総合健康ガイド

心の問題

極限体験がもたらす心の傷:PTSDとは

「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」という言葉を耳にしたことはありますか? これは、英語の「Post Traumatic Stress Disorder」の略称で、文字通り、心の傷跡を抱えてしまう病気のことを指します。 では、どのような時にこの心の傷はついてしまうのでしょうか? 大きな事故や災害に巻き込まれた時、あるいは戦争や犯罪に巻き込まれた時など、私達の身の安全が脅かされるような出来事を経験すると、心には大きな衝撃を受けます。 このような経験を「トラウマ」と呼びますが、PTSDは、このトラウマとなった経験が頭から離れず、様々な精神的な症状に悩まされる状態を指します。 例えば、トラウマとなった出来事が、まるでフラッシュバックのように、突然、鮮明に思い出されたり、悪夢にうなされたりする、といった症状が現れます。 また、不安や恐怖を感じやすくなったり、イライラしやすくなったり、集中力の低下や不眠に悩まされることもあります。 PTSDは、決して特別な人がかかる病気ではありません。 誰にでも起こりうる心の病気であることを理解し、適切なケアを受けることが大切です。
救急

救急現場の必需品:アンビューバッグ

- アンビューバッグとはアンビューバッグは、呼吸が止まってしまったり、呼吸をすることが困難になってしまった患者の肺に、人の手で空気を送り込むための医療機器です。 自己呼吸が難しい状況でも、アンビューバッグを用いることで、肺に酸素を送り込み、二酸化炭素を排出することができます。 この医療機器は、別名「バッグバルブマスク」とも呼ばれます。しかし、デンマークにあるアンビュー社の製品が広く世界で使われていることから、「アンビューバッグ」という名前の方が浸透しています。 アンビューバッグは、主に次の三つの部品から構成されています。 1. バッグ 手で握ったり、離したりすることで、空気を出し入れする部分です。材質はポリ塩化ビニルやシリコンゴムなどが一般的で、透明であるため、中の空気の量が一目でわかります。 2. バルブ 空気の流れを一方通行にするための弁です。バッグを握ると、バルブが開いて空気が患者に送られ、手を離すとバルブが閉じて、空気が逆流するのを防ぎます。 3. マスク 患者の顔に密着させて、空気を漏らさずに肺に送り込むための部分です。顔の形に合わせて、様々なサイズがあります。 救急医療の現場において、アンビューバッグは人工呼吸を行うための非常に重要な医療機器であり、救急隊員や医療従事者にとって、なくてはならないものです。
産婦人科

アンドロゲン不応症:男性なのに女性?

私たちは日常生活において、性別を男性と女性の二択として捉えがちです。しかし、生物学的な観点から見ると、性の決定は非常に複雑なプロセスであり、一概に断言できるものではありません。 まず、性の決定には複数の要素が関わっています。染色体、生殖腺、ホルモン、外性器などは、それぞれが重要な役割を担っており、これらの要素が複雑に絡み合うことで、最終的な性が決定されます。 例えば、染色体においては、一般的に男性はXY染色体、女性はXX染色体を持ちますが、染色体異常によって、この組み合わせと異なる場合も存在します。また、生殖腺は男性であれば精巣、女性であれば卵巣を指しますが、その発達にはホルモンが深く関わっています。さらに、ホルモンの影響は外性器の形成にも及びます。 このように、一見、単純に見える男女の区別も、実際には多様な要素が複雑に相互作用することで成り立っているのです。 性を決定するメカニズムは多岐にわたり、未だ解明されていない部分も多いと言えるでしょう。
泌尿器

