心に生じる歪み:統合失調症を知る
病院での用語を教えて
先生、「統合失調症」って、どういう病気のことですか?
体の健康研究家
良い質問だね。「統合失調症」は、心と体の調子がうまくいかなくなる病気なんだ。例えば、考えがまとまらなかったり、周りの人が自分をだましているように感じたりするんだよ。
病院での用語を教えて
考えがまとまらないって、どういうことですか?
体の健康研究家
例えば、頭の中で違う考えがどんどん浮かんできて、話がまとまらなくなったり、集中するのが難しくなったりすることだよ。他にも、幻覚を見たり、やる気がなくなったりする症状もあるんだ。
統合失調症とは。
「医学や健康に関する言葉である『統合失調症』とは、考えや気持ちをまとめることが難しくなる病気です。この病気は、長い間症状が続くことがあります。」
統合失調症とは
– 統合失調症とは統合失調症は、思考、感情、行動といった、私たちが普段当たり前に使っている心の働きに影響を及ぼす病気です。複雑な形で症状が現れるだけでなく、経過も人によってさまざまで、完治が難しい病気として知られています。この病気では、脳の情報処理機能に乱れが生じることで、周囲の状況を正しく理解したり、筋道立てて考えたりすることが困難になります。そのため、現実と異なることを考えてしまったり、周囲の人々に理解されないような発言をしてしまったりすることがあります。統合失調症の症状は、陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つのグループに分けられます。「幻覚」や「妄想」といった、健康な時には見られない症状が現れるのが陽性症状です。一方、感情の動きが乏しくなったり、意欲が低下したりといった、本来あるべき状態から減ってしまう症状を陰性症状と呼びます。さらに、注意や記憶、計画といった認知機能に障害が生じることもあります。日本では約80万人が統合失調症を抱えていると推定されており、決して珍しい病気ではありません。早期に診断を受け、薬物療法や精神療法といった適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、社会生活を送ることも十分に可能です。統合失調症は、周りの理解と適切な治療によって、より良い方向へ進んでいける病気なのです。
症状グループ | 説明 | 具体例 |
---|---|---|
陽性症状 | 健康な時には見られない症状 | 幻覚、妄想 |
陰性症状 | 本来あるべき状態から減ってしまう症状 | 感情の動きが乏しい、意欲の低下 |
認知機能障害 | 認知機能に障害が生じる | 注意、記憶、計画の障害 |
症状の現れ方:陽性症状と陰性症状
統合失調症の症状は、大きく分けて「陽性症状」と「陰性症状」の二つに分類されます。
陽性症状とは、健康な人には見られない、思考や行動の異常を指します。代表的なものとして、幻覚や妄想が挙げられます。
幻覚とは、実際には存在しないものを、あたかもそこにあるかのように感じてしまうことです。例えば、実際には誰もいないのに声が聞こえてきたり、実際には何もないのに虫が見えるといった経験が挙げられます。
妄想とは、客観的な証拠がないにもかかわらず、ある考えを真実だと強く信じ込んでしまうことです。周囲の人から見れば明らかに誤った考えであっても、本人はそれを疑うことができず、強い不安や恐怖を感じることがあります。
一方、陰性症状は、本来であれば健康な人に見られる感情や意欲、行動などが乏しくなったり、失われてしまう状態を指します。
例えば、感情の起伏が乏しくなり、表情が硬くなってしまう、周囲に対して関心が示せなくなり、人と交流することを避けるようになる、何をするにも意欲がわかず、一日中ぼーっとしてしまうといった状態が挙げられます。
陰性症状は、周囲の人から「怠けている」などと誤解されてしまうこともあり、患者さんの社会生活への適応を困難にする要因の一つとなっています。
症状の分類 | 説明 | 具体的な症状の例 |
---|---|---|
陽性症状 | 健康な人には見られない、思考や行動の異常 | – 幻覚(実際にはないものが見える・聞こえる) – 妄想(客観的な証拠がないのに、ある考えを真実だと強く信じ込む) |
陰性症状 | 本来であれば健康な人に見られる感情や意欲、行動などが乏しくなったり、失われてしまう状態 | – 感情の起伏が乏しくなる – 周囲への関心がなくなる – 意欲がなくなる |
原因:いまだ解明されていない謎
統合失調症は、その発症原因が現代医学においても完全には解明されていない、謎に包まれた病気です。しかし、これまでの研究から、生まれ持った体質(遺伝的要因)と、生活環境などの後天的な要因(環境要因)が複雑に影響し合って発症に至ると考えられています。
遺伝的な要因としては、家族や親戚に統合失調症を患っている人がいる場合、そうでない人と比べて発症するリスクが高くなることが分かっています。これは、統合失調症の発症に関わる遺伝子が、親から子へと受け継がれる可能性を示唆しています。
