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臨床試験の設計図:プロトコル

- プロトコルとは 臨床試験(治験)は、新薬や新しい治療法が患者さんにとって有効かつ安全かどうかを確かめるための重要なプロセスです。しかし、闇雲に治療法を試すのではなく、事前に綿密な計画を立て、厳密なルールに基づいて進める必要があります。この計画書のことを、治験における「プロトコル」と呼びます。 プロトコルは、例えるならば、治験という建物を建てるための設計図のようなものです。この設計図には、建物の大きさや形、使用する材料、建築手順など、詳細な情報が全て記載されています。 治験におけるプロトコルにも、同様に、治験を適切かつ円滑に進めるために必要な情報が全て記載されています。具体的には、以下のような項目が含まれます。 * どのような患者さんを対象とするのか(患者さんの選択基準) * 薬はどのように投与するのか(投与量、投与期間、投与経路) * 薬の効果はどのように評価するのか(有効性の評価方法) * 薬の安全性はどのように確認するのか(安全性の評価方法) * 治験中に起こった出来事はどのように記録・報告するのか このように、プロトコルには治験のあらゆる側面が詳細に規定されており、治験に関わる全ての関係者が、このプロトコルに従って行動することになります。これにより、治験の質を担保し、信頼性の高い結果を得ることが可能となります。
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医療現場におけるカンファレンスの重要性

- カンファレンスとはカンファレンスとは、病院など医療現場において、医師や看護師、薬剤師、理学療法士など、様々な専門知識を持った医療従事者が集まり、患者の治療方針や経過について話し合い、情報を共有する会議のことです。英語の「Conference」が語源となっており、「カンファ」と略して呼ばれることもあります。カンファレンスでは、それぞれの職種の専門的な視点から意見を出し合い、患者さんにとってより良い治療法やケアの方法を検討します。例えば、医師は病気の診断や治療方針について説明し、看護師は患者さんの日常生活の状況や症状の変化などを報告します。薬剤師は薬の効果や副作用、飲み合わせなどを確認し、理学療法士は身体機能の回復に向けたリハビリテーション計画を提案します。このように、多職種の専門知識を統合することで、患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な医療を提供することを目指します。医療現場では、患者さんの入院時から退院後まで、治療のあらゆる段階でカンファレンスが頻繁に行われています。カンファレンスを通じて、医療従事者間の連携を深め、情報共有をスムーズに行うことで、より質の高い医療の提供、医療ミスや事故の防止、患者さんの満足度向上などが期待できます。また、カンファレンスは、医療従事者にとって、他の職種の専門知識や経験を学ぶ貴重な機会となっています。
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水分過剰の危険性:水毒症とは?

- 水分過剰による体の不調、水毒症とは水毒症とは、体内の水分量とミネラルバランスが崩れ、血液中のナトリウム濃度が過度に低下してしまうことで現れる症状です。本来、私たちの体は、飲水と排泄を調整することで、体内の水分バランスを適切に保っています。しかし、短時間に多量の水分を摂取してしまうと、このバランスが崩れ、体内のナトリウム濃度が薄まってしまうのです。これが水毒症の主な原因です。ナトリウムは、体内の水分バランスを維持し、神経や筋肉の働きを正常に保つために重要な役割を担っています。しかし、水毒症になると、血液中のナトリウム濃度が低下し、細胞内に水分が過剰に流れ込んでしまいます。その結果、めまいや吐き気、頭痛、倦怠感といった症状が現れ、重症化するとけいれんや意識障害、最悪の場合には命に関わることもあります。水毒症は、一度に大量の水を飲む習慣がある人や、腎臓や心臓に持病を持つ人、マラソンランナーなど発汗量が多い人がなりやすいとされています。また、抗利尿ホルモンの分泌異常などによっても引き起こされることがあります。水毒症の予防には、こまめな水分補給を心掛け、一度に大量の水を飲むことを控えることが重要です。また、発汗量が多い運動後などは、スポーツドリンクなどで水分とミネラルを一緒に補給するようにしましょう。水分の摂り過ぎは、体に思わぬ悪影響を及ぼす可能性があることを認識しておくことが大切です。
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ヒヤリハットで事故防止

