PaCO2: 換気の指標
病院での用語を教えて
「PaCO2」って、何 Torr が正常値なんですか?
体の健康研究家
良い質問ですね。PaCO2の正常値は35~45 Torrです。では、この数値は何を表しているかわかりますか?
病院での用語を教えて
えっと…、動脈血中の二酸化炭素の圧力のことですよね?
体の健康研究家
その通りです。さらに詳しく言うと、体の酸塩基平衡を示す指標の一つで、換気の状態を知るために用いられます。正常値より高ければ低換気、低ければ過換気を疑います。
PaCO2とは。
「医学・健康のことば『PaCO2』についてわかりやすく説明します。
PaCO2(読み方:ぴーえーしーおーつー)は、動脈血中の二酸化炭素の圧力を表す言葉で、動脈血二酸化炭素分圧ともいいます。動脈血というのは、心臓から体の各部分へ送られる血液のことです。
このPaCO2は、動脈血液ガス分析装置という機械で測ります。単位はTorr(とる:トルチュエリの略)またはmmHg(みりめーとるえいちじー)を使います。日本では、体内の圧力はTorr、血圧はmmHgで表すことが多いです。ちなみに、世界的にはPa(パスカル)を使うことが多いです。
分圧というのは、その気体がどれだけの圧力で存在しているかを示すものです。圧力の割合は濃度と同じように考えることができます。
例として、1気圧の空気中の酸素で考えてみましょう。酸素の分圧は約160 Torrです。大気圧(1気圧)は760 Torrなので、酸素の濃度は160÷760で計算すると、約0.21つまり21%になります。一方、二酸化炭素は空気中にほとんどないので、分圧は0 Torrです。
【PaCO2は何のために測るのか】
PaCO2は、呼吸が十分にできているかを調べるために使われます。正常な値は35~45 Torrです。また、PaCO2は、体内の酸とアルカリのバランスにも関係しています。
■PaCO2が35 Torrより低い場合
呼吸の回数が多すぎる状態(過換気)を示しています。
原因としては、熱がある、痛い、意識がはっきりしない、感染症にかかっている、代謝性アシドーシスなどを補おうとしているなどが考えられます。
代謝性アシドーシスは、ショックや腎臓の機能低下、中毒などで起こり、体が酸性に傾いた状態です。この状態になると、酸性に傾いた体の状態を正常に戻そうとして、二酸化炭素を必要以上に吐き出すため、過換気になります。
■PaCO2が45 Torrより高い場合
呼吸の回数が少なすぎる状態(低換気)を示しています。
原因は大きく分けて2つあります。
1つは、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など、気道が狭くなってしまい、二酸化炭素を十分に吐き出せない状態になっていることです。
もう1つは、脳から神経を通して筋肉に呼吸の指令がうまく伝わらない状態になっていることです。例えば、呼吸中枢の働きを抑えてしまう麻薬中毒などが代表的な例です。また、フグ毒中毒のように、神経の働きを阻害してしまうテトロドトキシンによる神経障害、筋肉の病気である筋ジストロフィーなども原因として考えられます。
このように、PaCO2は呼吸の状態を知るための大切な指標です。PaCO2の値が正常範囲から外れている場合は、呼吸の回数が増えすぎているのか、減りすぎているのかを判断し、その原因を探ることになります。
PaCO2とは
– PaCO2とは
PaCO2とは、動脈血中の二酸化炭素の圧力を示す数値のことです。「動脈血二酸化炭素分圧」の略称であり、単位はTorr(トル)またはmmHg(ミリメートル水銀柱)で表されます。日本では、一般的に生体内の圧力の表記にはTorrが、血圧の表記にはmmHgが用いられます。PaCO2は、動脈血液ガス分析装置を用いて測定されます。
そもそも「分圧」とは、複数の種類の気体が混ざっている場合に、特定の気体がどれだけの圧力を持っているかを示すものです。気体の圧力の比率は、そのまま濃度に置き換えることができます。例として、1気圧の空気中の酸素を考えてみましょう。1気圧は760 Torrに相当しますが、このうち酸素分圧は約160 Torrです。計算式は「160 ÷ 760 ≒ 0.21」となり、空気中の酸素濃度が約21%であることを表しています。一方、二酸化炭素は空気中にほとんど含まれていないため、分圧は0 Torrとなります。
