自己抗体

脳・神経

重症筋無力症:体の信号の異常が招く筋力低下の謎

- 重症筋無力症とは重症筋無力症は、体の筋肉が異常に疲れやすく、力が入りにくくなる病気です。その名の通り、重症化すると日常生活に大きな支障をきたすことがあります。 この病気は、筋肉を動かす指令を脳から伝える神経と筋肉の接合部である神経筋接合部において、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きが阻害されることで発症すると考えられています。通常、私達が体を動かそうとすると、脳から神経を通じて筋肉へ指令が送られます。この指令を筋肉に伝える役割を担っているのが、神経筋接合部から放出されるアセチルコリンという物質です。ところが、重症筋無力症の患者さんの場合、このアセチルコリンの働きを阻害する物質(抗アセチルコリン受容体抗体)が体内で作られてしまいます。その結果、神経からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなり、筋力低下や疲労が生じると考えられています。具体的には、まぶたが垂れ下がる、ものが二重に見える、うまく話せなくなる、飲み込みにくくなる、首が支えられない、腕が上がらない、呼吸が苦しいなどの症状が現れます。これらの症状は、時間帯や体調によって変動することが多く、朝起きた時は症状が軽くても、夕方や疲れているときには悪化しやすい傾向があります。また、症状が現れる部位や程度は患者さん一人ひとり異なり、同じ症状が続くことは稀です。
検査

ループスアンチコアグラントを理解する

- ループスアンチコアグラントとは ループスアンチコアグラント(LA)は、血液が固まるのを防ぐ働きを持つ「アンチコアグラント(抗凝固物質)」という言葉を含むため、その名前だけ聞くと、血液を固まりにくくする物質のように思えるかもしれません。しかし実際には、LAは血液を固まりやすくする可能性のある自己抗体の一種です。 私たちの体内では、血管が傷ついて出血すると、それを止めるために血液を固める仕組みが働きます。この血液凝固には、様々な成分が関わっていますが、その中でも重要な役割を担うのが「リン脂質」という成分と「プロトロンビン」という血液凝固因子です。 LAは、このリン脂質とプロトロンビンが結合した状態に対して作られる抗体です。LAは、リン脂質とプロトロンビンの結合を阻害するのではなく、むしろ促進する働きがあります。その結果、血液凝固反応が過剰に促進され、血栓という血液の塊ができやすくなってしまうのです。 LAは、全身性エリテマトーデス(SLE)という自己免疫疾患の患者さんの血液中で高頻度に認められます。SLEは、自分自身の細胞や組織に対して抗体が作られ、様々な臓器に炎症を引き起こす病気です。LAは、SLEの活動性を評価する上で重要な指標の一つとなっています。
検査

全身性強皮症と抗セントロメア抗体

私たちの体は、まるで城のように外敵の侵入から守られています。その防御を担うのが免疫システムです。このシステムは、城の外から侵入してくる敵(細菌やウイルス)を見分けて攻撃し、私たちを守ってくれています。 通常、私たちの免疫システムは、自分自身とそうでないものを見分けることができます。これは、敵と味方を区別する能力を持っているようなものです。しかし、時にはこの見分けがつかなくなり、免疫システムが自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。 これは、まるで城を守る兵士が、誤って城自身を攻撃してしまうようなもので、自己免疫疾患と呼ばれています。 自己免疫疾患では、本来攻撃されるべきではない自分自身の成分に対して、抗体と呼ばれるタンパク質が作られます。抗体は、敵を攻撃するための武器のようなもので、その種類は敵によって異なります。自己免疫疾患においては、どの抗体が作られるかは病気の種類によって異なり、特定の疾患のマーカーとして診断に役立ちます。つまり、作られた抗体を調べることで、どの自己免疫疾患にかかっているのかを特定することができるのです。
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