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沈黙の脅威: C型肝炎を理解する

- C型肝炎とはC型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)が血液を介して肝臓に感染し、炎症を引き起こす病気です。感染すると、急性肝炎と慢性肝炎の二つの段階があります。急性肝炎は、HCVに感染してから約2週間~6ヶ月の間に発症します。症状としては、だるさや食欲不振、吐き気、発熱、黄疸などがみられます。しかし、自覚症状が現れない場合も多く、気づかないうちに慢性肝炎に移行してしまうケースが多い点が特徴です。慢性肝炎は、急性肝炎から移行した状態が6か月以上続いている状態を指します。慢性肝炎も、初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、長期間にわたって肝臓で炎症が続くことで、徐々に肝臓の細胞が破壊され、肝臓が硬くなってしまう肝硬変や、肝臓がんを発症するリスクが高まります。C型肝炎は、早期発見と適切な治療によって、慢性肝炎への移行や、肝硬変、肝臓がんへの進行を予防できる可能性があります。そのため、過去にC型肝炎ウイルスに感染した可能性がある人や、肝機能検査で異常値がでた人は、医療機関を受診し、検査を受けることが重要です。
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痔瘻:原因と治療のすべて

- 痔瘻とは何か肛門の周りには、肛門腺と呼ばれる小さな器官がたくさん存在します。通常、肛門腺は粘液を分泌することで排便をスムーズにする役割を担っています。しかし、何らかの原因で肛門腺に細菌が侵入し、炎症を起こしてしまうことがあります。この炎症によって肛門腺に膿が溜まった状態を「肛門周囲膿瘍」と呼びます。肛門周囲膿瘍は、放置すると膿が周囲の組織を溶かしながら皮膚に向かって進んでいきます。そして、最終的には皮膚を突き破って膿が体外に排出されます。このとき、膿の通り道であるトンネルのようなものが皮膚の下に残ることがあります。これが「痔瘻」と呼ばれる病気です。痔瘻は自然に治癒することは難しく、放置すると膿の排出と治癒を繰り返しながら、慢性的な炎症を引き起こすことがあります。また、痔瘻を放置することで、新たな痔瘻が形成されたり、場合によっては重症化することもあります。そのため、痔瘻は早期に適切な治療を受けることが重要です。治療法としては、主に手術療法が用いられますが、痔瘻の状態や患者さんの状態によって適切な手術方法が選択されます。
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知っておきたい腸炎の基礎知識

- 腸炎とは?腸炎とは、私達の体の中にあり、食べたものを消化し栄養を吸収する大切な役割を持つ腸に炎症が起こる病気です。この炎症は、主に小腸と大腸、もしくは両方に影響を与え、お腹の痛みや下痢など、日常生活に支障をきたす様々な症状を引き起こします。腸炎には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、細菌やウイルスなどの病原体が原因となって起こる感染性腸炎です。これは、汚染された食品や水などを口にすることで病原体が体内に入り込み、腸の中で増殖することで発症します。代表的な病原体としては、ノロウイルスやサルモネラ菌、カンピロバクターなどが挙げられます。もう一つは、細菌やウイルスなどの感染ではなく、自分の免疫システムが誤って自分の腸を攻撃してしまうことで起こる非感染性腸炎です。クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患がこの非感染性腸炎に分類され、原因は未だはっきりと解明されていませんが、遺伝的な要因や食生活、ストレスなどが関与していると考えられています。腸炎になると、腹痛や下痢に加え、発熱や吐き気、嘔吐、血便などの症状が現れることもあります。これらの症状の程度は、腸炎の種類や原因、そして個人の体力などによって大きく異なります。軽症の場合は、安静にして水分を十分に摂ることで自然に治ることが多いですが、重症化すると脱水症状や栄養失調に陥る可能性もあるため、注意が必要です。症状が続く場合は自己判断せずに、医療機関を受診するようにしましょう。
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腹水について:原因と症状

