心臓を助ける縁の下の力持ち:IABP
病院での用語を教えて
先生、この間ニュースで『大動脈内バルーンパンピング法』っていう治療法を見たんですが、どんな治療法かよく分からなかったんです。教えて下さい!
体の健康研究家
なるほどね。簡単に言うと、心臓の働きが弱くなった時に、風船のようなものを使って心臓を助ける治療法なんだ。
病院での用語を教えて
風船で心臓を助ける…? どうやってですか?
体の健康研究家
うん、心臓に近い大きな血管に風船を入れて、それを膨らませたり縮ませたりすることで、心臓が血液を送り出すのを手伝うんだよ。
大動脈内バルーンパンピング法(IABP)とは。
心臓の病気、特に急性心筋梗塞などで心臓の左心室がうまく動かなくなった場合に用いられる治療法の一つに、「大動脈内バルーンパンピング法」というものがあります。この治療法は、胸の下の方にある大きな血管(胸部下行大動脈)に、特殊な風船(バルーン)を入れます。この風船は、心臓の動きに合わせて膨らんだり縮んだりするように設計されており、心臓の働きを助ける効果があります。つまり、この風船がポンプのような役割を果たすことで、心臓が血液を送り出すのをサポートするのです。
心臓の危機を救う補助循環
人間の体において、心臓は休むことなく全身に血液を送り続ける、まさに生命の源泉といえます。しかし、加齢や生活習慣病など、様々な要因によって心臓の機能が低下し、十分な血液を送り出せなくなることがあります。 このような状態は心不全と呼ばれ、放置すると生命を脅かす危険性があります。 特に、急性心筋梗塞などによって急激に心機能が低下した場合には、一刻を争う緊急事態となります。
このような危機的な状況において、心臓を補助し、救命に繋がる重要な役割を担うのが補助循環という方法です。その中でも、「大動脈内バルーンパンピング法(IABP)」は、迅速かつ効果的に心臓をサポートできる治療法として広く用いられています。これは、カテーテルと呼ばれる細い管を足の付け根の血管から挿入し、心臓のすぐ近くに位置する大動脈まで進めます。カテーテルの先端には風船(バルーン)が付いており、心臓の拍動に合わせて膨らませたり、しぼませたりすることで、心臓が血液を送り出すポンプ機能を補助する仕組みです。 IABPは、心臓自身の負担を軽減することで、心筋の回復を促し、その後の治療効果を高めることが期待できます。
項目 | 説明 |
---|---|
心臓の役割 | 生命維持に不可欠な臓器であり、休むことなく全身に血液を送るポンプ機能を担う。 |
心不全 | 加齢や生活習慣病などにより心臓の機能が低下し、十分な血液を送り出せなくなる状態。放置すると生命を脅かす危険性がある。 |
急性心筋梗塞 | 心筋への血液供給が急激に阻断されることで、心筋が壊死してしまう病気。迅速な治療が必要な緊急事態となる。 |
補助循環 | 心臓の機能が低下した際に、心臓を補助して血液循環を維持する方法。 |
大動脈内バルーンパンピング法(IABP) | カテーテルを用いて心臓の大動脈内にバルーンを挿入し、心臓の拍動に合わせてバルーンを膨張・収縮させることで心臓のポンプ機能を補助する治療法。 |
IABPの効果 | 心臓の負担を軽減することで心筋の回復を促し、その後の治療効果を高める。 |
大動脈に挿入されるバルーン
心臓の働きを助けるために、「IABP」と呼ばれる治療法があります。これは、足の付け根にある太い血管から、細い管であるカテーテルを挿入し、その先端にバルーンを取り付けたものです。
カテーテルは血管の中を通って心臓近くまで進められ、先端のバルーンは大動脈と呼ばれる心臓から血液が送り出される最も太い血管に留置されます。
このバルーンは、心臓の動きに合わせて膨らんだり縮んだりするように設計されています。心臓が収縮して血液を送り出す際にバルーンは縮み、血液の流れをスムーズにします。逆に、心臓が拡張して血液をため込む際にはバルーンが膨らむことで、心臓への血液の供給を増やします。
このように、IABPは心臓の負担を軽減し、血液循環を改善することで、心臓の働きを効果的にサポートします。
治療法 | 目的 | 方法 | 効果 |
---|---|---|---|
IABP | 心臓の負担軽減、血液循環の改善 | 1. 足の付け根の血管からカテーテル挿入 2. カテーテルの先端のバルーンを大動脈に留置 3. 心臓の動きに合わせてバルーンを膨張・収縮 |
・心臓の収縮時:バルーン収縮により血液の流れをスムーズにする ・心臓の拡張時:バルーン膨張により心臓への血液供給を増やす |