- ヒヤリハットとは日常生活の中で、誰もが経験する「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりする瞬間。例えば、階段を下りる際に一歩踏み外しそうになったり、自転車に乗っていて車とすれ違う時に接触しそうになったり、熱い鍋にうっかり触れてしまいそうになった経験はありませんか? これらの出来事は、大事には至らなかったものの、一歩間違えれば大きな事故や怪我に繋がっていた可能性があります。このような、重大な事故や怪我には至らなかったものの、危険と隣り合わせであったという体験を「ヒヤリハット」と呼びます。 「ヒヤリハット」という言葉は、文字通り「ヒヤリ」とした経験と「ハッ」と気づいた経験から生まれました。 「ヒヤリ」とした瞬間は、危険な状況に直面したことを意味し、「ハッ」とした瞬間は、その危険に気がつき、事なきを得たことを意味します。 つまり、「ヒヤリハット」は単なる偶然ではなく、危険が潜んでいたことを示す重要なサインなのです。 日常生活の中で「ヒヤリハット」に意識を向けることは、私たち自身の安全を守る上で非常に大切です。 日頃から「ヒヤリハット」に注意し、その原因を分析することで、同様の危険を回避するための対策を立てることができます。
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免疫の司令塔:サイトカイン

私たちの体の中では、無数の細胞たちが絶え間なく会話をして、組織や器官の働きを調整しています。この細胞間のコミュニケーションを支える重要な役割を担っているのが、サイトカインと呼ばれる小さなタンパク質です。 サイトカインは、細胞から分泌されると、血液やリンパ液などの体液に乗って他の細胞へと届けられます。まるで手紙をポストに投函するように、細胞はサイトカインを分泌することで、離れた場所にいる細胞にメッセージを送ることができるのです。 細胞の表面には、特定のサイトカインとだけ結合する受容体と呼ばれるタンパク質が存在します。受容体にサイトカインが結合すると、細胞内にシグナルが伝わり、様々な反応を引き起こします。これは、手紙を受け取った人がその内容に従って行動を起こす様子に似ています。 サイトカインが伝えるメッセージは実に多岐に渡り、免疫反応の調節、炎症の促進、細胞の増殖や分化の制御など、私たちの体の様々な機能に影響を与えています。例えば、風邪を引いたときに発熱するのは、免疫細胞がサイトカインを分泌して体温を上げるように指令を出すためです。また、怪我をしたときに傷口が赤く腫れるのも、サイトカインが炎症反応を引き起こすためです。 このように、サイトカインは細胞間のコミュニケーションを円滑に行うためのメッセンジャーとして、私たちの体の健康維持に欠かせない役割を担っているのです。
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根絶された感染症:天然痘

天然痘は、天然痘ウイルスという病原体によって引き起こされる感染症で、かつては世界中で猛威を振るい、多くの人々の命を奪いました。日本では「疱瘡(ほうそう)」という名で恐れられてきた歴史があります。 主な症状としては、高熱が出現し、その後、全身に特徴的な発疹が現れます。この発疹は、赤い斑点状から始まり、徐々に水疱へと変化していきます。また、発熱や発疹に加えて、強い倦怠感や頭痛、筋肉痛なども伴います。 天然痘の恐ろしい点は、その高い致死率です。感染者の約30%が命を落としており、治療法が確立されていなかった時代には、まさに「死の病」として恐れられていました。 天然痘は、人から人への接触感染によって広がります。患者の咳やくしゃみの飛沫を吸い込んだり、発疹に触れたりすることで感染します。空気感染はしませんが、感染力は非常に強く、一度流行すると、多くの人が感染してしまうという特徴がありました。
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プライマリーケア:身近な健康の窓口

- プライマリーケアとは健康に不安を感じた時、皆さんはまずどこに相談しますか?病院?それともクリニック?プライマリーケアは、まさに皆さんが最初に訪れる医療の窓口となるものです。風邪を引いてしまった、お腹が痛い、転んで怪我をしてしまった、といった日常で起こる様々な体の不調、誰もが経験する身近な健康上の問題に、プライマリーケアは幅広く対応します。例えば、熱っぽくて咳が出る場合、まずは近くのクリニックを受診しますよね。そこで診察を行い、症状に応じて薬が処方されたり、検査が必要か判断されたりします。もしも症状が重く、より専門的な治療が必要だと判断されれば、適切な病院を紹介してもらうこともあります。このように、プライマリーケア医は皆さんの健康状態を総合的に判断し、最適な医療へと繋ぐ役割を担っているのです。つまり、プライマリーケアは、専門性の高い医療機関を受診する前にまず相談する場所と言えるでしょう。自己判断で症状を悪化させてしまう前に、気軽に相談できる身近な医療機関として、プライマリーケアを活用することで、安心して健康な毎日を送ることができます。
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目に見えない脅威: ウイルスの世界