- 腹水とはお腹の中には、胃や腸などの臓器が収まっています。これら臓器は、お互いにくっついたり、こすれ合ったりしないように、少量の液体で満たされた腹腔と呼ばれる袋の中に入っています。この液体は、臓器が滑らかに動くのを助ける潤滑油のような役割をしています。 「腹水」とは、この腹腔内に通常よりもはるかに多くの液体が溜まってしまった状態のことを指します。お腹に水が溜まる病気というわけではありません。腹水自体は病気ではありませんが、他の病気のサインであることが多いです。例えば、肝臓の病気、心臓の病気、腎臓の病気などが原因で起こることがあります。肝臓が硬くなってしまう病気(肝硬変)になると、血管の圧力が高まり、その結果として腹水が溜まりやすくなります。また、心臓の働きが悪くなると、体内の水分をうまく排出することができなくなり、腹水が溜まることがあります。腹水は、お腹の張りや膨満感、体重増加、息苦しさなどの症状を引き起こします。症状が重い場合には、お腹に針を刺して水を抜く治療(腹水穿刺)や、原因となっている病気を治療する必要があります。
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知られざる体内の世界:宿便の真実

「宿便」という言葉、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。なんとなく、体に悪いイメージを持っている方もいるかもしれませんね。 医学的には「糞便塊」や「宿便性便秘」とも呼ばれ、長期間にわたって腸内に溜まった便のことを指します。一般的には、通常の排便で排出されずに腸内に残留し、時間の経過とともに硬くなってしまった便をイメージする方が多いでしょう。 しかし、実際には医学的に「宿便」という言葉は存在しません。腸は、食べたものを消化・吸収し、不要なものを便として体外に排出する役割を担っています。毎日、規則正しく排便があれば、便が腸内に長期間留まることはありません。 「宿便」という言葉が使われる背景には、「腸内環境が悪いと、体内に毒素が溜まり、様々な病気の原因になる」という考えがあるようです。便秘になると、お腹が張ったり、食欲がなくなったりすることがあります。そのため、便秘によって体の中に毒素が溜まっていると感じる人もいるのかもしれません。 しかし、便秘と健康状態の関係は複雑で、一概に便秘が体に悪いとは言えません。便秘に悩んでいる場合は、自己判断で市販薬に頼ったりせず、まずは医師に相談することをおすすめします。
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大腸の落とし穴?憩室炎について解説

私たちが毎日食べる食べ物は、口から入り、食道、胃、小腸、大腸と続く長い道のりを経て、最終的に便として体外に排出されます。この食べ物の旅路において、大腸は重要な役割を担っています。大腸は、食べ物の残りかすから水分を吸収し、便を形成する働きをしています。 しかし、この大腸に、ある変化が起こることがあります。それは、大腸の壁の一部が、まるで風船のように外側に膨らんでしまう現象です。これが「憩室」と呼ばれるものです。憩室は、ちょうど腸から小さな袋が飛び出したような形をしています。この憩室、一体なぜできてしまうのでしょうか? 実は、憩室ができる原因ははっきりとは解明されていません。しかし、加齢や食生活の欧米化などが関係していると考えられています。以前は、食物繊維の少ない食事を続けていると、腸内圧力が上がり、その結果、大腸の壁の一部が外に押し出されて憩室ができると考えられていました。しかし、最近の研究では、食物繊維の摂取量が少ないことだけが原因ではないという意見もあります。 憩室自体は、多くの場合、自覚症状がありません。そのため、健康診断などで偶然発見されることが多いです。ただし、憩室に便や細菌が詰まって炎症を起こすと、激しい腹痛や発熱などの症状が現れることがあります。これが「憩室炎」です。憩室炎は、適切な治療を行わないと重症化する可能性もあるため注意が必要です。
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沈黙の臓器、肝臓:その役割と重要性

私たちの体には、まるで巨大な工場のように、休みなく働き続けている臓器が存在します。それが肝臓です。肝臓は、お腹の右上、肋骨の下に位置し、重さは約1.2~1.5kgほどあります。その大きさは、成人の握りこぶし二つ分にもなり、人体の中で最大の臓器です。 肝臓は、まさに体内工場の中枢と呼ぶにふさわしい役割を担っています。食べ物から摂取された栄養素は、消化管で吸収された後、最初に肝臓に運ばれます。肝臓は、これらの栄養素を体に必要な形へと変化させます。例えば、糖質をエネルギーに変換したり、貯蔵したりします。また、タンパク質を合成し、筋肉や血液などを作るのに欠かせない役割も担っています。さらに、アルコールや薬物などの分解も行い、体内の毒素を排出する働きも担っています。 このように、肝臓は私たちの生命維持に欠かせない多岐にわたる役割を担っている、非常に重要な臓器と言えるでしょう。
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下痢の種類と特徴:急性、持続性、慢性

