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妊娠を望む夫婦へ:人工授精という選択肢

- 人工授精とは 人工授精は、妊娠を望む夫婦にとって、自然な妊娠が難しい場合に選択できる治療法の一つです。通常の性交渉によって妊娠に至らない場合、様々な理由が考えられますが、人工授精は、主に男性側に原因がある場合や、原因がはっきりと特定できない場合に有効な方法です。 人工授精では、まず、男性から採取した精子を特殊な方法で処理します。この処理によって、運動能力の高い精子だけを選別したり、精子の濃度を高めたりすることができます。 こうして選りすぐられた精子は、女性の排卵のタイミングに合わせて、細い管を用いて子宮内に直接注入されます。子宮内に直接精子を注入することで、精子が卵子までたどり着く道のりを短縮し、受精の可能性を高めることができます。 人工授精は、体外受精と比較して、身体への負担が少なく、費用も抑えられるという利点があります。しかし、その反面、妊娠率は体外受精と比較すると低い傾向にあります。 また、人工授精は、女性の年齢や卵子の状態、男性の精子の状態などによって、成功率が大きく左右される治療法でもあります。そのため、人工授精を検討する際には、事前に医師から十分な説明を受け、ご自身に合った治療法かどうかをしっかりと判断することが大切です。
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一度は妊娠経験があっても?続発性不妊症について

- 続発性不妊症とは 「続発性不妊症」とは、過去に妊娠や出産を経験していながらも、その後は妊娠に至らない状態のことを指します。 例えば、「一人目は比較的スムーズに授かったのに、二人目がなかなかできない」、「一度流産を経験してから、妊娠しなくなった」というような場合が、続発性不妊症に当てはまります。 妊娠・出産経験があることから、周囲からは「またそのうちできるでしょ」「一人いるんだから大丈夫」などと思われがちで、悩みを打ち明けにくいという側面も持ち合わせています。 実は、不妊治療を受けている方の約半数は、この続発性不妊症に該当すると言われています。決して珍しいものではなく、多くの方が抱える悩みの一つなのです。
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不妊治療の選択肢:排卵誘発法

- 排卵誘発法とは排卵誘発法とは、女性の体内で卵巣から卵子が飛び出す、排卵と呼ばれる現象を促す治療法です。通常、自然な排卵のサイクルに問題がある、あるいは排卵が全く見られないために妊娠が難しい女性に対して行われます。排卵誘発法には、いくつかの方法があります。 飲み薬として服用するタイプの薬や、注射によって投与するタイプの薬など、患者さんの状態に合わせて適切な方法が選択されます。 これらの薬は、脳の下垂体に働きかけてホルモンの分泌を促し、卵巣での卵胞の成長と成熟、そして排卵を誘発します。排卵誘発法は、単独で行われる場合もあれば、体外受精などの高度生殖医療と組み合わせて行われる場合もあります。体外受精の場合、排卵誘発法によって複数の卵胞を育てて成熟卵子を採取し、体外で受精させた後、子宮に戻します。排卵誘発法は、多くの場合有効な治療法となりますが、多胎妊娠のリスクや、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用が起こる可能性も考慮しなければなりません。治療を受ける際には、医師からこれらのリスクや副作用、治療期間、費用などについて十分な説明を受け、納得した上で治療を開始することが重要です。
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不妊症を理解する:原因、診断、治療法

不妊症とは、妊娠を希望するカップルが、一定期間、避妊をせずに性交渉を行っても妊娠に至らない状態のことを指します。かつては2年間とされていましたが、近年では1年間とされています。これは、妊娠を希望するカップルにとって、大きな不安やストレスをもたらす問題です。 不妊症は決して珍しい問題ではなく、多くのカップルが直面する可能性があります。厚生労働省の調査によると、日本では現在、カップルの約6組に1組が不妊の悩みを抱えていると言われています。晩婚化やライフスタイルの変化などにより、近年ではその数はさらに増加傾向にあります。 不妊の原因は、女性側に原因がある場合、男性側に原因がある場合、そして、両方に原因がある場合、さらに原因不明の場合と様々です。女性側の原因としては、排卵障害、卵管因子、子宮因子などが挙げられます。男性側の原因としては、精子の数や運動量の低下、精路通過障害などがあります。 医学の進歩により、不妊症の原因解明や治療法も発展してきています。不妊治療には、タイミング療法、人工授精、体外受精など様々な方法があります。近年では、患者の状態に合わせたより適切な治療法を選択できるようになってきており、妊娠の可能性も高まってきています。 不妊症は、デリケートな問題であり、一人で抱え込みがちです。しかし、一人で悩まずに、専門医に相談し、適切な検査や治療を受けることが重要です。
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原発性不妊症とは?