尿道炎:原因、症状、治療法について

- 尿道炎とは尿道炎は、尿を膀胱から体外へと送り出す際に通る管である尿道に炎症が起きる病気です。この炎症は、ほとんどの場合、細菌やウイルスといった微生物が尿道に侵入し、増殖することで引き起こされます。男性の場合、尿道は陰茎の先端まで続いており、女性の場合は膣の上部に開口部があります。尿道炎を発症すると、男女ともに排尿時に痛みや不快感を伴うことが多く、場合によっては残尿感や頻尿といった症状が現れることもあります。また、尿の色が濁ったり、血が混じったりすることもあります。尿道炎の原因となる微生物は様々ですが、中でも性行為によって感染するクラミジアや淋菌によるものが多くを占めます。これらの感染症は性感染症(STD)とも呼ばれ、早期に適切な治療を行わないと、将来的に不妊症などの合併症を引き起こす可能性もあります。一方、性行為とは関係なく、大腸菌などの細菌が尿道に侵入することで発症する尿道炎もあります。特に女性は、肛門と尿道の距離が男性に比べて短いため、大腸菌が尿道に侵入しやすく、尿道炎を起こしやすい傾向にあります。尿道炎は、原因や症状、重症度などによって治療法が異なります。そのため、自己判断で市販薬を使用するのではなく、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。
脳・神経

理解を超えた信念:一次妄想とは

心の病と聞いて、多くの人が不安や落ち込みといった症状を思い浮かべるかもしれません。しかし、それ以外にも、「妄想」といった、現実認識が歪んでしまう症状が現れることがあります。 妄想とは、実際にはあり得ないことを、真実だと強く信じ込んでしまう状態のことを指します。例えば、周りの人が自分を陥れようとしていると感じる「被害妄想」、誰かに見張られている、盗聴されていると感じる「関係妄想」、テレビやラジオを通して自分にメッセージが送られてくると感じる「注解釈」などが挙げられます。 このような妄想は、統合失調症などの精神疾患において多く見られる症状として知られています。統合失調症は、思考や感情、行動に影響を及ぼす深刻な病気であり、妄想はその症状の一つとして現れることがあります。また、うつ病や不安障害などの心の病でも、症状が重い場合に妄想が現れることがあります。 もし、自分や周りの人が妄想のような症状を持っていると感じる場合には、早めに医療機関に相談することが大切です。適切な治療を受けることで、症状を改善し、より良い生活を送ることができる可能性があります。
看護技術

医療現場で使われる略語:W/C

病院や介護施設に行くと、よく見かける「W/C」という表記。これは一体何を表しているのでしょうか? 「W/C」は、英語の「Wheelchair」を省略した言葉で、日本語では「車椅子」という意味になります。つまり、「W/C」と表記されている場所は、車椅子の方が利用できるトイレのことを指します。 車椅子を利用する方にとって、トイレは段差や扉の幅など、使い勝手に大きく影響する場所です。そのため、病院や介護施設では、車椅子の方でも安心して利用できるよう、広々としたスペースや手すりなどを備えた専用のトイレが設置されていることが多く、それを分かりやすく「W/C」と表示しているのです。 カルテや指示書などで患者さんの状態を伝える際にも、「W/C」という略語が使われます。これは、その患者さんが移動に車椅子を必要とするということを医療従事者間で共有するための大切な情報となります。 このように、「W/C」は車椅子に関連した様々な意味を持つ略語として、医療や介護の現場で広く使われています。
小児科

子どもの健康を守る!小児科の世界

小児科とは、生まれたばかりの赤ちゃんから15歳くらいまでの成長期にある子供たちの健康を守るために、病気の診断や治療を行う診療科です。 子供たちは常に成長し変化していくため、大人のように同じ病気でも症状や進行が大きく異なることがあります。 そのため、小児科では、子供たちの体の成長段階に合わせて、病気の診断や治療を行う必要があります。 例えば、同じ熱が出た場合でも、乳幼児期では、肺炎や髄膜炎などの重い病気が隠れている可能性がありますが、学童期では、風邪などの比較的軽い病気であることが多いです。 また、薬の量や種類も、子供の体の大きさに合わせて慎重に決める必要があります。 このように、小児科は、子供の成長と発達を考慮した専門的な知識と技術が求められる診療科と言えるでしょう。
心の問題

