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PAO2とA-aDO2:低酸素血症の評価

- 肺胞気酸素分圧(PAO2)とは私たちの身体は、呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を排出することで生命を維持しています。このガス交換の重要な舞台となるのが、肺胞と呼ばれる小さな袋状の器官です。 肺胞気酸素分圧(PAO2)とは、この肺胞内における酸素の圧力を示す指標であり、呼吸機能の評価において重要な役割を担います。空気は窒素、酸素、二酸化炭素など様々な気体の混合物であり、それぞれの気体は固有の圧力を持っています。これを分圧と呼び、PAO2は肺胞内の酸素がどれだけの圧力を持っているかを表しています。単位としては、トル(Torr)や水銀柱ミリメートル(mmHg)、国際的にはパスカル(Pa)が用いられます。PAO2は、直接測定することが困難なため、吸入酸素濃度や動脈血二酸化炭素分圧などの数値を用いて計算によって求められます。例えば、私たちは呼吸によって大気中の酸素を取り込んでいますが、大気圧(約760Torr)における酸素の分圧は約160Torrです。しかし、実際には肺胞内には常に二酸化炭素や水蒸気が存在するため、PAO2は大気中の酸素分圧よりも低くなります。PAO2の値は、肺のガス交換機能を反映しており、呼吸器疾患の診断や治療効果の判定に広く活用されています。肺気腫や肺炎など、肺胞の機能が低下する病気では、PAO2の値が低下する傾向が見られます。
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NPPV:マスクで呼吸を楽にする治療法

- NPPVとは NPPVは、「非侵襲的陽圧換気療法」と呼ばれる治療法のことです。 この治療法は、呼吸が苦しい患者さんに対して、口や鼻に装着したマスクを通して空気を送り込むことで、呼吸をサポートします。この時、NPPVでは一定の圧力で空気を送り込み続ける「陽圧」という方法を用いるのが特徴です。 従来の人工呼吸器のように、口から気管を通して肺に直接管を挿入する「気管挿管」とは異なり、NPPVはマスクを装着するだけなので、患者さんの身体への負担が軽減されます。 また、気管挿管による人工呼吸では、声帯を管が塞いでしまうため発声ができませんが、NPPVでは会話も可能です。そのため、患者さんの苦痛を和らげ、より快適な治療を提供することができます。
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誤嚥:その原因と予防法

私たちは普段、食事をするとき、口に入れた食べ物を噛み砕き、飲み込んでいます。このとき、食べ物は本来「食道」と呼ばれる管を通って胃へと運ばれます。しかし、さまざまな原因で、食べ物が食道ではなく、「気管」に誤って入ってしまうことがあります。これが「誤嚥」です。 気管は肺へと空気を送るための管であるため、ここに食べ物や飲み物が入ると、むせる、咳き込むといった症状が現れます。多くの場合、このような生体の防御反応によって自然に吐き出されます。しかし、誤嚥を繰り返したり、誤嚥したものが気管の奥深くまで入ってしまった場合は注意が必要です。 誤嚥物が肺に入ってしまうと、細菌による感染症である肺炎を引き起こす可能性があります。特に、加齢や病気などにより体の機能が低下している高齢者の方では、誤嚥のリスクが高まるだけでなく、肺炎が重症化する危険性も高まります。誤嚥を防ぐためには、食事中の姿勢を正したり、よく噛んでから飲み込むなど、日頃から注意することが大切です。
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呼吸の鍵を握る横隔膜

