脳・神経

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体の痛みを理解する:体性痛とは?

- 痛みの分類痛みは、私たちの身体が危険信号を発する重要なサインです。その種類は多岐にわたり、原因や発生機序、神経を伝わる経路の違いによって分類されます。国際疼痛学会では、痛みを「実際のまたは潜在的な組織損傷に関連する、またはそのような損傷として表現される、不快な感覚的および情動的経験」と定義しています。これは、痛みは単なる感覚的な経験ではなく、感情や思考、過去の経験などが複雑に関係する、個人によって異なる主観的なものであることを示しています。痛みの分類として、まず発生源による分類が挙げられます。体の表面に近い皮膚や粘膜に生じる痛みは表在痛と呼ばれ、比較的鋭く感じられます。一方、内臓や筋肉、骨など体の深部で生じる痛みは深部痛と呼ばれ、鈍く、広範囲にわたって感じられることが多いです。次に、痛みが続く期間による分類として、急性痛と慢性痛があります。急性痛は、ケガや手術など明らかな原因によって生じ、短期間で治まる痛みです。一方、慢性痛は、原因がはっきりしない場合や、長期間にわたって続く痛みを指します。一般的には3ヶ月以上続く場合を慢性痛と呼ぶことが多いです。さらに、神経の損傷の有無によって、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分けられます。侵害受容性疼痛は、組織の損傷によって発生する痛みで、切り傷や火傷などによる痛みが代表的です。神経障害性疼痛は、神経系自体が損傷を受けることで起こり、電気が走るような痛みやしびれを伴うことがあります。このように、痛みは多様な側面を持つため、その分類も複雑です。痛みの種類や原因を理解することは、適切な治療法を選択する上で非常に重要となります。
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知っていますか?「ワゴる」現象

病院で働く医療従事者たちの間では、時折「ワゴる」という言葉が飛び交うのを耳にすることがあるかもしれません。これは決して物をワゴンに乗せるといった意味ではなく、「迷走神経反射」を意味する医療用語です。英語では“vagovagal reflex”もしくは“vagal reflex”と表記し、そこから短縮されて「ワゴる」という言葉が生まれました。 では、そもそも迷走神経とは一体どのような神経なのでしょうか。迷走神経は、脳から腹部まで続く、体の中で最も長い神経の一つです。その影響範囲は非常に広範囲に渡り、心臓や肺、消化器官など、生きていく上で欠かせない多くの臓器の働きを調節しています。 この迷走神経が、何らかの刺激を受けることで様々な反応を引き起こします。これが迷走神経反射と呼ばれるものです。例えば、急激な起立や排便時のいきみ、強い痛みや精神的なストレスなどが刺激となり、脈が遅くなったり、血圧が低下したり、場合によっては失神してしまうこともあります。 医療現場では、患者さんの容態が急変した際に、「ワゴってる?」といった言葉が使われることがあります。これは、迷走神経反射の可能性を考慮し、患者さんの状態を素早く把握しようとする医療従事者たちの姿を表しています。
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学習障害:目に見えにくい困難への理解

- 学習障害とは学習障害(LD)は、特定の能力を獲得したり、使用したりする際に、著しい困難が生じる状態を指します。ここで重要なのは、学習障害は全般的な知的発達に遅れがない場合に診断されるということです。つまり、学習障害を持つ人は、平均的な、あるいは高い知的能力を持ちながらも、特定の分野において困難に直面している状態を指します。例えば、「読み書き」や「計算」、「推論」など、特定の分野において、本来持っている能力を十分に発揮することが難しいと感じることがあります。このような困難は、脳内の情報処理の仕方の違いによって生じると考えられています。学習障害は、決して怠けている訳でも、努力が足りない訳でもありません。適切な支援や指導を受けることで、困難を克服し、その人が持つ能力を最大限に発揮できるようになる可能性を秘めています。
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脊髄損傷と自律神経過緊張反射