昇華:困難を乗り越える心の力

- 昇華とは心のバランスを保つための、社会的に認められる行動や創造活動へのエネルギーの転換人は誰しも、受け入れがたい状況や抑圧された感情、満たされない欲求などに直面することがあります。このような時、心は自然とバランスを保とうとして、様々な働きをします。その働きの一つに、「昇華」と呼ばれるものがあります。昇華とは、心理学において、これらの困難な状況や感情を直接的に表現するのではなく、社会的に受け入れられるような健全な行動や創造的な活動へと転換することを指します。例えば、激しい怒りを感じた時に、その怒りをそのままぶつけるのではなく、運動や音楽、創作活動などに打ち込むことで、エネルギーをプラスの方向へ転換させる行動が挙げられます。昇華は、自我が持つ防衛機制の一つとして考えられています。防衛機制とは、心の安定を維持するために、受け入れがたい感情や衝動を無意識的に処理する心の働きのことを指します。昇華は、このような防衛機制の中でも、特に建設的で成熟した方法であるとされています。昇華を通して、私たちは困難な状況を乗り越え、さらには、新たな成長や創造性を生み出すことができるのです。日々の生活の中で、昇華を意識することで、より健やかで豊かな日々を送ることができるかもしれません。
検査

生命を支える電解質:役割と重要性

私たちの身体は約60%が水分でできており、その水分には様々な物質が溶け込んでいます。その中でも、水に溶けると電気を帯びるようになる物質のことを「電解質」と呼びます。電気を帯びた物質のことを「イオン」と呼ぶため、電解質は水に溶けるとイオンになる物質とも言えます。 私たちの身体の中には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、様々な種類の電解質が存在し、それぞれ重要な役割を担っています。例えば、ナトリウムは体内の水分量を調整したり、神経伝達をスムーズに行うために欠かせません。また、カリウムは筋肉の収縮や心臓の働きを正常に保つために、カルシウムは骨や歯を作るだけでなく、血液凝固や筋肉の収縮にも関わっています。 これらの電解質は、私たちの身体の中で常に一定の濃度に保たれている必要があり、そのバランスが崩れると、脱水症状や筋肉の痙攣、神経伝達の異常など、様々な体調不良を引き起こす可能性があります。電解質のバランスを維持するためには、日頃からバランスの取れた食事を心がけ、汗をかいた時などは、スポーツドリンクや経口補水液などで電解質を補給することが大切です。
産婦人科

命のルート:臍静脈の役割

母親のお腹の中で育つ赤ちゃんにとって、母親の存在はまさに絶対的です。母親から栄養や酸素をもらい、不要なものを渡して処理してもらう。その大切な役割を担っているのが、まるで命綱のように太い管である「臍帯」です。 臍帯の内部には、動脈と静脈が通っていて、それぞれが重要な役割を担っています。動脈は、赤ちゃんから母親へ、不要になったものや二酸化炭素などを運ぶ役割を担います。一方、今回注目する臍静脈は、母親から赤ちゃんへ、酸素や栄養を豊富に含んだ血液を送るという、まさに生命線ともいえる重要な役割を担っています。 臍帯は、妊娠期間中ずっと、赤ちゃんが成長するために必要な物質を運ぶ役割を果たし続けます。そして、赤ちゃんが無事に生まれ、産声を上げた後に、その役割を終え、母親と赤ちゃんから切り離されます。その後、臍帯の一部は体内に吸収され、残りは乾燥して「へその緒」として、私たちが生まれた証として残るのです。 このように、臍帯は母親と胎児を繋ぐ、まさに命の架け橋といえます。その中で、今回注目した臍静脈は、酸素や栄養を赤ちゃんに届けるという重要な役割を果たし、赤ちゃんの成長を支えています。
検査

