自己免疫疾患

アレルギー

末梢性免疫寛容:自己と非自己の識別

私たちの体は、まるで外敵から身を守る城壁のように、常に外部からの侵入者から守られています。この防御システムを担うのが免疫システムです。免疫システムは、体内に入ってきた物質が、自分自身の体の一部であるか、そうでない外部からの侵入者であるかを正確に見分ける能力を持っています。この見分け方は、まるで城壁を守る兵士が、味方と敵を見分けるかのようです。 免疫寛容とは、免疫システムが自分自身の細胞や組織を「自己」と認識し、攻撃しないようにする状態を指します。これは、味方の兵士同士が誤って攻撃し合わないようにするための、非常に重要な仕組みです。免疫寛容が正常に働いているおかげで、私たちは自分の体の中で、免疫細胞が暴走することなく、健やかに過ごすことができます。 しかし、この精巧なシステムにも、時に誤作動が起こることがあります。免疫寛容が何らかの原因で破綻すると、免疫システムが自己の細胞や組織を「非自己」と誤って認識し、攻撃してしまうことがあります。これが、自己免疫疾患と呼ばれる病気です。自己免疫疾患では、本来守られるべき自己の組織が、免疫システムの攻撃によって炎症を起こしたり、機能障害を起こしたりします。 免疫寛容は、私たちの体が正常に機能するために、そして健康を維持するために、欠かせないものです。この複雑な仕組みを理解することで、自己免疫疾患などの病気の予防や治療法の開発に繋がる可能性も期待されています。
皮膚科

乾癬:皮膚の病気について

- 乾癬とは乾癬は、皮膚に赤い斑点ができ、その上に白いカサカサしたものが付着する病気です。この白いカサカサしたものを鱗屑(りんせつ)と呼びます。乾癬は、かゆみを生じる場合もありますが、症状の出方は人によって大きく異なります。ある人は皮膚の一部に小さな赤い斑点が現れるだけですが、別の人は体全体に広範囲にわたって症状が現れることもあります。また、爪が変形したり、関節に痛みが出たりすることもあります。乾癬の原因はまだ完全には解明されていませんが、免疫の異常が大きく関わっていると考えられています。本来、免疫は体外から侵入してきた細菌やウイルスから体を守る働きをしています。しかし、乾癬の場合、この免疫システムが何らかの原因で自分の体の皮膚を攻撃してしまうため、炎症が起こり、皮膚が異常に増殖してしまうのです。その結果、赤い斑点や鱗屑といった症状が現れると考えられています。乾癬は感染する病気ではありませんので、他の人にうつる心配はありません。しかし、見た目の問題から、精神的なストレスを感じてしまう方も少なくありません。乾癬は慢性的な病気であり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いです。そのため、症状をコントロールし、日常生活に支障が出ないようにすることが重要になります。医師の指示に従って適切な治療を継続していくことが大切です。
皮膚科

円形脱毛症:免疫と毛髪の不思議な関係

- 円形脱毛症とは?円形脱毛症とは、頭皮の一部分または複数の場所に円形または楕円形に脱毛する病気です。その名の通り、まるでコインで押したように、一部分の毛が抜け落ちてしまうのが特徴です。脱毛斑は、一つだけの場合もあれば、大小様々な大きさのものが複数箇所に見られる場合もあります。この病気は決して珍しくなく、人口の約1%から2%の人が経験すると言われています。年齢や性別に関わらず発症する可能性があり、子供から大人まで、どの年代にも見られます。特に、若い世代での発症も少なくありません。円形脱毛症の特徴として、痛みやかゆみなどの自覚症状がほとんどないことが挙げられます。そのため、本人が脱毛に気づかない場合や、髪を洗っている時やブラッシングの時に抜け毛が多いことに気づく場合もあります。
その他

