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脳・神経

パーキンソン病:原因と症状を知る

- パーキンソン病とはパーキンソン病は、体を動かす指令を出す脳の神経細胞が徐々に減少していく病気です。具体的には、脳の中心付近にある「黒質」と呼ばれる部分で、ドーパミンという神経伝達物質を作り出す神経細胞が減っていきます。ドーパミンは、運動の滑らかさや正確さを調節する上で重要な役割を果たしています。ドーパミンが不足すると、脳から体にスムーズに指令が伝わらなくなり、パーキンソン病の症状が現れます。パーキンソン病は、世界中で多くの人がかかっている病気で、特に高齢者に見られることが多い病気です。ただし、若い世代でも発症することがあり、これは若年性パーキンソン病と呼ばれています。パーキンソン病はゆっくりと進行する病気であり、症状は初期段階ではほとんど現れません。そして、症状の現れ方や進行の程度は人によって大きく異なります。
脳・神経

上肢拳上試験とバレー徴候

- バレー徴候とはバレー徴候は、脳卒中などの病気によって、手足の動きに麻痺が見られる際に、その麻痺の程度を詳しく調べるために行う検査で現れる体の反応のことです。 フランスの神経学者であるジャン・アレクサンドル・バレーの名前から名付けられました。この検査は、患者さんに両腕をまっすぐ前に伸ばしてもらい、目を閉じた状態でその姿勢を保ってもらいます。すると、麻痺のある側の腕は、徐々に下に下がってきたり、手のひらが内側に回ってしまったり、指が開いてしまうといった症状が現れます。これがバレー徴候と呼ばれるものです。なぜこのようなことが起きるのでしょうか?私たちの脳は、体全体に運動の指令を出しています。この指令は、脳から脊髄を通って筋肉へと伝えられます。この脳から脊髄、そして筋肉へと繋がる神経の通り道を錐体路と呼びます。脳卒中などで脳に損傷を受けると、この錐体路がうまく機能しなくなり、運動の指令が正しく伝わらなくなってしまいます。その結果、麻痺が起こったり、バレー徴候のような特有の症状が現れたりするのです。バレー徴候が見られるということは、脳から筋肉への運動指令の伝達経路である錐体路に障害が生じている可能性を示唆しています。 バレー徴候は、脳卒中の早期発見や、麻痺の程度を正確に把握するために重要な手がかりとなるため、医療現場で広く用いられています。
看護技術

腹臥位のすべて:利点から注意点まで

- 腹臥位とは何か腹臥位とは、簡単に言うと「うつぶせ」の状態を指します。医療現場では頻繁に用いられる体位の一つで、患者さんの背中全体をベッドに密着させ、顔を横に向けて呼吸を確保します。この体位は、手術や治療、検査など、様々な場面で選択されます。例えば、背中や腰の手術の場合、腹臥位にすることで手術部位へのアクセスが容易になります。また、呼吸療法においても、肺の後ろ側の換気を促すために腹臥位が有効な場合があります。ただし、腹臥位は妊婦や心臓に疾患を持つ方など、体勢によっては負担が大きくなってしまう場合もあります。そのため、医療従事者は患者さんの状態をしっかりと見極め、適切な体位を選択する必要があります。腹臥位は医療現場において、患者さんの負担を軽減し、より安全で効果的な治療や検査を行うために欠かせない体位の一つと言えるでしょう。
目・眼科

視界を曇らせる白内障:その原因と治療法

- 白内障とは?人間の目は、カメラとよく似た仕組みで物を見ています。カメラのレンズに相当するのが「水晶体」と呼ばれる組織です。水晶体は透明で、外から入ってきた光を集め、奥にある網膜というスクリーンに像を結びます。 白内障とは、この水晶体が白く濁ってしまう病気です。加齢と共に水晶体の成分が変化することが主な原因ですが、紫外線や糖尿病などの影響で発症することもあります。 水晶体が濁ると、光がうまく通過できなくなり、網膜に鮮明な像を結ぶことができなくなります。そのため、視界がぼやけたり、霞がかかったように見えたりします。 白内障の症状は徐々に進行していきます。初期には、視力が少し低下する程度で、日常生活に支障がない場合も多いです。しかし、放置すると視力がさらに低下し、日常生活に支障をきたすようになります。 白内障が進行すると、手術が必要になることがあります。手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズを挿入します。近年では、手術の技術も進歩しており、比較的安全に治療を受けることができます。
その他