妊娠できない状態が続くと、不妊症と診断されますが、その中でも、一度も妊娠を経験したことがない場合を原発性不妊症と呼びます。これは、性交渉の経験があり、かつ避妊をしていないにもかかわらず、一定期間以上妊娠に至らない状況を指します。 では、具体的にどれくらいの期間、妊娠しなければ原発性不妊症と診断されるのでしょうか。一般的には、夫婦生活を1年以上継続していても妊娠に至らない場合に、不妊症の検査を受けることが推奨されています。これは、健康な男女が性交渉を持った場合、1年間で約8割が妊娠に至るとされているためです。しかし、年齢やその他の要因によって、検査を始める時期は個別に対応する必要があります。例えば、女性の年齢が35歳以上の場合や、生理不順、過去の病気など、妊娠しにくい要素を持っている場合は、1年待たずに早めに医療機関を受診することが推奨されます。
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命の源泉、母乳の奇跡

- 母乳とは 母親の乳腺から分泌される、生まれたばかりの赤ちゃんにとって欠かせない栄養源となる飲み物です。生まれたばかりの赤ちゃんに必要な栄養素が全て含まれており、赤ちゃんが健康的に成長し、発達していくために欠かせないものと言えるでしょう。 色は乳白色をしていて、少しとろみがあります。赤ちゃんがお腹の中で母親と繋がっていたときの名残であるへその緒が切れた後、母親から赤ちゃんへ最初に与えられる贈り物とも言われています。 母乳には、赤ちゃんの成長段階に合わせて、必要な栄養素が最適なバランスで含まれています。生まれて間もない時期の母乳は、特に免疫物質や抗体が多く含まれており、感染症から赤ちゃんを守る役割も担っています。 また、母乳には赤ちゃんの脳の発達を促す成分も含まれており、赤ちゃんの知能の発達にも良い影響を与えると考えられています。さらに、母乳を与えることで母親の体内ホルモンの分泌が促され、産後の身体の回復を助ける効果も期待できます。 このように、母乳には人工的に作られたミルクでは決して真似できない、様々な効能が秘められています。母乳は、まさに自然からの恵みであり、赤ちゃんへの最高のプレゼントと言えるでしょう。
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生命のゆりかご:子宮の役割と重要性

- 子宮の基礎知識 子宮は、女性の骨盤の奥深くに位置する、生命の誕生に深く関わる臓器です。その形は、ちょうど西洋梨を逆さにしたような形をしており、大きさは鶏卵ほどです。子宮の壁は、筋肉組織でできており、普段は小さく収縮していますが、妊娠すると胎児の成長に合わせて大きく拡張するという驚くべき能力を持っています。 子宮の内部は空洞になっており、子宮内膜と呼ばれる柔らかい組織で覆われています。この子宮内膜は、受精卵を受け入れるために、毎月厚みを増していきます。もし受精卵が着床しなかった場合、子宮内膜は剥がれ落ち、血液とともに体外へ排出されます。これが月経と呼ばれる現象です。 子宮は、妊娠期間中には胎児を育むための重要な役割を担います。子宮内膜は胎盤へと変化し、胎児に栄養や酸素を供給します。また、子宮の筋肉は、出産時に力強く収縮することで、胎児を子宮の外へ押し出すという大切な役割も担っています。このように子宮は、新しい命を育み、この世に送り出すという、女性にとって非常に大切な役割を担っている臓器なのです。
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子宮内膜症: 女性の体と心に影を落とす病気

