看護記録の焦点:フォーカスチャーティングとは
病院での用語を教えて
先生、「フォーカス」って看護の記録方式のひとつって聞いたんですが、どういうものなんですか?
体の健康研究家
良い質問だね!「フォーカス」は、患者さんの状態の変化を分かりやすく記録する方法なんだ。正式には「フォーカスチャーティング」って言うんだよ。
病院での用語を教えて
患者さんの状態の変化って、具体的にどんなことを記録するんですか?
体の健康研究家
例えば、体温や脈拍などの変化、患者さんの訴え、薬の効果や副作用などを記録していくんだ。そうすることで、患者さん一人ひとりの状態をしっかり把握できるようになるんだよ。
フォーカスとは。
「フォーカス」という言葉は、医療や健康の分野で使われる言葉で、患者さんの経過を順番に記録していく方法のことです。この方法は「フォーカスチャーティング」という正式な名前があり、英語では「FOCUS」と書かれることもあります。
患者中心の記録方式
医療現場において、看護記録は患者の状態や受けた看護ケアの内容を正確に記録し、医師や薬剤師、理学療法士など、医療チーム全体で情報を共有するために非常に重要なツールです。近年、従来の記録方式に加えて、患者の視点に立った、より患者中心的な記録方式が注目されています。
従来の記録方式では、看護師の視点から見た症状や行った処置などが中心に記録される傾向にありました。しかし、患者中心の記録方式では、患者の発言や行動、そしてその背景にある感情や考え方を重視します。
代表的な患者中心の記録方式として、『フォーカスチャーティング』があります。これは、患者の状態や行動、看護師の観察内容などを、「データ」「アクション」「レスポンス」の3つの要素で記録する手法です。「データ」は患者の訴えやバイタルサインなどの客観的な情報を、「アクション」は看護師が行ったケアの内容を、「レスポンス」はケアに対する患者の反応を記録します。
患者中心の記録方式を導入することで、医療チーム全体が患者の状況をより深く理解し、患者一人ひとりのニーズに合わせた質の高い医療を提供することに繋がります。また、患者自身が自分の状態や治療経過を把握しやすくなることで、治療に対する意欲や自己管理能力の向上も期待できます。
記録方式 | 特徴 | メリット |
---|---|---|
従来の記録方式 | 看護師の視点からの症状や処置が中心 | – |
患者中心の記録方式 (例: フォーカスチャーティング) | 患者の発言、行動、感情、考え方を重視 「データ」「アクション」「レスポンス」の3要素で記録 |
– 医療チーム全体で患者の状況を深く理解 – 患者ニーズに合わせた医療提供 – 患者自身の状態や治療経過の把握促進 – 治療への意欲、自己管理能力向上 |
フォーカスチャーティングの仕組み
– フォーカスチャーティングの仕組み
フォーカスチャーティングとは、患者さん一人ひとりに焦点を当て、その方の状態や看護ケアの内容を記録していく方法です。従来の看護記録のように、体温や脈拍といった身体的な情報だけを記録するのではなく、患者さんを中心としたより詳細な記録を作成します。
フォーカスチャーティングでは、まず患者さんに関する「焦点」を決定します。この「焦点」は、患者さんの症状や問題点、行動の変化、起こった出来事など、記録する上で特に重要だと考えられるものなら何でも構いません。例えば、「発熱」や「食事量の低下」といった身体的な変化だけでなく、「不安感の訴え」や「家族との面会」といった精神的な側面や社会的な側面も「焦点」となりえます。
「焦点」が決まったら、次にその「焦点」に関連する情報を収集し、記録していきます。記録する情報としては、患者さんの発言や表情、行動といった客観的なデータだけでなく、看護師自身の感じたことや考えたことなども含まれます。これらの情報を総合的に記録することで、患者さんの状態をより深く理解し、質の高い看護ケアを提供することを目指します。
フォーカスチャーティングは、患者さん一人ひとりに寄り添った看護記録を作成する上で非常に有効な方法です。患者さん中心の医療・看護が求められる現代において、フォーカスチャーティングはますます重要な手法となっていくでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 患者さん一人ひとりに焦点を当て、状態や看護ケアの内容を記録する方法 |