医療の現場を支えるME機器

- ME機器とはME機器とは、「Medical Engineering」の略語であるMEを冠する機器のことです。これは、日本語では「医用工学」と訳され、工学の技術を医療分野に応用して開発された機器のことを指します。私たちの身近にも、ME機器は数多く存在します。例えば、毎日のように健康管理に用いる体温計や、病院で医師が使用する聴診器などもME機器に含まれます。体温計は、温度センサーを用いて体温を正確に測定し、聴診器は、 chestpieceと呼ばれる集音部で体の音を大きくすることで、医師が聴診しやすくしています。ME機器は、特に病院などの医療現場において、診断や治療、患者の状態を監視するために幅広く活用されています。血液検査を行う際に血液中の成分を分析する血液分析装置もME機器の一つです。また、レントゲン撮影に使用されるX線撮影装置も、X線を照射して体の内部を画像化するME機器であり、医師の診断を大きくサポートしています。このように、ME機器は、私たちの健康を守る上で欠かせない存在となっています。近年では、人工知能(AI)やIoT技術を搭載した、より高度なME機器の開発も進んでおり、医療現場のさらなる発展に貢献することが期待されています。
脳・神経

感情:心の風景

私たちは毎日、様々な出来事に遭遇し、喜怒哀楽といった様々な心の動きを感じながら生活しています。この心の動きこそが感情と呼ばれるものであり、喜びや楽しみ、怒りや悲しみといった、いわば心の風景のようなものです。 この心の風景は、常に同じ場所にとどまっているわけではなく、状況や周囲の人間関係、あるいは自分自身の体調などによって、まるで景色が移り変わるように変化していきます。そして、この変化は私たちの思考や行動に大きな影響を与えています。例えば、大好きな人からプレゼントをもらって嬉しいと感じた時には、自然と笑顔がこぼれ、優しい言葉をかけてしまうでしょう。反対に、理不尽な扱いを受けたり、大切なものを壊されたりして怒りを感じた時には、相手に厳しい言葉を投げかけたり、場合によっては手が出てしまうこともあるかもしれません。 このように、感情は私たちの行動を強く突き動かす原動力のひとつであり、周囲の人間関係や自分自身の行動、ひいては人生そのものに大きな影響を与える可能性を秘めているのです。
泌尿器

医療現場の必需品:フォーリーカテーテル

- フォーリーカテーテルとは フォーリーカテーテルとは、尿が出にくい、または自分の意思で排尿することが難しい場合に、膀胱内に直接挿入して尿を体外に排出するための医療用カテーテルです。 このカテーテルは、細い管状の形をしており、その先端には小さな風船(バルーン)が付いています。カテーテルを尿道から挿入し、膀胱内に到達したら、この風船に水または生理食塩水を注入して膨らませます。すると、風船が膀胱内で固定されるため、カテーテルが自然に抜け落ちてしまうことを防ぐことができます。この特徴的な構造から、フォーリーカテーテルはバルーンカテーテルとも呼ばれています。 フォーリーカテーテルは、尿閉、前立腺肥大症、脊髄損傷、神経因性膀胱などの疾患、あるいは手術中や手術後、重篤な状態の患者さんなど、様々な場面で使用されています。 カテーテルを留置したままにする期間は、患者さんの状態や治療の目的によって異なりますが、長期間にわたる使用では、尿路感染症などの合併症のリスクも考慮する必要があります。そのため、医師は定期的にカテーテルの交換や、必要であればカテーテルを抜去するタイミングを判断します。
小児科

胎児循環の立役者:動脈管

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時、まだ肺で呼吸ができません。そのため、お母さんから送られてくる酸素を効率的に体全体に巡らせる特別なルートが必要です。これが動脈管の役割です。 通常、心臓から肺へ送られた血液は、肺で酸素を取り込み、再び心臓に戻ってきます。しかし、胎児の場合、肺はまだ十分に機能していないため、肺に多くの血液を送る必要はありません。そこで、動脈管という血管が肺動脈と大動脈をつないでいます。 動脈管があることで、心臓から送り出された血液は、肺を通らずに直接大動脈へ流れ込みます。これにより、お母さんから胎盤を通して送られてきた酸素を豊富に含んだ血液が、胎児の体全体に効率よく届けられます。 つまり、動脈管は、胎児が肺呼吸を始めるまでの間、酸素を体全体に供給するために非常に重要な役割を担っているのです。
看護技術

中心静脈カテーテル(CVC)とは?

