看護技術

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医療現場の小さな立役者:留置針

- 留置針とは?留置針とは、繰り返し注射や点滴が必要な場合に、血管に針を刺し続ける負担を和らげるための医療器具です。読んで字の如く、血管内に留置しておくための針のことを指します。従来、注射や点滴を行う度に、その都度、針を血管に刺す必要がありました。しかし、治療や検査のために何度も針を刺すことは、患者にとって大きな負担となります。特に、長期にわたる入院や治療が必要な場合、その痛みや負担は計り知れません。そこで、血管に一度針を刺せば、その後は針を刺し直すことなく繰り返し薬液投与や採血などができる留置針が開発されました。留置針は、主に細いプラスチック製の管であるカテーテルと、針が一体となった構造をしています。留置針を使用する際は、まず針を血管に刺します。そして、針が血管内に到達したことを確認後、針だけを抜き取り、カテーテルだけを血管内に留置します。カテーテルの先端は血管内に留まり、もう一方の先端は体外に固定されます。このように、留置針を使用することで、患者は注射や点滴の度に針を刺される苦痛から解放されるだけでなく、医療従事者にとっても、より安全かつ効率的に医療行為を行うことが可能となります。
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医療現場におけるサイフォニング現象:その危険性と予防策

- サイフォニング現象とはサイフォニング現象とは、医療現場において、シリンジポンプを使った薬剤投与中に起こる可能性のある現象です。シリンジポンプは、決められた量を時間をかけてゆっくりと点滴する医療機器ですが、この現象が起こると、意図せず薬剤が急速に注入されてしまうことがあります。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?ポイントは、シリンジポンプと患者さんの体の位置関係です。シリンジポンプが患者さんの体よりも高い位置にある場合、その高低差によってサイフォニング現象が起きる危険性があります。例えば、点滴中に何らかの原因でシリンジがポンプから外れてしまったとします。すると、ポンプよりも低い位置にある患者さんの体内に向かって、高低差による圧力がかかります。この圧力によって、シリンジ内の薬剤が勢いよく患者さんの体内へ流れ込んでしまうのです。しかも、注意が必要なのは、高低差が比較的小さい場合でも、サイフォニング現象が起こる可能性があるという点です。シリンジ内部の圧力が、何らかの理由で外部の圧力よりも極端に低くなると、たとえわずかな高低差であっても、薬剤が急速に注入されてしまうことがあります。サイフォニング現象は、患者さんの体にとって大きな負担となる可能性があります。医療現場では、シリンジポンプの位置を患者さんの体よりも低く設定する、点滴中は常に状態をよく観察するなど、この現象を防ぐための対策を徹底することが重要です。
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医療におけるドレーンの役割

- ドレーンとは私たちの体には、常に不要な液体が溜まっています。これは、血液やリンパ液、あるいは炎症によって生じる膿などが挙げられます。このような体にとって不要な液体を体外に排出するために用いられる管のことを、ドレーンと言います。ドレーンは、体内に溜まった液体の種類や量、そして患者さんの状態に合わせて、様々な種類のものが使用されます。例えば、体腔内に直接留置するものもあれば、手術の際に切開部から挿入するものもあります。材質としては、主にゴムやシリコンといった、体に対して安全性が高いものが使用されます。これらの材質は、体内に挿入しても、アレルギー反応などの拒絶反応を起こしにくいという特徴があります。また、近年では、ドレーンの素材や形状にも工夫が凝らされており、体内での異物感を軽減し、患者さんの負担をより少なくすることに貢献しています。ドレーンは、患者さんの回復を早めるだけでなく、様々な合併症のリスクを減らす上でも非常に重要な役割を担っています。
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褥瘡治癒の客観的評価:DESIGN®