強直性脊椎炎:知っておきたい脊椎の病気

- 強直性脊椎炎とは私たちの体の中心を貫き、体を支える柱のような役割を果たす脊椎。強直性脊椎炎は、この重要な脊椎に炎症を引き起こし、やがて骨を硬くしてしまう病気です。まるで、本来はバラバラに動くはずの椎骨が、接着剤で固められたかのように動きが制限されてしまうのです。この病気の原因は、細菌やウイルスなどの外敵によるものではありません。私たちの体には、本来、外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体から身を守るための免疫システムが備わっています。しかし、強直性脊椎炎の場合、この免疫システムが何らかの理由で誤作動を起こし、自分自身の体の細胞や組織を攻撃してしまうのです。これが、自己免疫疾患と呼ばれる病気のメカニズムです。強直性脊椎炎は、主に10代後半から30代の若い世代に発症することが多く、男性に多いという特徴も知られています。初期症状としては、腰や背中に痛みやこわばりを感じることが多く、安静にしている時や朝起きた時に症状が強く現れる傾向があります。病気が進行すると、脊椎以外の関節、例えば、肩や股関節、膝関節などにも炎症が広がり、痛みや腫れ、運動制限を引き起こすこともあります。強直性脊椎炎は、国の指定する難病に指定されています。これは、患者数が少なく、治療法が確立されていない病気であることを意味します。しかし、近年では、医学の進歩により、炎症を抑え、病気の進行を遅らせる効果的な薬が開発されてきています。また、患者さん自身ができる運動療法や生活習慣の改善なども、症状の緩和や進行抑制に役立つことがわかってきています。
アレルギー

免疫の異常が招く関節の痛み: 関節リウマチ

- 関節リウマチとは関節リウマチは、本来は細菌やウイルスなどの外敵から体を守るはずの免疫の働きに異常が生じ、自分自身の関節組織を攻撃してしまうことで発症する病気です。 免疫の異常によって関節の内側にある滑膜に炎症が起こり、関節が腫脹したり、痛みが生じたりします。 この病気は、進行すると日常生活に大きな影響を及ぼします。 初期には朝起きた時や長時間同じ姿勢を続けた後に、関節のこわばりを感じることが多く見られます。 症状が進むと、関節の痛みは強くなり、安静時にも感じるようになります。 さらに進行すると、関節が変形し、日常生活における動作に支障をきたすようになり、衣服の着脱や歩行、食事など、基本的な動作さえ困難になることもあります。関節リウマチは、早期に発見し、適切な治療を開始することが非常に大切です。 早期に治療を開始することで、炎症を抑え、関節の破壊を遅らせ、病気の進行を抑制することができます。 関節リウマチの疑いがある場合は、放置せずに、早めに医療機関を受診し、専門医の診断を受けるようにしましょう。
脳・神経

多発性硬化症:症状と治療法

- 多発性硬化症とは多発性硬化症は、自分の免疫システムが、本来守るべき神経を攻撃してしまう病気です。免疫システムは、細菌やウイルスから体を守るための重要なシステムですが、多発性硬化症の場合、このシステムが誤作動を起こしてしまいます。具体的には、脳や脊髄にある神経線維が攻撃対象となります。神経線維は、脳からの指令を体の各部に伝えるための重要な役割を担っており、電気信号を伝える電線のようなものとイメージすると分かりやすいでしょう。この電線を覆っているのがミエリン鞘と呼ばれる組織です。ミエリン鞘は、電線を守る被覆のような役割をしており、電気信号をスムーズに伝えるために欠かせません。しかし、多発性硬化症になると、このミエリン鞘が免疫システムによって攻撃され、炎症を起こしたり、損傷したりしてしまいます。その結果、神経線維は電気信号を効率的に伝えることができなくなり、体の様々な場所に異常が現れるようになります。これが多発性硬化症の主なメカニズムです。症状は人によって異なり、視力障害、運動障害、感覚障害、排尿障害など、多岐にわたります。

免疫抑制薬:その役割と注意点

- 免疫抑制薬とは私たちの体は、細菌やウイルスなどの病原体が侵入してくると、それらを排除しようと攻撃する仕組みが備わっています。これを免疫と呼びます。免疫は、健康な体を維持するために非常に重要な働きをしています。しかし、時にこの免疫システムが過剰に働きすぎたり、誤って自分自身の細胞を攻撃してしまうことがあります。これが、自己免疫疾患や移植臓器への拒絶反応です。免疫抑制薬は、このような免疫システムの過剰な反応を抑え、病気の症状を和らげるために用いられる薬です。具体的には、免疫細胞の増殖や働きを抑えたり、免疫反応を引き起こす物質の産生を抑えることで効果を発揮します。免疫抑制薬は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、臓器移植後、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患など、様々な病気の治療に用いられています。免疫抑制薬は、感染症にかかりやすくなる、悪性腫瘍のリスクが高まるなど、いくつかの副作用も知られています。そのため、医師は、患者さんの病気の状態や体質などを考慮して、慎重に免疫抑制薬を選択し、使用していく必要があります。また、患者さん自身も、免疫抑制薬を使用する際には、医師から十分な説明を受け、正しく理解しておくことが大切です。
その他