- 中心静脈カテーテルとは中心静脈カテーテル(CVC)とは、心臓に近い太い静脈である中心静脈に挿入して使用する管状の医療器具です。中心静脈は、末梢静脈に比べて血管が太く、血流が豊富なため、刺激の強い薬剤や高カロリー輸液などを安全に投与するために用いられます。カテーテルの先端は、鎖骨下静脈や内頸静脈といった、体の表面に近い比較的太い静脈から挿入し、心臓近くの太い静脈である上大静脈まで到達するように留置されます。カテーテルの材質は、シリコンやポリウレタンなど、生体適合性に優れた素材が使用されています。中心静脈カテーテルは、長期にわたる点滴治療や、抗がん剤治療、高カロリー輸液が必要な患者さんなどに広く用いられています。具体的には、以下のような場合に、中心静脈カテーテルが使用されます。* 末梢静脈からの点滴が困難な場合* 血管刺激性の強い薬剤の投与が必要な場合* 長期にわたる栄養管理が必要な場合* 血液透析が必要な場合* 中心静脈圧の測定が必要な場合中心静脈カテーテルは、患者さんの負担を軽減し、より安全で効果的な医療を提供するために欠かせない医療器具の一つとなっています。
心の問題

ミラーリングの効果と注意点

- ミラーリングとはミラーリングとは、人と人とのやり取りの中で、相手の仕草や話し方、行動などをまるで鏡のように真似てしまうことを指します。例えば、会話中に相手が腕を組んだら自分も腕を組んでみたり、相手が笑顔を見せたらつられて自分も笑顔を返したりするといった行為が挙げられます。このような行為は、私たちが意識的に行っている場合もありますが、実は無意識のうちに起こっている場合の方が多く見られます。これは、人間が生まれつき持っている、他人との共感を深めようとする本能的な働きによるものだと考えられています。ミラーリングは、円滑なコミュニケーションを築く上で重要な役割を果たしています。人は、自分と似たような仕草や行動をする相手に親近感を抱きやすく、それが安心感や信頼関係に繋がっていくからです。逆に、ミラーリングが全くないと、相手は「自分に興味がないのだろうか」「話を聞いてくれていないのだろうか」と感じ、コミュニケーションに不調が生じる可能性もあります。ただし、ミラーリングはあくまでも自然な範囲で行うことが大切です。わざとらしい行動は相手にも伝わりやすく、不信感を与えてしまうことになりかねません。相手の行動をさりげなく観察し、あくまでも自然に真似をするように心がけましょう。
外科

命を支える管:シャント機能不全とは?

- シャントとは私たちの体には、血液や体液が流れるための血管や臓器など、様々な管が張り巡らされています。これらの管は、通常はそれぞれ独立して機能しており、血液や体液は決められた経路を通って全身を循環しています。しかし、病気や怪我などによって、これらの管が正常に機能しなくなることがあります。例えば、腎臓病になると、血液をきれいにする働きが低下し、体内に老廃物が溜まってしまいます。また、水頭症になると、脳の中の脳脊髄液が過剰に溜まり、脳を圧迫してしまいます。このような場合に、人工的に管をつないで、体液の迂回路を作ったり、流れを調整したりする医療技術があります。これが「シャント」です。シャントは、本来つながっていない血管や臓器の間に、人工的に作った経路のことを指します。体液を迂回させたり、流れを調整したりするために用いられます。例えば、血液透析が必要な腎臓病の患者さんの場合、血液を浄化する装置(人工透析器)にスムーズに血液を送り込むために、腕の動脈と静脈の間にシャントを作ります。このシャントは、人工透析を受ける上で欠かせないものです。また、脳に水がたまる水頭症の患者さんの場合、過剰に溜まった脳脊髄液を腹腔(お腹の中)などに流すシャントが用いられます。脳脊髄液は、このシャントを通して腹腔に吸収され、脳の圧迫を軽減することができます。このように、シャントは様々な病気の治療に役立つ重要な医療技術です。患者さんの状態や治療目的に合わせて、適切なシャントが選択されます。
心の問題

