「し」

目・眼科

色の見え方の不思議:色覚検査の世界

- 色覚検査とは色覚検査とは、その名の通り、色がどのように見えているかを調べる検査です。私たちが普段見ている色とりどりの世界は、実は人によって微妙に異なって見えることがあります。これは、眼球の奥にある網膜という部分にある、光を感じる細胞である視細胞の働きが人それぞれ異なるためです。 視細胞には、明るい場所で働く錐体細胞と、暗い場所で働く桿体細胞の二種類があります。錐体細胞はさらに、赤、緑、青の光にそれぞれ反応する3種類があり、これらの細胞が受け取る光の強さのバランスによって、私たちは様々な色を認識しています。 色覚検査では、色の見え方の違いを調べることによって、これらの視細胞が正常に機能しているかを調べます。具体的には、色のついた図形や数字を用いたテストを行い、色の判別能力を測定します。 色覚検査の結果から、視細胞の状態を把握し、色覚に異常がないか、ある場合はどの程度なのかを判断します。色覚異常には、先天的なものと、病気やケガなど後天的なものがあります。先天的な色覚異常は、男性に多く見られ、遺伝によって起こります。後天的な色覚異常は、網膜や視神経の病気、糖尿病などが原因で起こることがあります。 色覚検査は、色覚異常の早期発見や、進み具合の確認、適切な治療やサポートにつなげるために重要な検査です。
外科

チーム医療で立ち向かう四肢外傷

- 四肢外傷とは人間の身体は、大きく頭と胴体、そして腕と脚からなる四肢に分けることができます。このうち、腕と脚をまとめて四肢と呼びますが、この部分に負った怪我のことを四肢外傷と呼びます。つまり、腕の骨折や足の捻挫などは、すべて四肢外傷に含まれるのです。ただし、一口に四肢外傷と言っても、その程度は軽いものから生命に関わる重いものまで様々です。例えば、日常生活で起こりやすい打撲や捻挫なども四肢外傷に含まれます。多くの人は、これらの怪我を経験したことがあるのではないでしょうか。このように、四肢外傷は、私たちにとって決して珍しいものではなく、むしろ身近なものと言えるでしょう。一方で、医療現場において「四肢外傷」という言葉が使われる場合、骨折した骨が皮膚を突き破る開放骨折や、血管や神経に損傷を伴うような、重症な状態であることを指すことが多いです。このような重度の四肢外傷は、日常生活で起こることは稀ですが、交通事故や高所からの転落など、大きな衝撃が身体に加わることで発生する可能性があります。このように、四肢外傷は軽度のものから重度のものまで、幅広い怪我を含みます。そして、その治療法も怪我の程度によって大きく異なります。軽度の打撲や捻挫であれば、安静や湿布などの処置で自然に治癒することがほとんどですが、重度の場合は、手術が必要となることもあります。いずれにしても、適切な治療を受けることが、後遺症を残さずに回復するために重要です。
呼吸器

苦痛のサイン:呻吟呼吸について

- 呻吟とは呻吟とは、苦痛や辛さのために、思わず口から洩れ出てしまう声のことです。そして、その声そのものを指す言葉でもあります。私たちは、体に痛みを感じたり、精神的に苦しい状況に置かれたりした時、あるいは、極度の緊張や不安にさいなまれている時などに、無意識のうちに呻吟してしまうことがあります。 呻吟は、人間が生まれながらにして持っている、本能的な反応の一つであると考えられています。言葉を発することができない赤ちゃんでも、お腹が空いたり、痛みを感じたりすると、泣き声とは異なる、苦しそうな声を上げます。これは、周囲に自分の不快な状態を伝えようとする、原始的なコミュニケーションの手段であると言えるでしょう。 大人になっても、病気や怪我を負った時、激しい運動をして体がきつい時、精神的に追い詰められている時など、様々な場面で呻吟が見られます。時には、自分では意識していないうちに呻吟が漏れていることもあり、無意識のうちに自分の置かれている状況を周囲に伝えていると言えるかもしれません。
小児科