褥瘡は、寝たきりや車椅子での生活を長く続けることなどによって、体の同じ場所に体重がかかり続けることで起こる皮膚の損傷です。このような状態が続くと、皮膚やその下の組織が傷ついてしまい、痛みや炎症を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 褥瘡のケアにおいては、傷の治り具合を正しく見極め、適切な治療方針を立てることが非常に重要になります。しかし、褥瘡は見た目の変化がわかりにくく、経験の浅い医療従事者にとってはその評価が難しい場合もあります。 そこで開発されたのがDESIGN®というツールです。DESIGN®は、褥瘡の大きさや深さ、傷の状態などを数値化することで、褥瘡の治り具合を客観的に評価することを可能にしました。このツールは、医療従事者間での情報共有をスムーズにするだけでなく、患者さん自身にもわかりやすく褥瘡の状態を説明できるというメリットもあります。 現在、DESIGN®は日本の褥瘡ケアの現場で広く活用されており、多くの医療機関で褥瘡ケアの質向上に貢献しています。特に、高齢化社会が進む日本において、褥瘡は重要な医療問題となっており、DESIGN®のような効果的なツールの活用は、患者さんの生活の質の向上に大きく寄与するものと期待されています。
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新生児の小さな寝台:コット

- コットとは病院の新生児室や小児科でよく見かける、赤ちゃん用の小さなベッドをコットと呼びます。このベッドは移動式で、新生児の安全な睡眠場所として、病院で広く使われています。コットの特徴は何と言っても、透明なケース状の上段部分でしょう。これは、赤ちゃんをあらゆる角度から観察できるように設計されたもので、医療従事者は赤ちゃんの様子を常に確認することができます。呼吸の様子や顔色、体の動きなどを細かく観察することで、赤ちゃんの健康状態を素早く把握することができるのです。また、コットは移動式であるため、病院内での移動もスムーズに行えます。検査や処置のために赤ちゃんを移動させる必要がある場合でも、コットごと移動させることができるので、赤ちゃんへの負担を最小限に抑えられます。これは、繊細な新生児にとって大きなメリットと言えるでしょう。このように、コットは新生児の安全と快適さ、そして医療従事者の業務効率化を両立させた、病院にとって欠かせない設備なのです。
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ラップ療法:皮膚の治癒を促す湿潤療法

- ラップ療法とはラップ療法とは、傷口を乾かさずに治す治療法の一つで、湿潤療法とも呼ばれています。この治療法は、擦り傷ややけど、床ずれなど、皮膚の様々な傷を治すために用いられています。従来の治療法では、傷口を消毒薬で消毒し、乾燥させて治すのが一般的でした。しかし、ラップ療法では、傷口を消毒せずに、傷口から出る体液を保つように特殊なフィルムで覆います。このフィルムは、外部からの細菌や刺激から傷口を守る役割を果たすと同時に、傷口の乾燥を防ぎ、皮膚が本来持っている自然治癒力を高める効果があります。ラップ療法には、従来の治療法と比べて多くの利点があります。まず、傷口を乾燥させないため、痛みが少ない点が挙げられます。また、傷口が早く治るだけでなく、傷跡が残りにくいという利点もあります。さらに、従来の治療法では頻繁なガーゼ交換が必要でしたが、ラップ療法ではガーゼ交換の回数を減らすことができるため、患者さんの負担を軽減することができます。ラップ療法は、比較的新しい治療法ですが、その効果の高さから、現在では多くの医療機関で取り入れられるようになっています。
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医療現場で活躍する胃管:その役割と種類

- 胃管とは胃管とは、鼻腔または口腔から挿入し、食道を経て胃まで到達するように留置する医療用の管のことを指します。この管は、材質によってシリコン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなど様々な種類が存在し、使用目的や患者さんの状態に合わせて選択されます。一般的には「胃管」という名称で広く知られていますが、医療現場では「マーゲンチューブ」と呼ばれることも多く、これはドイツ語で胃を意味する「マーゲン」と管を意味する「チューブ」を組み合わせた言葉です。また、英語では「Nasogastric Tube」と呼ばれることから、その頭文字をとって「NGチューブ」と略されることもあります。胃管は、主に以下の3つの目的で使用されます。1. -経管栄養-口から食事を摂ることが困難な患者さんに対して、胃に栄養剤を直接注入するために用いられます。2. -胃内容物の排出-手術後や腸閉塞などの際に、胃の中に溜まった内容物(胃液、ガスなど)を体外に排出するために用いられます。3. -胃洗浄-薬物中毒や食中毒などの際に、胃の内容物を洗浄して有害物質を取り除くために用いられます。胃管の挿入は、患者さんにとって苦痛を伴う場合もあるため、医師や看護師は、挿入前に患者さんに目的や方法を丁寧に説明し、不安を和らげるよう努めます。また、挿入後は、定期的に固定位置や皮膚の状態を確認し、合併症の予防に努めることが重要です。
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手術室の必需体位:トレンデレンブルグ体位