二次妄想:理解可能な心の影

- 二次妄想とは何か 二次妄想とは、その人の性格や過去の経験、置かれている環境、精神状態など、様々な心理的な要因が複雑に絡み合って引き起こされると考えられる妄想のことです。妄想とは、客観的な証拠がないにもかかわらず、ある考えにとらわれてしまい、それを訂正することが難しい状態を指します。 例えば、仕事で大きな失敗をしてしまったり、大切な人と別れたり、過酷な状況に置かれたりすることで、極度の不安や強いストレスを感じることがあります。また、過去のつらい経験やトラウマが、ふとした瞬間に蘇ってくることもあるでしょう。 このような場合、心が不安定になり、現実を直視することが困難になることがあります。そして、その苦痛から逃れるために、あるいは心のバランスを保つために、現実とは異なる考えにとらわれてしまうことがあります。これが二次妄想です。 二次妄想の内容は、その人が抱えている心理的な問題と深く関連していることが多い点が特徴です。例えば、強い不安を抱えている人は、周りの人が自分を騙そうとしているという被害的な内容の妄想を抱きやすくなることがあります。 二次妄想は、誰にでも起こりうる可能性があります。しかし、だからといって、決して軽視して良いものではありません。もしも、自分自身や周りの人が、現実離れした考えにとらわれていると感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。
小児科

乳児に見られる原始姿勢反射

- 原始姿勢反射とは生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ周囲の世界を認識し、自分の意思で体を動かすことができません。しかし、外界からの刺激に対して、決まったパターンで反応する、生まれながらの能力を持っています。これを原始姿勢反射と呼びます。原始姿勢反射は、まだ未熟な脳を持つ赤ちゃんが、生き延び、成長していくために備わっている、重要な機能と考えられています。例えば、赤ちゃんの手のひらに何かが触れると、ぎゅっと握り返す動作は、把握反射と呼ばれる原始姿勢反射の一種です。これは、母親など、保護者に抱きついて離れないようにするための、生存本能的な行動の名残と言われています。また、乳児期に現れる様々な運動能力の発達にも、原始姿勢反射は深く関わっていると考えられており、そのメカニズムの解明が研究されています。これらの反射は、成長に伴い脳神経系が成熟することで、徐々にその役割を終え、生後半年から1年程度で消失していきます。もし、これらの反射が適切な時期に現れなかったり、消失が遅れたりする場合は、脳の発達に何らかの問題がある可能性も考えられるため、医師の診察を受けることが推奨されます。
看護技術

新生児を守る移動式ベッド:コット

- コットとは病院の産婦人科や小児科でよく見かける、生まれたばかりの赤ちゃんを寝かせておく小さなベッド。それが「コット」です。大人のベッドとは違い、赤ちゃんのためにと考え抜かれた様々な工夫が凝らされています。生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ体温調節機能が未熟です。そのため、コットには保温性の高い素材が使われており、急な温度変化から赤ちゃんをやさしく守ります。また、移動に便利なようにキャスターが付いているのも特徴です。病院内での移動はもちろん、お母さんのベッドサイドに赤ちゃんを連れてくる際にも、スムーズに移動できます。コットは、赤ちゃんの安全にも配慮して作られています。柵は高く設計されており、赤ちゃんが誤って転落するリスクを最小限に抑えます。また、素材も赤ちゃんに優しいものが選ばれており、肌触りが良く、アレルギーの心配も軽減されます。このように、コットは赤ちゃんの安全と快適さを第一に考えられた、病院になくてはならない存在と言えるでしょう。
循環器

冠状動脈疾患集中治療室:心臓を守る最前線

心臓は、全身に血液を送り出すポンプのような役割を担っており、私たちの体にとって非常に重要な臓器です。その心臓に病気を持つ患者さんにとって、集中的な治療と注意深い経過観察を行うための専門的な場が必要となります。それが、心臓疾患に特化した集中治療室、冠状動脈疾患集中治療室(CCU)です。 CCUでは、心臓の状態を24時間体制で監視し、常に変化に気を配っています。心電図や血圧、血液中の酸素濃度などを計測するモニターが設置され、患者さんの状態を詳細に把握しています。そして、もしもの場合に備え、医師や看護師が迅速に対応できる体制を整えています。 CCUに入院される患者さんは、重い心臓病を患っていることが多く、容態が急変することも少なくありません。心筋梗塞や不整脈、心不全など、命に関わる病気が発生した場合でも、CCUでは、高度な医療技術と専門知識を持つ医療スタッフが、患者さんの命を守るため、全力を尽くします。 CCUは、心臓病の患者さんにとって、まさに生命線と言える重要な役割を担っています。
循環器

