「せ」

泌尿器

突然の尿意に困ったら?:切迫性尿失禁を理解する

- 切迫性尿失禁とは 切迫性尿失禁とは、突然かつ我慢できないほどの強い尿意に襲われ、トイレに駆け込む間もなく尿が漏れてしまう症状を指します。これは、「過活動膀胱」とも呼ばれ、膀胱の筋肉が過剰に収縮してしまうことが主な原因です。 通常、膀胱に尿が溜まってくると脳にその情報が伝わり、私たちは尿意を感じます。そして、トイレに行くまでは膀胱の筋肉がリラックスした状態を保ち、尿が漏れるのを防いでいます。 しかし、切迫性尿失禁の場合、膀胱にまだ十分な量の尿が溜まっていないにも関わらず、膀胱の筋肉が自分の意思とは無関係に収縮してしまいます。その結果、突然の強い尿意に襲われ、トイレに間に合わず尿漏れを起こしてしまうのです。 切迫性尿失禁は、頻尿や夜間頻尿を伴うことが多く、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。症状が重い場合は、外出を控えたり、人と会うことを避けたりするようになり、生活の質が著しく低下してしまうこともあります。
泌尿器

男性に多い病気:前立腺炎について

- 前立腺炎とは 前立腺炎は、男性の体の中に存在する、尿を体外に排出するために重要な役割を果たす前立腺に炎症が生じる病気です。 前立腺は膀胱の下側に位置し、尿道の一部を包むように存在する臓器で、その大きさは栗の実ほどです。この前立腺に細菌が感染したり、様々な原因によって炎症が起こると、前立腺が腫れ上がります。その結果、尿道が圧迫され、排尿に関連する様々な症状が現れます。 具体的には、トイレが近くなる、尿の勢いが弱くなる、排尿後も残尿感がある、夜間に何度もトイレに起きるなどの症状が現れることがあります。また、症状が重い場合は、発熱や腰痛、陰嚢や会陰部の痛みを伴うこともあります。 前立腺炎は、原因や症状、経過によっていくつかの種類に分けられます。そのため、それぞれの患者さんに合った適切な治療法を選択することが重要です。自己判断で市販薬などを服用するのではなく、気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにしましょう。
循環器

生体弁:心臓の働きを助ける天然の代替弁

私たちの体にとって、心臓は休むことなく全身に血液を送る重要な役割を担っています。心臓は複数の部屋に分かれており、それぞれの部屋の間には血液が逆流するのを防ぐための弁が存在します。しかし、加齢や生活習慣病など、様々な原因によって心臓弁が正常に機能しなくなることがあります。弁がうまく開閉しなくなると、心臓は全身に十分な血液を送ることができなくなり、動悸や息切れ、むくみなどの症状が現れます。 このような心臓弁の異常を治療するために、近年注目されているのが「生体弁」です。生体弁は、その名の通り生物の組織を材料にして作られた人工弁の一種です。主に、ウシやブタなどの心臓弁や心膜を特殊な処理を施すことで、人体に適合するように作られています。生体弁は、人工物で作られた機械弁と比較して、血栓ができにくいという利点があります。そのため、血液をサラサラにする薬を服用する必要性が低く、患者さんの負担軽減に繋がります。一方で、機械弁と比べて耐久性が低いため、将来的に再手術が必要となる可能性もあります。 生体弁は、心臓弁の機能が低下した患者さんにとって、生活の質を向上させるための重要な選択肢の一つとなっています。
産婦人科