- 横隔膜の位置と構造横隔膜は、呼吸において中心的な役割を果たす重要な器官です。体の内部では、胸郭の下部に位置し、胸腔と腹腔を隔てる境目となっています。ドームのような形状で、薄い筋肉と腱組織からなりますが、その薄さとは裏腹に、強い力で上下に動くことで呼吸運動を支えています。横隔膜の上には心臓と肺が収まっている胸腔、そして下には胃や腸などの消化器官が詰まった腹腔があります。 横隔膜は、この二つの重要な空間を隔てる壁として機能し、それぞれの器官がスムーズに働くために必要な環境を維持しています。具体的には、横隔膜は周囲の骨格と強固に結びついています。 肋骨、胸骨、そして腰椎に付着することで、しっかりと体を支えながら、安定した呼吸運動を可能にしています。 また、横隔膜の中央部には「腱中心」と呼ばれる腱組織が存在します。腱中心は、横隔膜が収縮と弛緩を繰り返す際に、その動きを効率的に伝える役割を担っています。
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咳 reflex:体の防御反応

咳とは、誰もが経験する、ごくありふれた体の反応です。医学用語では「咳嗽」と書きますが、これは、呼吸をするために空気の通り道となっている気道に、不要なものが溜まった時に、それを体外に排出するために起こる、生まれつきの大切な防御反応です。 私たちは呼吸をする際に、空気と一緒に、ごく小さな埃や、目には見えないウイルスや細菌などを体内に取り込んでいます。これらは通常、鼻や口、気道の粘膜に付着し、体内に入るのを防いでいます。しかし、過剰な埃やウイルス、細菌などが体内に入り込んだり、気道に炎症が起こったりすると、それを体外に排出するために、私たちの体は咳という反応を起こします。 咳は、肺に溜まった空気を、勢いよく吐き出すことで、異物を体外へ排出します。この時、同時に気道に溜まった痰と呼ばれる粘液も一緒に排出されます。痰には、埃やウイルス、細菌などが含まれており、咳によってこれらを体外に出すことで、呼吸器の健康を守っているのです。 咳は、たばこなどによる刺激や、喘息などの病気の症状として現れることもあります。咳が長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
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酸素テント:赤ちゃんの呼吸を支えるやさしいドーム

- 酸素テントとは酸素テントは、呼吸に困難を抱える赤ちゃんや、肺の機能が未熟な赤ちゃんのために、医療現場で使用される装置です。透明なプラスチックで作られたドーム状の形をしており、その内部に小さなベッドが設置されています。まるで赤ちゃんのための小さなお部屋のようです。このドームの特徴は、常に高濃度の酸素が供給されている点にあります。赤ちゃんは呼吸によって酸素を取り込みますが、肺の機能が未熟な場合は、十分な酸素を取り込むことができません。酸素テントは、ドーム内に高濃度の酸素を充満させることで、赤ちゃんが必要とする酸素を効率的に供給します。酸素テントは、その透明性により、医療従事者が赤ちゃんの様子を常に観察できるという利点もあります。また、ドーム内には小さな扉が付いており、そこから赤ちゃんの世話や治療を行うことができます。このように、酸素テントは、赤ちゃんの呼吸をサポートしながら、安全で快適な環境を提供します。
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ネブライザー治療:呼吸器疾患を和らげる治療法

- ネブライザー治療とはネブライザー治療とは、呼吸器疾患の症状を和らげるために薬剤を霧状にして、口や鼻から吸入する治療法です。 この治療法は、薬剤を細かい霧状にすることで、気道である口や鼻から肺の奥深くまで薬剤を効率的に届けることができます。そのため、気管支喘息やクループ、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) など、様々な呼吸器疾患の治療に用いられています。ネブライザー治療の大きなメリットは、必要な薬剤を直接肺に届けることができるため、全身への副作用を抑えながら効果的に治療を行うことができる点です。飲み薬のように消化器官を通過したり、注射のように血管に注入したりする必要がないため、より速やかに薬効が期待できます。また、小さなお子さんや高齢の方など、薬を飲み込むことが難しい方でも、無理なく治療を受けることができます。ネブライザー治療は、病院で行われることもありますが、小型の装置が開発されたことで、自宅で手軽に行うことも可能になっています。医師の指示に従って正しく使用することで、症状の改善や病気の悪化を防ぐ効果が期待できます。
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肺結核とは?

