総合健康ガイド

脳・神経

錐体外路症状:無意識の運動を司る神経の障害

私たちが思い通りに体を動かせるのは、脳から筋肉へ神経を通して指令が伝わるからです。この指令を伝える経路は大きく二つに分けられ、その一つが「錐体路」と呼ばれる経路です。そして、錐体路以外のすべての経路は「錐体外路」と呼ばれています。 錐体外路は、脳幹と呼ばれる部位にある神経核から脊髄を通って筋肉へとつながっています。この経路は、歩く、物を取るといった動作をスムーズに行うために、姿勢を保ったり、筋肉の緊張を調整したりするなど、私たちが意識しなくてもできる運動をコントロールするという重要な役割を担っています。 例えば、私たちは立っているときに倒れないように、無意識のうちに体のバランスを保っています。また、字を書くときにも、鉛筆を持つ手に適切な力が加えられています。これらはすべて錐体外路のはたらきによるものです。 錐体外路は、運動の開始や停止、力の強弱、動作の滑らかさなどを調節することで、錐体路による運動をより精密なものにするという役割も持っています。錐体路と錐体外路は別々の経路として説明されますが、実際には互いに協調し合いながら、複雑な運動を可能にしています。
消化器

C型肝炎:沈黙の臓器の脅威

- C型肝炎とはC型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)によって引き起こされる肝臓の病気です。このウイルスは血液を介して感染し、肝臓に炎症を起こします。感染すると、肝臓の細胞が破壊され、徐々に肝臓の機能が低下していきます。C型肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎の2つの段階に分けられます。急性肝炎は、感染初期に現れる症状で、発熱、倦怠感、食欲不振、黄疸などがみられます。しかし、急性肝炎の症状は軽度であることが多く、気づかないまま経過してしまう場合もあります。約70%の患者さんは、急性肝炎から慢性肝炎に移行するとされています。慢性肝炎は、自覚症状がほとんどないまま長い期間にわたって肝臓の炎症が続く状態です。そのため、知らないうちに病気が進行し、肝硬変や肝臓がんのリスクが高まることが問題となっています。C型肝炎は早期発見、早期治療が重要です。定期的な健康診断や血液検査を受けることで、早期に発見することができます。また、近年では有効性の高い治療薬が開発されており、早期に治療を開始することで、肝硬変や肝臓がんの発生を抑制することが期待できます。
その他

浮腫:むくみの正体

- 浮腫とは浮腫(ふしゅ)は、体の組織と組織の間に、通常よりも多くの水分が溜まってしまう状態のことです。一般的には「むくみ」として知られており、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。指で押すと皮膚がへこみ、しばらくしてから元に戻るのが特徴です。むくみが生じる原因はさまざまです。長時間立ったままでいたり、同じ姿勢を長時間続けたりすることで、足の静脈に血液が滞り、水分が血管の外にしみ出してしまい、むくみが生じることがあります。これを一過性のむくみといい、多くの場合、危険性はありません。一方、病気のサインとしてむくみが現れることもあります。心臓、腎臓、肝臓などの病気が原因で、体内の水分調節機能がうまく働かなくなることで、むくみが生じやすくなります。このような場合は、むくみ以外にも、息切れやだるさ、尿量の減少などの症状が現れることもあります。また、女性ホルモンの影響で、月経前や妊娠中にむくみやすくなることがあります。むくみが気になる場合は、自己判断せずに、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。特に、むくみだけでなく、他の症状も伴う場合は注意が必要です。
検査

