総合健康ガイド

救急

人生の最終段階における選択:DNARとは

- 蘇生措置を望まないという意思表示DNAR 人生の終わりは誰にでも訪れます。そして、その最期の瞬間をどのように迎えるか、どのような医療を受けたいかは、個人が尊重されるべき大切な選択です。近年、医療の現場では、人生の最終段階における医療について、患者自身の意思を尊重する考え方が広まっています。 その意思表示の一つが、「DNAR」です。DNARとは、「Do Not Attempt Resuscitation」の略称で、日本語では「蘇生措置拒否」と訳されます。これは、心臓が停止した場合に、人工呼吸器の装着や心臓マッサージなどの心肺蘇生措置を望まないという意思表示です。 DNARは、病気や老いなどにより、人生の最終段階を迎えた患者さんが選択できるものです。延命治療よりも、自然な形で最期を迎えたいと考える場合や、たとえ心臓が停止しても、蘇生によって苦痛を長引かせたくないと考える場合などに選択されます。 ただし、DNARは、あらゆる医療行為を拒否することではありません。痛みを和らげるための緩和ケアや、症状を和らげるための治療は継続して受けられます。DNARはあくまで、心肺蘇生措置だけを拒否する意思表示なのです。 DNARを選択するかどうかは、患者さん自身が深く考え、家族や医師と十分に話し合った上で決定する必要があります。
その他

リビングウィル:あなたの人生の最終章をデザインする

- リビングウィルとはリビングウィルとは、人生の最終段階において、病気や事故などで自らの意思で判断や表明ができなくなった場合に備え、どのような医療やケアを受けたいかを事前に文書に記しておくことです。これは、日本語では「事前指示書」とも呼ばれます。人は誰しも、可能な限り自分らしく人生をまっとうしたいと願っています。しかし、病気や事故は予期せず訪れることがあり、その結果、自力で意思表示をすることが困難になってしまう場合もあります。このような状況下では、家族や医師が、本人の意思を十分に理解できないまま、治療方針を決定しなければならないという、非常に辛い状況に陥ることがあります。リビングウィルを作成しておくことで、万が一、意思表示が困難になった場合でも、本人の尊厳を守り、その人が望む医療やケアを実現することができます。具体的には、延命治療の希望の有無、希望する医療やケアの内容、家族へのメッセージなどを記載します。リビングウィルは、法的拘束力を持つものではありませんが、本人の意思を尊重し、可能な限りその通りに実行するよう、医療関係者や家族に求めることができます。リビングウィルを作成することで、自分らしい人生の最終章を迎え入れる準備をすることができるのです。
心の問題

大切な人を亡くしたあなたへ:グリーフケアのススメ

- グリーフケアとは大切な家族や友人を亡くした時、私たちはその悲しみと喪失感に押しつぶされそうになります。 この深い悲しみは、時として日常生活に支障をきたし、心身に様々な影響を及ぼすこともあります。このような、愛する人を亡くした悲しみ、すなわちグリーフを抱える人を支えるケアのことを、グリーフケアと呼びます。グリーフケアは、悲しみに暮れる人が自身のペースで悲しみを表現し、受け入れ、そしてその先の人生を歩んでいけるように寄り添うためのケアです。 具体的な方法としては、専門家によるカウンセリングや、同じような経験を持つ人同士の交流会への参加、医療従事者や支援団体による情報提供など、様々な形があります。グリーフケアの目的は、悲しみを取り除くことではありません。 亡くなった人との関係性を大切にしながら、その死を受け入れ、悲しみを乗り越え、新たな一歩を踏み出す力を育むことを目的としています。 悲しむことを無理に我慢する必要はなく、自分の気持ちに正直に向き合い、周囲のサポートを受けながら、ゆっくりと時間をかけて心の傷を癒していくことが大切なのです。
呼吸器

在宅酸素療法:自宅で呼吸を支える

- 在宅酸素療法とは 在宅酸素療法とは、慢性的な呼吸器疾患によって息切れなどの症状がある患者さんが、自宅で酸素吸入を行う治療法です。 私たちの体は、呼吸によって肺から酸素を取り込み、血液によって体の隅々まで酸素を運びます。しかし、肺の病気が悪化すると、十分な酸素を取り込むことができなくなり、息切れや動悸、倦怠感といった症状が現れます。 このような状態の患者さんに対して、在宅酸素療法では、自宅で濃縮器という機械を使って酸素を作り出し、鼻に装着したチューブを通して酸素を吸入します。 在宅酸素療法を受けることで、呼吸が楽になり、外出や運動など活動的に過ごすことができるようになります。 また、病院ではなく住み慣れた自宅で治療を受けられるため、患者さんの生活の質(QOL)の向上に繋がると期待されています。
検査

手術の略語:ラパってなに?