心臓の負担を軽減する仕組み
私たちの体にとって、心臓は休むことなく血液を送り出すポンプのような役割を担っています。しかし、心臓が病気や怪我などによって弱ってしまうと、十分な量の血液を送り出すことができなくなり、生命維持が困難になることがあります。このような状況において、心臓の負担を軽減し、血液循環をサポートするために用いられるのが「大動脈内バルーンパンピング(IABP)」という治療法です。
IABPは、風船のように膨らんだり縮んだりするバルーンを備えたカテーテルを脚の付け根の動脈から挿入し、心臓のすぐ近くに位置する大動脈内まで進めることで行われます。このバルーンは、心臓の動きと同期するように、心臓が収縮するタイミングでしぼみ、拡張するタイミングで膨らみます。
心臓が収縮し血液を全身に送り出す際には、バルーンはしぼんだ状態になります。これにより、心臓から送り出された血液がスムーズに流れるスペースが広がり、心臓は少ない力で効率的に血液を全身に送り出すことができるようになります。一方、心臓が拡張し血液を心臓に戻す際には、バルーンは膨らみます。この膨らみによって大動脈内の圧力が上昇し、心臓に戻る血液量が増加します。その結果、心臓はより多くの血液を体に送り出すための準備を整えることができるのです。
このように、IABPは心臓の負担を軽減し、心臓が回復するまでの間、生命維持に必要な血液循環をサポートする上で重要な役割を果たします。
心臓の動き | IABPバルーンの状態 | 効果 |
---|---|---|
収縮時(血液を全身に送り出す) | しぼむ | – 血液が流れるスペースが広がる – 心臓は少ない力で効率的に血液を送り出せる |
拡張時(血液を心臓に戻す) | 膨らむ | – 大動脈内の圧力上昇 – 心臓に戻る血液量が増加 – 心臓はより多くの血液を送り出す準備を整える |
様々な心臓疾患に対応
心臓の疾患は命に関わる深刻なものも多く、その治療法は多岐にわたります。近年、様々な心臓疾患に対して、大動脈内バルーンパンピング(IABP)という治療法が注目されています。
IABPは、急性心筋梗塞の治療に効果を発揮するだけでなく、その他多くの心臓疾患にも広く応用されています。例えば、重症化した心不全や、心臓の筋肉に異常をきたす心筋症などの治療にも用いられています。さらに、心臓手術後、心臓の機能が十分に回復するまでの間、心臓の負担を軽減し、回復を促進する目的でも使用されます。
IABPは、特に心臓移植が必要な患者さんにとって、心臓移植までの貴重な時間を稼ぐための手段として重要な役割を担っています。また、他の治療法と併用することで、その効果を高める補助的な役割も期待されています。このように、IABPは多様な心臓疾患に対応できる、重要な治療法として、医療現場でその存在感を増しています。
治療法 | 対象となる心臓疾患 | 効果・目的 |
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大動脈内バルーンパンピング(IABP) |
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チーム医療による総合的な治療
心臓の働きを助ける医療機器であるIABP(大動脈内バルーンパンピング)は、医師、看護師、臨床工学技士など、多くの医療スタッフの専門知識と連携によって安全かつ効果的に運用されます。
チーム医療においては、医師は患者さんの心臓の状態を診断し、IABPの必要性や治療方針を決定します。看護師は、患者さんの状態を常に観察し、血圧や脈拍などのバイタルサインを測定することで、IABPによる効果や副作用を注意深く見守ります。臨床工学技士は、IABPの操作や管理を行い、機器が正常に作動しているかを常に確認します。
このように、IABPによる治療は、それぞれの専門性を生かした医療スタッフによるチームワークによって支えられています。患者さんの状態に関する情報を共有し、協力して治療にあたることで、より安全で効果的な医療を提供することが可能となります。そして、患者さんの状態を常に監視し、バルーンの圧力やタイミングを細かく調整することで、一人ひとりの患者さんに最適な治療効果が得られるよう、チーム全体で日々努力を重ねています。
医療スタッフ | 役割 |
---|---|
医師 | 心臓の状態診断、IABPの必要性や治療方針の決定 |
看護師 | 患者さんの状態観察、バイタルサイン測定による効果や副作用の確認 |
臨床工学技士 | IABPの操作と管理、機器の作動確認 |