- 自律神経過緊張反射とは 自律神経過緊張反射は、脊髄を損傷した患者さんに起こる可能性のある深刻な合併症です。脊髄は、脳からの指令を全身に伝える役割を担っており、この脊髄が損傷を受けると、様々な神経伝達に障害が生じます。自律神経過緊張反射は、その中でも特に注意が必要な症状の一つです。 この反射は、主に胸髄と呼ばれる胸の高さにある脊髄を損傷した場合に多く見られます。そして、損傷を受けた部位よりも下の、麻痺のある部分への刺激がきっかけとなって起こります。例えば、衣服の締め付けや、尿が溜まったことによる膀胱の刺激、あるいは便秘による腸の刺激などが引き金となることがあります。 自律神経過緊張反射が起こると、急激な血圧の上昇が見られます。その他にも、ひどい頭痛、顔面紅潮、発汗、鼻づまり、脈拍の低下や徐脈などの症状が現れます。症状が重篤化すると、意識消失や痙攣、脳出血、最悪の場合は死に至る可能性もあり、迅速な対応が求められます。
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心に生じる歪み:統合失調症を知る

- 統合失調症とは統合失調症は、思考、感情、行動といった、私たちが普段当たり前に使っている心の働きに影響を及ぼす病気です。複雑な形で症状が現れるだけでなく、経過も人によってさまざまで、完治が難しい病気として知られています。この病気では、脳の情報処理機能に乱れが生じることで、周囲の状況を正しく理解したり、筋道立てて考えたりすることが困難になります。そのため、現実と異なることを考えてしまったり、周囲の人々に理解されないような発言をしてしまったりすることがあります。統合失調症の症状は、陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つのグループに分けられます。「幻覚」や「妄想」といった、健康な時には見られない症状が現れるのが陽性症状です。一方、感情の動きが乏しくなったり、意欲が低下したりといった、本来あるべき状態から減ってしまう症状を陰性症状と呼びます。さらに、注意や記憶、計画といった認知機能に障害が生じることもあります。日本では約80万人が統合失調症を抱えていると推定されており、決して珍しい病気ではありません。早期に診断を受け、薬物療法や精神療法といった適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、社会生活を送ることも十分に可能です。統合失調症は、周りの理解と適切な治療によって、より良い方向へ進んでいける病気なのです。
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知的障害について

- 定義 「知的障害」は、かつては「精神遅滞」という名称で呼ばれていましたが、現在では、より適切な表現として「知的発達の障害」と定義されています。これは、生まれつき、あるいは幼い時期に何らかの原因によって、脳の発達に遅れが生じることで起こります。 具体的には、「学習すること」「問題を解決すること」「日常生活で周囲の状況に合わせて行動すること」などに困難が生じます。そのため、周りの人とコミュニケーションを取ることや、社会生活を送る上で、様々な支障が出てしまうことがあります。 知的障害の程度は人によって大きく異なり、軽度の場合には周囲から気づかれないこともあります。しかし、重度の場合には、日常生活において常にサポートが必要となることもあります。 重要なことは、知的障害は決して恥ずべきことではなく、一人ひとりの個性として理解し、それぞれに合ったサポートや支援を提供していくことが重要だということです。
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てんかん:脳の電気信号の乱れが引き起こす発作

- てんかんとはてんかんは、脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮することによって起こる病気です。この過剰な興奮は、脳波の異常として記録され、様々な症状を引き起こします。この症状を「発作」と呼びます。発作には、意識を失って全身が硬直したり、手足が痙攣する「大発作」や、一瞬意識がぼーっとするだけの「欠神発作」など、様々な種類があります。発作の症状は、脳のどの部分が過剰に興奮するかによって異なります。てんかんは決して珍しい病気ではなく、世界中で約5000万人が罹患していると推定されています。日本では人口の約1%、およそ100万人がてんかんを抱えていると考えられており、誰にでも起こりうる病気と言えます。てんかんの原因は様々で、脳腫瘍や頭部外傷、脳血管障害などが原因で発症する場合もあれば、原因が特定できない場合もあります。 てんかんは、適切な治療を行うことで発作をコントロールし、普通の生活を送ることが可能な病気です。てんかんの治療には、薬物療法や外科療法など、様々な方法があります。
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発達障害とは?

