盲腸と虫垂炎

消化器

盲腸と虫垂炎

病院での用語を教えて

先生、医学・健康に関する用語の「盲腸」について詳しく教えてください。

体の健康研究家

「盲腸」は、世間一般では病気の名前のように使われていますが、実は体の部位の名前です。具体的には、大腸の一部で行き止まりになっている部分を指します。そして、その盲腸から突き出ている「虫垂」という部分が炎症を起こした状態を「虫垂炎」と呼びます。つまり、「盲腸」と「虫垂炎」は違うものなんですよ。

病院での用語を教えて

なるほど。「盲腸」は場所の名前で、「虫垂炎」は病気の名前なんですね。では、なぜ「虫垂炎」のことを「盲腸」と呼ぶ人が多いのですか?

体の健康研究家

それは、虫垂炎になると、盲腸のある右の下腹部あたりに痛みが出ることが多いためです。そのため、昔は虫垂炎だと分からず、痛む場所から「盲腸が痛い」と表現することが多かったんです。それが、今でも「虫垂炎」のことを「盲腸」と呼ぶ人がいる理由だと考えられています。

盲腸とは。

「盲腸」という言葉は、医学や健康の分野では、実は二つの意味で使われています。

一つ目は、解剖学的に大腸の一部を指す場合です。食べ物は口から入って胃、小腸を通って大腸へと送られますが、小腸と大腸の接続部分には、食べ物が逆流しないように「回盲弁」という弁があります。この回盲弁から先が大腸ですが、その中でも行き止まりになっている部分を「盲腸」と呼びます。通常、長さは5~6cmほどです。

二つ目は、一般的に「盲腸」と呼ばれる病気、つまり「虫垂炎」を指す場合です。盲腸の先には「虫垂」という、長さ3~5mmほどの袋状の器官がついています。この虫垂に炎症が起こる病気を「虫垂炎」と言います。

虫垂炎は10代~20代の若い人に多くみられます。虫垂の中に便の塊や食べ物の残りカスが詰まったり、リンパ組織が腫れたりすることで、虫垂の中で細菌が増殖し、炎症を引き起こすと考えられています。

虫垂炎になると、みぞおちやおへその周りが痛くなり、その後、右下腹部へと痛みが移動します。吐き気や嘔吐、食欲不振、便秘などの症状が現れることもあります。お腹を押すと痛みを感じたり、筋肉が硬くなったりすることもあります。

虫垂炎の診断は、症状の経過が重要です。多くの場合、まずみぞおちやおへその周りが痛くなり、その後、吐き気や嘔吐、食欲不振が現れ、最後に右下腹部が痛くなります。お腹の超音波検査やCT検査で、腫れた虫垂や便の塊が確認できれば、診断が確定します。

虫垂炎の治療法は、大きく分けて手術と薬による治療の二つがあります。手術では、炎症を起こした虫垂を切除します。薬による治療では、抗生物質を投与して炎症を抑えます。どちらの治療法が適切かは、虫垂の中に便の塊があるかどうかや、お腹の中の炎症の程度などを考慮して、医師が判断します。

盲腸とは

盲腸とは

– 盲腸とは解剖学において「盲腸」とは、大腸の一部を指す言葉です。食べ物の消化・吸収を終えた残渣は、小腸から大腸へと送られます。小腸と大腸の接続部分には、「回盲弁」と呼ばれる逆流防止弁のような構造があり、ここから大腸が始まります。回盲弁から続く大腸は、まず上行結腸、横行結腸、下行結腸と続き、S状結腸を経て直腸へとつながっていきます。そして、このうち回盲弁から続く大腸の始まりの部分、行き止まりになっている部分を「盲腸」と呼びます。通常、盲腸の長さは5~6cmほどです。盲腸の後内側壁には、「虫垂」と呼ばれる直径3~5mmほどの袋状の臓器が付いています。虫垂は、リンパ組織が集まってできた器官で、免疫機能に関与していると考えられていますが、その詳細な役割についてはまだ解明されていません。虫垂は、一般的には右下腹部に位置していますが、人によっては発生過程の違いにより、右上腹部や骨盤内など、様々な場所に位置する可能性があります。虫垂に炎症が起きると「虫垂炎」となりますが、世間一般では虫垂炎のことを「盲腸」と呼ぶことが多く見られます。医学的には、虫垂と盲腸は明確に区別されるため、注意が必要です。例えば、医療機関を受診する際には、「盲腸が痛い」ではなく、「右下腹部が痛い」と症状を伝えるようにしましょう。