肺結核は、結核菌という細菌が原因で発症する病気です。この細菌は、主に肺に感染し、炎症を引き起こします。 結核菌は、感染者の咳やくしゃみの際に、空気中に飛散する小さな droplets (飛沫)に含まれて排出されます。そして、周囲の人がその空気を吸い込むことで、体内へ侵入します。 ただし、結核菌は、他の感染症を引き起こす一部の細菌と比べて、感染力が強いわけではありません。 健康な人の場合、体内に入った結核菌は、免疫細胞によって攻撃され、排除されます。そのため、結核菌に感染しても、発症する人は多くありません。 しかし、免疫力が低下している人や、高齢者、乳幼児などは、結核菌への抵抗力が弱いため、感染しやすく、発症するリスクが高くなります。 特に、HIV感染症など、免疫システムに影響を与える病気を持っている人は、注意が必要です。また、栄養状態が悪い人や、過労、ストレスなどによって体の抵抗力が落ちている人も、結核を発症しやすくなる可能性があります。
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人体の守護者:肋骨の役割

私たちの胸部を守る、まるで鎧のような存在、それが肋骨です。肋骨は、薄い板状の形をした骨で、左右対称に12対、合計24本あります。これらが胸部を覆うように弓状に並び、かごのような形を作っています。この骨格は、呼吸や運動など、私たちの日常生活に欠かせない様々な役割を担っていますが、最も重要な役割は、心臓や肺といった重要な臓器を外部からの衝撃から守ることです。 例えば、私たちが転倒したり、何かにぶつかったりしたとき、肋骨はクッションのように作用します。衝撃を吸収することで、内臓へのダメージを最小限に抑え、心臓や肺を守ってくれるのです。また、肋骨は、その構造上、ある程度の柔軟性も持ち合わせています。そのため、呼吸の際にも胸郭を広げたり縮めたりすることができ、円滑な呼吸をサポートする役割も担っています。 このように、肋骨は私たちの体にとって非常に重要な役割を果たしています。この鎧のような骨格のおかげで、私たちは日々安心して生活を送ることができるのです。
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喘息について

- 喘息とは喘息は、空気の通り道である気管支に炎症が起こり、気道が狭くなることで、息苦しさや咳などの症状が出る病気です。この炎症は慢性的に続くもので、一時的な風邪などとは異なります。気道が狭くなると、息を吸ったり吐いたりするのが難しくなり、特に息を吐く際に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が聞こえることがあります。これが喘鳴と呼ばれる喘息の特徴的な症状です。咳もまた一般的な症状で、特に夜間や早朝に悪化することがあります。喘息の症状は、発作的に起こることが特徴です。症状がない状態が続くこともあれば、ある日突然、激しい咳や息苦しさに襲われることもあります。発作の引き金となるものは人それぞれで、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛、タバコの煙、気温や湿度の変化、運動などが挙げられます。喘息は、乳幼児期から成人まで、どの年齢でも発症する可能性があります。また、日本を含む先進国で増加傾向にあり、現代では国民病の1つとされています。喘息は完治が難しい病気ですが、適切な治療を続けることで症状をコントロールし、日常生活に支障なく過ごすことが可能です。
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睡眠時無呼吸症候群:静かなる脅威とその影響

- 睡眠時無呼吸症候群とは睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まる、あるいは浅くなる病気です。これは、単にいびきがうるさいという問題とは大きく異なります。睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まることで体内の酸素レベルが低下し、心臓や血管に大きな負担をかけてしまいます。自覚症状としては、大きないびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛などが挙げられます。しかし、多くの人は自分が睡眠時無呼吸症候群であることに気づいていません。そのため、健康診断などで指摘されるまで、放置してしまうケースも少なくありません。睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病などのリスクを高めることが知られています。また、日中の眠気により、集中力や注意力が低下し、仕事や学業に支障をきたすだけでなく、交通事故のリスクも高まります。睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、医療機関を受診し、検査を受けることが重要です。検査では、睡眠中の呼吸状態や血液中の酸素濃度などを測定します。治療法としては、生活習慣の改善、マウスピースの装着、CPAP(経鼻的陽圧換気療法)などがあります。睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を行うことで、症状を改善し、合併症のリスクを減らすことができます。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
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誤嚥性肺炎を防ぐために