新生児呼吸窮迫症候群:小さな命を脅かす呼吸の危機

新生児呼吸窮迫症候群(しんせいじこきゅうきゅうはくしょうこうぐん)は、生まれたばかりの赤ちゃんに見られる、命に関わることもある呼吸器の病気です。この病気は、赤ちゃんの肺が十分に成熟していないために起こります。 人の肺の中には、肺胞(はいほう)と呼ばれる小さな空気の袋がたくさんあります。肺胞の表面は、サーファクタントと呼ばれる物質で覆われており、このサーファクタントが、肺胞が呼吸によってしぼんでしまうのを防いでいます。 新生児呼吸窮迫症候群は、このサーファクタントが不足しているために起こります。サーファクタントが不足すると、肺胞がうまく膨らまなくなり、赤ちゃんは呼吸するのが苦しくなります。 新生児呼吸窮迫症候群は、特に妊娠37週未満で生まれた赤ちゃん、つまり早産児に多く見られます。これは、サーファクタントが妊娠後期に多く作られるようになるためです。早産であればあるほど、発症のリスクは高くなります。 新生児呼吸窮迫症候群は、呼吸が速くなったり、呼吸をする際に胸がへこんだり、皮膚の色が悪くなったりといった症状が現れます。重症化すると、命に関わることもあります。治療には、酸素吸入や人工呼吸器などを使用します。また、サーファクタントを補充する治療法もあります。
目・眼科

視能矯正:より良い視覚を取り戻す

- 視能矯正とは視能矯正とは、私たちが普段意識することなく行っている「ものを見る」という行為を、よりスムーズかつ快適にするための治療です。 具体的には、両目で一つの対象物を見つめる「両眼視機能」を高めることを目的としています。両眼視機能は、単に左右の目で別々に物を見るのではなく、両目の情報を脳で統合することで、より鮮明で奥行きのある立体的な視覚体験を可能にしています。この機能が正常に働かない場合、物が二重に見えたり、遠近感が掴みにくくなったり、場合によっては眼精疲労や頭痛を引き起こすこともあります。視能矯正では、これらの症状を改善するために、眼鏡やコンタクトレンズを用いたり、視能訓練と呼ばれるトレーニングを行います。 視能訓練では、眼球運動の協調性を高めるトレーニングや、遠近調節機能を改善するトレーニングなど、個々の症状に合わせたメニューが組まれます。視能矯正は、乳幼児から大人まで、幅広い年齢層の方に行われています。特に、弱視や斜視などの治療においては、視能矯正が重要な役割を担っています。 また、近年では、VDT作業などによる眼精疲労の増加や、スマートフォンなどの普及による近視の低年齢化に伴い、視能矯正の重要性がますます高まっています。視能矯正によって、より快適な視覚体験を得られるだけでなく、日常生活における様々な場面で、より安全で円滑に行動できるようになることが期待できます。
その他

体温維持の秘密兵器:シバリング

寒い日に一歩外に出ると、私たちの体はまるでセンサーのように、空気の冷たさを敏感に感じ取ります。気温が下がり、体温がほんの少し下がると、脳は体が危険な状態になりかけていると判断し、体温を一定に保とうと様々な指令を出します。その中でも特に早く、そして強烈な反応として現れるのが「シバリング」、つまり震えです。 では、なぜ震えが起こるのでしょうか?それは、脳からの指令を受けた筋肉が、熱を生み出そうと細かく収縮と弛緩を繰り返すためです。筋肉が熱を生み出す工場のような役割を果たし、体の中心部、特に心臓や肺などの重要な臓器を守ろうとします。同時に、皮膚の表面近くの血管は収縮します。これは、冷たい外気に触れる面積を減らし、熱が逃げるのを最小限に抑えるための体の知恵と言えるでしょう。 このように、震えは体温低下という危機に対して、私たちの体が発動させる、迅速かつ効率的な防衛システムなのです。
泌尿器

糸球体濾過量:腎臓の健康を知る指標

- 糸球体濾過量とは 糸球体濾過量(GFR)は、腎臓の働き具合を測る上で非常に重要な指標です。腎臓は、毎日休むことなく血液を濾過し、老廃物や余分な水分を尿として体外に排出することで、私たちの体の健康を維持しています。この濾過が行われる場所は、腎臓の中にある無数の小さな構造物である糸球体です。 糸球体は、毛細血管が球状に集まったもので、血液がここを通る際に、まるで網目のように老廃物や余分な水分を濾し取ります。この濾過された液体が原尿となり、その後、尿細管という管を通る中で必要な成分が再吸収され、最終的に尿として排出されます。 GFRは、この糸球体が1分間にどれだけの量の血液を濾過できるかを示す数値であり、単位はmL/分/1.73m²で表されます。GFRの値が高いほど、腎臓の濾過機能が高いことを意味し、逆に低い場合は、腎機能の低下が疑われます。腎機能の低下は、自覚症状が出にくい場合もありますが、放置すると人工透析が必要となるなど、深刻な事態に陥る可能性もあります。 そのため、健康な状態を保つためには、GFRの値を定期的に測定し、腎臓の健康状態を把握することが重要です。
目・眼科