- 体位の概要手術や医療処置において、患者さんの体を適切な姿勢に保つことは非常に重要です。これを「体位」と呼びます。適切な体位は、手術や処置を円滑に進めるだけでなく、患者さんの安全を確保するためにも欠かせません。数ある体位の中でも、「トレンデレンブルグ体位」は頻繁に用いられる体位の一つです。この体位は、患者さんを仰向けの状態で寝かせ、足側を頭側よりも高くした状態を指します。例えるなら、傾斜のある台の上に寝ているような状態です。一見すると特殊な体位に思えるかもしれませんが、手術や特定の医療処置においては重要な役割を担っています。例えば、手術中に血圧が急激に低下した場合、この体位をとることで、血液を心臓や脳など、生命維持に重要な臓器に送り込みやすくなる効果があります。また、下腹部の手術や処置の際にも、この体位を用いることで、手術部位への血液循環を改善し、医師がより見やすく、処置しやすくすることができます。このように、トレンデレンブルグ体位は一見シンプルながらも、患者さんの状態を改善し、手術や処置を安全かつ円滑に進めるために重要な役割を果たしているのです。
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安全な側臥位:患者さんのための基礎知識

- 側臥位とは?側臥位とは、身体を横に向けて寝る姿勢のことを指します。 楽な姿勢に思えますが、患者さんの状態によっては注意が必要です。特に、全身麻酔後や集中治療室に入室中の患者さんの場合、意識が朦朧としていたり、身体を動かす力が入らなかったりすることがあります。 また、脳梗塞などで片麻痺のある患者さんの場合も、自分の意思で身体を動かすことが難しい場合があります。 このような場合、長時間同じ姿勢を続けていると、体重で圧迫される部分に負担がかかり続け、血流が悪くなってしまいます。 その結果、皮膚が赤くなったり、水ぶくれができたりする褥瘡(床ずれ)や、神経が圧迫されることによる神経障害などの合併症のリスクが高まります。そのため、患者さんが楽な姿勢だと感じていても、定期的に体位変換を行うことが重要です。 体位変換を行うことで、身体への負担を分散し、褥瘡や神経障害などの合併症を予防することができます。 また、体位変換は、呼吸を楽にしたり、誤嚥を予防したりする効果も期待できます。患者さんの状態に合わせて、適切なケアを行うように心がけましょう。
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ファウラー位:目的と注意点

- ファウラー位とはファウラー位は、ベッドに横になった状態を基本とする仰臥位から、上半身を起こした姿勢のことを指します。具体的には、背もたれを45度程度に傾けることで、この体位をとることができます。一見すると、楽に座っている状態と変わりないように思えるかもしれません。しかし、医療現場においてファウラー位は、単に座っているのとは異なる意味合いを持ちます。ファウラー位は、上半身の角度を細かく調整できるという特徴があります。角度を変えることで、患者さんの状態に合わせて、より効果的な体位にすることが可能です。例えば、呼吸が苦しい患者さんの場合は、上半身を起こすことで、肺への圧迫を軽減し、呼吸を楽にする効果が期待できます。また、心臓への負担を軽減する効果も期待できるため、心臓病の患者さんにも用いられます。さらに、食事や経管栄養の際には、誤嚥のリスクを減らすためにファウラー位が有効です。上半身を起こすことで、食べ物が気管に入りにくくなり、安全に食事や栄養摂取を行うことができます。このように、ファウラー位は、一見シンプルな体位に見えますが、医療現場においては、患者さんの状態に合わせて角度を調整することで、様々な効果を発揮する重要な体位と言えます。
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褥瘡評価ツール DESIGN-R®️とは