- ウイルスの定義ウイルスは、他の生物の細胞に寄生することでしか増殖できない、とても小さな感染性因子です。そのサイズは非常に小さく、一般的な細菌と比べてもはるかに微小です。あまりにも小さいため、光学顕微鏡で観察することは不可能であり、ウイルスを観察するためには電子顕微鏡が必要となります。生物は一般的に、自ら細胞分裂を行うことで数を増やしていきます。しかし、ウイルスは自己複製能力を持たないため、他の生物の細胞を利用しなければ増殖することができません。ウイルスは、まず宿主となる細胞に侵入します。そして、細胞内に自身の遺伝情報であるDNAやRNAを注入し、細胞の機能を乗っ取ってしまうのです。宿主細胞は、ウイルスの遺伝情報に従って新たなウイルスを作り出す工場と化し、大量のウイルスが細胞内で増殖していきます。最終的には、宿主細胞は破壊され、そこから新たなウイルスが放出され、他の細胞に感染していくのです。このように、ウイルスは他の生物の細胞を利用する特殊な増殖方法を持つため、生物と非生物の境界線上に位置づけられることもあります。生命活動に必要な独自の代謝系やエネルギー産生系を持たず、自己複製もできないという点では非生物に近い存在と言えるでしょう。しかし、遺伝情報を持ち、進化する能力を備えているという点では、生物的な側面も持ち合わせています。ウイルスは、微生物の世界においても非常に特異な存在であり、その存在は私たちに生命の定義について改めて考えさせるきっかけを与えてくれます。
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遺伝子の変化:遺伝子変異とその影響

私たちの体は、細胞という小さな単位が集まってできています。そして、その細胞の一つひとつの中に、遺伝子と呼ばれる設計図が存在します。この遺伝子は、まるで生命の設計図のようなもので、私たちの体の特徴や機能を決めるための情報を担っています。 遺伝子は、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)と呼ばれる4種類の塩基が、まるでビーズのように一列に並んで構成されています。この塩基の並び方が、遺伝情報の内容を決める重要な役割を担っています。 遺伝子変異とは、この塩基の並び順、つまり塩基配列に変化が生じることを指します。遺伝子変異が起こると、場合によっては、本来の遺伝情報とは異なる情報が作られることになります。これは、ちょうど設計図の一部が書き換えられるようなもので、体の特徴や機能に影響を及ぼすことがあります。 遺伝子変異は、自然発生的に起こることもあれば、紫外線や放射線、特定の化学物質などの影響によって発生する可能性もあります。遺伝子変異は、進化の原動力となることもありますが、がんなどの病気の原因となることもあります。
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細胞壁を持たない微生物:マイコプラズマ

- マイコプラズマとはマイコプラズマは、私達の身の回りの空気中や土壌、水など、様々な場所に生息する微細な生物です。 私達の体にも、口の中や喉、鼻の中などに普通に存在しています。 この生物は、目に見えないほど小さく、その小ささは細菌と比較してもさらに小さいものです。しかし、その小さな体にも関わらず、私達の体に様々な影響を与えることがあります。マイコプラズマは、他の一般的な細菌とは大きく異なる特徴を持っています。それは、細胞を包む「細胞壁」と呼ばれる構造がないことです。 細胞壁は、細菌にとって、外部環境から身を守り、形を保つために重要な役割を果たしています。しかし、マイコプラズマはこの細胞壁を持たないため、形が一定ではなく、まるでアメーバのように形を変えながら動くことができます。この細胞壁がないという特徴は、マイコプラズマが様々な環境に適応し、生き延びるための武器となっています。 例えば、抗生物質の中には、この細胞壁の合成を阻害することで効果を発揮するものがあります。しかし、マイコプラズマは細胞壁自体を持たないため、これらの抗生物質の影響を受けずに生き続けることができます。 また、その小さな体と柔軟な形状により、他の生物の細胞の中に入り込み、増殖することも可能です。このように、マイコプラズマは、小さく目立たない存在でありながら、私達の健康や生活に影響を与える可能性を秘めた生物と言えるでしょう。
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医療現場で使われる「クリニカル」の意味とは?