縮瞳:そのメカニズムと重要性

私たちの眼の中央で、黒く輝いている部分を瞳孔と呼びます。瞳孔は、カメラの絞りのように、眼に入る光の量を調整する重要な役割を担っています。明るい場所では、瞳孔は小さくなって光の量を抑え、まぶしすぎるのを防ぎます。逆に、暗い場所では瞳孔は大きくなって、より多くの光を取り込もうとするのです。 この瞳孔が小さくなる現象を「縮瞳」と言います。縮瞳は、瞳孔括約筋という筋肉が収縮することによって起こります。瞳孔括約筋は、虹彩と呼ばれる瞳孔を囲む円形の組織の中にあります。 縮瞳は、明るい光に反応して自然に起こる生理的な現象です。これは、私たちの眼を強い光から保護し、視覚を正常に保つために非常に重要な機能です。また、縮瞳は、特定の薬物や神経系の状態によって引き起こされることもあります。例えば、モルヒネなどの薬物は縮瞳を引き起こすことが知られています。
脳・神経

手根管症候群:手の痺れと原因について

- 手根管症候群とは手首には手根管と呼ばれる、骨と靭帯でできたトンネルのような狭い空間があります。この手根管の中を、指の感覚や運動をつかさどる重要な神経である正中神経と、指を動かすための腱が通っています。手根管症候群は、様々な原因でこの手根管の中が狭くなり、正中神経が圧迫されることで起こります。その結果、指にしびれや痛み、感覚の鈍さといった症状が現れます。手根管症候群は、手をよく使う人に多くみられる病気です。特に、パソコン作業や家事、工場での作業などで、繰り返し手を酷使することで発症しやすくなります。また、妊娠・出産期の女性ホルモンの変化や、手首の骨折、関節リウマチなどの病気によって発症することもあります。初期症状としては、朝方に指がしびれる、指先がピリピリと痛むといった症状が現れることが多いです。症状が進むと、日中でもしびれや痛みが続くようになり、ものを握る力が入りにくくなったり、細かい作業が困難になったりします。さらに悪化すると、筋肉の萎縮が起こり、指の感覚が完全に失われてしまうこともあります。手根管症候群は、適切な治療を行うことで症状の改善が期待できます。早期発見・早期治療が重要となるため、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
脳・神経

重症筋無力症:体の信号の異常が招く筋力低下の謎

- 重症筋無力症とは重症筋無力症は、体の筋肉が異常に疲れやすく、力が入りにくくなる病気です。その名の通り、重症化すると日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 この病気は、筋肉を動かす指令を脳から伝える神経と筋肉の接合部である神経筋接合部において、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きが阻害されることで発症すると考えられています。通常、私達が体を動かそうとすると、脳から神経を通じて筋肉へ指令が送られます。この指令を筋肉に伝える役割を担っているのが、神経筋接合部から放出されるアセチルコリンという物質です。ところが、重症筋無力症の患者さんの場合、このアセチルコリンの働きを阻害する物質(抗アセチルコリン受容体抗体)が体内で作られてしまいます。その結果、神経からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなり、筋力低下や疲労が生じると考えられています。具体的には、まぶたが垂れ下がる、ものが二重に見える、うまく話せなくなる、飲み込みにくくなる、首が支えられない、腕が上がらない、呼吸が苦しいなどの症状が現れます。これらの症状は、時間帯や体調によって変動することが多く、朝起きた時は症状が軽くても、夕方や疲れているときには悪化しやすい傾向があります。また、症状が現れる部位や程度は患者さん一人ひとり異なり、同じ症状が続くことは稀です。
検査