- 誤嚥性肺炎とは誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物、唾液などが誤って食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥」が原因で起こる肺炎です。通常、私たちは食べ物を口にすると、それが食道を通って胃へと運ばれていきます。しかし、加齢や病気などによって飲み込む機能が低下すると、食べ物などが誤って気管に入ってしまうことがあります。気管に入った食べ物や唾液などは、細菌を含んでいることが多く、これが肺に炎症を引き起こします。これが誤嚥性肺炎です。健康な方の場合は、体内に入ろうとする異物を排除しようとする働きが活発なため、誤嚥性肺炎を発症することは稀です。しかし、ご高齢の方や病気で体力が低下している方の場合、免疫力が低下しているため、誤嚥によって肺炎を発症しやすくなります。誤嚥性肺炎は、高齢者施設などに入っている方や、脳卒中などで寝たきりの状態にある方によくみられます。肺炎は、日本人の死因の上位に位置する病気であり、その中でも誤嚥性肺炎は増加傾向にあります。高齢化社会が進むにつれて、今後も患者数が増加することが懸念されています。
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知っておきたい肺気腫:症状と予防

- 肺気腫とは肺気腫は、呼吸をする上で重要な役割を担う肺の組織が壊れてしまう病気で、長い期間にわたって症状が現れます。肺は、体の中に酸素を取り込み、不要な二酸化炭素を排出する役割を担っています。この働きを担うのが「肺胞」と呼ばれる小さな空気の袋で、肺の中に無数に存在しています。肺気腫では、この肺胞の壁が壊れて弾力を失ってしまうため、うまく空気を出し入れすることが難しくなります。まるで、使い古して伸びてしまった風船のように、肺胞は膨らんだ状態になり、十分に縮まなくなってしまいます。そのため、息を吐くことが特に困難になります。新鮮な空気を取り込むことができず、息苦しさを感じるようになります。肺気腫は、長年の喫煙習慣や有害な物質の吸入、また、まれに遺伝などが原因で発症すると考えられており、一度壊れてしまった肺胞は元に戻ることはありません。そのため、早期発見と治療、そして禁煙などの予防策が非常に重要となります。
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咳だけが続く? 知っておきたい咳喘息

- 咳喘息とは咳喘息は、喘鳴や呼吸困難といった典型的な喘息の症状が現れず、慢性的な咳だけが続く病気です。まるで風邪を引いた後のように、咳がなかなか治らず、通常は8週間以上続きます。咳は、特に夜間や早朝にひどく出ることが多く、日常生活に支障をきたすこともあります。一見すると、ただの風邪と勘違いしてしまいがちですが、咳喘息は気管支に慢性的な炎症が起こっている状態です。風邪の原因となるウイルスなどによる一時的なものではなく、気管支が過敏になり、少しの刺激で咳込んでしまう状態が続いているのです。咳喘息を放置すると、本格的な喘息に移行するリスクもあります。そのため、咳喘息は適切な治療が必要な病気なのです。自己判断で市販の風邪薬などを服用し続けるのではなく、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
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肺の柔らかさを示す指標:コンプライアンス

私たちは、日々当たり前のように呼吸をしていますが、その裏では驚くほど精巧な体の仕組みが働いています。呼吸運動を担うのは、横隔膜や肋骨の間にある肋間筋と呼ばれる筋肉です。これらの筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで、胸腔と呼ばれる胸部の空間の容積が変化し、肺に空気が出入りするのです。 肺は、空気を取り込むと風船のように膨らみ、空気を吐き出すと縮みます。この、肺の膨らみやすさを表す指標となるのが「コンプライアンス」です。コンプライアンスが高い状態とは、肺が柔らかく、小さな力で楽に膨らむことができる状態を指します。逆に、コンプライアンスが低い状態とは、肺が硬くなってしまい、膨らませるためにより強い力が必要となる状態を意味します。 例えるならば、新しい風船は柔らかく、少しの息でも簡単に膨らみますが、古くなって硬くなった風船は、膨らませるのに苦労しますよね。肺もこれと同じで、コンプライアンスが高い状態であるほど、少ない労力で効率的に呼吸を行うことができるのです。
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呼吸困難のサイン?ストライダーについて解説