パンデミック:世界規模の感染症に備える

- パンデミックとはパンデミックとは、ある感染症が国境を越えて世界規模に拡大し、多くの人が罹患する可能性がある状態を指します。これは、単に感染者数が多いということではなく、地理的に広範囲にわたって感染が拡大している点が重要です。歴史を振り返ると、人類は幾度となくパンデミックに襲われてきました。14世紀にヨーロッパで猛威を振るったペストや、1918年から1920年にかけて世界中で流行したスペイン風邪などは、パンデミックの典型的な例です。これらの感染症は、多くの人々の命を奪っただけでなく、社会や経済にも深刻な影響を与えました。近年では、2009年に発生した新型インフルエンザや、2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がパンデミックと認定されました。これらのパンデミックは、私たちの生活に大きな変化をもたらし、医療体制の重要性や国際的な連携の必要性を改めて認識させることになりました。パンデミック発生時には、感染拡大を防ぐために、個人レベルでの予防対策(手洗い、うがい、マスクの着用など)に加え、社会全体で人の移動や集会の制限などの対策を講じることが重要になります。また、ワクチンや治療薬の開発も重要な課題となります。
呼吸器

肺結核:原因、症状、予防法

- 肺結核とは肺結核は、結核菌という細菌が原因で起こる感染症です。結核菌は、主に私たちの呼吸器系、特に肺に感染します。感染すると、咳や痰、発熱といった風邪に似た症状が現れます。これらの症状は比較的軽く、初期段階では見過ごされてしまうこともあります。しかし、適切な治療を行わないと病状が進行し、息切れや胸の痛み、血痰といった深刻な症状が現れることがあります。さらに重症化すると、呼吸困難に陥り、命に関わる危険性も高まります。結核は、空気感染によって広がります。感染者の咳やくしゃみ、つばなどと一緒に結核菌が空気中に飛び散り、それを吸い込むことで感染します。ただし、結核菌は、一度吸い込んだだけで必ずしも感染するわけではありません。結核菌に感染しても、多くの場合、私たちの免疫システムが働き、菌の増殖を抑え込むため、発病に至らないことが多いです。しかし、免疫力が低下している人や栄養状態が悪い人などは、結核菌に感染しやすく、発病するリスクが高いと考えられます。かつて結核は、「国民病」とも呼ばれ、多くの人々が命を落としてきました。しかし、衛生状態の向上や栄養状態の改善、そして効果的な治療法の開発と普及により、現在では発症数は減少傾向にあります。それでも、結核は決して過去の病気ではありません。早期発見・早期治療が重要であり、少しでも気になる症状があれば、医療機関を受診することが大切です。
小児科

はしかについて:症状と予防

- はしかとははしかは、麻疹ウイルスが原因で起こる感染力が非常に強い病気です。このウイルスは、空気中に漂う咳やくしゃみのしぶきを介して、感染者から健康な人にうつります。 感染すると、高熱、咳、鼻水、目の充血などの症状が現れます。さらに、口の中に白い斑点が出て、その後、顔から体全体に赤い発疹が広がっていきます。はしかは、乳幼児や免疫力が低下している人にとって、特に危険な病気です。肺炎、中耳炎、脳炎などの重い合併症を引き起こすことがあり、最悪の場合、命を落とすこともあります。はしかの予防には、ワクチン接種が非常に有効です。はしかのワクチンは、他のワクチンと組み合わせたMR(麻疹・風疹混合)ワクチンとして、乳幼児期に2回接種します。はしかは空気感染で広がりやすいため、周囲の人に移さないように、感染者は外出を控えるなどの対策が必要です。また、はしかを疑う症状が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
小児科