- 下痢の定義下痢は、私たちが日常的に経験する可能性のある、ありふれた消化器系の症状の一つです。 食生活の乱れやウイルス感染など、さまざまな要因で起こり、多くの人が経験する身近な症状と言えるでしょう。医学的には、24時間以内に3回以上、通常の便よりも柔らかく、水分量の多い便が排泄される状態を指します。下痢は、その持続期間によって、大きく三つの種類に分類されます。まず、数日から一週間程度で治まるものを急性下痢と呼びます。急性下痢は、ほとんどの場合、ウイルスや細菌による感染性腸炎が原因で起こります。次に、2週間以上、下痢が続く場合は、持続性下痢と分類されます。持続性下痢は、感染症が長引いている場合や、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患といった、腸自体に何らかの問題が生じている可能性があります。さらに、数ヶ月以上、下痢が続く場合は、慢性下痢と呼ばれます。慢性下痢は、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患の他、吸収不良症候群やホルモン異常、特定の薬剤の副作用などが原因として考えられます。下痢は、多くの場合、自然に治癒しますが、脱水症状を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。特に、乳幼児や高齢者は、重症化しやすいため、注意深く経過を観察する必要があります。下痢が続く場合は、自己判断せず、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
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皮膚の黄染、黄疸とは?

- 黄疸の概要黄疸とは、皮膚や眼球の白い部分(強膜)が黄色く染まる状態を指します。これは、血液中に「ビリルビン」という黄色の色素が増加することが原因で起こります。通常、私たちの体内では、古くなった赤血球が絶えず壊され、新しい赤血球が作られています。この時、壊された赤血球からビリルビンという黄色い色素が生じます。ビリルビンは、血液によって肝臓へと運ばれ、そこで処理された後、胆汁の中に溶け込んで、便や尿と一緒に体外へと排出されます。しかし、何らかの原因で、ビリルビンの産生が過剰になったり、肝臓での処理が追いつかなくなったり、胆汁の流れが滞ったりすると、血液中のビリルビン濃度が上昇します。すると、皮膚や眼球の白い部分などにビリルビンが沈着し、黄色く見えるようになります。これが黄疸です。黄疸はそれ自体が病気ではありませんが、様々な病気の症状として現れることがあります。例えば、肝臓の病気、胆道系の病気、赤血球の病気などが原因で黄疸が起こることがあります。そのため、黄疸が見られた場合には、早めに医療機関を受診し、原因を突き止めることが重要です。
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過敏性腸症候群:その原因と症状

- 過敏性腸症候群とは過敏性腸症候群は、繰り返しお腹の痛みや不快感を伴い、便秘や下痢などの便通異常が慢性的に続く病気です。検査をしても炎症や潰瘍などの目に見える異常が見つからないことが特徴です。このため、他の病気を除外した上で診断されることが多く、診断が難しい病気でもあります。過敏性腸症候群の原因は完全には解明されていませんが、ストレスや不安、緊張などの心理的な要因、食事の内容、睡眠不足、ホルモンバランスの乱れなどが関与していると考えられています。症状は人によって異なり、腹痛、腹部膨満感、便秘、下痢などがみられます。これらの症状は、ストレスを感じると悪化したり、逆に排便によって軽減したりすることがあります。過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、日常生活に支障をきたすことがあります。症状が重い場合は、仕事や学校を休まなければならないこともありますし、人と会うことを避けたり、旅行を控えるようになることもあります。しかし、過敏性腸症候群は適切な治療と生活習慣の改善によって症状をコントロールすることができます。治療には、薬物療法や認知行動療法などがあります。また、食事の内容や睡眠時間、ストレスへの対処法を見直すことも重要です。過敏性腸症候群は、一人で悩まずに、医師に相談することが大切です。適切な治療と生活習慣の改善によって、症状をコントロールし、快適な日常生活を送ることができるようになります。
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消化とホルモン分泌の要:膵臓