- DESIGN-R®️の概要DESIGN-R®️(でざいんあーる)は、高齢者施設や病院などで広く利用されている、褥瘡のリスク評価ツールです。2008年に日本褥瘡学会によって提唱され、褥瘡発生の危険因子を多角的に評価することで、褥瘡の予防や早期発見、そして適切な治療計画の立案に役立てることを目的としています。従来、褥瘡のリスク評価には、海外で開発されたBradenスケールやNortonスケールなどが用いられてきました。しかし、これらのスケールは日本の医療現場や患者の特性に必ずしも合致しない側面がありました。そこで、日本人の体格や生活習慣、医療体制などを考慮し、より日本人に適した評価ツールとしてDESIGN-R®️が開発されました。DESIGN-R®️の特徴は、褥瘡発生に関与する6つの因子(体格、日常生活動作、皮膚の状態、栄養状態、活動量、精神状態)を、それぞれ具体的な項目で評価する点にあります。各項目は点数化されており、合計点によって褥瘡の発生リスクが低リスク、中等度リスク、高リスクの3段階に分類されます。DESIGN-R®️を用いることで、医療従事者は、患者一人ひとりの褥瘡リスクを客観的に把握し、個別の予防策や治療計画を立案することができます。また、評価結果を記録することで、褥瘡発生の予防効果や治療効果の検証にも役立ちます。DESIGN-R®️は、褥瘡ケアの質向上に貢献する重要なツールと言えるでしょう。
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医療現場における『バリアンス』とは?

- ばらつきの意味「ばらつき」とは、本来「相違」や「不一致」、「分散」といった意味を持つ言葉です。 これは、あるデータの集団において、個々のデータが平均値や期待値からどれくらい離れているかを表す指標として用いられます。医療の現場においても、「ばらつき」は重要な意味を持ちます。特に、標準化された治療計画である「クリニカルパス」においては、想定された治療経過から外れた状態、つまりアウトカムが達成されない状態を指す場合に用いられます。例えば、ある病気に対する標準的な治療期間が設定されていたとしても、患者の状態や体質、合併症の有無などによって、実際の治療期間は前後することがあります。この治療期間の差が「ばらつき」として捉えられます。医療現場における「ばらつき」の発生には、様々な要因が考えられます。患者の年齢や性別、持病の有無といった背景因子、治療に対する反応性、生活習慣の違いなどが挙げられます。「ばらつき」を把握することは、医療の質向上に不可欠です。「ばらつき」の原因を分析することで、標準化された治療計画をより効果的に機能させ、患者一人ひとりに最適な医療を提供することに繋がるからです。
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グラインダー:皮膚や爪の治療に役立つツール

- グラインダーとはグラインダーは、皮膚や爪の表面を滑らかにするために使用される医療用の器具です。回転する研磨石やダイヤモンドバーが高速で回転し、硬くなった皮膚や爪を削り取ります。この器具は、主に足病医や皮膚科医などの専門家によって使用されます。彼らは、魚の目、たこ、厚くなった爪など、様々な皮膚や爪のトラブルを治療するためにグラインダーを使用します。例えば、足の裏にできる硬い皮膚の塊である魚の目は、歩行時に痛みを生じさせることがありますが、グラインダーを使用することで、痛みを伴わずに除去することができます。また、爪が厚くなって変形してしまう爪水虫の治療にも、グラインダーは有効です。厚くなった爪をグラインダーで薄くすることで、薬剤の効果を高めることができます。近年では、家庭用の小型グラインダーも販売されています。これらのグラインダーは、専門家用よりもパワーは劣りますが、日常的なケアとして、硬くなったかかとや爪の表面を滑らかにするのに役立ちます。しかし、家庭用グラインダーを使用する際には、取り扱い説明書をよく読み、安全に注意して使用することが重要です。特に、回転する研磨石やダイヤモンドバーは、皮膚を傷つける可能性があるため、注意が必要です。また、糖尿病などの基礎疾患がある場合は、使用前に医師に相談することをお勧めします。
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カットダウン:緊急時の血管確保