感染力の脅威:麻疹について

- 麻疹とは?麻疹は、麻疹ウイルスが原因で起こる感染症です。このウイルスは、空気中に漂う小さな droplets を吸い込む「空気感染」、咳やくしゃみなどの「飛沫感染」、ウイルスが付着した物に触れる「接触感染」など、様々な経路で感染するため、非常に感染力が強い点が特徴です。感染すると、39度前後の高熱が続き、咳、鼻水、目の充血といった風邪に似た症状が現れます。その後、顔から体全体に赤い発疹が広がり、数日間続くのが特徴です。麻疹は、合併症を引き起こす可能性もある病気です。肺炎や中耳炎といった比較的軽い合併症の他に、脳炎や脳症といった重い合併症を引き起こすこともあり、最悪の場合、死に至ることもあります。しかし、麻疹はワクチンで予防可能な病気です。ワクチン接種を受けることで、麻疹ウイルスに対する免疫を獲得し、感染を防ぐことができます。また、周囲の人がワクチン接種を受けていることで、ウイルスが拡散しにくくなるため、自分だけでなく、周りの人を守ることにもつながります。麻疹は一度流行すると、その感染力の強さから、あっという間に広まってしまう可能性があります。そのため、ワクチン接種が非常に重要となります。
血液

体内を守る警報システム:白血球走化因子

私たちの体は、まるで複雑な迷路のような構造をしています。その迷路の中を常に巡回し、外敵から身を守る勇敢な兵士たちがいます。それが、白血球です。白血球は、細菌やウイルスといった外敵を見つけると、攻撃を仕掛けて私たちの体を守ってくれます。しかし、広大な体の中をどのようにしてパトロールし、外敵を見つけることができるのでしょうか? 実は、白血球には、「白血球走化因子」という特別な信号物質を感知する能力が備わっています。この信号物質は、体内で炎症が起きた際に、その場所から発信されます。例えるならば、火災現場からサイレンが鳴り響くように、炎症部位から白血球走化因子が放出されるのです。 白血球は、この信号物質を頼りに、まるで地図を読むようにして炎症部位へと向かうことができます。そして、信号が強い場所、つまり炎症が最も激しい場所に集まり、集中的に外敵を攻撃します。 このように、白血球走化因子は、白血球を必要な場所に誘導する、いわば「体内の道案内人」のような役割を果たしているのです。この巧妙なシステムのおかげで、私たちの体は、外敵から効率的に身を守ることができるのです。
血液

血液のがん、白血病とは

- 白血病の概要白血病は、血液細胞ががん化する病気です。私たちの体内では、骨の中心部にある骨髄という組織で、血液細胞が作られています。健康な状態では、骨髄で作られた血液細胞は、それぞれ赤血球、白血球、血小板へと成長し、身体の様々な機能を担っています。 赤血球は全身に酸素を運び、白血球は細菌やウイルスから身体を守り、血小板は出血を止める役割を担っています。しかし、白血病になると、骨髄において白血病細胞と呼ばれる異常な細胞が過剰に増殖してしまいます。これらの異常な細胞は、正常に機能しません。そして、骨髄において正常な血液細胞の産生を妨げてしまうのです。その結果、健康な赤血球、白血球、血小板が減少し、様々な症状が現れます。 例えば、赤血球が減少すると、貧血になり、動悸や息切れが起きやすくなります。白血球が減少すると、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。血小板が減少すると、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなったりします。白血病は、原因はまだはっきりとは解明されていませんが、遺伝的な要因やウイルス感染、放射線などが関係していると考えられています。
検査

がん治療の指標:パフォーマンスステータスとは?