包括的な性教育の必要性

- 性教育とは何か性教育は、人が生涯を通じて心身ともに健やかに生きていくために必要な、性に関する幅広い知識やスキルを身につけるための教育です。思春期に訪れる体の変化や、性感染症の予防、避妊の方法など、その内容は多岐にわたります。 性教育は、単に性に関する知識を与えることを目的とするのではありません。自分自身の体と心を大切にすること、そして他者を尊重することの大切さを教えることを通じて、子どもたちが自分自身の価値観に基づいて行動できるようになることを目指しています。 例えば、思春期を迎えると、男女ともに体つきが変化し、異性を意識するようになります。性教育では、そうした変化に戸惑うことなく、自分自身の体を受け入れ、肯定的に捉えることを学びます。また、性感染症のリスクや避妊の重要性を理解することで、責任ある行動をとることの大切さを学びます。 さらに、性教育は、性暴力から身を守るための知識やスキルを身につける上でも重要な役割を担っています。自分の体に触れられて嫌だと感じることを、はっきりと言えるようにすること、また、もしも性暴力の被害に遭ってしまった場合に、誰に相談すれば良いのかを知っておくことは、子どもたちが自分自身を守るために必要不可欠です。 このように、性教育は、子どもたちが健全な人間関係を築き、自分の人生を自ら選択し、責任を持って生きていくために欠かせないものです。
その他

全人的苦痛:患者の umfassende つの苦しみ

- 全人的苦痛とは 人生の終わりが近づくと、身体の痛みだけでなく、心や社会とのつながり、そして生きる意味など、様々な苦しみが生じます。このような、人生の終末期における複雑な苦しみを、身体的、精神的、社会的、霊的な側面から捉え、包括的に理解しようとする概念が「全人的苦痛」です。 例えば、末期癌の患者さんを例に考えてみましょう。癌による身体的な痛みはもちろのこと、病気の進行による不安や抑うつ、死への恐怖といった精神的な苦痛も現れます。 さらに、仕事や社会生活の制限、経済的な負担、家族との関係の変化といった社会的な苦痛も、患者さんを苦しめる要因となります。 また、生きる意味を見失ったり、死後の世界への不安を感じたりするなど、霊的な苦悩を抱える方も少なくありません。 全人的苦痛への対応は、単に身体的な痛みを抑えればよいという単純なものではありません。患者さん一人ひとりの背景や価値観を理解し、身体的苦痛の緩和はもちろんのこと、心のケア、経済的なサポート、社会とのつながりの維持など、多角的な視点からのケアが必要です。 残された時間をより良く生きられるよう、患者さんの苦しみを和らげ、寄り添うことが、医療従事者だけでなく、社会全体に求められています。
皮膚科

性器ヘルペス:知っておきたいこと

- 性器ヘルペスとは性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)と呼ばれるウイルスが原因で発症する性感染症の一つです。性器ヘルペスに感染すると、性器やその周辺の皮膚に、痛みを伴う水ぶくれや潰瘍といった症状が現れます。性器ヘルペスの主な感染経路は、性行為です。感染している人の体液や粘膜に触れることで、ウイルスが体に侵入し感染します。具体的には、性器同士の接触だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスによっても感染する可能性があります。性器ヘルペスの厄介な点は、症状が現れずに感染している場合があることです。自覚症状がないまま性行為を行うことで、知らず知らずのうちに相手に感染させてしまう可能性もあります。また、一度感染すると、ウイルスは体内に潜伏し続けます。普段は症状が現れないものの、体調不良やストレスなどによって免疫力が低下すると、再び症状が現れることがあります。これを再発と呼びます。性器ヘルペスの治療法は確立されていませんが、症状を和らげる抗ウイルス薬があります。性器ヘルペスの疑いがある場合や、不安なことがあれば、医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
心の問題