項目 説明
盲腸 ・大腸の始まりの部分
・回盲弁から続く、行き止まりになっている部分
・通常、長さは5~6cmほど
虫垂 ・盲腸の後内側壁に付いている袋状の臓器
・直径3~5mmほどの大きさ
・リンパ組織が集まってできた器官
・免疫機能に関与していると考えられている
・一般的には右下腹部に位置するが、個人差あり
虫垂炎 ・虫垂に炎症が起きる病気
・世間一般では「盲腸」と呼ばれることが多い

虫垂炎とは

虫垂炎とは

– 虫垂炎とは虫垂炎は、主に10代から20代といった若い世代に多く発症する病気で、突然の激しい腹痛を特徴とします。私たちの体には、大腸の始まりの部分である盲腸から、細く小さな袋状の臓器が突き出ています。これが虫垂です。虫垂は、以前は体の役に立っていない臓器だと考えられていましたが、最近の研究では、腸内細菌のバランスを保つ役割や、免疫機能に関係している可能性も示唆されています。この虫垂に、様々な原因で炎症が起こる病気が虫垂炎です。虫垂炎の主な原因は、虫垂の内部が詰まることだと考えられています。詰まりの原因として考えられるものはいくつかあります。例えば、便が硬くなってしまった際にできる糞石や、消化されなかった食べ物の残りかす、リンパ組織の腫れなどが挙げられます。また、稀ではありますが、虫垂に腫瘍ができることで内部が詰まり、虫垂炎を引き起こすこともあります。虫垂の内部が詰まると、そこに腸内細菌が入り込み、増殖することで炎症を引き起こします。炎症が進むと、虫垂は腫れ上がり、激しい痛みを引き起こします。さらに悪化すると、虫垂に膿が溜まり、やがては虫垂が破裂してしまうこともあります。虫垂が破裂すると、腹膜炎という命に関わる危険な状態を引き起こす可能性もあるため、早期の発見と適切な治療が重要になります。

項目 詳細
定義 盲腸から突き出た虫垂に炎症が起こる病気
好発年齢 10代〜20代
主な症状 突然の激しい腹痛
虫垂の役割
  • 腸内細菌のバランスを保つ
  • 免疫機能への関与
主な原因 虫垂の内部が詰まること
詰まりの原因
  • 糞石
  • 消化されなかった食べ物の残りかす
  • リンパ組織の腫れ
  • 虫垂の腫瘍
炎症のメカニズム
  1. 虫垂内部が詰まる
  2. 腸内細菌が入り込み増殖
  3. 炎症発生
  4. 虫垂が腫れ上がり、激しい痛みが発生
  5. 悪化すると、虫垂に膿が溜まり、破裂する可能性も
合併症 腹膜炎
重要性 早期発見と適切な治療が必要

虫垂炎の症状

虫垂炎の症状

– 虫垂炎の症状虫垂炎は、腹部の右下に位置する虫垂という臓器に炎症が起こる病気です。発症すると、特徴的な痛みの経過をたどることが多く見られます。初期段階では、みぞおちのあたりやへそ周辺に、鈍い痛みを感じることが一般的です。これは、炎症がまだ始まったばかりで、周囲の臓器への影響も少ないためと考えられます。その後、数時間から半日程度かけて、痛みが徐々に右下腹部へと移動していきます。これは、炎症が虫垂全体に広がり、周囲の腹膜を刺激するためと考えられます。痛みの性質も、鈍痛から鋭い痛みへと変化していきます。特に、右下腹部を押すと強い痛みを感じることが特徴です。これは、炎症によって虫垂が腫れ、周囲の組織と接触することで痛みが増強するためと考えられます。また、痛み以外にも、吐き気や嘔吐、食欲不振といった消化器系の症状が現れることもあります。さらに、発熱や便秘、稀に精巣に痛みが出ることもあります。虫垂炎は、放置すると虫垂が破裂し、腹膜炎を引き起こす可能性があります。腹膜炎は命に関わる危険性もあるため、上記の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。自己判断は危険ですので、必ず医師の診断を受けてください。