- 発達障害の定義発達障害とは、脳の発達における特徴が原因で、幼い頃から学生時代にかけて、日常生活や学習において様々な困難が生じる状態を指します。発達障害は、大きく分けて、自閉症、アスペルガー症候群といった広汎性発達障害と、学習障害、注意欠如多動症(ADHD)といった特定の能力の発達に偏りが見られる障害があります。発達障害は、決して知能の遅れではありません。知的な発達には問題がないものの、コミュニケーションや社会性、学習、注意などに困難が生じる場合があります。例えば、自閉症の人は、言葉によるコミュニケーションや他人との関わりが苦手な一方、特定の分野において優れた集中力や記憶力を発揮することがあります。また、ADHDの人は、注意を持続することが難しく、落ち着きのない行動が見られる一方、高い創造性や行動力を持ち合わせていることがあります。発達障害は、その特性や程度は人それぞれです。 大切なのは、それぞれの特性を理解し、その人に合った環境や教育を提供することです。そうすることで、発達障害のある人も、その能力を最大限に発揮し、社会で活躍していくことができるのです。
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広がる理解:自閉スペクトラム症の世界

- 自閉スペクトラム症とは自閉スペクトラム症(ASD)は、脳の機能に違いがみられることで、周囲とのコミュニケーションや人間関係を築くこと、行動や興味の持ち方に特徴が現れる発達障害です。 以前は、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害といった診断名が用いられていましたが、現在ではこれらの総称として「自閉スペクトラム症」と診断されます。 自閉スペクトラム症において重要な点は、「スペクトラム」という言葉が示す意味です。これは、症状や特徴が人によって大きく異なり、その程度も様々であることを意味します。 例えば、ある人は言葉の発達が遅れる一方で、驚異的な記憶力や計算能力を示すことがあります。また、ある人は特定の分野に強いこだわりを持つ一方で、変化に柔軟に対応することが難しいと感じることもあります。 大切なのは、特定の症状の有無だけで判断するのではなく、その人の特性全体を理解し、その人に合ったサポートを提供することです。 自閉スペクトラム症は、生まれつき持っている脳の機能の違いによって現れます。遺伝的な要因が大きいと考えられていますが、まだ解明されていない部分も多く残されています。 早期に発見し、適切な療育や支援を行うことで、社会生活を送る上での困難さを軽減し、その人の持てる力を最大限に引き出すことが期待できます。
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心の奥底:エスを探る

人間の心は、まるで深淵のように複雑で、その構造を完全に理解することは容易ではありません。心理学者のフロイトは、この複雑な心の構造を理解するために、心の地形図という概念を提唱しました。それは、心を「エス」「自我」「超自我」という3つの要素に分け、それぞれの働きによって心のバランスを保っているという考え方です。 まず、「エス」は、人間の心の奥底に存在する、生まれながらに持つ本能や欲求を司る部分です。快楽を求め、苦痛を避けるという、いわば人間の根源的な欲求を象徴しています。 次に、「自我」は、現実世界と向き合い、周囲の状況を判断しながら、エスの要求をコントロールする役割を担います。現実社会で受け入れられる行動と、そうでない行動を判断し、理性的な行動を選択しようとします。 最後に、「超自我」は、道徳や良心、理想といった、社会規範や道徳観念を内面化したものです。いわば心の監視役として、自我がエスの要求に負けそうになったときに、罪悪感や羞恥心を与え、行動を抑制しようとします。 フロイトは、これらの3つの要素が、ちょうど天秤のようにバランスを取り合いながら、人間の行動や思考を決定づけていると考えました。しかし、このバランスが崩れると、心の中に葛藤が生じ、不安やストレスなどの精神的な問題を引き起こすとされています。
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生まれ持った心の傾向:気質について