皆さんは「ラパ」という言葉を耳にしたことはありますか?もしかしたら、医療ドラマの手術シーンで、医師が「ラパで!」と指示を出す場面を目にしたことがあるかもしれませんね。 実はこの「ラパ」という言葉、正式な医学用語ではなく、医療現場だけで使われている略語なのです。「ラパ」は「腹腔鏡手術」のことを指します。 従来の手術では、お腹を大きく切開して、医師が直接患部を見て手術を行っていました。しかし、腹腔鏡手術では、お腹に小さな穴をいくつか開け、そこから細い管状の器具である腹腔鏡と手術器具を挿入します。腹腔鏡にはカメラがついており、そのカメラが捉えた映像をモニターに映し出すことで、医師はモニター越しにお腹の中を見ながら手術を行うのです。 お腹を大きく切開する必要がないため、従来の手術に比べて傷口が小さく、患者さんの身体への負担が軽減されます。また、術後の痛みも少なく、回復も早いといったメリットがあります。 そのため、近年では様々な手術において、この腹腔鏡手術が広く行われるようになってきました。

意識下で痛みを制御する:ニューロレプト麻酔法

- ニューロレプト麻酔法とはニューロレプト麻酔法は、手術や検査など、医療行為を受ける際に患者さんの意識を保ちながら、痛みを和らげることを目的とした麻酔方法です。従来の全身麻酔のように完全に意識を失うのではなく、患者さんの意識レベルを調整することで、医療行為中の苦痛を最小限に抑えます。この麻酔法の特徴は、神経遮断薬と鎮痛薬という二種類の薬を組み合わせる点にあります。神経遮断薬は、不安や緊張を和らげ、精神的な安定をもたらします。一方、鎮痛薬は、痛みを抑制する働きがあります。この二つの効果を組み合わせることで、患者さんは痛みを感じることなく、リラックスした状態で医療行為を受けることができます。ニューロレプト麻酔法の大きな利点の一つは、患者さんが意識を保っているため、医師の指示に従ったり、質問に答えたりすることができる点です。これは、手術中に医師と患者さんとのコミュニケーションを円滑にし、より安全な医療行為の実施につながります。また、呼吸を自分でコントロールできるため、全身麻酔に比べて呼吸器合併症のリスクが低いという利点もあります。一方で、この麻酔法では、患者さんによっては不安や恐怖を感じやすくなる場合があり、適切な対応が必要となることがあります。また、使用される薬剤によっては、吐き気や眠気などの副作用が現れる可能性もあります。ニューロレプト麻酔法は、患者さんの状態や医療行為の内容に応じて、適切に選択する必要があります。
看護技術

清潔操作の基礎:ドレーピングとは?

- ドレーピングの定義医療現場で行われる手術や、腹水・胸水穿刺、中心静脈穿刺などの医療処置において、患者さんの体を清潔な状態に保つことは非常に重要です。これらの処置では、体内や血管などに針やメスなどの医療器具を挿入するため、細菌などの微生物が体内に入り込むことで感染症を引き起こすリスクがあります。そこで、処置を行う部分を清潔な状態に保ち、感染症のリスクを最小限に抑えるために行われるのが「ドレーピング」です。ドレーピングとは、特殊な滅菌処理が施された布(ドレープ)を用いて、患者さんの体の一部や周囲を覆う行為を指します。ドレープには、手術部位のみに穴が開いたものや、体全体を覆う大きなものなど、様々な種類があります。使用するドレープの種類や覆い方は、手術や処置の内容や部位、患者さんの体格などによって異なります。ドレーピングを行う上で最も重要なことは、処置を行う部分を適切に露出させると同時に、清潔に保つべき範囲(清潔野)を可能な限り広くとることです。細菌は目に見えないため、清潔野が狭いと、気づかないうちに細菌が侵入し、感染症を引き起こす可能性があります。このように、ドレーピングは患者さんの安全を守る上で欠かせない行為と言えます。
外科

手術室の現場:術野ってどんなところ?

