胎児循環と卵円孔:その役割と閉鎖
病院での用語を教えて
先生、卵円孔って生まれた後も開いてる場合があるって本当ですか?
体の健康研究家
いい質問だね!実は、ごくまれに生まれた後も卵円孔が閉じずに残ってしまうことがあるんだ。ただし、多くの場合は心配ないんだよ。
病院での用語を教えて
そうなんですか?でも、穴が開いたままなのって何か問題ないんですか?
体の健康研究家
小さな穴が開いているだけなら、日常生活に支障がない場合が多いんだ。 ただし、穴の大きさや個人差によっては、医師と相談して治療が必要になることもあるんだよ。
卵円孔とは。
お母さんのお腹の中にいるとき、赤ちゃんの心臓には「卵円孔」という小さな穴があいています。赤ちゃんは肺で息をすることができないので、この穴を通して心臓の左心房と右心房の間で血液を循環させています。そして、赤ちゃんが生まれて肺で呼吸を始めると、通常はこの卵円孔は自然に閉じていきます。
はじめに
人間の心臓は、体中に血液を送るために休むことなく働き続ける重要な臓器です。大人の心臓は二つの心房と二つの心室、合わせて四つの部屋に分かれており、それぞれの部屋が連携して全身に血液を送り出しています。しかし、お母さんのお腹の中にいる間の赤ちゃんの心臓は、大人の心臓とは少し構造が異なります。大人の心臓では左右の心房は壁で仕切られていますが、胎児の心臓には左右の心房の間を繋ぐ小さな穴が開いています。この穴は「卵円孔」と呼ばれ、胎児の成長にとって重要な役割を担っています。
卵円孔は、胎児が母親の胎盤から酸素を豊富に含んだ血液を受け取るために必要な構造です。胎児は肺で呼吸ができないため、母親の胎盤から酸素を受け取っています。卵円孔があるおかげで、胎盤から送られてきた血液は、心臓の右側から左側へ直接流れ込み、全身に送られます。
通常、卵円孔は赤ちゃんが生まれて肺呼吸を始めると自然に閉じます。これは、肺で呼吸が始まることで心臓内の圧力が変化し、卵円孔を塞いでいた弁が自然と閉じるためです。しかし、何らかの理由で卵円孔が閉じずに残ってしまうことがあります。これを「卵円孔開存」と呼びます。卵円孔開存は、場合によっては健康上の問題を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
項目 | 説明 |
---|---|
心臓の構造 |
|
卵円孔の役割 | 胎児が母親の胎盤から酸素を豊富に含んだ血液を受け取るために必要 |
卵円孔の閉じるタイミング | 通常、赤ちゃんが生まれて肺呼吸を始めると自然に閉じる |
卵円孔開存 | 卵円孔が閉じずに残ってしまうこと。健康上の問題を引き起こす可能性もある。 |
卵円孔の役割
私たち人間は、母親の胎内で十月十日をかけて成長します。胎児はお母さんから酸素や栄養を供給されて成長しますが、胎児自身の肺はまだ機能していません。呼吸は私たちが想像する肺呼吸とは異なり、お母さんの胎盤を通して行われます。
では、肺呼吸をしない胎児はどのようにして酸素を取り入れているのでしょうか? 実は、胎児の心臓には、肺を経由せずに血液を循環させる特別なルートが存在します。
このルートにおいて、卵円孔は重要な役割を担っています。卵円孔は、胎盤から送られてきた酸素を豊富に含んだ血液を、無駄なく全身に送るための重要な心臓内の孔です。
具体的には、胎盤から右心房に流れ込んだ血液は、肺動脈に向かう代わりに、卵円孔を通って左心房へと送られます。その後、左心室から大動脈を通って全身へと循環していきます。このように、卵円孔は胎児が成長するために不可欠な器官なのです。
器官 | 役割 |
---|---|
胎盤 | 母親の血液から酸素と栄養を吸収し、胎児に供給する |
卵円孔 | 胎児の心臓にある孔。肺を経由せずに、胎盤からの酸素を豊富に含んだ血液を直接左心房へ送る |
右心房 | 胎盤から酸素を豊富に含んだ血液を受け入れる |
左心房 | 卵円孔を通じて右心房から血液を受け入れる |
左心室 | 左心房から血液を受け取り、全身に送り出す |
大動脈 | 左心室から酸素を豊富に含んだ血液を受け取り、全身に運ぶ |
出生後の変化
– 出生後の変化赤ちゃんが生まれて産声をあげると、それまで羊水で満たされていた肺に空気が入り、呼吸が始まります。この瞬間、赤ちゃんは外界から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する、人間としての第一歩を踏み出すのです。肺が機能し始めると、血液の循環経路にも大きな変化が起こります。胎児の頃は、母親の胎盤から酸素を受け取っていたため、肺はあまり活動していませんでした。そのため、心臓から肺に流れる血液は少なく、心臓の右心房と左心房の間にある卵円孔という穴を通って、大部分が全身に送られていました。しかし、呼吸が始まると肺が活発に働き始め、血液は肺で酸素をたっぷり取り込んで心臓に戻ってきます。すると、心臓内の圧力に変化が生じ、今まで開いていた卵円孔が自然に閉じ始めるのです。これは、まるで扉に鍵がかかるように、卵円孔を閉じるための弁のような組織が、圧力によって押し付けられるためです。こうして、赤ちゃんは母親の胎内から外界へと環境を適応させ、肺呼吸という新しいシステムを獲得します。そして、生命維持のための血液循環も、胎児循環から体循環へと大きく変化を遂げるのです。