- 子宮内膜症とは子宮内膜症は、本来子宮の内側を覆っている子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所で発生・増殖してしまう病気です。月経時に、この子宮内膜に似た組織からも出血が起こりますが、本来の子宮内膜のように体外へ排出する経路がないため、周囲の組織に炎症や癒着を引き起こし、強い月経痛や性交痛、不妊などの原因となることがあります。子宮内膜症は10代から40代の女性の約10人に1人が罹患すると言われており、決して稀な病気ではありません。子宮内膜症の発生原因は完全には解明されていませんが、月経時に排出される経血が卵管を通って卵巣や腹膜など子宮の外へ逆流してしまう「子宮内膜症逆流説」が最も有力な説とされています。子宮内膜症は、卵巣や腹膜、子宮と直腸の間など、子宮周辺の臓器に発生することが多いですが、膀胱や腸など、子宮から離れた場所に発生することもあります。症状は発生場所や重症度によって異なり、痛みを感じない場合もあれば、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みを感じる場合もあります。子宮内膜症は放置すると症状が悪化したり、不妊のリスクが高まったりする可能性があります。そのため、月経痛が重い、性交痛がある、なかなか妊娠できないなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
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命の奇跡:妊娠について

妊娠とは、新しい命が女性の体内で誕生し、成長していくまでの過程を指し、神秘的で驚異に満ちたものです。 妊娠は、女性の卵巣から排卵された卵子と、男性から射出された精子が卵管で出会い、受精が成立することから始まります。この受精によってできた受精卵は、ひとつの細胞ですが、母親の体内で細胞分裂を繰り返しながら、卵管を通って子宮へと移動します。 子宮に到達した受精卵は、子宮内膜と呼ばれる子宮の内側に着床します。この着床が完了した時が、医学的に妊娠が成立したとみなされる瞬間です。 着床後、受精卵は胎児へと成長を始めます。子宮内膜は胎児の成長に必要な栄養や酸素を供給する胎盤へと変化し、母親と胎児を繋ぐ重要な役割を担います。 妊娠期間は約40週で、その間、胎児は母親の体内で急速に成長を遂げます。そして、出産というプロセスを経て、新しい命がこの世に誕生するのです。
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授乳期の不安を解消!乳腺炎の基礎知識

- 乳腺炎とは?乳腺炎は、母乳を作る器官である乳腺に炎症が起こる病気です。乳房に痛みや腫れ、熱を感じ、時には発熱を伴うこともあります。特に、赤ちゃんに母乳を与えているお母さんに多くみられます。母乳育児中のママの体では、赤ちゃんに栄養を与えるために乳腺が活発に働いています。この時、乳腺に細菌が入り込んで増殖してしまうと、乳腺炎を引き起こします。細菌は、赤ちゃんの口やママの皮膚から乳管を通って乳腺に侵入することがあります。また、乳腺内に母乳が過剰に溜まったり、乳房が圧迫されたりすることでも、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。乳腺炎は、適切な治療を行えば完治する病気なので、必要以上に不安に思う必要はありません。しかし、症状が重い場合には、母乳を与えることが難しくなることもあります。そのため、乳腺炎の予防には、授乳の前後に手を清潔に洗う、赤ちゃんにしっかりと乳房をくわえさせる、授乳間隔を空けすぎない、乳房を締め付けない服装を心がけるなどの方法があります。また、乳房に痛みや腫れを感じたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
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タンポンの基礎知識

- タンポンとは?タンポンは、生理中に膣内に挿入して使用する生理用品です。 ナプキンと同じく、経血を吸収する役割を担いますが、体の中に挿入して使う点が異なります。主な素材は、綿やレーヨンなどの吸収性に優れた素材を圧縮して作られています。形は円筒形で、タンポンの下部には紐が付いており、使用後にはこの紐をゆっくりと引っ張ることで取り出すことができます。タンポンは、ナプキンと比べて、運動や水泳などの活動的な場面でも、経血漏れを心配することなく快適に過ごせるという利点があります。また、ナプキンよりもコンパクトで、持ち運びにも便利です。さらに、体内に挿入するため、蒸れやニオイが気になるという方にも適しています。しかし、タンポンを使用する際には、いくつかの注意点があります。まず、使用前に必ず手を清潔に洗い、説明書をよく読んでから使用するようにしましょう。また、タンポンは長時間使用すると、細菌感染のリスクが高まる可能性がありますので、こまめに交換することが大切です。交換の目安は、経血量にもよりますが、4〜8時間ごとと言われています。さらに、まれに、トキシックショック症候群(TSS)という重篤な病気を引き起こす可能性があります。TSSは、タンポンを長時間使用することによって、黄色ブドウ球菌が増殖し、毒素が産生されることによって引き起こされます。発熱、発疹、吐き気などの症状が出た場合は、すぐにタンポンの使用を中止し、医療機関を受診してください。
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妊娠と糖尿病の関係:妊娠糖尿病とは?