患者さんの命を預かる手術は、適切な処置を行うことが求められます。安全かつ確実な手術を行うために手術室では様々な準備が行われますが、中でも「術野」と呼ばれる領域の確保は非常に重要です。 術野とは、手術を行う際に医師が直接操作を行う部位とその周辺領域を指します。手術の内容によってその範囲は異なりますが、清潔に保たれ、必要な器具や材料がすぐに使用できる状態である必要があります。 手術前に、患者さんの体にメスを入れる部分を中心に広範囲を消毒し、滅菌された布で覆います。これは、手術部位を清潔に保ち、細菌による感染症を防ぐためです。また、手術中に血液や体液が飛び散る可能性があるため、医師や看護師は手術用の特別な衣服、マスク、手袋を着用します。 このように、清潔な状態に保たれた術野を確保することで、医師は患者さんの状態に集中し、安全かつ確実な手術を行うことができます。術野は、手術の成功を左右する重要な要素の一つと言えるでしょう。
循環器

命を脅かす心筋梗塞とは?

心臓には、ポンプのように全身に血液を送り出す重要な役割があります。その心臓自身にも、筋肉が働くために必要な栄養や酸素を届ける血管が存在します。 心臓の表面を冠のように覆っていることから冠動脈と呼ばれるこれらの血管が、動脈硬化などによって狭くなったり詰まったりしてしまう病気を、狭心症や心筋梗塞と呼びます。 狭心症は、一時的に冠動脈が狭くなることで、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなる状態です。 胸の痛みや圧迫感、息苦しさなどの症状が現れますが、通常は数分から十数分で治まります。 一方、心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まってしまい、心臓の筋肉の一部が壊死してしまう、より重篤な状態です。 心筋梗塞は、突然死のリスクが高く、迅速な治療が必要となります。 これらの病気は、心臓発作の代表的な原因として知られています。 心臓発作は、心臓の機能が突然停止してしまう状態であり、命に関わる危険な状態です。 心臓発作は、胸の激しい痛みや圧迫感、息苦しさ、吐き気、冷や汗などの症状を伴うことが多く、これらの症状が出た場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
救急

病院の最前線!初療室:その役割と重要性

皆さんは「初療室」と聞いて、どのような場所を思い浮かべるでしょうか。テレビドラマなどで、緊迫した雰囲気の中、医師や看護師が慌ただしく患者に対応する様子を目にしたことがあるかもしれません。 初療室とは、救急車で病院に運ばれてきた患者さんが、最初に診療を受けるための特別な部屋のことです。まさに文字通り、その後の治療方針を決めるための最初の治療が行われる、非常に重要な場所となっています。 初療室には、一刻を争う状態の患者さんの命をつなぐための様々な医療機器が備わっています。人工呼吸器や心臓マッサージ器、電気ショックを与える除細動器など、どれも患者さんの状態を安定させ、次の段階の治療へとつなぐために必要不可欠なものです。 医師や看護師は、初療室に運ばれてきた患者さんの症状を素早く観察し、適切な処置を迅速に行います。 必要な検査を並行して行いながら、治療の優先順位を判断し、場合によっては手術室など他の専門的な部門へ患者さんを搬送することもあります。 このように、初療室は患者さんの命を救うための最前線の場であり、医師や看護師の迅速かつ的確な判断と行動が求められる場所といえるでしょう。
看護技術

ハイケアユニット:高度な医療を提供する場

- ハイケアユニットとはハイケアユニット(HCU)は、入院患者に対して、一般病棟よりも手厚い治療や看護を行うことを目的とした特別な病棟です。一般病棟では対応が難しい、より専門的な医療や看護を必要とする患者のために設けられています。では、具体的にどのような患者さんがHCUに入院するのでしょうか?例えば、外科手術後に集中的な管理が必要な方や、重篤な病気の治療中で、容体が急変する可能性がある方が挙げられます。これらの患者さんは、継続的な監視や、状態に応じた迅速な処置が必要となるため、専門性の高いHCUで治療を受けることが適切と判断されます。HCUは、一般病棟と集中治療室(ICU)の中間に位置付けられる病棟とも言えます。ICUほどは状態が安定していないものの、一般病棟で過ごすには不安がある患者さんにとって、HCUは安心できる医療環境を提供しています。
救急