私たちは皆、それぞれ異なる個性を持っています。明るい人もいれば、物静かな人もいます。楽観的な人もいれば、心配性の人もいます。このような一人ひとりの個性を形作る要素の一つに、「気質」があります。 気質とは、生まれながらに備わっている、心の反応の傾向のことです。外界からの刺激に対して、どのように感じ、どのように行動するかという、その人本来の反応パターンと言えるでしょう。 例えば、同じ出来事に遭遇したとします。ある人は、それを乗り越えられる試練だと捉え、前向きに乗り越えようとするかもしれません。一方、別の人は、その出来事に深く傷つき、なかなか立ち直れないかもしれません。このように、同じ出来事に対して異なる感じ方や反応の仕方をするのは、気質の違いによると言えるでしょう。 気質は、遺伝的な要素が大きく影響すると考えられています。しかし、育った環境や経験によっても変化する可能性があります。幼少期の親の育て方や、学校や社会での経験を通して、気質は少しずつ形作られていきます。 気質は、私たちの考え方や行動パターンに大きな影響を与えます。しかし、気質はあくまでも傾向であり、絶対的なものではありません。自分の気質を理解し、その特徴を踏まえた上で、より良い行動を選択していくことが大切です。
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学習とは何か?行動変容のメカニズム

- 学習の定義学習とは、私たち人間を含めた動物が、経験を通して行動を変化させていく過程のことを言います。毎日の生活の中で、私たちは実に様々な経験をしています。そして、その一つ一つの経験を通して、新しい知識や技術を身につけていきます。例えば、最初は誰もが転びながら練習を重ねて、自転車に乗れるようになります。新しい言葉を一つ一つ覚えていくことで、外国語を話せるようになります。毎日会う人の顔と名前を一致させて覚えられるようになるのも、学習によるものです。このように、自転車の乗り方や外国語、人の顔と名前など、様々なことを学習によって身につけることで、私たちは周りの環境にうまく馴染んでいくことができるようになります。学習を通して得られた能力は、より良く生きていくための大きな力となります。私たちは学習を通して、困難な状況を乗り越えたり、目標を達成したりする術を身につけていくのです。学習は、生涯にわたって続く、私たちにとって非常に重要なプロセスと言えるでしょう。
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脳性麻痺:理解を深める

- 脳性麻痺とは脳性麻痺は、生まれた後の成長過程で起こる病気ではなく、妊娠中から出産後間もない時期に脳の一部が傷つくことで起こる障害です。この時期の脳は発達段階にあり、傷つきやすい状態にあります。脳のどの部分が、どの程度傷つくかによって、症状は大きく異なってきます。脳性麻痺の主な症状は、体の動きや姿勢に現れます。例えば、歩く際に足を引きずったり、体が傾いてしまう、バランスを取るのが難しいなど、運動や姿勢の制御に困難が生じます。また、手や腕の動きがぎこちなく、細かい作業が難しくなることもあります。症状の程度は人によって様々で、軽い場合は日常生活に支障がないこともありますが、重い場合は歩くことや日常生活動作に大きな困難を伴うこともあります。重要なのは、脳性麻痺は遺伝する病気ではないということです。また、周りの人の言動が原因で発症するわけでも、周りの人の影響によって症状が悪化するわけでもありません。脳性麻痺は、あくまで脳への損傷によって引き起こされる運動や姿勢の障害なのです。
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感情の波に乗りこなせない:感情失禁を理解する

- 感情のブレーキがきかない?私たちは、日常生活で喜びや悲しみ、怒りや楽しみといった様々な感情を経験します。 嬉しいことがあれば笑顔がこぼれ、悲しいことがあれば涙を流すように、感情は自然と表現に表れるものです。しかし、まるでブレーキの壊れた車のように、自分の感情をコントロールすることが難しくなってしまう状態があります。これが、「感情失禁」と呼ばれる状態です。感情失禁では、些細なことで急に泣き出してしまったり、逆に、場違いな状況で大笑いしてしまったりすることがあります。また、周囲の状況を考えずに、激しい怒りを爆発させてしまうこともあります。このように、感情の表現が過剰になったり、周囲の状況と合わなくなったりするのが、感情失禁の特徴です。感情失禁は、周囲の人を困惑させるだけでなく、本人にとっても大きな苦痛となります。感情をうまく表現できないことへのもどかしさや、周囲から誤解されてしまうことへの辛さは、想像を絶するものがあります。さらに、感情の起伏が激しくなることで、人間関係に支障をきたしたり、仕事や学業に集中することが難しくなったりすることもあります。感情失禁の原因は、脳卒中などの脳血管障害や、認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患など、様々なものが考えられます。もし、ご自身や周りの方で感情失禁の症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることが大切です。
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広がる理解: 自閉スペクトラム症