PaCO2は、肺のガス交換機能を評価する上で重要な指標です。肺で適切にガス交換が行われている場合、血液中の二酸化炭素は肺胞内で排出され、代わりに酸素が取り込まれます。しかし、肺の機能が低下すると、血液中の二酸化炭素が十分に排出されずにPaCO2が上昇します。また、呼吸の調節や酸塩基平衡にも深く関わっています。
項目 | 説明 |
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PaCO2 の定義 | 動脈血中の二酸化炭素の圧力 |
略称 | 動脈血二酸化炭素分圧 |
単位 | Torr または mmHg ・日本では、一般的に生体内の圧力の表記には Torr が、血圧の表記には mmHg が用いられる。 |
測定方法 | 動脈血液ガス分析装置 |
分圧とは | 複数の種類の気体が混ざっている場合に、特定の気体がどれだけの圧力を持っているかを示すもの。 気体の圧力の比率は、そのまま濃度に置き換えることができる。 |
重要性 | 肺のガス交換機能を評価する上で重要な指標 呼吸の調節や酸塩基平衡にも深く関わっている。 |
PaCO2の用途
動脈血二酸化炭素分圧 (PaCO2) の用途
動脈血二酸化炭素分圧 (PaCO2) は、血液中に溶け込んでいる二酸化炭素の圧力を表す指標です。この値は、主に肺の機能を評価し、呼吸の効率を判断するために用いられます。健康な人の場合、PaCO2 の正常値は 35~45mmHg です。この範囲を逸脱する場合、呼吸機能に異常が生じている可能性を示唆します。
PaCO2 は、体内の酸塩基平衡 にも深く関わっています。二酸化炭素は水中では炭酸に変化し、水素イオン (H+) を生み出すため、血液中の PaCO2 が上昇すると、血液は酸性に傾きます。逆に、PaCO2 が低下すると、血液はアルカリ性に傾きます。 このように、PaCO2 は体内の酸塩基平衡を維持する上で重要な役割を担っています。PaCO2 の測定値は、呼吸器疾患の診断や治療効果の判定、さらには酸塩基平衡異常の診断にも役立ちます。
項目 | 説明 |
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PaCO2の定義 | 血液中に溶け込んでいる二酸化炭素の圧力 |
正常値 | 35~45mmHg |
用途 | 1. 肺の機能評価 2. 呼吸の効率の判断 3. 酸塩基平衡の評価 4. 呼吸器疾患の診断 5. 治療効果の判定 6. 酸塩基平衡異常の診断 |
PaCO2上昇時の血液状態 | 酸性に傾く |
PaCO2低下時の血液状態 | アルカリ性に傾く |
低いPaCO2
– 低いPaCO2
PaCO2(パコツー)とは、動脈血中の二酸化炭素分圧のことです。PaCO2が35Torr未満の場合、肺でのガス交換が過剰に行われ、二酸化炭素が体から過剰に排出されている状態を示唆します。これは、過換気と呼ばれる状態です。
過換気は、様々な要因で起こります。例えば、発熱や疼痛、精神的な動揺、感染症などが挙げられます。また、喘息などの呼吸器疾患でも過換気が見られることがあります。
さらに、体内の酸塩基平衡が乱れ、酸性に傾く代謝性アシドーシスが原因で過換気が起こることもあります。代謝性アシドーシスは、ショックや腎不全、特定の薬物や毒物への曝露など、様々な病態で引き起こされます。代謝性アシドーシスになると、体は血液中の酸性度を下げようと、肺から二酸化炭素をより多く排出することで代償しようとします。これが過換気につながるのです。
項目 | 説明 |
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PaCO2 低下 ( < 35Torr ) | 過換気状態を示唆、二酸化炭素が過剰に排出 |
過換気の原因 | 発熱、疼痛、精神的動揺、感染症、喘息などの呼吸器疾患、代謝性アシドーシス |
代謝性アシドーシス | ショック、腎不全、特定の薬物や毒物への曝露 体が酸性度を下げるため、肺から二酸化炭素を多く排出→過換気 |
高いPaCO2