特徴 | 従来の記録よりも詳細な記録を作成 患者さんを中心とした記録 |
手順 | 1. 患者さんに関する「焦点」を決定 2. 「焦点」に関連する情報を収集し記録 |
焦点の例 | – 発熱 – 食事量の低下 – 不安感の訴え – 家族との面会 |
記録情報 | – 患者さんの発言、表情、行動 – 看護師自身の感じたことや考えたこと |
メリット | 患者さんの状態をより深く理解 質の高い看護ケアの提供 |
記録の構成要素
– 記録の構成要素看護記録は患者の状態や医療の経過を正確に捉えるために非常に重要です。特に、患者中心の看護を実践する上で注目されているフォーカスチャーティングでは、「データ」「アクション」「レスポンス」の3つの要素を明確にして記録することが求められます。まず「データ」とは、患者の状態や状況に関する客観的な情報を指します。具体的には、患者の訴える症状、バイタルサイン、検査結果、観察による身体状況の変化などが挙げられます。重要なのは、主観的な解釈や憶測ではなく、事実のみを具体的に記述することです。次に「アクション」とは、記録された「データ」に基づいて看護師が実際に行った看護ケアや医療行為を指します。例えば、患者の訴えに対して行った疼痛の緩和ケア、体温上昇に対して行った冷却処置、医師への報告などが挙げられます。ここでは、どのような目的で、どのようなケアを、どの程度実施したのかを明確に記録する必要があります。最後に「レスポンス」とは、「アクション」に対する患者の反応を指します。具体的には、患者の症状の変化、行動の変化、発現した副作用などが挙げられます。ここでも、「データ」と同様に、客観的な観察に基づいた事実のみを記述することが重要です。このように、フォーカスチャーティングでは「データ」「アクション」「レスポンス」の3つの要素を明確に記録することで、患者中心の視点に立った継続的な看護実践と、客観的な評価を可能にすることを目指しています。
要素 | 内容 | 具体的な例 | 注意点 |
---|---|---|---|
データ(D) | 患者の状態や状況に関する客観的な情報 | ・患者の訴える症状 ・バイタルサイン ・検査結果 ・観察による身体状況の変化 |
主観的な解釈や憶測ではなく、事実のみを具体的に記述する |
アクション(A) | 記録された「データ」に基づいて看護師が実際に行った看護ケアや医療行為 | ・疼痛の緩和ケア ・冷却処置 ・医師への報告 |
どのような目的で、どのようなケアを、どの程度実施したのかを明確に記録する |
レスポンス(R) | 「アクション」に対する患者の反応 | ・患者の症状の変化 ・行動の変化 ・発現した副作用 |
客観的な観察に基づいた事実のみを記述する |
フォーカスチャーティングのメリット
– フォーカスチャーティングのメリット従来の医療記録方式では、患者の情報は日付や時系列に沿って記録されることが一般的でした。しかし、このような記録方法では、特定の症状や問題に関する情報を追跡するのが困難な場合があり、医療従事者間で情報を共有する際にも、効率的な連携が難しいという課題がありました。フォーカスチャーティングは、従来の記録方式とは異なり、患者の状態や看護ケアにおける注目すべき点(フォーカス)を中心に記録する手法です。 このフォーカスは、患者の訴える症状や観察される兆候、特定の医療処置に対する反応など、医療チームが特に注意を払うべき事柄となります。フォーカスチャーティングの最大のメリットは、時系列に沿って患者の状態や変化を把握しやすくなる点です。従来の記録方式では、複数の記録を読み解く必要がありましたが、フォーカスチャーティングでは、特定の症状や問題に関する情報を一箇所で確認できます。また、フォーカスチャーティングは、医療チーム内での情報共有をスムーズにする効果も期待できます。記録の焦点が明確であるため、他の医療従事者は、患者の状態や経過を容易に理解し、適切な対応をとることができます。これらのメリットにより、フォーカスチャーティングは、より質の高い看護ケアの提供、医療ミスや見落としの防止、そして、患者と医療従事者間のコミュニケーションの向上に貢献すると考えられています。
従来の医療記録方式 | フォーカスチャーティング |
---|---|
日付や時系列に沿って記録 | 患者の状態や看護ケアにおける注目点(フォーカス)を中心に記録 |