心の深層を探る:精神分析入門

- 精神分析とは何か人間の心は、意識できる部分だけでなく、無意識の領域が広がっていると考えられています。この無意識の領域に隠された過去の経験やトラウマ、抑圧された感情などが、現在の行動や精神状態に影響を与えているという考え方が、精神分析の基本的な考え方です。20世紀初頭に活躍した精神科医、ジークムント・フロイトによって創始された精神分析は、人間の精神生活を理解するための全く新しい視点を提供しました。フロイトは、意識と無意識の相互作用、幼児期の経験の重要性、性的な衝動などが、人格形成や精神的な問題に深く関わっていると主張しました。精神分析では、患者と治療者がじっくりと時間をかけて対話し、患者の自由な連想や夢の内容などを分析することで、無意識の世界を探索していきます。そして、無意識に隠された葛藤やトラウマを意識化することで、症状の改善や人格の成長を目指します。精神分析は、現代の精神医学や心理学に大きな影響を与えただけでなく、文学、芸術、哲学など、幅広い分野にも影響を与えました。フロイトの提唱した「自我」「エス」「超自我」といった概念や、「エディプス・コンプレックス」「幼児性欲」といった考え方は、現代社会においても広く知られています。精神分析は、人間の心の奥深くに迫ることで、私たち自身の存在や心の働きについて、多くの示唆を与えてくれる学問と言えるでしょう。
心の問題

摂食障害:心と体の複雑な関係

- 摂食障害とは摂食障害は、毎日の食事という行為に異常が生じる精神疾患です。 多くの人がダイエットや健康的な食生活に関心を持ちますが、摂食障害は、単に「痩せたい」という願望や、一時的な食べ過ぎとは大きく異なります。この病気の特徴は、自分の意志で食行動をコントロールすることが難しくなる点にあります。 食べても食べても満たされない、逆に、食べることが怖くて仕方がないなど、摂食に関連した苦痛や不安が強くなり、日常生活に支障をきたすようになります。 その結果、体重の増減だけでなく、身体的な健康にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。 例えば、栄養不足による貧血や低体温、ホルモンバランスの乱れなどが起こりやすくなります。 また、精神面でも、うつ病や不安障害などを併発するケースも見られます。摂食障害は決して特別なものではなく、年齢や性別を問わず、誰にでも発症する可能性があります。 もし、自分自身や周りの人が摂食障害かもしれないと感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。
その他

成人期とは?年齢や定義、変化について解説

- 成人期の定義人は誰でも、長い年月をかけて子供から大人へと成長していきます。そして、心も体も十分に成長した状態を「成人」と呼びます。これは単に年齢で決まるものではなく、社会的な責任や役割を担うことができる状態を指します。一般的には、学校を卒業して働き始めたり、一人で生活を始めたりする時期を、大人の仲間入りと捉えることが多いでしょう。結婚や出産といった、人生の大きな転機を迎える時期を成人とする考え方もあります。しかし、「成人」の定義は時代や文化、そして個人によって大きく変わる曖昧なものです。例えば、昔は二十歳になれば大人として認められる風潮がありましたが、現代では社会構造の変化とともに、必ずしもそうとは言えなくなっています。さらに、法律上の成人年齢と、精神的な成熟度合いが一致しない場合もあるでしょう。経済的な自立や、自分の行動に責任を持つといった、目に見えない要素も成人期を考える上で重要な要素となります。このように、成人期の定義は一筋縄ではいきません。大切なのは、年齢にとらわれず、社会の一員としての自覚を持ち、周りの人と協力しながら、より良い社会を築いていくことと言えるでしょう。
その他

成人期とは:年齢や定義、変化を解説

- 成人期の定義成人期とは、一般的に心身ともに成長が終わり、大人として認められる時期のことを指します。 これは、子どもから大人への移行期であり、社会の一員として、責任ある行動や自立した生活が求められるようになります。 しかし、成人期の定義は一概には決まっておらず、様々な分野によって捉え方が異なります。医学の分野では、身体的な成長がほぼ完了し、生殖機能が成熟する時期を成人期と定義することがあります。法律的な観点では、選挙権や飲酒、喫煙、婚姻など、一定の権利や行為が認められる年齢を成人年齢と定めています。 社会的な視点では、就職や結婚、出産など、社会人としての役割や責任を担うようになる時期を成人期と捉えることが多いでしょう。文化的な観点からは、それぞれの文化圏や社会の伝統や慣習に基づいて、成人式などの儀式や通過儀礼を経て、成人として認められることもあります。このように、成人期は多角的な視点から定義され、明確な線引きがあるわけではありません。成人期は、単なる年齢による区切りではなく、生物学的な発達、法的・社会的な責任、文化的な認識など、様々な要素が複雑に絡み合って構成されていると言えるでしょう。
小児科