- 妊娠糖尿病とは妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて明らかになる、あるいは発症する、糖の代謝異常のことを指します。 つまり、妊娠前は糖尿病ではなかった方が、妊娠をきっかけに一時的に血糖値が上がりやすい状態になることをいいます。妊娠すると、胎盤から様々なホルモンが分泌されますが、これらのホルモンの中には、血糖値を上げる働きを持つものがあります。 これは、赤ちゃんが成長するために必要なエネルギー源であるブドウ糖を、お母さんの血液中から十分に受け取れるようにするためです。 しかし、体質や生活習慣などによって、この血糖値を下げる働きをするホルモン(インスリン)の分泌量が十分ではなくなったり、働きが悪くなったりする場合があります。 その結果、血液中のブドウ糖が増加し、妊娠糖尿病と診断されるのです。多くの場合、出産後に血糖値は正常に戻ります。 しかし、妊娠糖尿病を経験した方は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高いという報告があります。 また、妊娠糖尿病は、巨大児や早産など、お母さんと赤ちゃん双方に様々なリスクをもたらす可能性も指摘されています。 そのため、妊娠糖尿病と診断された場合には、医師の指示に従い、適切な食事療法や運動療法を行うことが重要です。
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アウス:人工妊娠中絶の理解

- アウスとは アウスとは、元々はドイツ語の「Auskratzung(アウスクラツング)」を語源とする医療用語で、日本語では「掻爬(そうは)」と訳されます。この言葉自体は子宮内容物を掻き出す行為全般を指す医学用語ですが、日本では特に「人工妊娠中絶」を意味する言葉として用いられています。 人工妊娠中絶は、妊娠している女性が、経済的な問題、健康上の問題、または性犯罪の被害など、様々な事情により妊娠を継続することが困難な場合に、医師の診断と施術によって、人工的に妊娠を終了させる医療行為です。 日本では、母体保護法という法律によって、人工妊娠中絶の実施条件や手続きが定められています。 ただし、アウスという言葉は、歴史的に見ると、女性に対する偏見や差別を含む文脈で用いられてきた経緯もあり、現在では医学的な場以外での使用は避けられる傾向にあります。そのため、人工妊娠中絶については、「アウス」のような古い用語ではなく、「人工妊娠中絶」または「中絶」といった、より中立的な表現を用いることが推奨されています。
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乳頭の構造と機能:母乳育児を支える重要な器官

母親の胸に左右対称に位置する乳頭は、生まれたばかりの赤ちゃんにとって、生命の源である母乳を届けるための重要な役割を担っています。その役割は、単に母乳の通り道として機能するだけではありません。赤ちゃんが乳頭に吸い付くことで、母親の体には複雑な生理的な反応が引き起こされます。 赤ちゃんが口を大きく開けて乳頭を深く咥えると、乳輪と呼ばれる乳頭周辺の色素沈着した部分が刺激されます。この刺激は、母親の脳下垂体に伝達され、プロラクチンと呼ばれるホルモンの分泌を促します。プロラクチンは、乳腺細胞に働きかけ、母乳の生成を促進する役割を担っています。 また、同時にオキシトシンというホルモンも分泌されます。オキシトシンは、乳腺周囲の筋肉を収縮させ、乳腺内に蓄えられた母乳を乳管を通して乳頭へと押し出す働きをします。この一連の作用により、赤ちゃんはスムーズに母乳を飲むことができるのです。 乳頭の形状は、赤ちゃんが吸い付きやすいように円柱状に隆起しており、その先端には、母乳が出る小さな穴である乳孔が開いています。乳頭の大きさや形は個人差が大きく、また、妊娠や授乳の経験によっても変化します。乳頭は、まさに母乳育児に適した精巧な構造と機能を備えていると言えるでしょう。
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知っておきたい女性の病気:子宮脱