- カットダウンとはカットダウンとは、手術などにおいて、静脈に薬剤や栄養剤などを投与したり、血液を採取したりするために、皮膚やその下の組織を切開して血管を露出させ、そこにカテーテルと呼ばれる細い管を挿入する医療行為です。点滴のように針を血管に刺して行う方法とは異なり、カットダウンではメスを用いて皮膚を切開します。そのため、血管が細かったり、深い場所にあったりする場合でも、確実に血管にカテーテルを挿入することができます。カットダウンは、緊急を要する状況など、通常の方法では血管確保が難しい場合に有効な手段です。例えば、大量出血やショック状態などにより、通常の点滴では十分な効果が得られない場合や、新生児や乳幼児のように血管が非常に細い場合などに用いられます。しかし、カットダウンは皮膚を切開するため、感染症のリスクを伴います。また、神経や血管を傷つける可能性もゼロではありません。そのため、カットダウンは他の方法では対応が難しい場合にのみ、熟練した医師によって行われます。
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スクイージング:呼吸リハビリテーションの手技

- スクイージングとはスクイージングは、呼吸器疾患の患者さんにとって重要な呼吸リハビリテーションの手技の一つです。 この手技は、気道に溜まった痰を効果的に排出することを目的としており、患者さんの呼吸を楽にするために役立ちます。呼吸器疾患を患っている場合、気道に痰が溜まりやすくなります。痰は、細菌やウイルス、埃など、体にとって異物となるものが肺に侵入するのを防ぐ役割を果たしていますが、過剰に溜まると呼吸を困難にすることがあります。スクイージングは、患者さん自身の呼吸機能を補助し、この痰の排出を促す効果があります。 具体的には、患者さんが息を吸ったタイミングに合わせて、胸郭や腹部を優しく圧迫することで、肺の中の空気を押し出し、一緒に痰を排出します。この手技は、安全かつ効果的な方法として広く活用されています。看護師や理学療法士など、専門家の指導のもとで適切に行われることで、呼吸困難の改善や感染症のリスクを低減することができます。スクイージングは、患者さん自身の呼吸機能を高めるためのトレーニングとしても有効です。 専門家の指導のもと、呼吸法と合わせてスクイージングを行うことで、呼吸筋が鍛えられ、より効果的に痰を排出できるようになります。
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患部を優しく保護する:離被架の役割と種類

- 離被架とは何か離被架とは、病気や怪我をしてしまった部分に布団や毛布などの重みが直接かからないようにする、アーチ状の形をした道具です。例えば、骨折してギプスを巻いている時や、手術の後で傷口が痛む時、点滴の針が刺さっている時などに、この離被架が役立ちます。離被架を使う最大のメリットは、患部に触れることによる痛みや不快感を和らげることができる点です。布団の重みが直接患部にかかると、痛みが増したり、傷口が開いてしまったりする可能性があります。しかし、離被架を使うことで、患部と布団の間に空間を作ることができるため、そのような心配をせずに済みます。また、離被架は患部の治療効果を高める上でも役立ちます。例えば、ギプスを巻いている場合、患部を清潔に保ち、風通しを良くすることが重要です。離被架を使うことで、患部が布団で覆われることを防ぎ、清潔で乾燥した状態を保ちやすくなるため、治療をスムーズに進めることができます。さらに、離被架は患者の負担を軽減する効果もあります。痛みや不快感が減ることで、睡眠をしっかりとることができ、体力の回復を促します。また、寝返りを打つ際にも、患部への負担を軽減することができます。このように、離被架は、病気や怪我の治療において、患者の負担を軽減し、治療効果を高める上で重要な役割を果たしています。
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褥瘡:予防と早期発見のために

- 褥瘡とは 褥瘡は、寝たきり状態や車椅子生活など、長時間同じ姿勢を続けることで発生しやすくなります。体の特定の部位に体重が集中し続けることで、その部分の血流が悪くなってしまうのです。すると、皮膚やその下の組織(皮下組織)に必要な酸素や栄養が十分に届かなくなり、組織が損傷を受けてしまいます。これが褥瘡であり、一般的には「床ずれ」とよばれることもあります。 褥瘡は、誰でも発症する可能性がありますが、特に骨が出っ張っている部分にできやすいという特徴があります。なぜなら、骨が出っ張っている部分は、周りの組織よりも圧力がかかりやすく、血流が阻害されやすいためです。具体的には、お尻の尾骨の少し上の部分にある仙骨、かかと、くるぶし、肩甲骨などが挙げられます。 褥瘡は、初期段階では皮膚が赤くなる程度ですが、悪化すると皮膚がめくれてしまったり、潰瘍になったりすることがあります。さらに重症化すると、筋肉や骨まで損傷を受けることもあり、治療が困難になる場合もあります。そのため、褥瘡は早期発見と予防が非常に重要です。
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患者の身体を観察する技術:フィジカルアセスメント