特定の症状や問題に関する情報を追跡するのが困難 | 時系列に沿って患者の状態や変化を把握しやすい |
医療従事者間で情報を共有する際、効率的な連携が難しい | 医療チーム内での情報共有をスムーズにする |
より質の高い看護ケアの提供、医療ミスや見落としの防止、患者と医療従事者間のコミュニケーションの向上 |
事例を用いた解説
– 事例を用いた解説
ここでは、具体的な事例を挙げながら、患者の状態を把握し、適切な対応を取るための一連の流れを解説します。
例えば、患者さんから「朝から体がだるい」という訴えがあったとします。これは、医療現場でよく耳にする「倦怠感」と呼ばれる症状の一つです。
まず、この「倦怠感」を把握すべき焦点として設定します。次に、患者さんの状態をより詳しく知るために、必要な情報を集めます。この情報を「データ」と呼びます。
今回の場合、データとしては、患者さんの発言である「朝から体がだるい」という訴えの他に、客観的な情報であるバイタルサインも重要になります。例えば、「体温が37.5℃で、脈拍が1分間に100回である」といった情報は、倦怠感の原因を特定するための重要な手がかりとなります。
これらのデータに基づいて、医療従事者は次に取るべき行動を決定します。これを「アクション」と呼びます。倦怠感が認められる場合、医師に報告する、患者さんに安静を指示する、水分補給を促すといったアクションが考えられます。
そして、実際に行ったアクションに対して患者さんがどのような反応を示したかを記録します。これを「レスポンス」と呼びます。例えば、「医師の指示により血液検査を実施した」「安静にした結果、脈拍が1分間に80回まで低下した」といった記録が考えられます。
このように、「データ」「アクション」「レスポンス」を記録していくことで、患者さんの状態変化を捉え、より適切な医療を提供できるようになります。
段階 | 説明 | 例 |
---|---|---|
焦点 | 患者の状態を把握すべきポイント | 倦怠感 |
データ | 患者の状態を知るための情報 | – 患者の訴え:「朝から体がだるい」 – バイタルサイン:体温 37.5℃、脈拍 100回/分 |
アクション | データに基づいて取るべき行動 | – 医師に報告する – 患者に安静を指示する – 水分補給を促す |
レスポンス | アクションに対する患者の反応 | – 医師の指示により血液検査を実施した – 安静にした結果、脈拍が80回/分まで低下した |
まとめ
– まとめ
近年、医療現場では、患者さんの個別性や主体性を尊重した医療の必要性が高まっています。このような背景から、看護記録においても、患者さん中心のアプローチが求められるようになっています。
従来の看護記録は、医療従事者側の視点で書かれることが多く、患者さんの気持ちや変化が記録に残りにくいという課題がありました。そこで注目されているのが、「フォーカスチャーティング」と呼ばれる看護記録の方法です。
フォーカスチャーティングは、患者さんの状態や出来事、行動、変化など、特定の「フォーカス」に焦点を当てて記録する手法です。これにより、患者さんの状況をより具体的に記録することが可能となり、患者さん一人ひとりに寄り添った、質の高い看護の提供に繋がると考えられています。
また、フォーカスチャーティングは、SOAP形式などの構造化された記録方法を採用しているため、情報の共有や申し送りもスムーズに行うことができます。
今後、患者さん中心の医療がますます重要となる中で、フォーカスチャーティングは、医療現場においてさらに普及していくことが期待されます。
項目 | 内容 |
---|---|
背景 | 患者さんの個別性や主体性を尊重した医療の必要性が高まっている |
従来の看護記録の問題点 | 医療従事者側の視点で書かれることが多く、患者さんの気持ちや変化が記録に残りにくい |
フォーカスチャーティングとは | 患者さんの状態や出来事、行動、変化など、特定の「フォーカス」に焦点を当てて記録する手法 |
メリット | – 患者さんの状況をより具体的に記録できる – 患者さん一人ひとりに寄り添った、質の高い看護の提供に繋がる – 情報の共有や申し送りがスムーズ |
今後の展望 | 患者さん中心の医療がますます重要となる中で、医療現場においてさらに普及していくことが期待される |