全身に炎症を起こすベーチェット病

- ベーチェット病とはベーチェット病は、原因がはっきりとは分かっていない、長く続く炎症性の病気です。体の様々な場所で炎症が起こるのが特徴で、特に口の中、皮膚、目、関節などで繰り返し炎症が見られます。この病気は、「シルクロード病」とも呼ばれています。これは、シルクロード沿いの国々で患者が多いことが理由です。日本では、ベーチェット病は特定疾患に指定されていて、およそ2万人の患者がいると推測されています。ベーチェット病では、口の中に繰り返し口内炎ができることが多く見られます。これは、多くの場合、初期症状として現れます。また、皮膚には、赤いブツブツやニキビのような発疹が現れたり、痛みを伴う赤い腫れができることがあります。目に炎症が起こると、視力が低下したり、物が歪んで見えたりすることがあります。さらに、関節に炎症が起こると、関節が腫れたり、痛んだり、動きが悪くなることがあります。ベーチェット病の症状は、患者さんによって様々です。症状が出たり消えたりを繰り返すことも多く、症状が全く出ない時期もあります。ベーチェット病は、命に関わる合併症を引き起こす可能性もあるため、早期に診断し、適切な治療を受けることが重要です。
アレルギー

知っておきたいシェーグレン症候群

- シェーグレン症候群とはシェーグレン症候群は、私たちの体を病気から守るはずの免疫システムが、誤って自分の体の一部を攻撃してしまうことで起こる病気です。免疫システムは、通常、細菌やウイルスなどの外敵から体を守りますが、シェーグレン症候群の場合、このシステムが正常に働かなくなり、涙や唾液を作り出す腺を攻撃してしまいます。涙腺や唾液腺は、体にとって大切な水分を作り出す役割を担っています。涙は目を保護し、潤いを保つために必要ですし、唾液は食べ物を消化しやすくしたり、口の中を清潔に保ったりするために欠かせません。しかし、シェーグレン症候群によってこれらの腺が攻撃されると、涙や唾液の分泌量が減ってしまいます。その結果、目が乾いたり、口の中が乾いたりといった症状が現れます。さらに、シェーグレン症候群は、涙腺や唾液腺だけでなく、全身の様々な臓器にも影響を及ぼす可能性があります。関節に炎症が起きることで関節痛が起こったり、皮膚が乾燥したり、疲れやすくなったりすることもあります。また、まれにですが、肺や腎臓などの臓器に炎症が起きることもあります。シェーグレン症候群は、比較的まれな病気ですが、中年の女性に多く発症することが知られています。症状は人によって様々で、軽度の乾燥症状だけのこともあれば、強い痛みや倦怠感を伴うこともあります。
皮膚科

全身性硬化症:皮膚や内臓に影響する難病

- 全身性硬化症とは全身性硬化症という病気の名前を耳にしたことがある方は、それほど多くないかもしれません。全身性硬化症は、皮膚や内臓が硬くなるという特徴を持つ、国が指定する難病の一つです。 この病気の原因は、免疫の異常によって自分の体の組織を攻撃してしまう、「自己免疫疾患」の一種だと考えられています。免疫細胞が誤って自分の体の細胞を攻撃してしまうことで、全身の結合組織で炎症が起こり、コラーゲンという繊維成分が過剰に作られてしまいます。 コラーゲンは、皮膚や血管、内臓など、体のあらゆる場所に存在する、組織と組織を結びつける役割を持つ大切なタンパク質です。しかし、全身性硬化症では、このコラーゲンが過剰に作られ、蓄積してしまうことで、組織が硬くなってしまいます。 初期症状としては、指先が冷たくなったり、白くなったりするレイノー現象や、皮膚が硬くなるといった症状が現れます。 病気が進行すると、全身の様々な臓器に影響が及びます。例えば、食道が硬くなって飲み込みにくくなる、肺が硬くなって呼吸困難になる、心臓の機能が低下する、腎臓の機能が低下するなど、生命に関わるような重篤な症状が現れることもあります。 全身性硬化症は、根本的な治療法が確立されていない難病です。 そのため、症状を和らげ、病気の進行を遅らせることを目的とした治療が行われます。