- ストライダーとはストライダーとは、呼吸をする際に、喉や気管から「グーグー」や「ゼーゼー」といった低い音が聞こえる症状のことです。まるで笛を吹くような音であることから、笛声呼吸とも呼ばれます。この音は、息を吸う時に顕著に現れることが特徴です。息を吸う際に胸が凹むような様子が見られることもあります。これは、空気の通り道である気道が狭くなっているために、空気がスムーズに体内に入ってこられないために起こります。ストライダーは、特に乳幼児によく見られる症状です。これは、乳幼児の気道が大人に比べて狭く、柔らかくできているため、炎症や異物などによって塞がりやすいことが原因です。軽度のストライダーは、風邪やインフルエンザなどの一般的なウイルス感染によって引き起こされることが多く、自然に治癒することも少なくありません。しかし、症状が重い場合や、呼吸困難を伴う場合には、気管支炎や肺炎、クループ症候群といった、より深刻な病気が隠れている可能性もあります。また、誤って小さな異物を飲み込んでしまい、気道に詰まっている場合にもストライダーの症状が現れることがあります。そのため、乳幼児がストライダーの症状を示す場合には、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
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ビオー呼吸:不規則なリズムを刻む呼吸の謎

私たちは普段、呼吸をすることを意識していません。これは、健康な状態であれば呼吸が規則的に、自然と行われているからです。しかし、病気になると、この滑らかな呼吸リズムが乱れ、普段とは異なる奇妙な呼吸パターンが現れることがあります。呼吸が速くなったり、遅くなったり、深くなったり浅くなったりと、その症状はさまざまです。今回は、このような異常呼吸の一つである「ビオー呼吸」について詳しく解説していきます。 ビオー呼吸は、まるで波打つように、呼吸が周期的に変化するのが特徴です。深い呼吸と浅い呼吸を交互に繰り返したり、呼吸が一時的に停止する「無呼吸」を伴うこともあります。このような呼吸の変化は、脳や肺、心臓など、体の重要な器官に異常が起きているサインである可能性があります。具体的には、脳腫瘍や脳卒中、心不全、肺炎などが原因として考えられます。 ビオー呼吸は、命に関わる病気のサインであることも少なくありません。そのため、もしも自分自身や周りの人が、普段とは異なる呼吸をしていることに気づいたら、すぐに医療機関を受診する必要があります。自己判断は危険ですので、必ず専門家の診察を受けて、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
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クスマウル呼吸:深く速い呼吸が生む意味

- クスマウル呼吸とは普段、私たちが意識することなく行っている呼吸は、吸って吐いてというリズムと深さが自然と調節されています。しかし、病気やケガなどによって体が弱っている時などには、呼吸が速くなったり、深くなったり、普段とは異なる状態になることがあります。その中でも、「クスマウル呼吸」と呼ばれる呼吸パターンは、まるで空気中に酸素が足りない場所で必死に呼吸をしているかのように、深く速い呼吸を繰り返すのが特徴です。この特徴的な呼吸は、体の中の酸性度、つまりpHと呼ばれる値が、酸性に傾きすぎた状態を改善しようとする体の防御反応です。私たちの体は、健康な状態を保つために、常に弱アルカリ性に保たれています。しかし、糖尿病などの病気や、激しい運動、脱水症状などによって、体が酸性に傾いてしまうことがあります。この状態を「アシドーシス」と呼びます。「アシドーシス」になると、体は酸性に傾いた状態を改善するために、肺から二酸化炭素を多く排出しようとします。二酸化炭素は体内では酸として働くため、これを排泄することで、血液中のpHを正常に戻そうとするのです。その結果、呼吸中枢が刺激され、深く速い呼吸、つまりクスマウル呼吸が出現します。クスマウル呼吸は、体が酸性に傾いているサインであり、放置すると命に関わる危険性もはらんでいます。そのため、もしも周囲にクスマウル呼吸をしている人がいたら、速やかに医療機関を受診する必要があります。
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異常呼吸を見つける: その種類と意味