- パフォーマンスステータスとはパフォーマンスステータス(PS)とは、患者さんが日常生活をどの程度送れているのか、どの程度自分で行うことができるのかを測るための指標です。これは、がん治療の方針を決める上で非常に重要な要素の一つとなっています。パフォーマンスステータスは、0から4までの5段階で評価されます。* -0- 全く制限なく、病気の前の状態と変わらずに日常生活を送ることができる状態です。* -1- 肉体労働に制限があるものの、身の回りのことは自分ででき、座ってできる仕事や軽い仕事であれば続けることができる状態です。* -2- 身の回りのことは自分でできるものの、仕事をすることはできず、日中の時間帯の50%以上をベッドや椅子の上で過ごしている状態です。* -3- 身の回りのことが自分でできず、介助が必要な状態です。日中の時間帯の50%以上をベッドの上で過ごしています。* -4- 全く身の回りのことができず、常時介護が必要な状態です。このように、数字が小さければ小さいほど、日常生活を自立して行えており、状態が良いことを示しています。パフォーマンスステータスは、治療の効果や副作用の程度、予後などを予測する上で重要な指標となります。また、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、適切な治療法やケアの計画を立てるためにも役立てられています。
脳・神経

脳の橋渡し役:橋

人間の脳は、大きく分けて3つの部分で構成されています。思考や記憶をつかさどる大脳、運動やバランスを調整する小脳、そして生命活動を維持する上で欠かせない役割を担う脳幹です。 脳幹は、呼吸や心臓の拍動、体温調節など、私たちが意識しなくても生きていくために必要な機能をコントロールしています。この脳幹は、さらに中脳、橋、延髄という3つの部分に分かれており、それぞれが重要な役割を担っています。 橋は、その名の通り中脳と延髄の間にある、橋渡しのような役割を担っています。具体的には、大脳からの指令を小脳に伝えたり、逆に小脳からの情報を大脳に伝えたりすることで、運動の調整に関わっています。また、顔の筋肉を動かすための神経や、聴覚や平衡感覚に関わる神経も、橋から出ています。 橋は、睡眠や覚醒のサイクルの調節にも関わっていると考えられています。そのため、橋に損傷が起こると、意識障害や運動麻痺、感覚障害などの深刻な症状が現れる可能性があります。脳幹は生命維持に直結する重要な部位であるため、橋を含む脳幹の働きは、私たちの健康にとって非常に重要です。

バラシクロビル:ヘルペス治療の切り札

- バラシクロビルとはバラシクロビルは、単純ヘルペスウイルス(HSV)や水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)といった特定の種類のウイルスに効果を発揮する抗ウイルス薬です。これらのウイルスは、私たちの体に様々な症状を引き起こす原因となります。例えば、単純ヘルペスウイルスは、口の周りに水ぶくれができる口唇ヘルペスや、性器に痛みを伴う水ぶくれができる性器ヘルペスの原因となります。また、初めてこのウイルスに感染すると、発熱やリンパ節の腫れといった症状が現れることもあります。一方、水痘・帯状疱疹ウイルスは、子供の頃に感染すると水痘(みずぼうそう)を引き起こします。水痘は、全身に痒みを伴う赤い発疹が広がる病気です。大人になってからこのウイルスに感染すると、帯状疱疹(たいじょうほうしん)を発症することがあります。帯状疱疹は、体の片側にピリピリとした痛みと赤い発疹が現れる病気です。バラシクロビルは、これらのウイルスが体の中で増えるのを抑えることで、症状を和らげ、治癒を早める効果があります。口唇ヘルペスや性器ヘルペスの再発を抑える効果も期待できます。
血液

全身に血栓が広がる恐怖:播種性血管内凝固症候群(DIC)

- 播種性血管内凝固症候群(DIC)とは播種性血管内凝固症候群(DIC)は、血液が固まることと出血することが同時に起こる、命に関わる危険性の高い病気です。私たちの体には、血管が傷ついて出血すると、その傷口を塞いで出血を止める働きが備わっています。これは、血液の中に含まれる小さな粒々が集まって、網の様に固まることで起こります。 しかしDICでは、この血液を固まらせる働きと、出血を止める働きのバランスが崩れてしまいます。 体のあちこちの血管の中で、小さな血液の塊が無数にできてしまうのです。 この様子は、まるで種を蒔くように広がることから、「播種性」という言葉が使われています。 そして、このように小さな血液の塊が無数にできることで、血液を固めるために必要な成分が大量に使われてしまい、今度は逆に、出血しやすくなってしまうのです。出血が止まらなくなったり、皮膚に紫色の斑点が出たり、臓器の働きが悪くなるなど、様々な症状が現れます。 DICは、がんなどの病気や、手術、けがなどをきっかけに発症することが多く、緊急の治療が必要となります。
呼吸器