磁気共鳴画像診断:体の内部を見る魔法

- 磁気共鳴画像診断とは 磁気共鳴画像診断(MRI)は、体内の状態を詳しく知るための検査方法です。レントゲン検査と違って放射線を使わずに、強力な磁石と電波の力を使って体の内部を画像化します。そのため、放射線による体への負担を心配する必要がありません。 MRI検査では、体の中の水素原子に注目します。私たちの体は大部分が水でできており、水素原子は体中に存在しています。強い磁場の中に体を入れると、水素原子は一定の方向に整列します。そこに電波を当てると、水素原子は電波を吸収してエネルギーが高い状態になります。電波を止めると、水素原子は吸収したエネルギーを放出しながら元の状態に戻ります。MRIはこの時放出されるエネルギーの強さをコンピューターで処理することで、鮮明な画像を作り出します。 MRI検査は、脳、心臓、血管、筋肉、関節など様々な部位の診断に役立ちます。具体的には、脳梗塞や脳腫瘍、心筋梗塞、動脈瘤、骨折、靭帯損傷などの病気を発見するために用いられます。 MRI検査は、体の内部の状態を安全かつ詳細に調べることができるため、医療現場で幅広く活用されています。
検査

体の不思議を解き明かすMRI

- 磁気共鳴断層撮影法とは磁気共鳴断層撮影法(MRI)は、近年、医療現場において欠かせない検査方法の一つとして広く普及しています。この検査方法は、レントゲン検査のように放射線を使用せず、強力な磁場と電波を利用して体の内部を画像化するため、人体への負担が少なく、安全性の高い検査方法として知られています。MRI検査では、私たちの体を構成する水素原子核に注目します。水素原子核は、小さな磁石のような性質を持っており、通常はバラバラの方向を向いています。そこに強い磁場をかけると、水素原子核は磁場の向きに沿って整列します。この状態で特定の周波数の電波を照射すると、水素原子核は電波のエネルギーを吸収し、一時的に異なる方向を向きます。その後、電波を止めると水素原子核は元の状態に戻り、吸収したエネルギーを放出します。MRI装置はこの放出された電波を検出し、コンピューター処理することで、体の内部構造を鮮明な断層画像として描き出します。MRI検査は、脳、脊髄、内臓、筋肉、関節など、体の様々な部位の診断に用いられます。具体的には、腫瘍、炎症、出血、骨折などの病変の有無や状態を詳しく調べることができます。また、MRI検査では、造影剤と呼ばれる薬剤を静脈注射することで、病変部をより鮮明に描出することも可能です。造影剤を使用することで、腫瘍の血管の状態や血流の情報を得ることができ、より正確な診断に役立ちます。このように、MRI検査は、人体への負担が少なく、詳細な体内情報を得ることができるため、現代医学において非常に重要な役割を担っています。
検査

心電図モニター:心臓の鼓動を見守る

- 心電図モニターとは心電図モニターは、心臓の動きを電気信号として捉え、その変化を波形として画面に表示する医療機器です。私たちの心臓は、全身に血液を送るために休むことなく動き続けています。この心臓の動きは、電気信号によってコントロールされており、心電図モニターは、この電気信号を体の表面に付けた電極で読み取ることで、心臓の状態を把握します。心電図モニターで得られた波形は、心臓の活動状態を視覚的に表現したものであり、医師はこの波形の形やリズムを分析することで、心臓の健康状態を評価します。例えば、波形に異常な乱れや不規則なリズムが見られる場合は、不整脈などの心臓病の可能性を示唆しています。また、波形の高さや幅の変化は、心臓の筋肉の酸素不足や心臓肥大などの兆候を示していることもあります。心電図モニターは、病院の診察室だけでなく、救急車の中や手術室など、様々な医療現場で使用されています。さらに、近年では小型で持ち運び可能な心電図モニターも開発され、家庭での健康管理にも役立てられています。このように、心電図モニターは、心臓病の早期発見や治療、そして健康管理に大きく貢献している重要な医療機器と言えるでしょう。
脳・神経

コミュニケーションの困難:失語症を理解する

- 失語症とは失語症は、脳卒中や頭部外傷などによって脳の一部が損傷を受けることで起こる、コミュニケーションに障害が生じる病気です。 話す、聞く、読む、書くといった、人間が言葉を用いるために必要な様々な機能に影響が現れます。 症状は人によって異なり、特定の機能だけが損なわれることもあれば、複数の機能に障害が出ることもあります。重要なのは、失語症は知能や思考能力の低下とは関係がないということです。 失語症の患者さんは、思考力や感情は損なわれていません。 しかし、 頭の中で考えていることや感じていることを言葉で表現したり、相手の言っていることを理解することが難しくなります。 たとえるなら、外国語を話すことを想像してみてください。 まだ慣れない外国語を話すとき、伝えたいことがうまく言えなかったり、相手の言っていることが理解できなかったりすることがありますよね。 失語症の患者さんは、まるで母国語が外国語になってしまったかのように感じることがあるのです。
脳・神経

神秘の器官:松果体の役割とは?