「クリニカル」という言葉を耳にしたことがありますか?医療ドラマなどで耳にすることもあるかもしれませんが、具体的にどのような意味を持つのでしょうか。 「クリニカル」は、英語では「clinical」と表記し、「医療に関わる」「臨床の」「臨床的な」といった意味で使われます。医療現場や医療に関連する場面で頻繁に登場する言葉です。 たとえば、「クリニカルスタディ」は「臨床研究」、「クリニカルパス」は「診療計画表」、「クリニカルスキル」は「臨床能力」といったように、さまざまな場面で用いられます。 「クリニカル」が意味する「臨床」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか? 簡単に言うと、「臨床」とは、実際に患者さんを診察し、治療を行う医療行為のことを指します。 たとえば、新しい薬の効果や安全性を確かめる場合、動物実験などを通して研究が行われます。そして、動物実験で一定の効果と安全性が確認された薬は、いよいよ人間を対象とした試験が行われます。この人間を対象とした試験のことを「臨床試験」と呼び、「クリニカル」は、このように実際の人間を対象とした医療行為に関連する言葉なのです。
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染色体異常:数の異常と構造の異常

私たちの体は、ごく小さな単位である細胞が集まってできています。細胞の一つ一つには核と呼ばれるさらに小さな構造があり、この核の中に、私たちの姿形や性質などに関する情報である遺伝情報が大切に保管されています。この遺伝情報を担っている物質がDNAです。 DNAは、デオキシリボ核酸と呼ばれる非常に長い糸状の物質で、もし伸ばすと全長2メートルにもなります。そのままではとても小さな核の中に収まりきらないため、普段は糸巻きのようにタンパク質に巻き付いたり折り畳まれたりしてコンパクトに収納されています。そして、細胞が分裂する時には、DNAはさらにギュッと凝縮されて棒状の姿に変身します。これが染色体です。 染色体は、遺伝情報を次の世代の細胞に正確に伝えるために非常に重要な役割を担っています。染色体を作るタンパク質は、DNAを保護したり、遺伝情報の読み出しを調節したりするなど、様々な働きをしています。染色体の数や形は生物の種類によって異なっており、私たち人間の場合には、1つの細胞の中に46本の染色体を持っています。
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カルテ用語解説: f/uって?

病院で診察を受けると、医師がパソコンの画面に向かってカタカタと文字を打ち込んでいる姿を目にしますよね。あの画面に表示されているのは「電子カルテ」と呼ばれるもので、患者さんの情報が事細かに記録されています。診察中に医師が記録しているのは、症状や診断結果、そして今後の治療方針などです。 ところで、医師が記録している内容をこっそり覗き込んだことはありますか?もしそうなら、「あれ?今の何ていう文字?」と不思議に思った経験があるかもしれません。電子カルテには、医療従事者以外には馴染みのない専門用語や略語が頻繁に登場するからです。 例えば、「f/u」という文字列を見たことはありませんか?これは「follow up(フォローアップ)」の略で、日本語では「経過観察」を意味します。つまり、「f/u」と書かれたカルテは、患者さんの状態を今後も継続的に観察していく必要があるということを示しています。 一見すると暗号のように思えるカルテ用語ですが、医師や看護師の間では共通言語として使われています。これは、限られた時間の中で患者さんの情報を正確かつ効率的に共有するために非常に役立っているのです。 カルテ用語は、医療従事者と患者さんの橋渡しをするための重要な鍵となります。今後病院を受診する際には、カルテに書かれた謎の記号にも目を向けてみて下さい。もしかしたら、自分の体の状態や治療方針について、より深く理解することができるかもしれません。
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アウトカム:医療における成果指標