先天性股関節脱臼:赤ちゃんの股関節の病気

- 先天性股関節脱臼とは?生まれたばかりの赤ちゃんの股関節は、骨盤の受け皿となる部分(臼蓋)と太ももの骨(大腿骨)の先端にある丸い骨(大腿骨頭)が組み合わさってできています。先天性股関節脱臼とは、この大腿骨頭が臼蓋から外れてしまっている状態を指します。医学用語では「先天性股関節脱臼」または「発育性股関節形成不全」とも呼ばれます。この状態は、股関節を形成する骨や軟骨が十分に発達していない、または正常な位置にないために起こります。赤ちゃんの骨はやわらかく、成長の過程で形が変わっていくものですが、先天性股関節脱臼の場合、股関節の形が不安定なために、大腿骨頭が臼蓋から外れやすくなっています。先天性股関節脱臼は、女の子に多く見られ、男の子の7~8倍の発生率です。これは、女の子の方が骨盤の成長が遅く、股関節が不安定になりやすいことが理由の一つと考えられています。また、左右どちらかの股関節に起こることもありますが、左側に多い傾向があります。これは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中で、左側を下にしていた場合、左の股関節に負担がかかりやすいためと考えられています。先天性股関節脱臼は、早期に発見し、適切な治療を行うことで、ほとんどの場合、後遺症を残さずに治すことができます。そのため、赤ちゃんの股関節に異常がないか、定期的に健診を受けることが重要です。
心の問題

精神病集中治療室:心の危機に対応する専門施設

精神病集中治療室(せいしんびょうしゅうちゅうちりょうしつ)とは、精神科領域における集中治療室のことを指します。この病棟は、精神科の症状が重篤化し、他の患者さんや医療従事者、または自身の安全を脅かす可能性があるなど、緊急性の高い状態にある患者さんを受け入れるための特別な施設です。 具体的には、自傷行為や他害行為の危険性が高い、興奮状態が激しくコントロールが困難である、意識障害を伴い点滴などの医療行為が必要である、といった患者さんが入院となります。このような患者さんに対しては、専門の医師、看護師、薬剤師、精神保健福祉士などがチームを組んで、集中的な治療とケアにあたります。 精神病集中治療室の目的は、患者さんの症状を早期に安定させ、安全を確保すること、そして、一日も早く通常の精神科病棟に移れるようにサポートすることです。そのため、患者さんの状態に合わせて、薬物療法、精神療法、環境調整などが総合的に行われます。 精神病集中治療室は、精神科医療において非常に重要な役割を担っており、患者さんが安心して治療を受けられる環境を提供しています。
泌尿器

加齢とともに増加?知っておきたい前立腺肥大症

- 前立腺肥大症とは前立腺肥大症は、中高年の男性によくみられる病気の一つです。年齢を重ねるにつれて、男性の体では尿を体外に排出する際に重要な役割を担う前立腺と呼ばれる臓器が徐々に大きくなっていくことがあります。この現象を前立腺肥大症と呼びます。前立腺は膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り囲むように存在しています。このため、前立腺が肥大すると、ちょうどみかんの皮を圧迫するように、尿道が圧迫されてしまいます。その結果、尿の通り道が狭くなり、様々な排尿トラブルを引き起こす可能性があります。具体的には、尿の勢いが弱くなる、排尿後も尿が残っている感じがする、夜間に何度もトイレに行きたくなるなどの症状が現れます。これらの症状は日常生活に支障をきたすだけでなく、放置すると膀胱結石や腎機能障害などの合併症を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。前立腺肥大症は、加齢以外にも、遺伝や食生活、生活習慣などが関係していると考えられています。日頃からバランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、生活習慣の改善に努めることが大切です。また、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
泌尿器

男性の体を守る!前立腺の役割とは?