- 自閉スペクトラム症とは 自閉スペクトラム症(ASD)は、脳の働き方の違いが原因で起こる発達障害です。「スペクトラム」という言葉には、虹のように様々な色合いがあるように、この症状も人によって大きく異なる様子が表されています。 自閉スペクトラム症は、主に3つの特徴がみられます。 1. -社会性の困難さ- 他の人とのコミュニケーションや人間関係を築くのが難しい場合があります。例えば、相手の気持ちを読み取ったり、自分の気持ちを伝えたりすることが苦手です。 2. -コミュニケーションの困難さ- 言葉の発達の遅れや、言葉の裏の意味を読み取ることが難しいなど、コミュニケーションに困難さを感じる場合があります。 3. -行動や興味の偏り- 特定の物事に強いこだわりを見せたり、同じ行動を繰り返したりすることがあります。また、変化を嫌う傾向もあります。 自閉スペクトラム症は、個性の一部として捉えられています。その特性は一人ひとり異なり、得意な分野や苦手な分野も様々です。 適切な支援や理解があれば、多くの人は社会で活躍することができます。
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逆耐性現象:薬物依存症の影

- 逆耐性現象とは逆耐性現象とは、覚醒剤などの一部の薬物を摂取した際に現れる、一般的な薬物への反応とは異なる現象です。この現象は、フラッシュバック現象や感受性増感現象とも呼ばれ、薬物依存からの回復を目指す上で大きな障壁となることがあります。一般的に、薬物は使い続けることで体が薬に慣れてしまい、効果が薄れていくと考えられています。これは耐性と呼ばれる現象で、多くの薬物で見られます。しかし、逆耐性現象は、この常識とは反対の現象です。逆耐性現象では、薬物の使用量を減らしたり、使用を中止した後でも、過去に大量に摂取した時と同じような効果が現れることがあります。まるで、体が以前の強い薬の効果を「記憶」しているかのように、少量の摂取でも過剰に反応してしまうのです。この現象は、薬物が脳に与える影響が変化することで起こると考えられています。具体的には、脳内の神経伝達物質のバランスが薬物によって崩れ、その影響が長期にわたって残ってしまうことが原因として挙げられます。逆耐性現象は、薬物依存からの回復を難しくするだけでなく、予期せぬ過剰摂取による健康被害のリスクを高めます。そのため、薬物依存治療においては、この現象を理解し、適切な治療法を選択することが重要となります。
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知っておきたい医療用語:アポ

病院で働く人たちの間では、日常的に様々な専門用語が使われています。その中には、一般の方にはあまり知られていない言葉も少なくありません。「アポ」という言葉も、そうものの一つと言えるでしょう。「アポ」は「あぽ」と読むことが多く、病院の予約や面会などを表す「アポイントメント」を短くした言葉だと勘違いされることもあります。しかし、医療現場で使われる「アポ」は、全く異なる意味を持っています。 それでは、医療現場における「アポ」とは一体何を指すのでしょうか? 「アポ」とは、「apoplexy(アポプレキシー)」の略語であり、これは「脳卒中」を意味する医学用語です。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳に酸素や栄養が供給されなくなり、様々な神経症状を引き起こす病気です。突然に意識を失ったり、手足が麻痺したり、言葉が話せなくなるなどの症状が現れます。 医療現場では、「アポ」は「脳卒中」の患者さんを指す言葉として使われることが多く、カルテや看護記録にも頻繁に登場します。例えば、「アポの疑いのある患者さんが救急搬送された」「アポ後のリハビリテーション」のように使われます。 「アポ」という言葉一つとっても、医療現場と一般社会では全く異なる意味を持つことが分かります。医療従事者と患者さんとの間で誤解が生じないように、専門用語の意味を正しく理解しておくことが大切です。
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理解を超えた信念:一次妄想とは