私たちの体の中心、胃の後ろ側、背骨の前に静かに佇む長さ約15cmほどの臓器、膵臓。みぞおちの少し上に位置していますが、体の奥深くに隠れているため、その存在を意識することはほとんどありません。触診で確認することも難しい、まさに“秘めたる臓器”と言えるでしょう。しかし、普段は意識することのないこの臓器こそ、私たちの生命維持に欠かせない、二つの重要な役割を担う“縁の下の力持ち”なのです。 一つは、食べ物を消化する上で欠かせない膵液を作り出す働きです。私たちが口にした食べ物は、胃で消化された後、小腸へと送られます。膵臓は、この小腸で食べ物を効率よく消化するために、様々な消化酵素を含む膵液を分泌し、胃から送られてきた食べ物がスムーズに消化されるよう、陰ながらサポートしています。 もう一つの重要な役割は、血糖値の調節です。食事をすると、血液中のブドウ糖の濃度である血糖値が上昇します。膵臓は、血糖値の上昇を抑えるホルモンであるインスリンを分泌することで、血液中のブドウ糖が適切な値に保たれるよう調節しています。インスリンは、ブドウ糖をエネルギーとして利用したり、貯蔵したりするのを助ける役割を担っており、私たちの体が正常に活動するために欠かせないホルモンの一つです。このように、膵臓は、消化と血糖値の調節という二つの大きな役割を担い、私たちの健康を支える上で非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
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膵炎:その原因と症状について

- 膵炎とは膵炎は、食べ物の消化を助ける上で重要な役割を担う膵臓に炎症が起こる病気です。膵臓は胃の後ろ、背骨の前に位置する臓器で、消化酵素とホルモンを作り出す働きをしています。消化酵素は通常、膵臓内では不活性な状態で作られ、十二指腸という器官に分泌された後に活性化し、食べ物を分解する役割を担います。ホルモンには、血糖値を調整するインスリンなどが含まれます。 膵炎になると、本来は十二指腸で活性化するはずの消化酵素が、膵臓内で活性化してしまう異常事態が発生します。その結果、膵臓自身の組織が消化酵素によって攻撃され、炎症を引き起こしてしまうのです。これが、膵炎の主な原因です。膵炎には、症状が一時的に現れる急性膵炎と、症状が長期間にわたって続く慢性膵炎の二つがあります。急性膵炎は、適切な治療を行えば多くは回復しますが、重症化すると命に関わることもあります。慢性膵炎は、長期間にわたる炎症によって膵臓の組織が破壊され、消化吸収機能が低下したり、糖尿病を発症したりする可能性があります。 膵炎の原因は様々ですが、主なものとしては、胆石、アルコールの過剰摂取、高脂血症などが挙げられます。また、特定の薬剤や遺伝などが原因となることもあります。膵炎の治療は、その原因や症状の程度によって異なりますが、基本的には絶食による膵臓の安静、点滴による栄養補給、痛み止めなどの投与が行われます。場合によっては、内視鏡を用いた治療や手術が必要となることもあります。
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静かなる脅威:食道がんについて

- 食道がんとは私たちは食事をするとき、まず口にした食べ物を噛み砕き、飲み込みます。口から胃へと続く食べ物の通り道である食道は、食べたものを胃までスムーズに運ぶ役割を担っています。この食道の内側は、粘膜と呼ばれる薄い膜で覆われており、食べ物が詰まったり傷ついたりするのを防いでいます。食道がんは、この食道の粘膜の一部から発生するがんです。粘膜の細胞ががん細胞に変化し、周囲の組織に浸潤したり、離れた場所に転移したりすることで、身体に様々な影響を及ぼします。食道がんは初期の段階では、ほとんど自覚症状がありません。そのため、健康診断や人間ドックなどで偶然発見されることも少なくありません。しかし、がんが進行すると、食べ物が喉につかえる感じがしたり、胸の奥に痛みを感じたりするようになります。さらに進行すると、食事が困難になり、体重減少や貧血などの症状が現れることもあります。食道がんの原因として、喫煙や飲酒、熱い飲み物や食べ物の習慣などが挙げられます。また、食道に炎症を起こす逆流性食道炎も、食道がんのリスクを高めると言われています。食道がんは早期発見、早期治療が非常に重要です。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。食生活の改善など、生活習慣の見直しも予防に繋がります。
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腹膜炎:沈黙の脅威とその症状