今回は、男性にとって大切な臓器である「前立腺」についてお話していきます。 「前立腺」という言葉は、あまり馴染みがないかもしれません。しかし前立腺は、男性の健康に大きく関わっている臓器です。 前立腺は、膀胱のすぐ下、直腸の前に位置する、クルミ程度の大きさの臓器です。 この臓器は、精液の一部である「前立腺液」を作り出すという、大切な役割を担っています。 前立腺液は、精子を元気に保ち、受精しやすくする働きがあります。 つまり、前立腺は、男性が父親となるために、なくてはならない臓器と言えるでしょう。 今回の解説を通して、前立腺の役割や重要性について、一緒に理解を深めていきましょう。
歯科・口腔

意外と知らない!舌下腺の役割

皆さんは、「唾液腺」と聞いて、どんなものを思い浮かべるでしょうか?食べ物を口に入れた時に、耳の下あたりが少し痛くなる経験をしたことがある人は、それが「耳下腺」という唾液腺であることを知っているかもしれません。 実は、私たちの口の中には、唾液を分泌する大きな臓器である「大唾液腺」が3つも存在しています。食べ物をスムーズに飲み込むのを助けるだけでなく、消化を助けたり、お口の中を清潔に保ったり、虫歯を防いだりと、唾液は私たちの健康にとって、とても重要な役割を担っています。 今回は、3つある大唾液腺のうちの一つ、「舌下腺」について詳しく解説していきます。舌下腺は、他の2つの唾液腺と比べて少し特殊な性質を持っています。一体どんな働きをするのか、どこに位置するのか、これから一緒に見ていきましょう。
呼吸器

聴診器なしでも聞こえる? 喘鳴とその意味

- 喘鳴とは喘鳴とは、呼吸をする際に、空気の通り道である気道が狭くなることで発生するヒューヒュー、ゼーゼーといった異常な音のことを指します。まるで笛を吹くような音や、猫が喉を鳴らすような音に例えられることもあります。この音は、聴診器を使わなくても、耳を患者の背中や胸に近づけるだけで聞こえることもあります。なぜこのような音が発生するのでしょうか。それは、気道が狭くなると、空気がスムーズに通過することができなくなり、乱れてしまうためです。 空気の通り道の壁が炎症を起こして腫れ上がったり、痰や異物が詰まったりすることで、気道が狭くなることがあります。喘鳴は、特に息を吐く際に顕著に聴こえる場合が多いですが、息を吸う際に聴こえる場合もあります。 喘鳴が現れる病気には、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、気管支炎、心不全など、様々なものが考えられます。 したがって、喘鳴が聞こえる場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
呼吸器

咳のメカニズムと役割

咳とは、空気の通り道である気道に、異物や刺激物が入り込んだり、気道自体に炎症が起こったりした際に、それを体外へ排出するために反射的に起こる反応です。 私たちは普段、無意識のうちに呼吸をしていますが、咳をするときには、まず息を大きく吸い込みます。そして、声門と呼ばれる喉仏の奥にある空気の通り道を閉じ、胸やお腹の筋肉を収縮させて胸腔内圧を高めます。最後に、閉じられていた声門を勢いよく開くことで、気道内の空気とともに、異物や刺激物を体外へ吐き出すのです。 咳は、健康な人でも、空気中の埃や小さな虫などを吸い込んでしまった際に起こることがあります。また、風邪やインフルエンザなどの感染症、アレルギー反応、喫煙、喘息、肺気腫、肺がんといった病気の症状として咳が出ることもあります。咳が長引いたり、症状が重い場合には、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
耳鼻科