免疫抑制の要:タクロリムスの役割と注意点

- タクロリムスとは私たちの体には、体内に入ってきた細菌やウイルスなどから体を守る、免疫という優れた機能が備わっています。しかし、この免疫機能は、臓器移植を受けた後には、時に思わぬ働きをすることがあります。移植された臓器は、たとえ適合性を慎重に確認したとしても、提供者と患者さんでは全く同じではありません。そのため、患者さんの免疫システムは、移植された臓器を“自分以外のもの”と認識し、攻撃を加えてしまうことがあります。これが、臓器移植後にしばしば起こる拒絶反応と呼ばれるものです。拒絶反応が起こると、発熱や炎症、臓器の機能低下など、様々な問題を引き起こし、最悪の場合、移植された臓器は機能しなくなってしまいます。そこで、拒絶反応を抑え、移植された臓器を体の一部として受け入れるために、免疫抑制剤と呼ばれる薬が使われます。タクロリムスは、この免疫抑制剤の一種です。タクロリムスは、免疫細胞の働きを抑え、拒絶反応が起こるのを防ぐことで、移植された臓器がスムーズに体になじむのを助く役割を果たします。 タクロリムスは、臓器移植後だけでなく、アトピー性皮膚炎や関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療にも用いられることがあります。
アレルギー

全身性エリテマトーデス:若年女性に多い難病

- 全身性エリテマトーデスとは私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵が侵入してくると、それらを排除して体を守る「免疫システム」が備わっています。通常、このシステムは正常に機能し、私たちを病気から守ってくれています。しかし、全身性エリテマトーデス(SLE)では、この免疫システムに異常が生じます。 本来、外部の敵を攻撃するはずの免疫システムが、自分自身の正常な細胞や組織を誤って攻撃してしまうのです。その結果、全身の様々な臓器、例えば皮膚、関節、腎臓、心臓、肺、脳などに炎症が起こり、様々な症状が現れます。この病気は、患者さんによって症状の出方や重症度が大きく異なり、ある人は皮膚に赤い発疹が現れるだけかもしれませんが、別の人は関節の痛みや腎臓の障害など、複数の症状を併発することもあります。そのため、全身性エリテマトーデスは「百面相の病気」とも呼ばれています。
皮膚科

多発性筋炎・皮膚筋炎とは?:原因、症状、治療法

- 多発性筋炎・皮膚筋炎の概要多発性筋炎と皮膚筋炎は、まとめて炎症性筋疾患と呼ばれる病気のグループに分類されます。これらの病気は、本来体を守るはずの免疫システムが誤って自分の筋肉組織を攻撃してしまう、自己免疫疾患に該当します。その結果、筋肉に炎症が起こり、筋力低下や筋肉痛といった症状が現れます。多発性筋炎と皮膚筋炎は、どちらも筋肉の炎症を主症状としますが、皮膚筋炎では筋肉の症状に加えて特徴的な皮膚症状も現れる点が異なります。具体的には、目の周囲に赤紫色の発疹が現れたり、指の関節や肘、膝などに赤い斑点が出たりします。これらの病気の原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、遺伝的な要因やウイルス感染などが発症に関与していると考えられています。多発性筋炎と皮膚筋炎は、放置すると筋肉が徐々に弱っていき、日常生活に支障をきたすようになります。そのため、早期に診断し、適切な治療を開始することが重要です。治療には、炎症を抑える薬や免疫を抑える薬などが用いられます。
血液

