看護の成果を分類するNOCとは?
病院での用語を教えて
先生、「看護成果分類」って、どういう意味ですか?難しくてよくわからないです。
体の健康研究家
そうだね。「看護成果分類」、つまり「NOC」は、看護師さんが患者さんをケアした結果、患者さんがどんな状態になることを目指すのか、それをきちんと測るためのものなんだよ。
病院での用語を教えて
患者さんがどんな状態になることを目指す、というと?
体の健康研究家
例えば、骨折した患者さんだったら、「痛みが減って楽になる」「一人で歩けるようになる」といった状態を目標にするよね。NOCは、こうした目標を具体的に示し、それを達成できたかどうかを判断するためのものなんだ。
NOCとは。
「看護成果分類(NOC)」は、看護の現場で患者さんがどのような状態になることを目指すのか、その目標と、目標達成度合いを測るための指標をまとめたものです。看護の専門用語で「看護診断」と呼ばれるものと同じように、あらかじめ決められた選択肢の中から適切なものを選びます。このNOCは、看護診断をまとめた「NANDA」や、看護ケアの内容をまとめた「NIC」と合わせて「NANDA-NOC-NIC(NNN)」と呼ばれ、看護の現場で広く使われています。
NOCの概要
– 看護成果分類(NOC)の概要
看護の現場では、患者さんの状態を把握し、個別性の高いケアを提供することが求められます。そのために、看護師は、患者さんがどのような状態になれば望ましいのか、どのような変化を期待するのかを明確にする必要があります。このような看護師が目指す患者さんの状態や変化を「看護成果」と呼びます。
看護成果分類(NOC Nursing Outcomes Classification)は、この看護成果を体系的に分類し、定義したものです。NOCは、患者さんの状態、行動、認識など、様々な側面から捉えた看護成果を網羅しており、看護師が共通の言葉で患者さんの状態や目標を共有することを可能にします。
NOCは、看護計画を立案する上で重要な役割を果たします。看護師は、まずアセスメントを通して患者さんの状態やニーズを把握します。そして、看護診断に基づいて、患者さんにとって適切なNOCを選択し、具体的な目標を設定します。この目標設定は、患者さんの状況や希望を考慮しながら、実現可能なものとして設定する必要があります。
NOCを用いることで、看護師はより明確な目標を持ってケアを提供することができ、患者さんの状態変化を客観的に評価することができます。また、看護師間や医療チーム全体で共通の認識を持ってケアを進めることができるため、より質の高い看護の提供につながると期待されています。
項目 | 説明 |
---|---|
看護成果 | 患者さんの望ましい状態や変化。看護師が目指す患者さんの状態。 |
看護成果分類(NOC) | 看護成果を体系的に分類・定義したもの。患者さんの状態、行動、認識など様々な側面から捉えた看護成果を網羅。 |
NOCの役割 | 看護師が共通の言葉で患者さんの状態や目標を共有することを可能にする。 |
NOCを用いた看護計画 | 1. アセスメント 2. 看護診断 3. 患者さんに適切なNOCの選択 4. 具体的な目標設定 |
NOCを用いるメリット | – 明確な目標を持ってケアを提供できる – 患者さんの状態変化を客観的に評価できる – 医療チーム全体で共通の認識を持ってケアを進めることができる – 質の高い看護の提供につながる |
NOCとNANDAの関係
看護成果分類(NOC)と密接な関係にあるのが、北米看護診断協会(NANDA)が提唱する看護診断です。看護診断とは、患者さんの健康状態や生活の中で困っていることなどを、看護師の視点から専門的に判断したものです。
NOCは、このNANDAで明確にされた看護診断に基づいて、看護師がどのようなケアを提供することで患者さんの状態を改善していくのか、その具体的な目標を示すために使われます。 つまり、NANDAを用いることで患者さんの抱える問題を特定し、NOCを用いることで、その問題解決のために目指すべき看護の目標を設定する、という流れになります。
例えば、患者さんに「活動量の低下」という看護診断が下されたとします。この場合、NOCでは「活動耐性」や「移動能力」といった項目を目標として設定します。そして、「患者さんは1週間後には、介助なしにベッドから車椅子へ移動できるようになる」といった具体的な目標を設定することで、患者さん一人ひとりに合わせた、より効果的な看護を提供することが可能になるのです。
項目 | 説明 | 例 |
---|---|---|
看護診断(NANDA) | 患者さんの健康状態や生活の中で困っていることを、看護師の視点から専門的に判断したもの | 活動量の低下 |
看護成果分類(NOC) | 看護診断に基づいて、看護師がどのようなケアを提供することで患者さんの状態を改善していくのか、その具体的な目標を示すもの | 活動耐性 移動能力 |
看護計画 | NOCで設定した目標を達成するために、具体的な看護ケアの内容を記述したもの | 患者さんは1週間後には、介助なしにベッドから車椅子へ移動できるようになる |
NOCの構成
看護成果分類(NOC)は、看護師が患者さんのケアの成果を評価するための標準化された指標体系です。
NOCは、大きく7つのドメインに分類されます。これは、患者さんの健康状態を包括的に捉えるための枠組みを提供します。7つのドメインとは、健康増進、栄養、排泄、活動/休息、知覚/認知、自己知覚、役割関係です。それぞれのドメインは、さらに具体的なクラスに分類され、最終的には個々の成果指標に細分化されます。