私たちは普段、息を吸ったり吐いたりすることを特に意識していません。これは、体が自動的に呼吸を調整しているからです。しかし、病気にかかったり、体の状態が悪くなったりすると、この呼吸の仕方に変化が現れることがあります。 呼吸の速さや、一回の呼吸で吸ったり吐いたりする量、さらに呼吸のリズムが、いつもと違うと感じる場合は注意が必要です。 このような、健康な状態とは異なる呼吸のされ方を「異常呼吸パターン」と呼びます。異常呼吸パターンは、体が酸素を十分に取り込めていない、あるいは、体から二酸化炭素をうまく排出できていないサインである可能性があります。例えば、呼吸が速くなる、呼吸が浅くなる、呼吸をするたびに肩で息をする、呼吸と呼吸の間に pauses が入る、など、様々なパターンがあります。 これらの異常呼吸パターンは、肺炎や喘息、心臓病など、様々な病気が原因で起こる可能性があります。そのため、普段とは異なる呼吸の変化に気付いたら、自己判断せずに、医療機関を受診することが大切です。呼吸の変化を早期に発見し、適切な治療を受けることで、病気を悪化させずに済む可能性が高まります。
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周期的な呼吸の謎:チェーンストークス呼吸

- チェーンストークス呼吸とはチェーンストークス呼吸は、まるで波のように呼吸が周期的に変化する、特異な呼吸パターンです。 大きく息を吸っては吐くという呼吸の深さが、だんだん深く速くなっていき、まるで山の頂上を目指すようにピークを迎えます。 ピークに達すると、今度は徐々に呼吸が浅くゆっくりになっていきます。 そして、まるで静かな湖面のように、一時的に呼吸が停止してしまうことさえあります。 この静寂の後、再び呼吸が始まり、これまでと全く同じサイクルを繰り返します。まるで海の波のような、この規則的な呼吸の変化は、見ている人に不思議な印象を与えます。 チェーンストークス呼吸は、健康な人でも、睡眠中や高地にいる時などに一時的に見られることがありますが、心不全や脳卒中などの病気のサインである可能性もあるため、注意が必要です。 特に、普段見られない呼吸パターンが現れた場合には、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。
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PAO2:肺のガス交換を知る指標

- 肺胞気酸素分圧(PAO2)について肺胞気酸素分圧(PAO2)は、肺胞と呼ばれる肺の中の小さな空気の袋における酸素の圧力を表す指標です。単位はトル(Torr)またはミリメートル水銀柱(mmHg)を用います。この数値は、私たちの呼吸機能を考える上で非常に重要です。私たちは呼吸によって酸素を体内に取り込んでいます。 吸い込んだ空気は、気管を通って肺胞へと送られます。そして、この肺胞と毛細血管の間でガス交換が行われ、酸素が血液中に取り込まれるのです。PAO2は、肺胞内にある酸素の圧力を示すことで、肺がどれくらい効率的に酸素を取り込んでいるかを評価するために用いられます。PAO2の値は、年齢や健康状態、標高など様々な要因に影響を受けます。例えば、標高が高い場所では、空気中の酸素濃度が低いため、PAO2の値も低くなります。また、肺炎などの呼吸器疾患があると、肺胞でのガス交換がうまくいかなくなり、PAO2の値が低下することがあります。健康な人の場合、PAO2は通常80〜100mmHg程度です。しかし、60mmHg以下になると、血液中の酸素濃度が低下し、息切れや動悸などの症状が現れることがあります。さらにPAO2が低下すると、意識障害や呼吸不全に陥る可能性もあり、大変危険です。PAO2は、血液ガス分析という検査で測定することができます。血液ガス分析では、動脈から採血し、血液中の酸素や二酸化炭素の分圧などを測定します。この検査は、呼吸器疾患の診断や治療効果の判定に非常に役立ちます。
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PaCO2: 体内の酸素供給を測る重要な指標