私たちの頭の中にある脳は、左右に大きく分かれた「大脳」が大部分を占めています。この左右の大脳半球の間、ちょうど中心に位置するようにして、「松果体」と呼ばれる小さな器官が存在します。その大きさはわずか5~8mmほどしかなく、米粒よりも小さい器官です。形は名前の由来ともなっている「松ぼっくり」にそっくりです。松果体は、脳の奥深くに位置しており、一見するとあまり目立たず、地味な印象を与えます。しかし、小さな体には、私たちの体にとって重要な役割が備わっているのです。松果体は、「メラトニン」というホルモンを作り出す働きを担っています。メラトニンは、私たちの睡眠と覚醒のリズムを整えるために重要なホルモンです。夜になり、周囲が暗くなると、松果体からメラトニンが分泌されます。メラトニンは、体温を低下させたり、脳の活動を鎮めたりすることで、自然な眠りを誘う効果があります。そして、朝になり、太陽の光を浴びると、メラトニンの分泌量は減少し、体は活動状態へと切り替わっていきます。このように、松果体は、地球の昼夜のサイクルに合わせて、私たちの睡眠と覚醒のリズムを調整する、体内時計の役割を担っているのです。
脳・神経

運動を司る脳の神秘:小脳の役割

- 運動機能の司令塔私たちは日常生活で、歩く、物を掴む、言葉を話すなど、様々な動作を何気なく行っています。これらの動作は、意識しなくてもスムーズに行うことができますが、実はその裏側では「小脳」と呼ばれる器官が重要な役割を担っています。小脳は、脳の後ろ側に位置する器官で、その形がカリフラワーに似ていることから「小さい脳」という意味の名前が付けられています。しかし、その役割は小さくありません。小脳は、まるで運動の司令塔のように、全身の筋肉の動きを調整し、滑らかで正確な動作を実現させているのです。私たちが体を動かす時、脳はまず、どのような動作をしたいのかという指令を出します。この指令は、まず大脳皮質と呼ばれる部分から発せられ、脊髄を通って筋肉に伝えられます。同時に、この指令は小脳にも送られます。小脳は、目や耳、筋肉などから送られてくる感覚情報と、大脳皮質から送られてきた運動指令とを照らし合わせ、体のバランスや筋肉の緊張を細かく調整します。そして、その調整情報を再び大脳皮質へとフィードバックすることで、私たちはスムーズで正確な動作を行うことができるのです。もし、小脳が正常に機能しなくなると、運動やバランスに障害が現れます。例えば、歩くときにふらついたり、字を書くときに手が震えたり、言葉が不明瞭になったりします。これは、小脳が損傷を受けることで、筋肉の動きを滑らかに調整する機能が失われてしまうためです。このように、小脳は私たちが意識することなく、運動機能を円滑に行うために重要な役割を担っています。普段は意識することが少ないかもしれませんが、小脳の働きによって、私たちは複雑な動作をスムーズに行うことができているのです。
検査

わかりやすく解説!腫瘤とは?

「腫瘤」という言葉を耳にしたことがありますか? これは、私たちの体に現れる「できもの」「こぶ」「はれもの」などを、まとめて表す言葉です。 普段、何気なく「しこり」と呼んでいるものも、医学的には腫瘤に含まれます。 重要なのは、「腫瘤」という言葉自体には、それがどのような性質のものなのか、詳しい情報が含まれていないということです。 例えば、炎症が原因でできたものなのか、腫瘍が原因でできたものなのか、また、体に害のない良性のものなのか、放置すると悪化する悪性のものなのか、といった情報は含まれていません。 つまり、原因がはっきりしない体の表面や内部の塊は、とりあえず腫瘤と呼ぶことができるのです。 腫瘤と診断された場合は、それが何によるものなのか、精密検査などを通して詳しく調べる必要があります。
救急