- 腹膜炎とはお腹の内側を覆っている薄い膜、腹膜に炎症が起こる病気を腹膜炎と言います。この腹膜は、胃や腸などの臓器を外部の衝撃から守ったり、臓器同士が摩擦を起こさないように滑らかにする役割を担っています。健康な状態では、この腹膜は体内での役割をスムーズに果たしていますが、何らかの原因で細菌感染を起こしたり、刺激性の物質に触れたりすると、腹膜に炎症が起こってしまいます。これが腹膜炎です。腹膜炎の原因として最も多いのは、胃潰瘍や虫垂炎、大腸憩室炎といった消化器官に穴が開く病気です。これらの病気によって、消化器官の内容物が腹腔内に漏れ出すことで、腹膜に強い炎症を引き起こします。その他にも、 pancreatitisや外傷、手術後の合併症などが原因となることもあります。腹膜炎は、放っておくと命に関わる危険性も高い病気です。早期に発見し、適切な治療を行うことが非常に重要です。腹膜炎が疑われる症状としては、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、発熱、腹部膨満感などがあります。これらの症状が見られる場合には、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
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下腹部痛:その原因と対処法

- 下腹部痛とは下腹部痛とは、おへそから下の骨盤よりも上のあたりに感じる痛みのことを指します。一般的に、みぞおちとおへその間の上腹部痛、おへそ周りの臍部痛、おへそより下の部分を下腹部痛と区別します。このお腹の痛みは、誰しもが経験したことがあるほど身近な症状の一つです。下腹部痛の多くは、一時的な消化不良や、女性に多い生理痛、便秘などが原因で起こります。これらの場合は、比較的症状が軽く、市販薬や安静によって改善されることが多いため、過度に心配する必要はありません。しかし、痛みが長く続く場合や、我慢できないほど強い痛みがある場合、吐き気や嘔吐、発熱、血便などの症状を伴う場合には注意が必要です。これらの症状は、下腹部痛の原因が、虫垂炎や腸閉塞、婦人科系疾患などの病気である可能性を示唆していることがあります。下腹部痛の原因が病気である場合、適切な治療を受けなければ、症状が悪化したり、命に関わる危険性もあります。そのため、自己判断せずに、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。特に、今までに経験したことのない痛み方や、強い不安を感じる場合には、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。
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沈黙の臓器の悲鳴:肝炎とは?

- 肝炎とは肝臓は、人体にとって重要な役割を担っています。食べ物を消化するために必要な胆汁を作ったり、アルコールや薬を分解したり、血液をきれいにしたりと、休むことなく働き続けています。 肝炎とは、この重要な臓器である肝臓に炎症が起こる病気です。肝臓に炎症が起こると、本来の働きが十分にできなくなり、様々な症状が現れます。初期症状としては、だるさや食欲不振、吐き気、発熱などが挙げられます。 また、黄疸と呼ばれる、皮膚や白目が黄色くなる症状が現れることもあります。 これは、肝臓の機能低下によって、血液中のビリルビンという黄色い色素がうまく処理できずに、体内に溜まってしまうために起こります。肝炎の原因は様々ですが、大きく分けてウイルスによるものと、ウイルス以外のものがあります。 ウイルス性肝炎は、A型、B型、C型などのウイルスに感染することで引き起こされます。 一方、ウイルス性ではない肝炎は、アルコールの飲み過ぎや、脂肪肝、自己免疫疾患などが原因で起こることがあります。肝炎は、早期発見・早期治療が大切な病気です。 放置すると、肝硬変や肝臓がんといった重い病気につながる可能性もあります。 定期的な健康診断を受けたり、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
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オストミー:人生を変える手術とその後の生活

- オストミーとはオストミーとは、病気や怪我などが原因で、本来の排泄経路である腸や尿管などが損なわれ、お腹に人工的に排泄口を設ける手術のことを指します。このお腹に作られた排泄口は「ストーマ」と呼ばれ、そこから便や尿を体外に排出します。ストーマは、手術の方法や部位によって、腸の一部を出した「腸ストーマ」と、尿管の一部を出した「尿路ストーマ」の二つに分けられます。 オストミーが必要となる主な原因としては、大腸がんや直腸がんなどの消化器系のがん、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、事故による外傷などが挙げられます。これらの病気や怪我によって、本来の排泄機能が損なわれた場合、オストミーは生活の質を維持し、より快適な日常生活を送るために非常に重要な役割を果たします。 ストーマを造設することで、これまで通りの日常生活を送ることは可能ですが、ストーマからの排泄物の処理など、いくつか注意すべき点があります。しかし、近年では、排泄物を効率的に集め、臭いや漏れを防止する優れた装具も開発されており、安心して日常生活を送れるようになっています。また、医師や看護師、ストーマ療法士などの専門家から、ストーマの管理方法や生活上の注意点など、適切な指導を受けることが重要です。
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排便の仕組みと直腸肛門反射