抗リン脂質抗体症候群:自己免疫と血栓症の密接な関係

- 疾患の概要抗リン脂質抗体症候群は、自分の免疫システムが誤って自分自身を攻撃してしまう、自己免疫疾患の一種です。この病気では、血液が固まりやすくなるという特徴があります。通常、私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために免疫システムが備わっています。しかし、抗リン脂質抗体症候群を発症すると、この免疫システムが正常に機能しなくなります。免疫システムの一部である抗体が、本来攻撃すべきでないリン脂質という血液中の成分を攻撃してしまうのです。リン脂質は、細胞膜の構成成分であり、また血液凝固にも関与しています。抗リン脂質抗体がリン脂質に結合すると、血液が固まりやすくなり、血栓と呼ばれる血液の塊が血管内にできてしまいます。血栓は、血管を詰まらせてしまい、血液の流れを悪くします。これが、様々な臓器に影響を及ぼし、深刻な症状を引き起こす原因となるのです。例えば、脳の血管で血栓が生じると脳梗塞、心臓の血管で生じると心筋梗塞を引き起こす可能性があります。また、妊娠中の女性では、胎盤の血管に血栓ができやすくなるため、流産や早産のリスクが高まります。抗リン脂質抗体症候群は、根本的な治療法はまだ見つかっていません。しかし、血液が固まりにくくなる薬を服用することで、血栓の形成を防ぎ、症状の悪化を抑えることができます。
皮膚科

全身性硬化症:皮膚や内臓が硬くなる病気

- 全身性硬化症とは全身性硬化症は、皮膚や内臓など、体の様々な場所に硬化(線維化)が起こる病気です。線維化とは、本来は柔軟性のある組織が、コラーゲンというたんぱく質が過剰に作られることで、硬くなってしまう現象です。この線維化は、血管や内臓など、全身の結合組織で起こる可能性があります。健康な状態では、結合組織は体の組織や器官を支え、弾力性を与える役割を果たしています。しかし、全身性硬化症を発症すると、この結合組織が硬くなってしまい、本来の機能を果たせなくなります。その結果、皮膚の硬化や色素沈着、関節の痛み、指先の潰瘍、臓器の機能障害など、様々な症状が現れます。全身性硬化症は、国の指定難病に認定されている希少疾患です。厚生労働省の研究班の報告によると、国内の患者数は約2万2千人と推定されています。原因は未だ解明されておらず、根本的な治療法は確立されていません。しかし、早期に診断し、症状に合わせた適切な治療を行うことで、病気の進行を遅らせ、生活の質を維持することが可能です。
血液

血管炎症候群:全身に及ぶ血管の炎症

- 血管炎症候群とは何か 私たちの体は、まるで網の目のように血管が張り巡らされています。この血管は、体中に酸素や栄養を届けるという、人間が生きていく上で欠かせない重要な役割を担っています。同時に、老廃物を回収し、体の外へと運び出すのも血管の大切な仕事です。 血管炎症候群とは、この血管に炎症が起きる病気の総称です。血管は、体の隅々まで血液を送り届けるための重要な通路です。しかし、様々な原因で血管の壁に炎症が起きることがあります。炎症によって血管の壁が厚くなったり、血管の内側が狭くなったりすると、血液の流れが悪くなってしまいます。 血液の流れが悪くなると、酸素や栄養が十分に行き渡らなくなり、臓器や組織の働きが低下してしまいます。また、血管が詰まったり破れたりすると、生命に関わる深刻な事態を引き起こす可能性もあります。 血管炎症候群は、原因や症状、進行の程度などによって様々な種類に分類されます。血管の炎症は、動脈だけでなく、静脈や毛細血管など、あらゆる種類の血管で起こる可能性があります。 血管炎症候群は、比較的まれな病気ですが、命に関わることもあるため、早期発見と適切な治療が重要です。
アレルギー

全身に広がる免疫の誤作動:全身性自己免疫疾患とは

私たちは、日常生活で目に見えない多くの病原体と接しています。空気中や物に触れることで、体内に細菌やウイルスなどの異物が侵入しようと常しています。このような脅威から体を守るために、体内には免疫システムという精巧な防御システムが備わっています。 免疫システムは、まるで国を守る軍隊のように、体内をくまなくパトロールしています。様々な種類の細胞が協力し、体内へ侵入を試みる病原体や、体内で発生した異常な細胞などを監視しています。この監視システムの中の中心的な役割を担うのが、白血球です。 白血球には、いくつかの種類があり、それぞれが特化した役割を持っています。例えば、体内をパトロール中に怪しい侵入者を見つけると、攻撃を開始します。さらに、侵入者を記憶し、次に同じ侵入者がやってきた時に備えます。この記憶機能により、一度撃退した病原体に対しては、より迅速かつ効果的に対処できるようになります。この働きをするのが抗体と呼ばれるタンパク質です。抗体は、特定の侵入者を認識して結合し、その働きを抑制したり、他の免疫細胞による攻撃を誘導したりします。 このように、免疫システムは、常に体を守り、健康を維持するために休むことなく働いています。免疫システムの働きのおかげで、私たちは健康な生活を送ることができるのです。
その他