- アウトカムとは何か? 医療の世界では、患者さんに適切な治療や予防を行うことで、健康な状態を取り戻せるように、日々努力が重ねられています。その際、医療の成果を測る指標として「アウトカム」という言葉が使われます。 では、アウトカムとは一体何でしょうか? アウトカムとは、医療行為によって患者さんにもたらされた最終的な結果を指します。 従来の医療では、病気の有無や検査数値の改善といった身体的な側面ばかりが重視されてきました。しかし、患者さんにとって本当に大切なのは、病気の症状が改善するだけでなく、日常生活でどれだけ快適に過ごせるか、仕事や趣味に復帰できるか、といった生活の質(QOL)の向上も含まれます。 例えば、骨折した患者さんに対するアウトカムを考える場合、骨折が治癒したかどうかだけでなく、 * どの程度の期間で歩けるようになったのか * 仕事に復帰できたのか * スポーツを再開できたのか なども評価の対象となります。 このように、アウトカムは患者さん一人ひとりの状況や価値観を反映した、多角的な指標と言えるでしょう。
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病気の物語:現病歴の重要性

- 現病歴とは 現病歴は、医療現場において非常に重要な情報源であり、「今の病気の物語」と表現されることがあります。これは、患者さんが現在抱えている病気や症状について、その発症から現在までの経過を詳細に記録したものです。 具体的には、いつ、どのような状況で、どのような症状が現れ始めたのか、その症状がどのように変化してきたのか、などを時系列に沿って記録します。例えば、発熱の場合、いつから熱が出始めたのか、何度まで上がったのか、他に症状はあったのか、などを記録します。 現病歴は、医師が病気の原因や診断の手がかりを得るために重要なだけでなく、適切な治療方針を決定するためにも欠かせない情報です。そのため、患者さんは医師の診察を受ける際に、現在の症状だけでなく、過去の病歴や症状の変化についてもできるだけ詳しく伝えるように心がけましょう。
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命に関わる感染症:敗血症とは

- 敗血症とは敗血症は、体の中に侵入した細菌やウイルス、真菌といった微生物が引き起こす感染症に対して、体が過剰に防御反応を起こしてしまうことで発症する、深刻な病気です。 通常、私たちの体は、これらの微生物が体内に入ると、免疫システムが働き、撃退しようとします。しかし、この免疫反応がコントロールを失い、過剰に働いてしまうことがあります。その結果、全身に激しい炎症が広がり、様々な臓器に悪影響を及ぼしてしまうのです。敗血症の初期症状としては、高熱や chills(悪寒)、心拍数の増加、呼吸数の増加などが挙げられます。 また、感染源となる傷口の発赤や腫れ、痛みなどがみられることもあります。 さらに症状が進行すると、意識レベルの低下や血圧の低下、尿量の減少、皮膚の斑点などの症状が現れることもあります。 敗血症は、早期に発見し、適切な治療を行えば救命できる可能性が高い病気です。 しかし、発見や治療が遅れると、多臓器不全やショック状態に陥り、命に関わる危険性も高まります。 少しでも敗血症の疑いがある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
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免疫の鍵! リンパ節の「傍皮質」とその役割

私たちの体には、リンパ節と呼ばれる、大きさ数ミリメートルから数センチメートルほどの小さな器官が無数に存在しています。リンパ節は全身に分布しており、特に首、脇の下、足の付け根などに多く見られます。リンパ節は、リンパ管と呼ばれる細い管で網の目のようにつながっており、体の中を流れるリンパ液が通過する場所となっています。 リンパ節は、細菌やウイルスなどの病原体から体を守る免疫システムにおいて非常に重要な役割を担っています。リンパ液は、血液とともに体中を巡り、老廃物や病原体などを運びます。リンパ節は、リンパ液を濾過して、これらの異物を除去する働きを持っています。 リンパ節の内部は、皮質、傍皮質、髄質と呼ばれる3つの主要な領域に分けられます。皮質は、リンパ節の外側に位置し、リンパ球が集まったリンパ小節と呼ばれる構造が見られます。リンパ小節は、B細胞と呼ばれるリンパ球が多く存在し、抗体を作って病原体を攻撃します。傍皮質は、皮質と髄質の間に位置し、T細胞と呼ばれるリンパ球が多く存在します。T細胞は、ウイルス感染細胞やがん細胞を直接攻撃する働きがあります。髄質は、リンパ節の中心に位置し、リンパ球やマクロファージなど多くの免疫細胞が存在します。髄質では、病原体や異物が処理され、排除されます。 このように、リンパ節は免疫システムにおいて重要な役割を担っており、私たちの健康を守っています。
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医療の質向上への道標:クリニカルインディケーター