一方、環境要因もまた、統合失調症の発症に深く関わっていると考えられています。例えば、お母さんのお腹の中にいる時(妊娠中)に、何らかのウイルスに感染すると、生まれてくる赤ちゃんが統合失調症を発症するリスクが高まると言われています。また、出産時に赤ちゃんが低酸素状態に陥ったり、幼少期に虐待などの辛い経験をしたりすることも、発症リスクを上昇させる要因として挙げられています。
さらに、脳内の情報伝達を担う物質であるドーパミンが、過剰に分泌されることも、統合失調症の一因として考えられています。ドーパミンは、快感や意欲、運動などを調節する重要な役割を担っていますが、そのバランスが崩れると、幻覚や妄想などの症状が出現すると考えられています。
このように、統合失調症は、様々な要因が複雑に絡み合って発症する病気であるため、原因を特定することは容易ではありません。しかし、近年では、遺伝子解析技術や脳画像診断技術の進歩により、原因解明に向けた研究が日々進められています。
要因 | 内容 |
---|---|
遺伝的要因 | 家族や親戚に統合失調症を患っている人がいる場合、発症リスクが高くなる。 |
環境要因 | 妊娠中のウイルス感染、出産時の低酸素状態、幼少期の虐待などが発症リスクを上昇させる。 |
神経伝達物質 | 脳内物質ドーパミンの過剰分泌が、幻覚や妄想などの症状を引き起こす可能性。 |
治療:長期的なサポート体制の構築
統合失調症の治療においては、薬物療法と精神療法の組み合わせが基本となります。薬物療法では、抗精神病薬を用いることで、幻覚や妄想といった症状を軽減し、病気の急性期を脱する効果が期待できます。しかしながら、薬物療法はあくまでも症状を抑えるための対症療法であり、根本的な解決策ではありません。
統合失調症は、脳の機能障害によって引き起こされると考えられており、その症状は多岐にわたります。そのため、患者さん一人ひとりの症状や状態に合わせて、治療方針を個別に検討していく必要があります。
精神療法では、患者さんが自身の病気や症状について理解を深め、病気とどのように向き合っていくかを共に考えていきます。また、日常生活で感じるストレスや不安を軽減するための対処法を習得し、再発予防を目指します。
統合失調症は、慢性的な経過をたどることが多く、長期的な治療とサポートが欠かせません。患者さん本人だけでなく、家族や医療従事者、地域社会全体で支え合い、患者さんが安心して生活を送れるような環境を整えていくことが重要です。
治療法 | 概要 | 効果と限界 |
---|---|---|
薬物療法 | 抗精神病薬を用いる | – 幻覚や妄想といった症状を軽減 – 病気の急性期を脱する効果 – 根本的な解決策ではない – 対症療法である |
精神療法 | – 患者自身の病気や症状への理解を深める – 病気との向き合い方を考える – ストレスや不安を軽減するための対処法を習得 |
– 再発予防を目指す |
偏見をなくすために
– 偏見をなくすために統合失調症は、未だに誤解や偏見に苦しむ患者さんが多い病気です。まるで恐ろしい病気であるかのように扱われたり、偏った目でみられたりすることは、患者さんにとって大きな心の負担となり、治療にも悪影響を及ぼす可能性があります。統合失調症は決して特別な病気ではなく、誰でもかかる可能性のある脳の病気です。風邪のように、体質や環境など様々な要因が重なって発症すると考えられています。決して、本人の責任や心の弱さが原因で発症するわけではありません。患者さんが安心して治療を受け、社会復帰を目指すためには、病気に対する正しい理解を広め、偏見や差別をなくしていくことが何よりも重要です。周囲の人が温かく見守り、支えてくれる社会は、患者さんが治療に専念し、社会生活を円滑に送るための大きな支えとなります。病気について正しく知ることで、むやみな恐怖心や偏見を持つことなく、患者さんに接することができるようになります。そして、患者さんが社会の一員として安心して生活できる環境を、私たち一人ひとりが意識して作っていくことが大切なのです。
ポイント | 詳細 |
---|---|
統合失調症の現状 | 誤解や偏見に苦しむ患者さんが多い。偏見は患者さんの心の負担となり、治療にも悪影響を及ぼす可能性がある。 |
統合失調症の正しい理解 | 特別な病気ではなく、誰でもかかる可能性のある脳の病気。体質や環境など様々な要因が重なって発症すると考えられる。本人の責任や心の弱さが原因ではない。 |
偏見をなくすために | 病気に対する正しい理解を広め、偏見や差別をなくすことが重要。周囲の人の理解と支えが、患者さんの治療と社会復帰を助ける。 |
私たちができること | 病気について正しく知り、むやみな恐怖心や偏見を持たずに接すること。患者さんが社会の一員として安心して生活できる環境を作ること。 |