目を閉じた状態でその姿勢を保ってもらいます。すると、麻痺のある側の腕は、徐々に下に下がってきたり、手のひらが内側に回ってしまったり、指が開いてしまうといった症状が現れます。これがバレー徴候と呼ばれるものです。なぜこのようなことが起きるのでしょうか?私たちの脳は、体全体に運動の指令を出しています。この指令は、脳から脊髄を通って筋肉へと伝えられます。この脳から脊髄、そして筋肉へと繋がる神経の通り道を錐体路と呼びます。脳卒中などで脳に損傷を受けると、この錐体路がうまく機能しなくなり、運動の指令が正しく伝わらなくなってしまいます。その結果、麻痺が起こったり、バレー徴候のような特有の症状が現れたりするのです。バレー徴候が見られるということは、脳から筋肉への運動指令の伝達経路である錐体路に障害が生じている可能性を示唆しています。 バレー徴候は、脳卒中の早期発見や、麻痺の程度を正確に把握するために重要な手がかりとなるため、医療現場で広く用いられています。
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