舌根沈下:睡眠時無呼吸症候群との関係

- 舌根沈下とは私たちの口の中に存在する舌は、食事をする際に食べ物を喉の奥に送り込んだり、言葉を話す際に複雑な動きをしたりと、重要な役割を担っています。舌の中でも、特に奥まった部分を舌根と呼びますが、この舌根が重力によって喉の奥(医学用語では咽頭と呼びます)に沈み込んでしまう状態を -舌根沈下- と言います。本来、舌は口の中に位置しているものですが、舌根沈下が起こると、気道の一部が塞がれてしまい、スムーズな呼吸を妨げてしまうことがあります。特に、睡眠中は体の筋肉が弛緩してしまい、起きている時に比べて舌を支える力が弱くなるため、舌根沈下が起こりやすくなります。舌根沈下は、睡眠時無呼吸症候群の原因の一つとしても知られています。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まってしまう、あるいは呼吸が浅くなってしまう病気です。舌根沈下によって気道が狭くなることで、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる可能性があります。舌根沈下の症状としては、大きないびき、日中の眠気、起床時の頭痛などが挙げられます。これらの症状が見られる場合は、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
循環器

全身の血管抵抗:全身末梢血管抵抗とは?

- 全身末梢血管抵抗とは心臓から送り出された血液は、全身に張り巡らされた血管という名の通路を通って、酸素や栄養を体の隅々まで届けます。この血液の流れやすさ、つまり血液が血管壁から受ける抵抗のことを、-全身末梢血管抵抗(SVR)-といいます。イメージしやすいように、水道管を例に考えてみましょう。細い水道管に水を流そうとすると、太い水道管に比べて水は流れにくく、水圧も高くなります。これは、水道管の壁が水の流れに抵抗を与えるためです。血管も同様に、その太さによって血液の流れやすさが変化します。血管が収縮して細くなると、血液は流れにくくなり、心臓はより強い力で血液を送り出さなければなりません。その結果、SVRは上昇し、血圧も高くなるのです。反対に、血管が拡張して太くなると、血液は流れやすくなり、心臓への負担は軽減されます。この場合は、SVRは減少し、血圧は低下します。このように、SVRは血圧を調整する上で重要な役割を担っています。SVRは、自律神経やホルモン、薬物など様々な要因によって変化し、私たちの体は状況に合わせてSVRを調整することで、常に適切な血圧を保っているのです。
呼吸器

喘息について

- 喘息とは喘息は、空気の通り道である気管支に炎症が起こり、気道が狭くなることで、息苦しさや咳などの症状が出る病気です。この炎症は慢性的に続くもので、一時的な風邪などとは異なります。気道が狭くなると、息を吸ったり吐いたりするのが難しくなり、特に息を吐く際に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が聞こえることがあります。これが喘鳴と呼ばれる喘息の特徴的な症状です。咳もまた一般的な症状で、特に夜間や早朝に悪化することがあります。喘息の症状は、発作的に起こることが特徴です。症状がない状態が続くこともあれば、ある日突然、激しい咳や息苦しさに襲われることもあります。発作の引き金となるものは人それぞれで、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛、タバコの煙、気温や湿度の変化、運動などが挙げられます。喘息は、乳幼児期から成人まで、どの年齢でも発症する可能性があります。また、日本を含む先進国で増加傾向にあり、現代では国民病の1つとされています。喘息は完治が難しい病気ですが、適切な治療を続けることで症状をコントロールし、日常生活に支障なく過ごすことが可能です。
検査