肺炎球菌:知っておきたい身近な細菌

肺炎球菌は、私達の身の回りにあるごくありふれた細菌です。普段は、健康な方の鼻や喉にいても、病気を起こすことはほとんどありません。これは、私達の体が持つ抵抗力で、肺炎球菌の増殖を抑えているからです。しかし、体力が低下したり、免疫力が弱まっている時には注意が必要です。肺炎球菌は、この機会をついて体の中で急速に増殖し、肺炎、髄膜炎、敗血症といった深刻な病気を引き起こす可能性があります。これらの病気は、命に関わることもあります。肺炎球菌は、咳やくしゃみによる飛沫感染で人から人へと広がります。特に、高齢者や乳幼児、免疫力が低下している方は、肺炎球菌による感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。日頃から、手洗いとうがいを徹底し、健康的な生活を心がけることが大切です。
泌尿器

排尿を司る脳と脊髄の働き

- 排尿中枢とは人間の体には、不要になった水分や老廃物を尿として体外に排出する巧妙な仕組みが備わっています。この仕組みにおいて、排尿中枢は司令塔のような役割を担っています。 尿が膀胱に溜まってくると、その情報が感覚神経を通じて脳に伝えられます。排尿中枢は、この情報を受け取り、意識的に尿を出すか、それとも我慢するかを判断します。そして、その指示を脊髄にある排尿中枢へと伝達します。脊髄の排尿中枢は、膀胱の筋肉と尿道括約筋をコントロールする役割を担っています。尿を出すという指令を受けると、膀胱の筋肉を収縮させ、同時に尿道括約筋を弛緩させて尿を体外へと排出します。一方、尿を我慢するという指令を受けると、膀胱の筋肉は弛緩し、尿道括約筋は収縮を維持することで尿の漏出を防ぎます。このように、排尿中枢は脳と脊髄の連携によって、複雑な排尿の過程を巧みに制御しています。この精緻なシステムによって、私たちは日常生活の中で尿意を意識しながら、適切なタイミングで排尿することができます。また、睡眠中など意識がない状態でも、膀胱に尿が溜まると無意識に排尿できるのも、この排尿中枢の働きによるものです。
検査

がん治療の指標:パフォーマンスステータスとは?

- パフォーマンスステータスとは パフォーマンスステータス(PS)とは、患者さんの全身状態を、日常生活動作のレベルに応じて5段階で評価した指標です。 簡単に言うと、PSは、患者さんがどれだけ自分の力で日常生活を送ることができるかを表しています。 食事を自分でとることができるか、服を着替えることができるか、歩くことはできるか、といった日常生活における基本的な動作をもとに、患者さんの状態を客観的に評価します。 この評価は、アメリカの腫瘍学団体ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)によって提唱されました。 PSは、がん患者さんの治療方針を決定する上で非常に重要な要素となります。 例えば、手術に耐えられるだけの体力があるか、抗がん剤治療に耐えられるだけの体力が残っているかを判断する際に、PSが参考にされます。 また、PSは治療の効果や、その後の経過を予測する上でも重要な指標となります。 一般的に、PSが良い患者さんほど、治療の効果が高く、生存期間も長い傾向にあると言われています。
脳・神経