緊急事態を知らせるコードブルーとは

病院内では、患者さんの安全を守るために、様々な緊急事態に対応する体制が整えられています。その中でも、入院患者さんの容態が急変し、心臓や呼吸が停止するなど、一刻を争う事態に陥ったことを知らせる緊急コールがあります。医療従事者は、この呼び出しによって、患者の生命を救うために、迅速かつ的確な処置を行うことが求められます。 緊急コールの中でも、特に「コードブルー」は、心臓や呼吸が停止した患者さんに対して、病院内で発令される緊急事態の信号です。テレビドラマや映画などで耳にしたことがある方もいるかもしれません。「コードブルー」が発令されると、医師や看護師、その他医療スタッフが患者のいる場所へ急行し、心肺蘇生などの救命処置を直ちに開始します。 「コードブルー」以外にも、病院内には、火災発生を知らせる「火事です」、不審者侵入を知らせる「○○(場所)に不審者」、大規模災害発生を知らせる「災害発生」など、様々な緊急コールがあります。これらの緊急コールは、患者さんだけでなく、病院で働く医療従事者や来院者の安全を守る上でも大変重要な役割を担っています。 緊急コールは、病院内における緊急事態をいち早く関係者に伝えるための重要な合図です。医療従事者は、日頃から緊急コールの内容と対応について理解を深め、緊急事態発生時には、冷静かつ迅速に対応できるよう訓練を重ねています。
その他

地域医療:地域で支える健康と暮らし

- 地域医療とは地域医療とは、病院の中だけで完結するのではなく、地域社会全体で住民の健康を支えていく医療体制のことです。病気になってしまった際に病院で治療を受けることはもちろん重要ですが、地域医療はそれだけにとどまりません。病気の予防や健康増進のための活動、高齢者や障害のある方が住み慣れた地域で安心して生活できるよう支援することなど、幅広い活動を含んでいます。具体的には、健康診断や健康相談などを通じて病気の早期発見や予防に努めたり、保健師や栄養士などが家庭訪問を行い、健康に関するアドバイスや生活習慣の改善に向けたサポートなどを行います。また、リハビリテーションや訪問介護などを通じて、高齢者や障害のある方が自宅での生活を継続できるよう支援する取り組みも地域医療の重要な役割です。地域医療は、病院、診療所、薬局、介護施設などが連携し、それぞれの専門性を生かしながら、住民一人ひとりの健康状態や生活環境に合わせてきめ細やかなサービスを提供していくことが重要です。住み慣れた地域で、住民一人ひとりが安心して健康的な生活を送ることができるよう、地域全体で支え合う体制を作っていくことが、地域医療の目指すところです。
資格・職種

緊急時の命の選別:トリアージナースの役割

大規模な地震や津波、大事故など、私たちの想像をはるかに超えるような災害が発生した場合、病院には同時に多くの傷病者が搬送されてきます。このような切迫した状況下では、医療スタッフ、医療設備、医薬品など、限られた医療資源を最大限に活用し、一人でも多くの命を救うために、治療の優先順位を決定するという、大変辛い選択を迫られることになります。 このような極限状態の中で、治療の緊急性と重要性を判断し、適切な処置を行う場所へと傷病者を振り分ける、極めて重要な役割を担うのが、トリアージナースです。トリアージナースは、災害現場や病院に到着した直後の傷病者に対し、呼吸状態、脈拍、意識レベルなどを素早く評価し、その重症度に応じて、赤、黄、緑、黒の4色のタグを付けます。深刻な外傷や容態が急変し、一刻を争う重症者は赤タグ、骨折など重症ではあるものの、緊急性は低いと判断された場合は黄タグ、軽症の場合は緑タグ、そして、救命の可能性が極めて低い、あるいはすでに亡くなっている場合は黒タグを付けます。 このように、トリアージは、限られた医療資源の中で、より多くの命を救うために、非常に重要な役割を担っています。災害医療の現場では、医師や看護師をはじめとする多くの医療従事者が、それぞれの専門知識と技術を駆使して、全力を尽くしています。その中でもトリアージナースは、まさに命の選別という、極めて困難な任務を遂行する、災害医療の現場における影の立役者と言えるでしょう。
資格・職種