- 子宮脱とは子宮脱とは、骨盤の奥にある臓器である子宮が、本来あるべき位置から下に下がってしまう状態を指します。子宮は、ハンモックのように骨盤の中で臓器を支える骨盤底筋群と呼ばれる筋肉や、靭帯と呼ばれる硬い組織によって支えられています。しかし、これらの組織が加齢や出産、肥満など様々な要因によって弱くなると、子宮を支えきれなくなり、子宮が下垂してしまうのです。子宮脱は、その程度によって大きく三段階に分けられます。まず、第一段階は子宮が少し下がっているものの、膣からは出てきていない状態です。第二段階は、子宮がさらに下がり、性交時や重いものを持った時などに、子宮の一部が膣から外に出てきてしまう状態です。そして、第三段階になると、子宮全体が常に膣の外に出てしまい、元に戻らなくなります。子宮脱は、初期段階では自覚症状がほとんどない場合もあります。しかし、病気が進行すると、膣に何かがつっかえているような違和感や、腰痛、頻尿、排尿困難、便秘などの症状が現れることがあります。さらに重症化すると、歩行や性交時の痛み、出血などを伴うこともあります。子宮脱は決して珍しい病気ではありません。特に、出産経験のある女性に多くみられます。加齢も子宮脱の大きなリスク要因の一つです。また、肥満や慢性的な便秘、重いものを持ち上げる作業なども、骨盤底筋群に負担をかけ、子宮脱を引き起こす可能性を高めます。
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卵巣腫瘍:沈黙の病を知る

- 卵巣腫瘍とは女性の骨盤内には、左右に一対ずつ、卵巣と呼ばれる臓器があります。卵巣は、妊娠に欠かせない卵子を作り出す、女性にとって大切な役割を担っています。この卵巣に腫瘍ができる病気を、卵巣腫瘍と呼びます。卵巣腫瘍は、良性と悪性の二つに大きく分けられます。良性の腫瘍は、命に関わることはほとんどありませんが、悪性の腫瘍は、周囲の組織に広がりやすく、進行すると腹膜などにも転移することがあります。卵巣腫瘍は、初期の段階では自覚症状が現れにくいことが多く、早期発見が難しい病気として知られています。そのため、進行してから発見されるケースも少なくありません。症状としては、下腹部にしこりや膨満感を感じたり、月経不順、不正出血などがみられることがあります。また、腫瘍が大きくなると、頻尿や便秘、腰痛などの症状が現れることもあります。卵巣腫瘍の原因は、まだはっきりとは解明されていません。しかし、年齢を重ねるごとに発症リスクが高くなることや、遺伝的な要因、食生活や生活習慣などが関係している可能性も指摘されています。卵巣腫瘍は、早期発見・治療が非常に重要です。そのためにも、定期的な婦人科検診を受け、少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
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知っておきたい膀胱瘤:原因と症状

- 膀胱瘤とは膀胱瘤は、本来あるべき場所から膀胱の一部が飛び出してしまう病気です。人の体は、骨盤の底に骨盤底筋群と呼ばれる筋肉があり、この筋肉がハンモックのように臓器を支えることで、膀胱や子宮、直腸などは正しい位置に保たれています。しかし、加齢や出産などが原因でこの骨盤底筋群が弱くなってしまうと、膀胱を支えきれなくなり、膣側に落ちてきてしまうことがあります。これが膀胱瘤です。膀胱瘤は、子宮や直腸など他の臓器が膣側に脱出する病気である骨盤臓器脱と合わせて発症することが多く見られます。特に、出産経験のある女性は、骨盤底筋群にかかる負担が大きいため、膀胱瘤を含む骨盤臓器脱のリスクが高くなると言われています。膀胱瘤になると、残尿感や頻尿、排尿困難などの排尿トラブルが起こりやすくなります。また、膀胱が膣側に出てきてしまうため、性交痛を感じることもあります。症状が軽い場合は経過観察となることもありますが、症状が重い場合や日常生活に支障が出る場合は、手術が必要となることもあります。日頃から骨盤底筋を鍛える運動を行うことが、膀胱瘤の予防に繋がるとされています。
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意外と知らない?排卵痛の症状と原因