各成果指標には、定義、測定尺度、参考文献などが記載されており、看護師はこれらを参考に、患者さんの状況に合わせた適切な指標を選択することができます。測定尺度は、5段階のリッカート尺度で表されることが多く、患者さんの状態の変化を客観的に評価することができます。例えば、「疼痛コントロール」という成果指標であれば、「全くコントロールできていない」から「完全にコントロールできている」までの5段階で評価します。
このように、NOCは、看護師が患者さんの状態を体系的に評価し、ケアの質を向上させるために有効なツールです。看護師は、NOCを用いることで、患者さん一人ひとりに合わせたケアを提供し、その成果を明確に示すことができます。
ドメイン | 説明 | 例 |
---|---|---|
健康増進 | 健康の維持・促進に関する成果 | 健康的なライフスタイル、病気の予防 |
栄養 | 栄養摂取と水分バランスに関する成果 | 適切な栄養摂取、水分バランスの維持 |
排泄 | 排泄機能に関する成果 | 尿失禁の改善、便秘の解消 |
活動/休息 | 活動と休息のバランスに関する成果 | 適切な運動、睡眠の質の向上 |
知覚/認知 | 感覚、認知、コミュニケーションに関する成果 | 痛みの軽減、意思決定能力の向上 |
自己知覚 | 自己認識、自己肯定感に関する成果 | 不安の軽減、自己肯定感の向上 |
役割関係 | 個人を取り巻く役割や人間関係に関する成果 | 家族関係の改善、社会参加の促進 |
NOCを使用するメリット
看護成果分類(NOC)は、患者さんの健康状態や治療による変化を評価するための標準化された指標です。NOCを使用することで、看護師間で統一された視点で患者さんの状態を評価することが可能になります。これまで、看護師によって評価基準が異なっていたり、経験年数によって評価にばらつきが生じてしまうことがありました。しかし、NOCを用いることで、評価のばらつきが減少し、より客観的な評価が可能になります。
また、NOCは患者さん自身の目標設定にも役立ちます。看護師はNOCの指標を参考にしながら、患者さんと一緒に具体的な目標を設定することができます。目標が明確になることで、患者さんはご自身の状態や治療の効果をより深く理解し、治療に対する意欲を高めることができます。
さらに、NOCを用いた評価データを蓄積していくことで、病院全体で質の高い看護を提供することに繋がります。蓄積されたデータは、より効果的な看護ケアの検討や、看護師の教育、看護研究などに活用することができます。このように、NOCは患者さんとってだけでなく、看護師にとっても、病院全体にとっても多くのメリットをもたらすものであるといえます。
NOCのメリット | 対象 | 内容 |
---|---|---|
評価のばらつき減少、客観的な評価 | 看護師 | 看護師間で統一された視点での患者評価が可能になり、経験年数による評価のばらつきを軽減できる |
患者自身の目標設定 | 患者 | 具体的な目標設定を患者と看護師が共有し、治療に対する意欲を高める |
質の高い看護提供 | 病院全体 | 評価データ蓄積による効果的な看護ケアの検討、看護師教育、看護研究への活用 |
NOCの活用事例
– NOCの活用事例糖尿病患者へのケア糖尿病患者に対するケアにおいて、NOC(看護成果分類)は患者さんの状態把握と効果的な看護介入に役立ちます。例えば、看護師がNANDAの看護診断名を用いて患者の状態を「自己健康管理の低下」と判断した場合を考えてみましょう。この場合、NOCでは「血糖コントロール」や「糖尿病に関する知識」といった具体的な成果指標を選択し、患者さんと共有します。 患者さんと一緒に、これらの指標を達成するための現実的で達成可能な目標を設定することが重要です。目標設定には、患者さんの生活背景、価値観、意欲などを考慮する必要があります。例えば、「血糖コントロール」を成果指標とする場合、「毎日の血糖値を目標範囲内に維持する」「低血糖や高血糖の発作を起こさない」といった具体的な目標を設定します。また、「糖尿病に関する知識」を成果指標とする場合は、「糖尿病の症状や合併症について説明できる」「適切な食事療法や運動療法について理解している」といった目標が考えられます。看護師は、設定した目標達成に向けて、患者さんの状態やニーズに合わせた看護介入を行います。食事療法の指導、運動療法の指導、薬剤療法の管理、自己血糖測定の指導など、多岐にわたる介入があります。そして、看護介入後、NOCの測定尺度を用いて、設定した目標にどれだけ近づけたのかを評価します。 測定尺度は、成果指標ごとに段階的に設定されており、客観的な評価を可能にします。評価結果に基づいて、看護計画の修正や新たな介入の検討を行います。このように、NOCは糖尿病患者さんの自己管理能力の向上、健康状態の改善に向けて、患者さんと看護師が共に目標を共有し、効果的なケアを提供するためのツールとして活用されています。
看護診断名(NANDA) | 看護成果分類(NOC) | 具体的な目標例 | 看護介入例 | 評価 |
---|---|---|---|---|
自己健康管理の低下 | 血糖コントロール | – 毎日の血糖値を目標範囲内に維持する – 低血糖や高血糖の発作を起こさない |
– 食事療法の指導 – 運動療法の指導 – 薬剤療法の管理 – 自己血糖測定の指導 |
NOCの測定尺度を用いて、設定した目標にどれだけ近づけたのかを評価する |
自己健康管理の低下 | 糖尿病に関する知識 | – 糖尿病の症状や合併症について説明できる – 適切な食事療法や運動療法について理解している |
– 食事療法の指導 – 運動療法の指導 – 薬剤療法の管理 – 自己血糖測定の指導 |
NOCの測定尺度を用いて、設定した目標にどれだけ近づけたのかを評価する |