医療現場の橋渡し役:リンクナース

- リンクナースとは病院には、患者さんのケアを直接行う看護師以外にも、様々な専門分野を持つチームが存在します。例えば、栄養管理を行う栄養サポートチーム、患者さんの心のケアを行う精神科リエゾンチーム、感染症の予防と拡大防止を担う感染対策チームなどがあります。これらのチームは、専門的な知識や技術を活かして、患者さんの治療やケアを支える重要な役割を担っています。しかし、専門チームは日々の患者さんのケアに直接携わっているわけではありません。そこで、専門チームと病棟で働く看護師との間をつなぎ、円滑な連携を図るために活躍するのが「リンクナース」です。リンクナースは、専門チームと病棟看護師の橋渡し役として、双方向のコミュニケーションを円滑にし、患者さん一人ひとりに最適な医療とケアを提供できるよう努めます。具体的には、リンクナースは以下のような役割を担います。* 専門チームの活動内容や専門知識を病棟看護師にわかりやすく伝え、理解を深める。* 病棟看護師の意見や要望を専門チームに伝え、患者さんの状況に応じた適切な介入や支援につなげる。* 専門チームと協力し、患者さんや家族への教育や指導を行う。例えば、感染対策チームと連携するリンクナースは、院内感染の予防策に関する最新情報や、患者さん一人ひとりの状態に合わせた感染予防策を、病棟看護師に共有します。また、病棟で感染が疑われる患者さんが発生した場合には、迅速に感染対策チームと連携し、適切な検査や治療が行われるよう調整します。このように、リンクナースは専門チームと病棟看護師をつなぐ重要な役割を担い、患者さんに安全で質の高い医療とケアを提供するために貢献しています。
救急

医療の要となる「二次救急」

「救急医療」と聞いて、皆さんはどのような状況を思い浮かべるでしょうか?交通事故や心筋梗塞といった、一刻を争う重篤な状態を想像する方が多いかもしれません。確かに、このような状況は救急医療が必要となる場合の一例です。しかし、救急医療は症状の緊急度や重症度に応じて、いくつかの段階に分かれています。大きく分けると、初期、二次、三次という段階に分けられ、それぞれの段階に対応した医療機関が地域で役割を分担しています。 まず、初期救急医療は、比較的軽症な患者さんを対象としています。風邪やインフルエンザ、軽い怪我などの場合が該当します。このような場合は、まず地域の診療所を受診し、初期診療を受けることが重要です。診療所では、医師が症状を診察し、必要な検査や治療を行います。そして、症状に応じて、自宅療養や経過観察、あるいは二次救急医療機関への紹介などが行われます。 次に、二次救急医療は、初期救急医療では対応が難しい、より緊急性の高い状態の患者さんを対象としています。骨折、喘息発作、急性腹症などが該当します。このような場合は、二次救急医療機関を受診する必要があります。二次救急医療機関は、初期救急医療機関よりも専門的な医療を提供できる体制が整っており、入院が必要な患者さんにも対応しています。 最後に、三次救急医療は、生命の危機に瀕している重篤な患者さんを対象としています。心肺停止、多発外傷、脳卒中などが該当します。このような場合は、高度な医療を提供できる三次救急医療機関へ、救急車などで搬送されることになります。三次救急医療機関では、集中治療室(ICU)や手術室など、高度な医療設備と専門的な医療スタッフを備えており、24時間体制で重篤な患者さんの救命救急にあたっています。
資格・職種

アメリカの看護師:レジスタードナースとは?