- 排卵痛とは排卵痛とは、月経周期の中頃に起こる下腹部の痛みのことを指します。これは、卵巣から卵子が飛び出す際に、周囲の組織を刺激したり、卵子が飛び出す時に卵巣から少量の血液や体液が出ることで、痛みが生じると考えられています。痛みの感じ方には個人差があり、チクチクとした軽い痛みで済む人もいれば、鈍い痛みや締め付けられるような強い痛みを感じる人もいます。痛みの強さも、軽い痛みから日常生活に支障が出るほどの強い痛みまで様々です。痛みの持続時間にもばらつきがあり、数時間から半日程度で治まる場合が多いですが、中には数日間続く人もいます。痛みを感じる場所は、左右どちらかの下腹部が多いのが特徴です。これは、排卵が左右の卵巣で交互に行われるために起こります。つまり、右の卵巣から排卵があれば右下腹部、左の卵巣から排卵があれば左下腹部に痛みが生じます。排卵痛は多くの場合、特に心配する必要のない生理現象の一つですが、あまりにも痛みが強い場合や日常生活に支障が出る場合は、自己判断せずに医療機関を受診するようにしてください。
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異所性妊娠:子宮の外に宿る命の危機

- 異所性妊娠とは妊娠は、本来子宮内膜に受精卵が着床することで成立します。しかし、何らかの原因で受精卵が子宮腔以外の場所で着床してしまう場合があります。このような妊娠を「異所性妊娠」と呼びます。異所性妊娠の多くは、卵管に着床する「卵管妊娠」です。卵管は、卵巣から排卵された卵子と精子が受精する場所であり、受精卵が子宮へと移動する経路でもあります。しかし、卵管の炎症や癒着、構造的な問題などがあると、受精卵が子宮まで到達できずに卵管内で着床してしまうことがあります。卵管以外の場所、例えば卵巣や腹腔内などに受精卵が着床することもあります。卵巣妊娠は、卵巣内で受精卵が成長してしまう非常に稀なケースです。腹腔内妊娠は、受精卵が卵管からこぼれ落ちたり、卵管妊娠が破裂したりすることで、腹腔内で着床してしまう状態を指します。異所性妊娠は、母体にとって非常に危険な状態です。妊娠が進むにつれて、着床した組織が成長し、周囲の組織を圧迫したり、破裂したりする可能性があります。その結果、大量出血や激しい腹痛を引き起こし、母体の命に関わることもあります。早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。
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女性のライフステージ:更年期について

更年期とは、女性が人生の折り返し地点を迎える頃に訪れる、体と心の変化の時期と言えます。この時期、女性の体では卵巣の働きが徐々に衰え始め、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少していきます。エストロゲンは、女性の体の様々な機能を調節する役割を担っており、月経や妊娠に関わるだけでなく、血管や骨、脳の働きにも影響を与えています。 閉経とは、このエストロゲンの減少に伴い、月経が完全に停止した状態を指します。一般的には、最後の月経から一年以上経過した時点で閉経と診断されます。そして、更年期はこの閉経を挟んだ前後五年間、具体的には40代後半から50代にかけての期間を指します。 この時期は、ホルモンバランスが大きく変化するため、心身に様々な症状が現れやすくなります。例えば、のぼせやほてり、発汗、めまい、動悸、イライラ感、抑うつ気分、不眠、関節痛、頭痛など、多岐にわたる症状が現れることがあります。これらの症状は個人差が大きく、全く症状が現れない人もいれば、日常生活に支障をきたすほどの強い症状に悩まされる人もいます。 更年期は、決して病気ではありません。しかし、この時期に起こる体の変化や症状について正しく理解し、自分自身の体と向き合っていくことが大切です。
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おりもの:女性の身体を守る大切な役割

- おりものとは女性にとって馴染み深いおりもの。これは医学用語では「帯下」と呼ばれ、女性の膣から分泌される液体のことを指します。毎日のように下着に付着するおりものですが、一体どのような役割を担っているのでしょうか。おりものは、主に子宮頸部とバルトリン腺という部分から分泌されます。子宮頸部は子宮の入り口にあたり、バルトリン腺は膣の入り口付近に位置しています。これらの器官から分泌されるおりものは、細菌やウイルスなどの病原体から膣を守ったり、膣内を清潔に保つなど、重要な役割を担っています。おりものの状態は、性周期や体調、年齢などによって変化します。例えば、排卵期には受精しやすくなるよう、おりものの量が増え、粘り気が強くなります。また、妊娠中はホルモンバランスの変化によっておりものの量が増加します。色は透明、白、黄色など様々で、基本的に無臭です。ただし、おりものの量や色、臭い、性状に変化が現れた場合は、細菌感染症などの病気の可能性も考えられます。その場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。おりものは、決して恥ずべきものではありません。健康な女性であれば自然に分泌されるものであり、女性の身体を守るために重要な役割を果たしています。日頃からおりものの状態を観察することで、自身の健康状態を把握する一助となるでしょう。
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かゆみの原因?外陰真菌症について解説