救命の基礎知識:心肺蘇生法を理解しよう

- 心肺蘇生法とは心肺蘇生法(しんぱいそせいほう)は、事故や急病などで突然、心臓と呼吸が止まってしまった人の命を救うための緊急処置です。医療従事者だけでなく、一般の人でも行うことができます。私たちの体は、心臓が血液を送り出し、呼吸によって酸素を取り込むことで、活動するためのエネルギーを生み出しています。心臓が止まると血液の流れが止まり、呼吸が止まると酸素が取り込めなくなります。その結果、全身の臓器、特に脳に酸素が行き渡らなくなり、数分以上続くと命に関わる危険があります。心肺蘇生法はこのような状態になった人を助けるための方法で、人工呼吸と胸骨圧迫の二つの行為で構成されています。人工呼吸は、呼吸が止まってしまった人の肺に、自分の口から息を吹き込むことで、強制的に酸素を送り込む行為です。胸骨圧迫は、心臓の位置を両手で強く圧迫することで、心臓のポンプ機能の代わりを果たし、血液を循環させる行為です。心肺蘇生法を行うことで、心臓と呼吸が完全に止まってしまった場合でも、救急隊が到着するまでの間、脳への酸素供給を維持し、命を救える可能性を高めることができます。いつ、どこで、誰がこのような事態に遭遇するかわかりません。いざという時に備え、正しい知識と技術を身につけておくことが重要です。
脳・神経

意識障害の一つ:嗜眠とは

- 嗜眠とは何か 「嗜眠」とは、医学の世界で「意識障害」の程度を表す言葉の一つです。では、意識障害とはどのような状態を指すのでしょうか。簡単に言うと、意識がはっきりしない状態のことを指します。 この意識障害には、軽いものから重いものまで様々な段階があります。その中で、「嗜眠」は意識レベルが低下し、周囲からの刺激に対して反応が鈍くなっている状態を指します。 例えば、あなたは電車に乗っている時に、うとうとしてしまった経験はありませんか? そのような、普段よりも眠気が強く、周囲から話しかけられても反応が遅かったり、刺激がない状態では眠り続けてしまうような状態が、「嗜眠」と呼ばれる状態です。 嗜眠は、病気のサインとして現れることがあります。例えば、風邪をひいた時や、熱がある時などに、体がだるく、眠気が強くなることがありますよね。このような場合にも、「嗜眠」がみられることがあります。 ただし、「嗜眠」は病気の初期症状として現れることもあれば、深刻な病気のサインであることもあります。そのため、もしも「いつもより眠気が強い」「周りの人に「ぼーっとしている」と指摘された」などの経験があり、気になる場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
検査

心臓超音波検査:心臓の働きを目で見えるようにする検査

心臓超音波検査は、超音波を用いて心臓の状態を詳しく調べる検査です。身体に害の少ない超音波を用いるため、痛みや負担が少なく、繰り返し検査を受けることが可能です。検査中は、左胸に検査機器を当てて、心臓の動きを超音波で捉えます。この超音波は、人間の耳には聞こえない音波であり、身体に害を与える心配はありません。検査で得られた超音波の反射波は、コンピューターで処理され、心臓の断面図や動画として映し出されます。 心臓超音波検査では、心臓の大きさや形、壁の厚さ、動き、弁の状態などを確認することができます。これにより、心臓弁膜症や心筋症、心不全などの心臓病の診断、病状の進行度、治療効果の判定などに役立ちます。さらに、心臓内の血流をカラーで表示するカラードプラ法や、血流の速度を測定するドプラ心エコー法などの検査方法を組み合わせることで、より詳細な情報を得ることができ、心臓の病気の早期発見・早期治療に繋がります。
脳・神経

感情の波に乗りこなせない:情動失禁を理解する

- 情動失禁とは何か情動失禁とは、些細なことで感情が大きく揺れ動き、自分で抑えることが難しくなる状態のことです。例えば、面白いテレビ番組を見ている時に突然泣き出してしまったり、レストランで注文を取ってくれている店員さんに、ささいなことで怒鳴ってしまったりするなど、状況にそぐわない感情表現をしてしまうことがあります。この症状は、感情をコントロールする役割を担う脳の機能が、様々な要因によって影響を受けてしまうことで起こると考えられています。例えば、脳卒中や認知症、パーキンソン病などの脳神経疾患が原因となる場合もあれば、事故などによる脳への損傷が原因となる場合もあります。また、強いストレスや疲労、睡眠不足なども、情動失禁の引き金となることがあります。情動失禁は、周囲の人に誤解を与えてしまうことがあり、人間関係に影響を及ぼす可能性もあります。また、日常生活においても、仕事や家事、趣味活動など様々な場面で支障をきたすことがあります。もし、ご自身や周りの方が情動失禁の症状でお困りの場合は、早めに医療機関を受診し、適切なアドバイスや治療を受けることが大切です。
脳・神経

一過性の意識消失、失神とは?