アメリカの医療現場では、様々な資格や役割を持った看護師が働いています。その中でも、患者さんのケアの中心を担い、リーダーシップを発揮するのが「レジスタードナース」です。レジスタードナースは、日本語では「登録看護師」と訳され、アメリカの看護師資格の一つです。 レジスタードナースになるためには、州の認定を受けた看護大学や専門学校で必要な教育を受け、国家試験に合格しなければなりません。日本の「正看護師」に相当する資格であり、病院や診療所、訪問看護ステーションなど、幅広い医療現場で活躍しています。 レジスタードナースの仕事内容は、医師の指示の下、患者さんの状態を観察し、点滴や注射、傷の手当、投薬などの医療行為を行います。また、患者さんやその家族への療養指導や相談、他の医療従事者との連携など、求められる役割は多岐に渡ります。 アメリカの医療現場において、レジスタードナースは、患者さんに安全で質の高い看護を提供するために、重要な役割を担っています。そして、これからも、チーム医療の中心として、その活躍が期待されています。
救急

人生の最終段階における選択:DNARについて

- DNARとはDNAR(ディーエヌエーアール)は、「Do Not Attempt Resuscitation」の略語で、日本語では「蘇生措置を行わないこと」という意味です。これは、病気や老化などによって人生の最終段階にある患者さんに対して、心臓が停止した場合に、人工呼吸器をつけたり心臓マッサージを行ったりするといった、蘇生のための医療行為を行わないという選択のことを指します。DNARは、あくまで心肺蘇生を行うかどうかの選択であり、それ以外の医療行為、例えば、点滴や薬剤の投与、痛みを和らげるための処置などは、引き続き行われます。DNARを選択した場合でも、患者さんの苦痛を和らげ、穏やかに過ごせるように、できる限りの医療行為は継続されます。DNARは、患者さん自身が、自分の最期をどのように迎えたいか、どのような医療を受けたいかを考え、その意思に基づいて選択するものです。ただし、患者さんが自分自身で意思表示できない場合には、家族が患者さんの価値観や希望を尊重し、医師とよく相談した上で、最善の選択をすることが重要になります。
消化器

沈黙の臓器からの警告! 脂肪肝とは?

私たちの体の中で、栄養の処理や貯蔵、有害物質の解毒など、重要な役割を担っている肝臓ですが、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。それは、初期段階では自覚症状が現れにくいという特徴を持つためです。脂肪肝は、この肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積してしまう病気です。自覚症状がないまま放置してしまうと、やがて肝臓で炎症が起こる肝炎や、肝臓が硬くなってしまう肝硬変、さらには肝臓がんといった、命に関わる深刻な病気を引き起こす可能性があります。 脂肪肝は、かつては栄養状態が良すぎる人に多い病気と考えられてきました。しかし近年では、食生活の欧米化や運動不足、アルコールの過剰摂取といった生活習慣の乱れに伴い、脂肪肝の患者数は増加傾向にあります。もはや脂肪肝は、現代社会において注意すべき生活習慣病の一つと言えるでしょう。 脂肪肝は、早期発見、早期治療によって改善が期待できる病気でもあります。健康診断の結果などを参考に、自身の肝臓の状態を把握しておくことが大切です。そして、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、脂肪肝の予防に努めましょう。
その他

変わる医療現場:DPC制度とその影響

- DPC制度とはDPC制度は、診断群分類包括評価制度の略称で、病院における入院医療費の支払い方法の一つです。従来は、患者さんが入院中に受けた検査や治療などの医療行為ごとに費用を積み上げて計算していました。しかし、2003年から導入されたDPC制度では、病気の種類や症状の重さ、診療内容に応じて患者さん一人ひとりを診断群分類(DPC)というグループに分け、1日あたりの定額の費用を請求する仕組みに変わりました。この制度では、入院中に受けた検査や治療などの費用は、あらかじめ決められた1日あたりの定額の中に含まれているとみなされます。つまり、検査や治療を多く行っても、その分の費用が上乗せされるわけではありません。DPC制度の導入は、病院にとっては、患者さん一人ひとりに適切な医療を提供することで、医療の質を維持しながら、経営の安定化を図ることができるというメリットがあります。一方、患者さんにとっては、入院期間中の費用が予測しやすくなるというメリットがあります。しかし、DPC制度の導入によって、病院は入院期間を短縮しようとするのではないか、という懸念の声もあがっています。厚生労働省は、このような懸念を払拭するため、病院に対して、適切な医療を提供するよう指導するとともに、患者さんに対しては、DPC制度の内容について、わかりやすく情報提供を行うよう努めています。
外科