反射:神経疾患を診る窓

- 反射とは私たちが日々何気なく生活する中で、意識することなく、まるで自動的に起こる体の反応があります。熱いものにうっかり触れてしまい、思わず手を引っ込めてしまった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。あるいは、薄暗い場所に足を踏み入れたとき、自然と目が慣れてくるのも経験したことがあるでしょう。こうした意識とは無関係に、外界からの刺激に対して瞬間的に起こる反応のことを「反射」と呼びます。反射は、考えてから行動を起こすよりもはるかに速く、私たちの体を守ってくれる重要な役割を担っています。 例えば、熱いものに手を触れたとき、熱さを感じてから手を引っ込めるまでに時間をかけていたら、大やけどをしてしまうかもしれません。しかし反射によって、私たちは熱さを感じるのとほぼ同時に手を引っ込めることができるため、重傷を負わずに済むのです。反射は、感覚神経、脊髄や脳幹といった中枢神経、そして運動神経が関与した複雑な仕組みによって起こります。熱いものに手を触れた場合を例に考えてみましょう。まず、手の皮膚にある感覚神経が熱さという刺激を受け取ります。この情報は、神経を伝って脊髄や脳幹へと送られます。脊髄や脳幹では、受け取った情報に基づいて、手を引っ込めるという指令を出します。そして、この指令は運動神経を介して筋肉に伝えられ、筋肉が収縮することで、私たちは手を引っ込めることができるのです。このように、反射は私たちが意識することなく、体を守ってくれる非常に重要な機能と言えます。
救急

命を脅かす病態:敗血症とは

- 敗血症とは敗血症は、体の中に侵入した細菌やウイルスなどの病原体に対する体の防御反応が、過剰に起こってしまうことで、自分の体が傷ついてしまう病気です。この病気は命に関わることもあり、迅速な診断と治療が必要です。通常、私たちの体は、外から侵入してきた病原体に対して、免疫の力で戦い、排除しようとします。この免疫の働きによって、私たちは健康な状態を保つことができるのです。しかし、何らかの原因で免疫のバランスが崩れ、過剰に反応してしまうことがあります。敗血症は、この免疫の過剰反応によって、全身に強い炎症が起こり、臓器の機能が損なわれてしまう状態を指します。肺炎や尿路感染症など、最初は局所的な感染症であっても、それが血液の流れに乗って全身に広がってしまうと、敗血症を引き起こす可能性があります。敗血症の症状は、発熱、 chills、心拍数の増加、呼吸数の増加など、風邪やインフルエンザに似た症状がみられることが多く、初期段階での診断が難しい病気です。重症化すると、意識障害や臓器不全などが起こり、命に関わることもあります。そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要になります。
呼吸器

肺の機能を探る:肺拡散能検査とは

- 肺拡散能検査の目的 肺拡散能検査は、肺が空気中から血液中にどれだけ効率的に酸素を取り込み、反対に血液中から肺へ二酸化炭素を排出できるかを調べる検査です。 呼吸をする際には、肺にある小さな空気の袋である肺胞と、その周囲を取り囲む毛細血管の間でガス交換が行われます。肺拡散能検査では、このガス交換がスムーズに行われているかを評価します。 具体的には、患者さんにごく少量の一酸化炭素を含む空気を吸ってもらい、その後に吐く息の中の一酸化炭素濃度を測定します。一酸化炭素は酸素と同様に肺胞から血液中に移動するため、この検査によって肺胞から毛細血管へのガス交換の効率を間接的に知ることができます。 肺拡散能検査は、息切れや呼吸困難などの症状がある場合に、その原因を特定するために重要な役割を果たします。例えば、間質性肺炎や肺線維症などの病気では、肺胞の壁が厚くなったり、炎症を起こしたりすることでガス交換の効率が低下します。そのため、肺拡散能検査の結果が低い場合は、これらの病気が疑われます。 また、肺拡散能検査は、病気の進行状況や治療の効果を判定するためにも用いられます。治療によって肺の機能が改善した場合、肺拡散能検査の結果も改善することが期待されます。
脳・神経