- 外陰真菌症とは?外陰真菌症は、女性の外陰部に真菌(一般的にカビと呼ばれる微生物)が感染することで起こる病気です。 この病気は、外陰部のかゆみを主な症状とするため、外陰部掻痒症とも呼ばれます。外陰真菌症の原因となる真菌の中で最も多いのはカンジダという種類です。カンジダは、健康な人の口の中や消化管、膣などにもともと存在している常在菌ですが、体の抵抗力が落ちたり、ホルモンバランスが乱れたりすると、過剰に増殖してしまい、外陰真菌症を引き起こします。外陰真菌症は、性感染症ではありませんが、性交渉によって感染することがあります。また、免疫力の低下や抗生物質の使用、糖尿病などの基礎疾患によって発症しやすくなることもあります。外陰真菌症の主な症状としては、強いかゆみ、外陰部のヒリヒリ感、腫れ、発赤などがあります。また、おりものの量が増えたり、性交痛を感じたりすることもあります。これらの症状は、生理前や妊娠中に悪化することがあります。外陰真菌症は、適切な治療を行えば、多くの場合、完全に治癒する病気です。自己判断で市販薬を使用するのではなく、医療機関を受診し、医師の診断と適切な治療を受けるようにしましょう。
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アンドロゲン不応症:男性なのに女性?性の決定の複雑さ

- アンドロゲン不応症とは?アンドロゲン不応症は、生まれ持った性染色体が男性(XY染色体)であるにもかかわらず、身体的な特徴が女性として現れる病気です。通常、人間はそれぞれ決まった組み合わせの性染色体を持っています。女性はXX染色体、男性はXY染色体を持っており、これが身体的特徴の性差に繋がっています。アンドロゲン不応症の患者さんは、男性と同じXY染色体を持っているにもかかわらず、身体は女性として発達します。これは、男性ホルモンであるアンドロゲンが関係しています。アンドロゲンは、男性の身体的な特徴(男性器の発達や筋肉の成長など)を促すために重要な役割を果たしています。しかし、アンドロゲンは、それ単独では効果を発揮することができません。身体の細胞には、アンドロゲンと結びつくことで、初めてその効果を発揮できる「受容体」と呼ばれる部分が存在します。アンドロゲン不応症の患者さんの場合、このアンドロゲン受容体に異常があるため、アンドロゲンが正常に作用しません。その結果、XY染色体を持って生まれてきても、身体は男性として発達せず、女性の特徴を持つようになるのです。アンドロゲン不応症は、原因となる遺伝子の異常の程度によって、症状の程度に幅があります。外見上は完全に女性と変わらない場合もあれば、わずかに男性的な特徴が現れる場合もあります。また、思春期になっても月経が来ないなど、二次性徴に関連した症状が現れることもあります。
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意外と知らない?医療用語「ギネ」の意味

病院を舞台にしたドラマや小説で、「ギネ」という言葉を見聞きしたことはありませんか? この「ギネ」は、実は「産婦人科」を指す医療現場で使われている用語なのです。 「ギネ」の由来は、ドイツ語で婦人科を意味する「Gynäkologie(ギュネコロギー)」にあります。 日本語では「婦人科」と訳されますが、医療現場ではドイツ語由来の「ギネ」が広く使われています。医師や看護師などの医療従事者の間では、「ギネ」は専門用語として日常的に飛び交っている言葉です。 「ギネ」は「産婦人科」を指す言葉として使われていますが、「産科」と「婦人科」は診療科目が異なります。「産科」は妊娠や出産に関する診療を行うのに対し、「婦人科」は女性特有の病気や月経に関する診療を行います。しかし、多くの病院では「産科」と「婦人科」が一体となって診療を行っているため、「ギネ」という言葉で「産婦人科」全体を表すことが多いようです。 医療ドラマなどで「ギネ」という言葉が出てきたら、医療従事者たちがどのような状況で、どのような患者さんを診療しているのか想像しながら見ると、より一層作品を楽しむことができるかもしれません。
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