- 動脈血二酸化炭素分圧 (PaCO2) についてPaCO2は、「ピーエーシーオーツー」と読み、動脈血二酸化炭素分圧の略称です。これは、私たちの血液中の動脈血に、どれだけの二酸化炭素が含まれているかを示す指標です。私たちは、生きていくために常に呼吸をしています。呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、細胞の中で栄養素を燃焼させるために使われます。この時、エネルギーとともに二酸化炭素が作られます。この二酸化炭素は、血液によって肺まで運ばれて、再び呼吸によって体外へ排出されます。 PaCO2は、動脈を流れる血液中の二酸化炭素の圧力を測定します。この数値が高ければ、血液中に二酸化炭素が多く溜まっている状態、つまり、肺が十分に機能せず、体外へ二酸化炭素を排出できていない状態を示します。反対に、数値が低ければ、血液中の二酸化炭素が少ない状態、つまり、呼吸が過剰である可能性を示します。PaCO2は、肺の機能や体内の酸素供給の状態を知るための重要な指標であり、呼吸器疾患の診断や治療効果の判定に用いられます。
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静かなる脅威:アスベスト関連疾患

- アスベストとはアスベストとは、天然に存在する繊維状の鉱物の総称です。非常に細く、肉眼では確認できないほど小さな繊維が集まってできています。この繊維は、熱や摩擦に強く、電気を通しにくいといった特性を持つため、かつては「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、様々な用途で重宝されていました。建材としては、屋根材や壁材、断熱材、床材などに広く利用されていました。その他にも、自動車のブレーキやクラッチ、電気製品の絶縁材など、その用途は多岐に渡りました。しかし、アスベストは、その微細な繊維を吸い込むことで、健康に深刻な影響を及ぼすことが明らかになりました。アスベストの繊維は非常に細いため、吸い込んでも肺の奥深くまで入り込みやすく、長期間にわたって肺に留まり続けます。そして、長い年月を経て、肺がんや中皮腫、じん肺といった深刻な病気を引き起こす可能性があります。これらの健康被害が明らかになったことを受け、現在では、アスベストの製造、使用、及び除去などは法律によって厳しく規制されています。
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一回換気量:人工呼吸管理の基礎

- 一回換気量とは 私たちは、生きていくために酸素を取り込み、体内で発生した二酸化炭素を排出しています。この大切なガス交換を担っているのが呼吸であり、一回換気量とは、その呼吸において一回に肺に吸い込んだり、吐き出したりする空気の量のことを指します。一回の呼吸を意識することは少ないかもしれませんが、吸って、吐いて、を繰り返すたびに、私たちの肺の中では一定量の空気が出入りしています。 一回換気量は、医療現場ではミリリットル(mL)という単位を用いて測定されます。健康な成人の場合、安静時の一回換気量には目安があり、体重1キログラムあたり約6ミリリットルとされています。例えば、体重が60キログラムの人であれば、一回の呼吸で約360ミリリットルの空気を吸ったり吐いたりしている計算になります。この値はあくまで目安であり、年齢や性別、体格、身体活動の状況などによって個人差があります。 一回換気量は、呼吸機能を評価する上で重要な指標の一つです。一回換気量が極端に少ない場合や、呼吸回数が増加している場合は、呼吸機能の低下や何らかの疾患が疑われることがあります。そのため、健康状態をチェックする上でも、一回換気量について理解を深めておくことは大切です。
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