アンプタ:四肢切断という選択

- アンプタとはアンプタとは、医学用語で「切断」または「切除術」を意味し、特に手足に行われる場合を指します。これは、事故や病気など、様々な理由で手足の機能を完全に失ってしまった場合に、患者の生活の質を向上させるための最終手段として選択されることがあります。例えば、重度の外傷や広範囲な熱傷、凍傷、あるいは進行した悪性腫瘍などによって、手足への血流が著しく阻害され、組織が壊死してしまうことがあります。このような場合、壊死した組織は感染症のリスクを高めるだけでなく、体全体に悪影響を及ぼす可能性があります。また、糖尿病などの疾患によって、神経や血管が損傷し、手足の感覚や運動機能が著しく低下することもあります。このような状態が進行すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、潰瘍や壊疽などを引き起こし、切断が必要となるケースもあります。アンプタは、患者の身体的負担が大きい手術であると同時に、精神的な苦痛を伴うこともあります。そのため、医師は患者と十分に話し合い、切断の必要性やリスク、術後のリハビリテーション、義肢装具の使用などについて、丁寧に説明する必要があります。近年では、手術技術の進歩やリハビリテーション方法の多様化により、アンプタ後の社会復帰が可能となるケースも増加しています。しかし、依然として社会的な偏見や生活環境における課題も少なくありません。アンプタを受けた人が、社会の一員として再び活躍できるよう、医療従事者だけでなく、社会全体で支えていくことが重要です。
外科

内鼠径ヘルニアとは?

皆さん、こんにちは。今日は、「お腹の一部が飛び出してくる病気」、「ヘルニア」についてお話します。 誰でもかかる可能性のある、身近な病気です。 今回は、数あるヘルニアの中でも、特に患者数の多い「内鼠径ヘルニア」について、詳しく解説していきましょう。 内鼠径ヘルニアは、太ももの付け根の辺りにある「鼠径部」という場所に、本来お腹の中にあるはずの腸などの臓器が飛び出してきてしまう病気です。 男性に多い病気として知られていますが、女性でも発症することがあります。 内鼠径ヘルニアになると、鼠径部に痛みや違和感を感じたり、腫れが現れたりします。 症状が進むと、飛び出した腸が締め付けられてしまい、激しい痛みや吐き気などを引き起こすこともありますので、注意が必要です。 この病気は、放っておくと悪化する可能性があります。 鼠径部に異常を感じたら、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
その他

医療費と質のバランス:マネジドケアとは

- マネジドケアとは マネジドケアとは、医療費の増加を抑えつつ、加入者への医療サービスの質を向上させることを目的とした医療保険の仕組みです。従来の医療保険では、医療機関が自由に診療を行い、その費用を保険者に請求していました。この方法では、医療費が膨らみやすく、医療の質もばらつきが生じる可能性がありました。 そこで登場したのがマネジドケアです。マネジドケアでは、保険者が医療機関と契約し、診療内容や費用を事前に調整します。この調整によって、医療費の抑制と医療の質の向上を図ります。 具体的には、患者が医療機関を受診する際に、事前に保険者に承認を得る必要がある場合があります。また、あらかじめ決められた医療機関ネットワーク内でのみ診療を受けることが条件となっている場合もあります。 このように、マネジドケアは従来の医療保険に比べて患者側にもいくつかの制限が設けられます。しかし、その反面、医療費の負担を軽減できる、質の高い医療サービスを受けられる可能性が高まるなど、患者にとってのメリットも存在します。
救急

緊急室開胸手術:最後の砦

一刻を争う状況下での手術とは、読んで字のごとく、一刻の猶予も許されない緊急事態において行われる手術のことを指します。緊急を要する症例は多岐に渡りますが、その中でも特に、心臓や大血管に問題を抱え、一刻でも早く処置を行わなければ命に関わるような重篤な状態にある患者に対して、緊急室開胸手術が行われることがあります。 通常、手術は、高度な清潔度が保たれ、専門の医療機器やスタッフが揃った手術室という特別な環境で行われます。しかし、緊急室開胸手術は、手術室への移動すら命取りになるような一刻を争う状況下において、患者さんの命を救うための最後の手段として、緊急処置室や集中治療室など、必ずしも手術に適した環境とは言えない場所で実施されます。 緊急室開胸手術は、まさに時間との闘いです。医療チームは、限られた時間の中、迅速かつ的確な判断と処置を求められます。緊急室開胸手術には、高度な技術と経験、そして何よりも、患者さんの命を救いたいという強い意志が求められます。
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