- クリニカルインディケーターとは 医療現場では、患者さんの安全を守り、質の高い医療を提供することが何よりも重要です。そのために、医療現場では日々努力を続けていますが、その質を客観的に評価することは容易ではありません。そこで、近年注目されているのが「クリニカルインディケーター」です。 クリニカルインディケーターとは、医療の質を測るための指標となるもので、いわば病院や診療所などが提供する医療サービスの質を測る「ものさし」のような役割を担います。具体的には、医療の現場で実際に得られたデータに基づいて、医療の質を数値化したものを指します。 例えば、「手術後の感染症発生率」や「入院中の転倒発生率」などが挙げられます。これらの数値を見ることで、病院全体の医療の質や、特定の診療科、または個々の医療従事者の医療の質を客観的に把握することができます。 クリニカルインディケーターを活用することで、医療現場は自らの課題を明確化し、改善に向けた取り組みを進めることができます。その結果、より安全で質の高い医療の提供につながると期待されています。
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身近な脅威、感染症について

- 感染症とは私たちの身の回りには、目には見えない小さな生き物がたくさんいます。その中には、私たちの体の中に入ると、体に害を及ぼすものもいます。このような生き物のことを病原体といい、病原体が体の中に侵入して増え、体に悪さをすることで、私たちは病気になってしまいます。この病気を、感染症と呼びます。感染症を引き起こす病原体には、大きく分けて、細菌やウイルス、真菌など、様々な種類があります。それぞれの種類によって、引き起こされる病気や症状、感染経路などが異なります。例えば、風邪の原因となるのは主にウイルスであり、インフルエンザもインフルエンザウイルスというウイルスによって引き起こされます。食中毒は、細菌やウイルスによって汚染された食べ物を口にすることで感染します。病原体が体内に侵入したとしても、必ずしも感染症を発症するわけではありません。私たちの体は、生まれながらに備わっている免疫や、ワクチンや過去の感染によって得られた免疫によって、病原体から身を守る仕組みを持っているからです。この免疫システムのおかげで、多くの場合、病原体の侵入を防いだり、排除したりすることができます。しかし、体が疲れていたり、栄養が不足していたり、睡眠不足が続いたりすると、免疫の働きが弱まってしまうことがあります。また、病気やストレス、加齢なども、免疫力を低下させる要因となります。免疫力が低下すると、病原体の侵入を防ぐことができなくなり、感染症を発症しやすくなってしまいます。感染症を予防するためには、普段から、バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけ、免疫力を高めておくことが大切です。また、外出後の手洗いとうがいを徹底したり、人混みを避けるなど、病原体との接触を減らすように心がけることも重要です。
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物質量の単位 mol

皆さんは、鉛筆やノートパソコンを数える際に「ダース」という言葉を使うことがありますよね。1ダースが12個であるように、化学の世界にも、目に見えないほど小さな原子や分子を数えるための特別な単位があります。それが、これから説明する「モル」です。 「モル」は、国際的に定められた単位で、原子や分子を非常にたくさん集めたときの量を表します。1モルの粒子の数は、6.02214076×10²³個ととてつもない数になります。この途方もない数字は、「アボガドロ定数」とよばれ、1モルの定義の基礎となっています。 では、なぜこのような大きな数を扱うのでしょうか?それは、原子や分子が非常に小さく、1個ずつ扱うのが現実的ではないからです。例えば、水素原子1個の質量は、わずか1.67×10⁻²⁴グラムしかありません。このような小さな数字を扱うよりも、アボガドロ定数個のまとまりとして扱う方が、物質の量を把握しやすいため、モルという単位が用いられています。 日常生活でモルを意識することはほとんどありませんが、化学の分野では、物質の性質や反応を理解する上で欠かせない概念となっています。
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インフォームドチョイス:医療における自己決定権