段階 期間 症状
初期段階 みぞおちのあたりやへそ周辺の鈍い痛み
進行段階 数時間から半日程度 ・痛みが右下腹部へ移動
・鈍痛から鋭い痛みに変化
・右下腹部を押すと強い痛み
・吐き気、嘔吐、食欲不振
・発熱、便秘
・稀に精巣に痛み

虫垂炎の診断

虫垂炎の診断

虫垂炎は、盲腸の先端にある虫垂に炎症が起こる病気です。診断のポイントは、患者さんの訴える症状の出現順序です。多くの場合、最初にみぞおち周辺やへそ周辺に漠然とした痛みを感じます。これは、炎症の初期段階では、虫垂だけでなく、お腹全体を支配する神経が刺激されるためです。次に、痛みとともに吐き気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が現れます。炎症が進むにつれて、痛みの場所は移動し、右下腹部を押すと強い痛みを感じるようになります。これは、炎症が虫垂の周囲にある腹膜にまで及ぶためです。そして、最後に発熱がみられます。

医師は、このような典型的な症状の経過や、お腹を触診した際の所見などから虫垂炎を疑います。さらに、血液検査で白血球の数が増加しているかどうかを調べます。白血球は、体内に侵入した細菌やウイルスなどと戦う細胞なので、炎症が起こるとその数が増加します。また、腹部超音波検査や腹部CT検査などの画像検査を行います。これらの検査では、虫垂の腫れ具合や、虫垂の中に糞石が詰まっているかどうかなどを確認します。これらの検査結果と、患者さんの症状を総合的に判断して、虫垂炎の診断を確定します。

症状 詳細
初期症状 ・みぞおち周辺やへそ周辺の漠然とした痛み
・吐き気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状
炎症の進行に伴う症状 ・痛みの場所が右下腹部に移動
・右下腹部を押すと強い痛み
・発熱
検査所見 ・血液検査:白血球数の増加
・腹部超音波検査や腹部CT検査:虫垂の腫れ、糞石の有無の確認

虫垂炎の治療

虫垂炎の治療

虫垂炎は、お腹の右下に位置する虫垂という臓器に炎症が起こる病気です。この病気の治療法は大きく分けて二つあります。一つは、手術によって虫垂を取り除く方法です。もう一つは、抗生物質を投与したり、食事を摂らずに安静にすることで炎症を抑える方法で、保存的治療と呼ばれています。どちらの方法が適切かは、患者さん一人ひとりの状態によって異なります。

虫垂炎と診断された場合、多くの場合は手術が選択されます。これは、虫垂炎を放置すると、炎症が悪化して周囲に広がり、腹膜炎などの重い合併症を引き起こす可能性があるためです。腹膜炎は命に関わることもあるため、早急に手術が必要となるケースもあります。

一方、患者さんの症状が軽く、合併症のリスクが低いと判断された場合には、保存的治療が選択されることもあります。保存的治療では、抗生物質の点滴や絶食を行いながら、炎症の経過を観察します。症状が改善すれば、そのまま入院治療を継続し、最終的には食事を再開して退院となります。ただし、保存的治療中に症状が悪化した場合には、緊急手術が必要になることもあります。

虫垂炎は、早期に発見して適切な治療を行えば、完治する可能性が高い病気です。自己判断は危険ですので、お腹の痛みや吐き気などの症状が現れた場合には、速やかに医療機関を受診し、医師の指示に従うようにしましょう。

治療法 内容 メリット デメリット 適応
手術療法 虫垂を切除する * 根治が期待できる
* 再発のリスクが低い
* 重症化を防ぐことができる
* 手術による身体への負担
* 入院期間が長くなる場合がある
* 手術痕が残る
* 多くの場合
* 虫垂炎と診断された場合
* 重症化のリスクがある場合
保存的治療 抗生物質の投与、食事の制限、安静 * 身体への負担が少ない
* 入院期間が短い場合がある
* 手術痕が残らない
* 根治できない場合がある
* 再発のリスクがある
* 重症化する可能性がある
* 症状が軽い場合
* 合併症のリスクが低い場合
* 経過観察が可能である場合

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