心の病と聞いて、多くの人が不安や落ち込みといった症状を思い浮かべるかもしれません。しかし、それ以外にも、「妄想」といった、現実認識が歪んでしまう症状が現れることがあります。 妄想とは、実際にはあり得ないことを、真実だと強く信じ込んでしまう状態のことを指します。例えば、周りの人が自分を陥れようとしていると感じる「被害妄想」、誰かに見張られている、盗聴されていると感じる「関係妄想」、テレビやラジオを通して自分にメッセージが送られてくると感じる「注解釈」などが挙げられます。 このような妄想は、統合失調症などの精神疾患において多く見られる症状として知られています。統合失調症は、思考や感情、行動に影響を及ぼす深刻な病気であり、妄想はその症状の一つとして現れることがあります。また、うつ病や不安障害などの心の病でも、症状が重い場合に妄想が現れることがあります。 もし、自分や周りの人が妄想のような症状を持っていると感じる場合には、早めに医療機関に相談することが大切です。適切な治療を受けることで、症状を改善し、より良い生活を送ることができる可能性があります。
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感情:心の風景

私たちは毎日、様々な出来事に遭遇し、喜怒哀楽といった様々な心の動きを感じながら生活しています。この心の動きこそが感情と呼ばれるものであり、喜びや楽しみ、怒りや悲しみといった、いわば心の風景のようなものです。 この心の風景は、常に同じ場所にとどまっているわけではなく、状況や周囲の人間関係、あるいは自分自身の体調などによって、まるで景色が移り変わるように変化していきます。そして、この変化は私たちの思考や行動に大きな影響を与えています。例えば、大好きな人からプレゼントをもらって嬉しいと感じた時には、自然と笑顔がこぼれ、優しい言葉をかけてしまうでしょう。反対に、理不尽な扱いを受けたり、大切なものを壊されたりして怒りを感じた時には、相手に厳しい言葉を投げかけたり、場合によっては手が出てしまうこともあるかもしれません。 このように、感情は私たちの行動を強く突き動かす原動力のひとつであり、周囲の人間関係や自分自身の行動、ひいては人生そのものに大きな影響を与える可能性を秘めているのです。
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体の痛みとは?:体性痛について解説

痛みは、その原因や症状、経過などから様々な分類がされます。痛みの種類を大きく分けると、体の組織の損傷が原因で起こる「侵害受容性疼痛」と、神経系の損傷や機能異常が原因で起こる「神経障害性疼痛」の二つに分けられます。この二つに加えて、心理的な要因が大きく関与している「心因性疼痛」を分類に含めることもあります。 「侵害受容性疼痛」は、組織損傷を知らせる役割を担っており、一般的にイメージされる痛みはこちらに分類されます。例えば、切り傷や火傷、骨折などのケガによる痛みや、虫歯、関節炎、内臓疾患などによる痛みなどが挙げられます。これらの痛みは、組織の炎症が治まるとともに軽減していくことが多いです。 一方、「神経障害性疼痛」は、神経系自体が損傷を受けたり、機能異常を起こしたりすることで発生します。神経は、体の各部位からの痛みや温度などの感覚情報を脳に伝える役割を担っていますが、この神経が損傷されると、本来は痛みとして認識されないような刺激が痛みとして感じられたり、弱い刺激でも激痛になったりすることがあります。また、損傷部位だけでなく、全く別の場所に痛みを感じたり、持続的な痛みや、しびれ、灼熱感などを伴うこともあります。 このように、痛みは一括りに考えることはできず、その原因や症状によって分類されます。適切な治療を行うためには、それぞれの痛みの特徴を理解し、原因に合わせた適切な治療法を選択することが重要です。
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眼球運動の異常:MLF症候群とは