変化前 | 変化後 |
---|---|
肺に羊水が満たされている | 肺に空気が入り呼吸が始まる |
肺はあまり活動していない | 肺が活発に働き始める |
心臓から肺に流れる血液は少ない | 血液は肺で酸素をたっぷり取り込んで心臓に戻る |
卵円孔が開いている | 卵円孔が自然に閉じ始める |
胎児循環 | 体循環 |
卵円孔開存について
– 卵円孔開存について人間の心臓には、生まれたばかりの頃に重要な役割を果たす卵円孔という小さな穴があります。 この穴は、母親のお腹の中にいる間、肺呼吸の代わりに胎盤から酸素を取り入れるために必要な bypass となります。 そして通常は、生まれた後、肺呼吸が始まると自然に閉じていきます。ほとんどの赤ちゃんの場合、生後1年以内には完全に閉鎖します。しかし、何らかの理由で卵円孔が完全に閉じずに、成人しても開いたまま残ってしまうことがあります。これを「卵円孔開存」と言います。 卵円孔開存は、実はそれほど珍しいものではなく、成人の4人に1人程度に見られるとも言われています。 多くの場合、卵円孔開存は健康上の問題を引き起こすことはなく、無症状のままで過ごせることがほとんどです。そのため、自分が卵円孔開存であることに気づかない人も多くいます。 しかし、まれに、偏頭痛や脳梗塞、潜水病などの原因となる可能性も指摘されています。ただし、卵円孔開存があるからといって、必ずしもこれらの病気を発症するわけではありません。 また、卵円孔開存が原因でこれらの病気を発症するメカニズムについては、まだはっきりと解明されていない部分もあります。健康診断などで卵円孔開存を指摘された場合は、過度に心配する必要はありません。 定期的な健康診断を受けながら、医師の指示に従ってください。 また、偏頭痛や息切れ、めまいなどの症状がある場合は、自己判断せずに、早めに医療機関を受診し、相談するようにしましょう。
項目 | 説明 |
---|---|
卵円孔 | 母親のお腹の中にいる間、肺呼吸の代わりに胎盤から酸素を取り入れるために必要な心臓の小さな穴。 |
卵円孔開存 | 通常は生後閉鎖する卵円孔が、成人しても開いたまま残っている状態。 |
頻度 | 成人の約4人に1人に見られる。 |
症状 | 多くの場合、無症状。まれに偏頭痛、脳梗塞、潜水病などの原因となる可能性も指摘されている。 |
治療 | 多くの場合、治療の必要はない。定期的な健康診断を受け、医師の指示に従う。症状がある場合は、医療機関を受診。 |
まとめ
赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間、肺はまだ呼吸をするために使われていません。そのため、心臓から送り出された血液は、肺を通らずに全身に送られる特別なルートを通ります。このルートの一部に、心臓の壁にある小さな穴である卵円孔があります。
卵円孔は、胎児が成長するために必要な血液循環を維持する上で、とても重要な役割を果たしています。そして通常、赤ちゃんが生まれ、肺呼吸が始まると、自然に閉じていきます。
ほとんどの場合、卵円孔は生まれた後も開いたままになっていることがありますが、特に問題を引き起こすことはありません。健康な生活を送ることができますし、治療の必要もないことがほとんどです。
しかしごくまれに、卵円孔が開いたままになっていることが原因で、脳卒中などの合併症を引き起こす可能性があります。そのため、息切れやチアノーゼ、疲れやすいなどの症状が見られる場合は、注意が必要です。
少しでも心配なことがある場合は、ためらわずに医療機関を受診し、医師に相談しましょう。専門医による診察と、必要であれば検査を受けることで、適切な診断と対応を受けることができます。
項目 | 詳細 |
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胎児期の血液循環 | – 肺呼吸を行わないため、心臓から送り出された血液は肺を通らずに全身へ循環する。 – 卵円孔と呼ばれる心臓の壁にある小さな穴が、この特別なルートの一部となる。 |
卵円孔の役割 | 胎児の成長に必要な血液循環を維持する。 |
出生後の卵円孔 | – 通常、出生後、肺呼吸が始まると自然に閉じる。 – 多くの場合、開いたままでも問題はない。 |
卵円孔開存によるリスク | – まれに、脳卒中などの合併症を引き起こす可能性がある。 |
注意すべき症状 | 息切れ、チアノーゼ、疲れやすいなど。 |
推奨される行動 | 心配な症状がある場合は、医療機関を受診し、医師に相談する。 |