私たちは毎日、食事をして栄養を摂取し、不要なものを体外に排出することで健康を保っています。この不要なものを排出する行為の一つに排便がありますが、普段何気なく行っているこの行為にも、実は複雑で精妙なメカニズムが隠されています。 食べ物は、口から摂取され、胃で消化された後、小腸で栄養素が吸収されます。そして、残ったものが大腸に運ばれ、水分が吸収されて便になります。 便は大腸の最後の部分である直腸に到達し、そこで一時的に貯められます。直腸に便が溜まると、直腸の壁にあるセンサーがその刺激を感じ取ります。この刺激が脳に伝達されると、私たちは便意を感じ始め、「トイレに行きたい」と思うようになります。 そして、トイレに行き、意識的に排便をしようとすると、脳からの指令によって腹筋や横隔膜が収縮し、腹圧がかかります。それと同時に、直腸の筋肉が収縮し、肛門括約筋が弛緩することで、便は体外へと排出されます。 このように、排便は、消化器官の働きと神経系、筋肉の連携によって成り立っている複雑なメカニズムなのです。
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食中毒を防ぐために

食中毒とは、食べ物に付着した細菌やウイルス、有害な化学物質などを口にすることで起こる病気のことです。普段私たちが口にする食品は、安全に食べられるように様々な工夫が凝らされていますが、それでも食品の栽培・製造・加工・調理・保存などの過程において、様々な原因で有害な物質が混入してしまうことがあります。 食中毒の原因となる有害物質として代表的なものは、細菌やウイルスです。サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌O157、ノロウイルスなどがこれにあたります。これらの微生物が食品中で増殖すると、食後数時間から数日のうちに、腹痛や下痢、嘔吐などの症状を引き起こします。 また、魚介類に寄生する寄生虫や、毒キノコなどの自然毒も食中毒の原因となります。寄生虫は、加熱が不十分な魚介類を生で食べることで体内に入り込み、腹痛や下痢、アレルギー症状などを引き起こします。毒キノコは、食用と間違えて摂取してしまうことで、嘔吐や下痢、発熱、神経麻痺などの深刻な症状を引き起こすことがあります。 さらに、食品添加物や農薬などの化学物質も、過剰に摂取すると食中毒の原因となることがあります。食中毒を予防するためには、食品の適切な取り扱いが重要です。食品は清潔な環境で保管し、十分に加熱してから食べるようにしましょう。また、調理器具は清潔に保ち、生肉や魚介類を触った後はよく手を洗いましょう。
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医療現場の専門用語:コートって?

病院や診療所に行った際に、「コート」という言葉を耳にしたことはありますか?日常生活では、主に衣類を指す言葉として使われていますが、医療現場では全く異なる意味を持つ言葉として用いられています。 医療現場における「コート」とは、「便」のことです。より具体的には、患者さんの排泄した便を指します。 では、なぜ医療現場では「便」を直接的に表現せず、「コート」という言葉を用いるのでしょうか?それは、患者さんのプライバシーに配慮するためです。医療従事者にとって、「便」は患者さんの健康状態を把握するための重要な情報源となります。しかし、患者さんにとっては、直接的な表現をされることで羞恥心や不快感を感じてしまう可能性もあります。そこで、患者さんの心理的な負担を軽減するために、医療従事者の間では、「便」を婉曲的に表現する「コート」という言葉が使われるようになったのです。 このように、医療現場では、患者さんの心情に配慮し、より良い医療を提供するために、様々な専門用語や婉曲表現が使われています。「コート」という言葉はその一例であり、医療従事者と患者さんのコミュニケーションを円滑にするための大切な役割を担っていると言えるでしょう。
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医療現場で使われる「マーゲン」って?