- MLF症候群の概要MLF症候群は、私たちの脳の中でも、生命維持に非常に重要な役割を担っている「脳幹」という部分が障害されることで発症する病気です。脳幹は、大きく分けて「中脳」「橋」「延髄」の3つの部分から成り立っていますが、MLF症候群では、特に「橋」と「中脳」をつないでいる神経線維である「内側縦束」という部分が障害を受けます。では、この「内側縦束」には、一体どのような役割があるのでしょうか? 内側縦束は、眼球運動をコントロールする神経細胞同士をつなぐ役割を担っています。そのため、内側縦束が障害されると、眼球の動きがぎこちなくなったり、物が二重に見えたりするなどの症状が現れます。 例えば、右方向を見ようとしたときに、右目はスムーズに右を向くことができますが、左目はなかなか右に向きにくく、視線が定まらないといった症状が現れます。また、遠くのものを見るときは問題ないのに、近くの物を見ようとするときに限って二重に見える、といった症状が出ることもあります。MLF症候群は、比較的まれな病気ではありますが、脳幹という重要な部位が障害される病気であるため、正確な診断と適切な治療が必要となります。
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麻痺について

- 麻痺とは麻痺とは、意識はあるのに自分の意思で身体の一部を動かせない、あるいは動きが制限されてしまう状態を指します。 この状態は、脳から筋肉への運動指令を伝える神経経路のどこかに損傷が生じることで引き起こされます。具体的には、脳で発生した運動指令は、まず脊髄へと伝達されます。 その後、脊髄から末梢神経を通じて、最終的に各筋肉へ指令が届けられます。 麻痺は、この経路のいずれかの部位、すなわち脳、脊髄、末梢神経のいずれかが損傷を受けることで発生します。麻痺の原因は多岐にわたり、例えば交通事故などによる脊髄損傷や、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中などが挙げられます。 また、脳や脊髄の腫瘍、多発性硬化症などの神経疾患、 あるいは筋肉そのものの病気によって麻痺が生じることもあります。麻痺の症状は、損傷を受けた神経の種類や場所、 損傷の程度によって大きく異なります。 手足の力が弱くなる、感覚が鈍くなる、完全に動かせなくなる、 全く感覚がなくなるなど、症状は人によって様々です。
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腰椎椎間板ヘルニア:その原因と治療法

- 腰椎椎間板ヘルニアとは? 私たちの背骨は、椎体と呼ばれる骨が積み重なった構造をしています。この椎体と椎体の間には、クッションの役割を果たす椎間板という組織が存在します。この椎間板は、中心部に柔らかい髄核と、それを取り囲む線維輪で構成されています。 腰椎椎間板ヘルニアは、この椎間板の一部が変形し、中の髄核が飛び出すことで起こります。飛び出した髄核が、近くを通る神経を圧迫することで、腰の痛みや足のしびれといった症状が現れます。 腰椎椎間板ヘルニアは、中腰姿勢での作業や重い物を持ち上げる動作など、腰に負担がかかる動作を繰り返すことで発症しやすくなります。また、加齢に伴い椎間板の水分量が減少し、柔軟性が低下することも原因の一つと考えられています。 特に20代から40代の比較的若い世代に多く見られ、日常生活に支障をきたすこともあります。症状や程度に応じて、安静や薬物療法、リハビリテーションなど、様々な治療法が選択されます。
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椎間板ヘルニア:腰痛の原因と治療

- 椎間板ヘルニアとは?私たちの背骨は、複数の骨が積み重なって構成されており、それぞれの骨の間には、クッションの役割を果たす椎間板が存在します。この椎間板のおかげで、私たちは体を滑らかに動かすことができます。椎間板は、中心部に水分を多く含んだゼリー状の髄核と、それを包み込むように存在する線維輪という組織から成り立っています。椎間板ヘルニアは、この線維輪に亀裂が生じ、中の髄核が飛び出してしまうことで起こります。飛び出した髄核は、周囲にある神経を圧迫し、腰や足に痛みやしびれなどの症状を引き起こします。椎間板ヘルニアの原因は、加齢による椎間板の変性が最も多く、年齢を重ねるにつれて誰にでも起こる可能性があります。 また、重いものを持ち上げる、長時間同じ姿勢を続ける、猫背などの姿勢や動作も、椎間板に負担をかけ、ヘルニアのリスクを高める要因となります。椎間板ヘルニアは、適切な治療を行えば症状を改善し、再発を予防できる病気です。腰痛や足のしびれなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
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