破傷風:静かなる脅威とその予防

- 破傷風とは破傷風は、破傷風菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症です。この細菌は、土や埃の中など、私達の身の回りによく見られます。通常は、傷口を通して体の中に入り込みます。傷は、小さく浅いものから、大きく深いものまで様々ですが、破傷風菌は、傷口の奥深く、酸素が少ない環境で繁殖しやすいため、注意が必要です。破傷風菌は、体の中で毒素を作ります。この毒素は、神経に影響を与え、筋肉を異常に緊張させる作用があります。その結果、様々な症状が現れます。初期症状としては、口が開きにくくなったり、ものを飲み込みにくくなったりすることが挙げられます。さらに症状が進むと、全身の筋肉が硬直したり、痙攣を起こしたりすることもあります。特に、背中や腹部の筋肉が硬直することで、体が弓なりに反り返ってしまうこともあります。破傷風は、重症化すると命に関わる危険性も高く、予防が非常に重要です。予防には、破傷風ワクチンが有効です。乳幼児期に定期接種を受けることで、発症のリスクを大幅に減らすことができます。また、大人になってからも、追加接種を受けることで、効果を維持することができます。万が一、傷を負ってしまった場合には、傷口を清潔に保ち、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
救急

救急医療の現場で:バギングによる救命処置

- バギングとは バギングは、呼吸が止まってしまった患者さんの肺に、手を使って空気を送り込む処置です。「バックバルブマスク」という医療器具を使います。 呼吸が止まることは、人の命に関わる一大事です。バギングは、そのような緊急事態において、患者の呼吸を助けるための非常に大切な処置であり、「用手換気」とも呼ばれます。 バギングを行うのは、主に救急隊員や医師、看護師といった医療従事者です。彼らは、専門的な訓練と知識を活かして、患者さんの状態に合わせて、適切な圧力と頻度で空気を送り込みます。 バギングによって、血液中に酸素を送り込み、二酸化炭素を排出することで、患者さんの呼吸を正常な状態に近づけ、救命の可能性を高めることができます。
看護技術

バギング:人工呼吸の基礎知識

- バギングとはバギングとは、呼吸が止まってしまったり、自力で十分な呼吸ができなくなったりした人の肺に、バックバルブマスクを使って空気を送り込む人工呼吸の方法です。 別名で「用手換気」とも呼ばれ、医療従事者の手によって行われます。バックバルブマスクは、大きく分けて三つの部分から構成されています。まず、患者さんの顔に直接当てて密着させる部分であるマスク。そして、空気を送り込むための袋状の部分。最後に、送り込んだ空気が逆流してしまわないようにするための弁です。 バギングはこのバックバルブマスクを用いることで、効率的かつ確実に、患者さんの肺に必要な空気を送り込むことができるのです。人工呼吸が必要となる状況は、呼吸が完全に停止してしまった場合や、病気や怪我などによって自力で呼吸をすることが難しい場合など、実に様々です。 バギングは、医療現場において、このような緊急事態に瀕した患者さんの命を救うための非常に重要な手段となっています。
血液

臨床現場の隠語?!ハーベーって何?

病院で働いていると、「ハーベー測ってきて」や「ハーベーの数値どうだった?」といった会話を耳にすることがあるかもしれません。この「ハーベー」は一体何を指すのでしょうか?日常会話では聞き慣れない言葉ですが、実は医療現場ではよく使われている言葉なのです。 「ハーベー」は、正式には「ヘモグロビンA1c」と呼ばれる検査値の略称です。 ヘモグロビンA1cは、過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する指標であり、糖尿病の診断や治療効果の判定に非常に重要な役割を担っています。 健康な人の場合、ヘモグロビンA1cの値は一定の範囲内に収まりますが、糖尿病の人は血糖値が高くなるため、ヘモグロビンA1cの値も高くなります。そのため、医療現場では「ハーベー測ってきて」という指示が、患者さんの血糖コントロール状態を把握するために行われるのです。 患者さんとのコミュニケーションを円滑にするためには、専門用語を避けて分かりやすい言葉を使うことが重要です。しかし、医療現場では、簡潔に指示を出したり、情報を共有したりするために、専門用語や略語が頻繁に使われます。今回の「ハーベー」のように、一見分かりにくい言葉であっても、それが何を意味するのか、なぜ使われるのかを理解することで、医療現場でのコミュニケーションをよりスムーズに行うことができるでしょう。
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