- インフォームドチョイスとは 医療現場において、患者さんが自身の健康や治療に関する決定に主体的に関わるための重要な概念、それが「インフォームドチョイス」です。 従来の「インフォームドコンセント」では、医師が患者さんに対して治療内容やリスクなどを説明し、患者さんがそれに同意するかどうか、という点が重視されてきました。しかし、「インフォームドチョイス」は一歩進み、患者さんが自ら積極的に治療方針に関わっていくことを目指しています。 具体的には、医師は患者さんに対して、考えられる複数の治療法について、それぞれのメリットだけでなく、デメリットやリスク、成功率、治療期間、費用なども含めて、わかりやすく丁寧に説明する必要があります。 患者さんは、医師から提供された情報に加えて、インターネットや書籍などで自ら情報を収集したり、家族や他の医療従事者に相談したりするなどして、自身の価値観や生活背景、将来の希望などを考慮しながら、納得のいくまで治療法を検討します。 そして最終的には、患者さんが自ら主体的に、最適だと考える治療法を選択します。医師は、患者さんの選択を尊重し、その選択に基づいた治療を提供する義務があります。 インフォームドチョイスは、患者さんが自身の健康に対してより積極的に関与することで、より良い治療結果や生活の質の向上につながると考えられています。
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身近に潜むサイトメガロウイルス

- サイトメガロウイルスとはサイトメガロウイルス(CMV)は、ヒトヘルペスウイルス5型とも呼ばれる、ありふれたウイルスです。このウイルスは、口唇ヘルペスの原因となるウイルスと同じ仲間です。世界中で多くの人がCMVに感染しており、日本では成人の約8割が過去に感染した経験を持つと言われています。健康な人がCMVに感染した場合、多くの場合は何も症状が出ないか、風邪のような軽い症状で済みます。しかし、免疫力が低下している人や妊娠している人が感染すると、肺炎や脳炎などの重篤な病気を発症するリスクが高まるため、注意が必要です。CMVは、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、感染者の体液に接触することによって感染します。また、母子感染や性行為によって感染することもあります。一度感染すると、ウイルスは体の中に潜伏し続けます。普段は症状が出ませんが、免疫力が低下すると再び活性化し、症状が現れることがあります。CMVの感染を予防するためには、こまめな手洗いやうがいを心がけ、感染者の体液に触れないようにすることが大切です。また、免疫力が低下している人は、CMV感染のリスクが高いことを認識し、予防対策を徹底する必要があります。
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院内感染の原因菌:クレブシエラ属とは

クレブシエラ属は、私たちの腸内に常に住み着いている細菌の一種です。腸内には、体に良い働きをするものから、病気を起こすものまで、様々な種類の細菌がいますが、クレブシエラ属もその一つです。 健康な人では、クレブシエラ属が病気を起こすことはほとんどありません。しかし、病気や高齢などによって免疫力が低下している人や、入院している人などは、クレブシエラ属によって日和見感染症を引き起こすことがあります。日和見感染症とは、健康な人では発症しにくい感染症ですが、免疫力が低下した際に発症しやすくなる感染症のことを指します。 クレブシエラ属は、顕微鏡で観察すると、他の腸内細菌と比べて少し大きく、周りに厚い膜を持っていることが特徴です。この膜は莢膜と呼ばれ、クレブシエラ属が体内の免疫細胞から攻撃されるのを防ぐ、いわば盾のような役割を果たしています。このため、免疫力が低下した人では、クレブシエラ属を排除することが難しく、感染症を引き起こしやすくなってしまうのです。
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患者中心の医療:ナラティブ・ベイスト・メディスンの実践

- ナラティブ・ベイスト・メディスンとは ナラティブ・ベイスト・メディスン(NBM)は、患者さんの語りに真摯に耳を傾けることを重視した医療です。従来の医療では、病気の原因や症状、治療法といった科学的な側面ばかりに焦点が当てられてきました。検査値や画像診断の結果といった客観的なデータに基づいて診断や治療方針が決定され、患者さんはまるで「治療を受ける対象」として扱われているように感じることも少なくありませんでした。 しかし、NBMでは、患者さんが病気によってどのような経験をしてきたのか、どのような影響を受けているのか、そしてどんな思いで日々を過ごしているのか、その人自身の物語に目を向けます。患者さんがこれまで歩んできた人生や、その人を取り巻く環境、価値観、そして病気に対する思いや感情を理解することで、医療者はより深く患者さんに共感し、信頼関係を築くことができます。 NBMは、決して科学的な医療を否定するものではありません。検査データやエビデンスに基づいた治療は引き続き重要ですが、NBMは、そこに患者さんの物語という温かみを添えることで、患者さん一人ひとりに寄り添った、より人間的な医療の実現を目指します。NBMは、医療者と患者さんの間に新たなコミュニケーションの形を生み出し、医療そのもののあり方を見つめ直すきっかけを与えてくれるでしょう。
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