「マーゲン」という言葉、どこかで耳にしたことはありませんか? 実は私たちが日常的に使っている「胃」と同じ意味なんです。 「マーゲン」はドイツ語の「Magen」が由来となっています。かつて日本の医学はドイツの影響を強く受けており、その名残として現在でも医療現場ではドイツ語由来の言葉が多く使われています。「マーゲン」もその一つで、医師や看護師は日常的に使っていますし、病院の案内板などで目にすることもあるでしょう。 「胃」は私たちが食べ物を消化・吸収するために欠かせない臓器です。「マーゲン」と聞くと少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、普段使っている「胃」を思い浮かべれば、その働きや重要性をより身近に感じることができるのではないでしょうか? 医学用語には、このようにドイツ語由来のものだけでなく、英語やラテン語由来のものなど、様々な言葉が使われています。これらの言葉を知ることで、病気や体の仕組みについてより深く理解することができます。
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マクバーニー圧痛点:虫垂炎のサイン?

皆さんは、お腹の右側、特に下の方が痛くなった経験はありませんか?多くの人が経験する、ありふれた症状の一つと言えるでしょう。 食べ過ぎや消化不良など、一時的な原因で起こることも多く、深刻な病気ではない場合がほとんどです。少し休めば、自然と痛みが引いていくことも珍しくありません。 しかし、同じ場所に繰り返し痛みが出たり、痛みが強くなったりする場合には注意が必要です。特に、お腹の右下には、虫垂という臓器があります。この虫垂に炎症が起こると、いわゆる「盲腸」と呼ばれる状態になり、激痛を引き起こすことがあります。 お腹の右下の痛みと関連の深いポイントの一つに、「マクバーニー圧痛点」というものがあります。これは、おへそと骨盤の高い部分を結んだ線上で、おへそから三分の一ほど外側の部分にあたります。この部分を指でゆっくりと押したときに、強い痛みを感じるか、指を離したときに痛みが強くなる場合は、虫垂炎の可能性があります。 もちろん、お腹の痛みの原因は様々であり、自己判断は危険です。痛みが続く場合には、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。
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肝臓と臍をつなぐ遺構:肝円索

- 胎児期の名残肝円索 私たちのお腹には、「肝円索」と呼ばれる、胎児期の名残があります。これは、母親のお腹の中にいた頃に重要な役割を果たしていた血管の跡です。 胎児は、母親の胎盤から酸素や栄養を受け取って成長します。 この時、胎盤と胎児の肝臓を繋いでいたのが「臍静脈」と呼ばれる血管で、肝円索はこの臍静脈の名残です。 臍静脈は、胎児にとってまさに生命線とも言える重要な血管でした。 胎盤から運ばれてくる、酸素と栄養を豊富に含んだ血液を、ダイレクトに肝臓へと送り届けていたのです。 しかし、私たちが母親の胎外に出て、肺呼吸を始めるようになると状況は一変します。 肺が酸素を取り込む役割を担うようになるため、臍静脈の役割は必要なくなり、閉鎖してしまうのです。 そして、かつて血管であった部分は線維化し、細い紐のような組織へと変化します。これが、肝円索です。 肝円索は、私たちが母親のお腹の中で過ごした時間の、確かな証と言えるでしょう。
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内視鏡的乳頭切開術とは?

内視鏡的乳頭切開術は、十二指腸乳頭と呼ばれる胆管と膵管が十二指腸につながる部分に行う手術です。従来の手術では、お腹を大きく切開してメスを入れていましたが、内視鏡的乳頭切開術は、体への負担が少ない低侵襲な方法で行われます。 この手術では、口から細い管状の内視鏡を挿入し、食道、胃を通過させて十二指腸まで到達させます。内視鏡の先端には、超小型カメラやライト、そして電気メスや小さなバルーンなどの医療器具が取り付けられています。 胆石や腫瘍などによって胆管が狭くなったり、閉塞したりすると、胆汁の流れが悪くなり、腹痛や黄疸などの症状が現れます。そこで、内視鏡の先端に取り付けた医療器具を用いて、胆管の出口にあたる十二指腸乳頭部分を切開し、胆管を拡張します。こうすることで、胆汁の流れが改善され、症状の緩和が期待できます。 内視鏡的乳頭切開術は、従来の開腹手術と比べて、傷口が小さく、術後の痛みや回復期間が短いというメリットがあります。そのため、体の負担が少なく、患者さんにとって優しい手術と言えるでしょう。
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