– 高いPaCO2についてPaCO2は、血液中の二酸化炭素の圧力を表す指標です。健康な状態では、この値はおおよそ35~45Torrに保たれています。しかし、PaCO2が45Torrを超えると、肺から十分に二酸化炭素を排出できていない状態、すなわち「低換気」になっている可能性が高いと言えるでしょう。低換気には、大きく分けて二つの原因が考えられます。一つ目は、空気の通り道である気道が狭くなることで、二酸化炭素をうまく排出できない状態です。例えば、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった病気では、気道が狭くなったり、炎症を起こしたりすることで、呼吸が苦しくなり、PaCO2が上昇することがあります。二つ目は、脳から筋肉へ呼吸の指令を伝える伝達システムに異常が生じている状態です。脳からの指令によって、横隔膜や肋間筋といった呼吸筋が収縮し、呼吸運動が行われます。しかし、この指令伝達システムのどこかに問題が生じると、呼吸筋がうまく動かず、呼吸が浅くなったり、遅くなったりします。例えば、麻薬を過剰に摂取すると、脳にある呼吸中枢の働きが抑制され、呼吸数が低下し、PaCO2が上昇することがあります。また、フグ毒に含まれるテトロドトキシンは、神経伝達を遮断する作用があり、呼吸筋の麻痺を引き起こす可能性があります。さらに、筋ジストロフィーなどの筋肉の病気では、呼吸筋自体が弱ってしまい、十分な呼吸運動ができなくなることがあります。このように、PaCO2の上昇は、呼吸器系、神経系、筋肉系のいずれかの異常を示唆している可能性があります。そのため、PaCO2が高い値を示した場合は、その原因を詳しく調べる必要があります。
PaCO2とは | 正常値 | 異常値(>45Torr) |
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血液中の二酸化炭素の圧力を示す指標 | 35~45Torr | 肺から二酸化炭素を十分に排出できていない状態(低換気)の可能性が高い |
低換気の原因 | 具体的な病気や状態 | メカニズム |
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気道が狭くなる | 喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 気道が狭くなったり、炎症を起こしたりすることで、呼吸が苦しくなり、PaCO2が上昇する。 |
脳から筋肉へ呼吸の指令を伝える伝達システムに異常が生じる | 麻薬過剰摂取、フグ毒中毒、筋ジストロフィー | 脳からの指令がうまく伝わらなくなり、呼吸筋がうまく動かず、呼吸が浅くなったり、遅くなったりする。 |
PaCO2の重要性
血液中の二酸化炭素の分圧を表すPaCO2は、呼吸機能を評価する上で非常に重要な指標です。PaCO2の値を調べることで、肺が正常に機能しているか、呼吸器疾患の可能性があるかなどを判断することができます。PaCO2の値が高ければ、体内に二酸化炭素が過剰に蓄積している状態を示し、これは肺が十分に機能せず、二酸化炭素をうまく排出できていない可能性を意味します。このような状態は、呼吸抑制や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで見られます。 逆に、PaCO2の値が低ければ、体内の二酸化炭素が減少している状態を示し、過呼吸症候群などで見られます。過呼吸症候群は、不安やストレスなどによって呼吸が速くなり、体内の二酸化炭素が過剰に排出されてしまうことで起こります。このように、PaCO2は単に呼吸の状態を反映するだけでなく、その値から様々な疾患の可能性を検討することができます。そのため、PaCO2は呼吸器疾患の診断や治療効果の判定に欠かせない重要な指標と言えるでしょう。
PaCO2 | 状態 | 考えられる疾患 |
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高値 | 体内に二酸化炭素が過剰に蓄積している状態 | 呼吸抑制、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など |
低値 | 体内の二酸化炭素が減少している状態 | 過呼吸症候群など |