結合組織病:全身に影響を及ぼす疾患群

私たちの体は、様々な組織や器官が複雑に組み合わさって成り立っています。骨や筋肉、心臓や肺など、それぞれが重要な役割を担っていますが、実はこれらの組織を支え、体を一つのまとまりとして形作っている重要な組織があります。それが結合組織です。 結合組織は、骨、軟骨、皮膚、血管など、体のあらゆる場所に存在しています。例えるならば、レンガ造りの家のレンガとレンガの間を埋めるセメントのように、様々な組織や器官の隙間を埋め尽くし、それらをつなぎとめる役割を担っています。 結合組織の役割は、単に組織や器官をつなぎとめるだけではありません。組織に弾力性を与えたり、外部からの衝撃を吸収したり、組織の修復を助けたりと、多岐にわたる機能を持っています。例えば、皮膚の弾力性も結合組織のおかげですし、怪我をした時に傷口がふさがるのも結合組織の働きによるものです。 このように、結合組織は、目立つ存在ではありませんが、私たちの体が正常に機能するために欠かせない存在なのです。
アレルギー

膠原病:全身に影響を及ぼす疾患群

- 膠原病とは膠原病とは、体の中で重要な役割を果たしている結合組織が、自分自身の免疫システムによって攻撃されてしまう病気の総称です。特に、結合組織の主成分である膠原線維が標的となることから、膠原病と名付けられました。膠原線維は、骨や軟骨、皮膚、血管、内臓など、体のあらゆる場所に存在し、組織の強度や弾力性を保つ働きをしています。例えるなら、建物を支える鉄骨のようなものです。この膠原線維が炎症を起こしたり、破壊されたりすることで、様々な臓器に障害が生じ、多岐にわたる症状が現れるのが膠原病の特徴です。膠原病には、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、強皮症など、多くの種類が存在します。それぞれの病気によって、主に障害を受ける臓器や症状、経過は大きく異なります。膠原病の原因はまだはっきりとは解明されていませんが、遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に関係していると考えられています。また、膠原病は、比較的若い世代、特に20代から40代の女性に発症しやすいことも特徴の一つです。膠原病は、早期に発見し、適切な治療を行うことで、症状の進行を抑え、日常生活を維持することができる病気です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
その他

膠原病類縁疾患:古典的膠原病との関連

- 膠原病とは膠原病は、体の様々な部位で炎症を引き起こす病気の総称です。 私たちの体は、臓器や組織を支え、結びつける役割を持つ結合組織で構成されています。膠原病は、この結合組織や血管の壁に炎症が起こり、組織が硬くなってしまう「線維素様変性」と呼ばれる変化を特徴とします。1942年、ポール・クレンペラーという医師によって提唱された膠原病は、当初、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、結節性多発動脈周囲炎、リウマチ熱の6つの病気を「古典的膠原病」として定義しました。膠原病は、免疫の異常が原因と考えられています。 本来、免疫は細菌やウイルスなどの外敵から体を守る仕組みですが、膠原病では、この免疫システムが誤って自分の体の組織を攻撃してしまうのです。 その結果、炎症が慢性化し、様々な臓器に障害を引き起こします。膠原病の症状は、発熱、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感など、風邪に似た症状で始まることが多いです。 また、皮膚の発疹や脱毛、口内炎、胸膜炎、心膜炎など、様々な症状が現れることもあります。膠原病は、早期発見・早期治療が大切です。 早期に適切な治療を開始することで、症状をコントロールし、病気の進行を抑えることが期待できます。
血液