失神とは、一時的に意識を消失する現象を指します。周囲から見ると突然倒れたように見えるため、驚きや不安を伴うことが多いでしょう。意識消失は通常短時間で、多くの場合は数秒から数分で自然に回復します。失神自体は命に関わるような深刻なものではない場合がほとんどです。 しかし、決して油断して良いわけではありません。失神を引き起こす原因には、一時的な血圧低下や自律神経の乱れなど、比較的軽度のものもあれば、心臓病や脳血管障害、神経系の病気など、重大な病気が隠れている可能性もあるからです。そのため、失神を起こした場合は、たとえその後回復したとしても、必ず医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。 失神の原因を特定するために、医師は病歴や症状、発症時の状況などを詳しく聞き取ります。必要に応じて、心電図検査や脳波検査、頭部CT検査、血液検査などの検査が行われます。これらの検査結果に基づいて、適切な治療が行われます。失神は決して珍しい症状ではありませんが、その背景には様々な要因が考えられるため、自己判断せずに医療機関に相談することが大切です。
外科

生命を支えるパイプライン:シャント機能不全とその対処

私たちの体は、血管やリンパ管など、体液を循環させるための重要な管が隅々まで張り巡らされています。これらの管は、まるで体中に張り巡らされた水道管のように、血液やリンパ液といった体液を必要な場所に送り届ける役割を担っています。しかし、病気や怪我によって、これらの重要な管が詰まったり、機能しなくなったりすることがあります。水道管が壊れて水が流れなくなってしまうように、体液を運ぶ管が正常に機能しなくなると、私たちの体は栄養や酸素を十分に受け取ることができなくなり、生命維持に支障をきたす可能性も出てきます。 このような事態に対処するために開発されたのが「シャント」です。シャントとは、人工的に作ったバイパスルート、つまり体液の流れ道のことを指します。体内に細い管を通したり、血管同士をつなぎ合わせたりすることで、本来のルートが機能しなくても体液をスムーズに流すことができるようになります。これは、まるで壊れた水道管を迂回して新しい水道管を敷設するようなものです。シャントによって体液の流れを確保することで、栄養や酸素を体の各部に届け、正常な生命活動を維持することが可能になります。シャントは、心臓外科手術や透析治療など、様々な医療分野で重要な役割を果たしています。
脳・神経

神経毒:目に見えない脅威

- 神経毒とは神経毒は、私たちの体の中で、脳から指令を伝えたり、感じたり、体を動かしたりするために働く、神経系と呼ばれる仕組みを攻撃する物質のことです。 普段は目に見えないほど小さな物質ですが、体内に入ると、神経細胞という神経系の最小単位に直接作用し、体に様々な異常を引き起こします。神経毒は、大きく分けて二つの作用機序を持っています。一つは、神経細胞同士の情報伝達を阻害する作用です。私たちの脳からの指令は、電気信号として神経細胞の中を伝わっていきます。そして、神経細胞と神経細胞の間にあるシナプスと呼ばれる隙間を、神経伝達物質と呼ばれる化学物質が渡ることで、次の神経細胞へと情報が伝達されていきます。神経毒の中には、この神経伝達物質の放出を妨げたり、神経伝達物質を受け取る受容体を塞いでしまったりするものがあります。その結果、脳からの指令が正しく伝わらなくなり、体の麻痺や呼吸困難などの症状が現れます。もう一つは、神経細胞を過剰に興奮させる作用です。神経細胞は、外部からの刺激に応じて、適切な量の神経伝達物質を放出することで、情報の伝達をコントロールしています。しかし、神経毒の中には、神経細胞を必要以上に興奮させ、過剰な量の神経伝達物質を放出させてしまうものがあります。その結果、筋肉の痙攣やけいれん、ひどい場合には意識障害などを引き起こす可能性があります。このように、神経毒は、神経系に直接作用することで、私たちの体や命に大きな危険をもたらす可能性があります。
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