命を支える技術:経皮的心肺補助法

心臓と肺は、私たちが生きていく上で欠かせない臓器です。どちらも休むことなく働き続け、血液を循環させ、体全体に酸素を供給しています。しかし、病気や怪我などによって、心臓や肺の機能が著しく低下してしまうことがあります。このような状態になると、生命の危機に瀕してしまう可能性があります。 経皮的心肺補助法(PCPS)は、心臓や肺の機能が著しく低下した患者さんの命を繋ぐための重要な医療技術です。これは、心臓と肺の働きを一時的に代替することで、これらの臓器に休息を与えることを目的とした治療法です。 PCPSでは、まず太ももの付け根や首などの血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入します。そして、このカテーテルを通して血液を体外に取り出し、人工心肺装置に接続します。人工心肺装置は、血液から二酸化炭素を取り除き、酸素を供給する役割を担います。その後、酸素を豊富に含んだ血液は再び体内に戻されます。 PCPSによって心臓と肺を休ませることで、本来であれば回復が難しいような重症な状態であっても、患者さんの状態が改善する可能性があります。心臓や肺の機能が回復するまでの間、PCPSはまさに「命の橋渡し」として、多くの患者さんの命を救っています。
歯科・口腔

体の入り口、口腔の構造と機能

私たちが毎日当たり前のように行っている食事や会話、呼吸。これら全てにおいて、口腔は非常に重要な役割を担っています。 まず、口腔は栄養を摂取するための最初の入り口です。食べ物を口唇で捕らえ、歯で細かく噛み砕きます。この時、舌が食べ物を喉の奥へと送り込むのを助けるだけでなく、唾液と食べ物を混ぜ合わせることで、飲み込みやすい食塊へと変化させていきます。 そして、口腔は「話す」という行為にも深く関わっています。歯と舌、そして口唇の複雑な動きによって、様々な音を作り出すことができます。私たちが考えや感情を言葉に乗せて相手に伝えることができるのは、口腔の働きのおかげと言えるでしょう。 さらに、口腔は呼吸にも関与しています。鼻で呼吸することが難しい場合、私たちは口を使って呼吸を行います。特に、運動時など多くの酸素が必要な状況では、口呼吸が重要な役割を果たします。このように、口腔は私たちが生きていく上で欠かせない様々な機能を担っている、まさに生命維持に必須の器官なのです。
泌尿器

膀胱瘻:尿道を使わない排尿手段

- 膀胱瘻とは膀胱瘻とは、尿の通り道である尿道ではなく、お腹に開けた小さな穴を通して、膀胱の中の尿を体外に排出するための処置のことです。 通常、尿は腎臓で作られ、尿管という管を通って膀胱に運ばれ、膀胱がいっぱいになると尿道を通って体外に排出されます。しかし、様々な原因でこの尿の通り道がうまく機能しなくなることがあります。例えば、尿道が狭くなったり塞き止められたりすると、尿がスムーズに流れなくなります。また、膀胱自体に問題がある場合も、尿を正常に排出することが難しくなります。このような場合に、尿を体外に出すための新たな道として、膀胱瘻が作られます。具体的には、手術によってお腹に小さな穴を開け、その穴と膀胱を繋ぎ合わせます。そして、その穴にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、尿を体外に排出します。膀胱瘻は、尿路の閉塞や膀胱の機能障害など、様々な病気の治療法として用いられます。膀胱瘻は、尿閉などの辛い症状を和らげ、生活の質を向上させるために非常に有効な手段です。しかし、一方で、膀胱瘻の管理には注意が必要です。カテーテルの定期的な交換や清潔を保つことが重要であり、合併症のリスクもあります。そのため、医師から適切な指導を受け、正しく管理することが大切です。
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