- フィジカルアセスメントとはフィジカルアセスメントは、医療従事者が患者さんの健康状態を総合的に評価するために欠かせない診察方法です。これは、患者さんの訴えを丁寧に聞き取りながら、視診、触診、聴診、打診といった五感を駆使して身体の情報をくまなく集める作業を指します。このプロセスは、単に身体的な異常を発見するだけでなく、患者さんの言葉だけでは伝えきれない問題点や、病気の背景にある要因を明らかにする上で非常に重要です。例えば、患者さんが「頭が痛い」と訴えていたとします。フィジカルアセスメントによって、頭痛の原因が単なる風邪ではなく、頭部外傷や脳腫瘍といった深刻な疾患である可能性も見えてきます。また、患者さんの顔色や呼吸の状態を観察することで、貧血や呼吸器疾患などの隠れた病気を発見できることもあります。このように、フィジカルアセスメントは、患者さんの全体像を把握するためのパズルのピースを一つ一つ丁寧に集めていくような作業と言えるでしょう。そして、集めた情報に基づいて適切な検査や治療方針を決定することで、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供することに繋がります。
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看護の質を高めるカギ!~看護サマリーの効果と課題~

- 看護サマリーとは何か看護サマリーとは、患者さんの重要な情報を分かりやすくまとめた書類のことです。患者さんが入院中に受けた医療や看護の内容が記録されており、病院内の関係者以外でも、患者さんの診療に携わる人が誰でも見られるようになっています。このサマリーは、患者さんが他の病院へ転院する場合や、退院して自宅療養に移る場合などに作成されます。例えば、入院中に使用していた薬の名前や量、あるいは日常生活で注意すべきことなどが具体的に書かれています。これは、患者さんが転院先や自宅でも安心して治療や療養を続けられるように、そして、次の担当者へ重要な情報が正しく伝わるように作成されます。看護サマリーには、「看護要約」や「退院時サマリー」、「退院時要約」など、様々な呼び方があります。いずれも内容はほぼ同じで、患者さん一人ひとりに合わせた医療や看護を提供するために欠かせない情報共有ツールと言えるでしょう。 看護師が中心となって作成しますが、医師や薬剤師、理学療法士など、他の医療従事者も情報を書き加えることがあります。このように、看護サマリーは患者さんの円滑な治療と療養を支える上で、重要な役割を担っていると言えるでしょう。
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看護の基本: ベッドバスで快適な療養を

- ベッドバスとは病気や怪我によって、浴室まで移動して入浴することが難しい患者さんにとって、清潔を保つことは容易ではありません。このような場合に、医療現場では「ベッドバス」と呼ばれるケアが行われます。これは、温めたタオルやクロスを用いて、患者さんの体を拭くことで清潔を保つ方法で、「清拭(せいしき)」とも呼ばれます。ベッドバスは、単に体を清潔にする以上の効果をもたらします。たとえば、体を拭かれることで、患者さんは爽やかな気分になり、精神的なリフレッシュにつながります。また、皮膚の汚れや古い角質が除去されることで、皮膚の呼吸が促進され、健康な状態を保つことができます。さらに、温めたタオルやクロスの刺激によって血行が促進され、体の機能維持にも役立ちます。ベッドバスを実施する際には、室温や水温に注意し、患者さんの体に負担をかけないように優しく行うことが重要です。また、プライバシーにも配慮し、体を拭いている部分以外はタオルやシーツで覆うなどして、安心してケアを受けられるようにすることが大切です。
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看護師が使う「トランス」って?

