フィブリノイド変性:免疫と組織の攻防
- フィブリノイド変性とは何かフィブリノイド変性とは、血管や心臓、皮膚、関節など、体の様々な組織に起こる変化のことです。顕微鏡で観察すると、本来は細胞や線維が規則正しく並んでいるはずの組織が、まるでピンク色の雲がかかったように、ぼんやりとした均一な物質に置き換わって見えます。この様子が、血液凝固に関わるタンパク質であるフィブリンが析出した状態に似ていることから、「フィブリノイド変性」と名付けられました。では、なぜこのような変化が起こるのでしょうか? その主な原因として考えられているのが、免疫システムの異常です。私たちの体は、外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの異物から身を守るために、免疫システムを備えています。しかし、この免疫システムが何らかの原因で自分の体の組織を攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫疾患と呼ばれる病気です。フィブリノイド変性は、この自己免疫疾患において特徴的に見られる変化の一つです。免疫システムが自分の組織を攻撃する際に作られる抗体や免疫複合体が、血管壁などに沈着し、炎症を引き起こします。そして、その過程で組織が壊され、フィブリンによく似た物質に置き換わってしまうのです。フィブリノイド変性は、リウマチなどの自己免疫疾患だけでなく、高血圧や動脈硬化など、血管に負担がかかる病気でも起こることがあります。これらの病気では、血管壁が傷つくことで炎症が起こり、フィブリノイド変性が生じると考えられています。フィブリノイド変性が起こると、組織の機能が低下し、様々な症状が現れます。例えば、血管でフィブリノイド変性が起こると、血管が狭くなったり、詰まったりして、血液の流れが悪くなります。その結果、臓器への酸素供給が不足し、臓器の機能が低下してしまう可能性があります。