目に見えない光の力:赤外線

- 赤外線とは人間の目に見える光を可視光線と呼びますが、光には可視光線の他にも、人間の目には見えない光が数多く存在します。その一つが赤外線です。目には見えませんが、私達の身の回りで幅広く活用されています。赤外線は、電磁波と呼ばれる波の一種です。電磁波は波長の長さによって様々な種類に分けられ、波長の短い方からガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波と呼びます。この中で、赤外線は可視光線よりも波長が長く、電波よりも波長が短いという特徴を持っています。赤外線は、熱を伝える性質があるため熱線とも呼ばれています。私達人間は赤外線を見ることはできませんが、熱として感じることができます。例えば、太陽の光を浴びると暖かさを感じますが、これは太陽光に含まれる赤外線が熱エネルギーを持っているためです。また、暖房器具やこたつ、電気ストーブなども赤外線を利用して温かさを作り出しています。赤外線は、温度を測る体温計や、離れた場所にある機器を操作するリモコン、夜間や霧の中の人や物を撮影する赤外線カメラなど、様々な用途に利用されています。
心の問題

世界と協力:心の健康を守る国際機関

現代社会において、心の健康問題は世界中で重要な課題として認識されています。増加するストレス、社会構造の変化、差別や偏見など、心の健康を脅かす要因は複雑化しており、国際的な連携強化が求められています。 そうした中で重要な役割を担っているのが、1948年に設立された世界精神保健連盟(WFMH)です。WFMHは、世界規模で心の健康問題に取り組む国際機関として、設立以来、世界中の国々と協力し、人々の心の健康を守るための活動を展開してきました。 WFMHの活動は多岐に渡ります。世界保健機関(WHO)や国際連合(UN)といった国際機関と連携し、心の健康に関する政策提言や情報発信を行うとともに、各国政府に対して、心の健康に関する予算 확보や法整備を促しています。 また、WFMHは、心の健康問題に関する啓発活動にも力を入れています。毎年10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定め、世界各地で啓発イベントが開催されます。さらに、インターネットを通じて、心の健康に関する正しい知識や情報を発信し、偏見や差別の解消にも取り組んでいます。 WFMHの活動は、心の健康問題を抱える人々にとって、大きな希望となっています。世界各国が協力し、WFMHを中心に、心の健康問題への理解を深め、より良い支援体制を構築していくことが重要です。
呼吸器

咳だけが続く? 知っておきたい咳喘息

- 咳喘息とは咳喘息は、喘鳴や呼吸困難といった典型的な喘息の症状が現れず、慢性的な咳だけが続く病気です。まるで風邪を引いた後のように、咳がなかなか治らず、通常は8週間以上続きます。咳は、特に夜間や早朝にひどく出ることが多く、日常生活に支障をきたすこともあります。一見すると、ただの風邪と勘違いしてしまいがちですが、咳喘息は気管支に慢性的な炎症が起こっている状態です。風邪の原因となるウイルスなどによる一時的なものではなく、気管支が過敏になり、少しの刺激で咳込んでしまう状態が続いているのです。咳喘息を放置すると、本格的な喘息に移行するリスクもあります。そのため、咳喘息は適切な治療が必要な病気なのです。自己判断で市販の風邪薬などを服用し続けるのではなく、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
循環器

全身の血管抵抗:全末梢血管抵抗とは?

私たちの体を網の目のように巡っている血管は、心臓から送り出された血液を体の隅々まで届けるために欠かせないものです。血液はこの血管の中を絶え間なく流れていますが、その流れは決して淀みなく進むわけではありません。なぜなら、血液の流れを妨げるものが血管の壁にあるからです。これを抵抗と呼びます。 この抵抗は、庭に水をまく際に使うホースとよく似ています。ホースの中を勢いよく水が流れている時でも、ホースの壁によって少なからず流れが妨げられているように、血液もまた血管の壁から抵抗を受けています。 では、この抵抗は一体何が原因で生まれるのでしょうか?それは、血液の粘度と血管の太さ、そして血管の長さという3つの要素が大きく関わっています。 血液がドロドロしているほど、また血管が細く長いほど、血液は流れにくくなります。これは、血液が血管の中をスムーズに流れるためには、ある程度の力が必要になるからです。もしも血管が狭くなれば、血液はより強い力で押し出されなければなりません。 このように、血液の流れと抵抗は密接に関係しており、この抵抗を理解することは、健康な状態を保つ上でとても重要になります。
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