病院で働く看護師や医師などが、よく口にする「トランス」という言葉をご存知でしょうか?日常生活では耳にする機会は少ないかもしれませんが、病院では患者さんの移動や移送、転院などを指す医療用語として頻繁に使われています。 例えば、手術室から病室へ患者さんを移動する際や、検査のためにレントゲン室へ移動する際に、「トランスする」といった表現が使われます。また、他の病院へ転院する場合にも、「明日、トランスの予定です」といった具合に用いられます。 「トランス」は「トランスファー」を省略した言葉で、医療現場では業務を簡潔に伝えるために、このような略語がよく使われています。患者さんにとっては聞き慣れない言葉かもしれませんが、医療従事者にとっては、円滑な業務遂行のために欠かせない言葉の一つと言えるでしょう。
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医療現場におけるインシデントレポートの重要性

- インシデントレポートとは医療現場では、患者さんの安全を最優先に、日々、最善の医療を提供しようと努めています。しかし、予期せぬ出来事や、一歩間違えれば患者さんに危害が及ぶ可能性があった事象が発生してしまうこともあります。このような出来事を「インシデント」と呼びます。インシデントには、点滴の投与速度が誤って設定されていた、薬剤の名称が似ていて別の薬剤と取り違えそうになった、医療機器の操作を誤りそうになったなど、実際に患者さんに危害が及ばなかったケースも含まれます。もちろん、医療行為によって患者さんに怪我や病気を負わせてしまう「医療事故」もインシデントに含まれます。「インシデントレポート」は、このような医療現場で起こったインシデントについて記録するための報告書です。インシデントレポートを作成し、記録し、分析することで、医療現場全体でインシデントの発生原因を究明し、再発防止に役立てることができます。インシデントレポートは、単に医療ミスを責めるための書類ではありません。患者さんの安全を守るための、医療現場における重要なツールといえるでしょう。
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プライマリーナーシング:一貫した看護の提供

- プライマリーナーシングとは 病院に入院すると、検査や治療、食事や身の回りの世話など、様々な場面で看護師と接する機会があります。このような状況下で、患者さん一人ひとりに、より質の高い看護を提供するために生まれたのがプライマリーナーシングという看護方式です。 プライマリーナーシングでは、入院から退院まで、患者さん一人ひとりに担当の看護師がつきます。担当看護師は、患者さんの病気や症状、生活習慣、価値観などを理解し、患者さんにとって最適な看護計画を立てます。そして、計画に基づいて、患者さんやその家族とのコミュニケーションを密にとりながら、責任を持って看護を提供していきます。 この看護方式は、1970年代にアメリカのミネソタ大学病院で初めて導入されました。当時は、入院期間が長期化する傾向にあり、入院中に担当する看護師が頻繁に変わることが問題視されていました。そこで、患者さんとの継続的な関係を重視し、質の高い看護を提供するために、プライマリーナーシングが導入されたのです。 プライマリーナーシングでは、患者さんとの信頼関係を築くことができるため、安心して治療や療養に専念することができます。また、担当看護師が変化を早期に発見し、対応することで、合併症の予防や早期発見にもつながります。
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患者の語りに耳を傾ける医療:ナラティブとは

ナラティブは、英語で「語り」を意味する言葉であり、医療現場においては、患者さんが経験した病気や治療、日常生活での出来事などをありのままに語ってもらうことを指します。 患者さん一人ひとりの背景や価値観、想いは異なります。病気の症状や治療に対する反応だけでなく、生活習慣や家族構成、仕事、趣味、将来に対する不安など、患者さんを取り巻く状況は実に様々です。ナラティブは、まさにそうした一人ひとりの患者さんの物語に耳を傾けることの大切さを強調する言葉と言えるでしょう。 医師は、検査データや画像診断に基づいて病状を把握しますが、患者さんの心の内側を理解するには、言葉を通して語られる物語に耳を傾けることが不可欠です。患者さんの言葉に込められた感情や経験を理解することで、初めて患者さん中心の医療を実践することが可能になります。 ナラティブを医療現場に取り入れることで、医師と患者間の信頼関係を築き、より良い治療法を選択し、患者さんの生活の質の向上を目指せる可能性があります。
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