顕微鏡的多発血管炎:小さな血管の大きな炎症

- 顕微鏡的多発血管炎とは顕微鏡的多発血管炎という病名は、あまり聞き馴染みがないかもしれません。この病気は、体中に張り巡らされた細い血管に炎症が起こることで、様々な症状が現れます。「多発血管炎」という名前が示すように、炎症は体の複数の血管に生じます。しかし、肉眼では確認できないほど小さな血管で炎症が起こるため、「顕微鏡的」という言葉が付け加えられています。顕微鏡的多発血管炎は、免疫システムの異常が原因と考えられていますが、はっきりとした原因はまだ解明されていません。本来、免疫システムは細菌やウイルスなどの外敵から体を守る働きをしています。しかし、顕微鏡的多発血管炎を発症すると、この免疫システムが誤って自分の体の血管を攻撃してしまうのです。その結果、血管の壁が炎症を起こし、血液の流れが悪くなったり、血管が破れて出血したりすることがあります。顕微鏡的多発血管炎は、放置すると重症化することもあるため、早期発見・早期治療が重要です。症状としては、発熱、体重減少、倦怠感、筋肉痛、関節痛など、風邪に似た症状が現れることがあります。また、血管の炎症が起こる場所によっては、皮膚の紫斑、咳や息切れ、腹痛、腎機能障害などの症状が現れることもあります。もし、これらの症状が続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。

免疫の守護神:CD22分子の役割

私たちの体には、外部から侵入してくる病原体から身を守る、免疫と呼ばれる防御システムが備わっています。このシステムは、様々な種類の細胞が連携して成り立っており、その中でもB細胞は、抗体と呼ばれる武器を作り出すことで、病原体に対する攻撃を担う重要な役割を担っています。 B細胞の表面には、様々な分子が存在していますが、CD22分子はその中でも特に重要な役割を担っています。CD22分子は、例えるならば、B細胞の活動を抑えたり、促進したりする、いわば番人のような役割を担っています。この分子は、B細胞が抗体を産生する段階になると、その表面に多く現れます。そして、B細胞が産生する抗体の量を調整することで、免疫反応が過剰になりすぎないように抑制し、適切なバランスを保つ働きをしています。 もし、CD22分子が正常に機能しなくなると、B細胞は過剰に活性化し、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう可能性があります。このような状態は、自己免疫疾患と呼ばれる病気の一因となると考えられています。 CD22分子は、免疫システムのバランスを維持する上で非常に重要な役割を担っており、その機能を解明することは、自己免疫疾患などの新たな治療法の開発に繋がると期待されています。
血液

ANCA関連血管炎:知っておきたいこと

- ANCA関連血管炎とはANCA関連血管炎という言葉は、あまり馴染みがないかもしれません。これは、自分の免疫の働きが誤ってしまい、自分の体の血管に炎症を起こしてしまう病気です。ANCAとは、「抗好中球細胞質抗体」の略称で、この抗体が自分の体の細胞を攻撃してしまうことが原因です。私たちの体の中には、血管が網の目のように張り巡らされています。この血管に炎症が起きると、血液の流れが悪くなり、体の様々な場所に影響が出てしまいます。症状は実に様々で、発熱やだるさ、関節の痛み、体重減少など、風邪によく似た症状が出ることもあります。さらに厄介なことに、ANCA関連血管炎は、放っておくと重い病気につながる可能性があります。炎症が強くなると、腎臓、肺、神経など、生命維持に欠かせない臓器にまで障害が及んでしまうことがあるのです。ANCA関連血管炎は、早期発見、早期治療が何よりも大切です。原因不明の体調不良が続く場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
その他

バセドウ病:自己免疫が引き起こす甲状腺の病気

- バセドウ病とはバセドウ病は、自分の免疫システムが誤って自分の体の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。この病気では、免疫の異常によって甲状腺を刺激する物質(自己抗体)が作られ、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまうことで様々な症状が現れます。通常、私達の体の代謝やエネルギー産生を調節する甲状腺ホルモンは、脳からの指令を受けて適切な量が分泌されます。しかしバセドウ病では、この調節機能が自己抗体によって狂わされてしまうのです。甲状腺ホルモンは、心拍数を増やしたり、体温を上昇させたりと、体の機能を活発にする働きがあります。そのため、バセドウ病になると、動悸や息切れ、暑がり、体重減少、手の震え、疲れやすくなるなどの症状が現れます。また、精神的な興奮やイライラ、不安感といった症状が現れることもあります。さらに、眼球突出といった特徴的な症状が現れる場合もあります。バセドウ病は、適切な治療を行えば症状を抑え、普通の生活を送ることができます。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
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