精密検査とは:病気の早期発見のために

健康診断や人間ドックといった、広く体の状態を調べる検査をスクリーニング検査と言います。この検査は、自覚症状がない段階でも、病気の可能性を早期に見つけることを目的としています。一方で、精密検査は、スクリーニング検査で異常値が出た場合や、症状がある場合に、病気の有無をより詳しく調べるために行われます。 例えば、健康診断で血糖値が高いと指摘されたとします。これはあくまでもスクリーニング検査の結果であり、この時点では糖尿病と診断されたわけではありません。そこで、糖尿病の可能性や詳しい状態を調べるために、精密検査が必要となるのです。精密検査では、血液検査で血糖値をより詳しく調べたり、ブドウ糖を摂取した後の血糖値の変化を調べたりします。 精密検査は、スクリーニング検査よりも、特定の臓器や病気に焦点を当てた、より詳細な検査を行います。そのため、病気の診断や治療方針の決定に重要な役割を果たします。また、精密検査の結果によっては、経過観察が必要となる場合もあります。医師は、精密検査の結果に基づいて、患者さん一人ひとりに最適な治療法やアドバイスを行います。
脳・神経

体性痛:体の表面から感じる痛み

- 体性痛とは体性痛とは、皮膚や筋肉、骨、関節といった体の表面に近い部分で感じる痛みのことです。これらの部位には痛みのセンサーが数多く存在しており、外部からの刺激を感知する役割を担っています。体の表面に何らかの刺激が加わると、これらのセンサーが活性化し、電気信号に変換された刺激が神経を通じて脳に伝えられます。脳は、この電気信号を受け取ると、それを「痛み」として認識します。例えば、鋭利なもので指先を切った場合、皮膚に存在する痛みのセンサーが損傷を感知し、その情報を脳に伝えます。脳はそれを「鋭い痛み」として認識し、私たちは指先が切れたことを認識します。また、転倒して足を強く打ったり、重いものを持ち上げて腰を痛めた場合などにも、体性痛は生じます。これらの場合、筋肉や骨、関節などに存在する痛みのセンサーが、損傷や炎症などの異常を感知し、痛みとして脳に伝えているのです。このように、体性痛は、私たちの体が危険を察知し、身を守るために重要な役割を果たしています。痛みを感じることによって、私たちは傷ついた部分を保護したり、危険な行動を避けたりすることができます。体性痛は、日常生活で頻繁に経験する痛みであり、私たちの健康を守るための重要なサインと言えるでしょう。
脳・神経

自分の意思とは関係なく体が動く?ミオクローヌスとは

ミオクローヌスは、筋肉が瞬間的に、自分の意思とは関係なく収縮してしまうことで、体が急にビクッと動いてしまう症状のことを指します。まるで電気が走ったような感覚を伴う場合もあり、その症状が現れる部位は人によって様々です。指先や手足の先端といった体の末端部分に起こることもあれば、顔や胴体など体の中心に近い部分に起こることもあります。 症状の出方や程度も一様ではありません。一時的に症状が現れてすぐに治まることもあれば、長く続くこともあります。また、症状が軽い場合は日常生活にほとんど影響がないこともありますが、重症化すると日常生活に支障をきたすこともあります。 例えば、睡眠中に体がビクッとなる「ジャーキング」も、実はミオクローヌスの一種です。しかし、これは健康な人でもしばしば見られる生理的な反応なので、心配する必要はありません。一方、ミオクローヌスが頻繁に起こるようになったり、日常生活に支障が出るほど症状が強く現れる場合は、何か他の病気が隠れている可能性も考えられます。そのため、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしてください。
消化器

B型肝炎:沈黙のウイルスとの闘い

- はじめに B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる肝臓の病気です。このウイルスは、血液や体液を介して人から人に感染します。感染すると、肝臓で炎症が起こり、さまざまな症状が現れます。 B型肝炎の特徴の一つに、自覚症状が少ないことが挙げられます。そのため、自分が感染していることに気づかないまま、病気を進行させてしまうケースも少なくありません。このようなことから、B型肝炎は「沈黙のウイルス」とも呼ばれています。 B型肝炎を放置すると、肝硬変や肝臓がんといった重い病気につながる可能性があります。しかし、早期に発見し、適切な治療を受けることで、病気の進行を抑え、健康な状態を長く保つことが期待できます。 今回は、B型肝炎について、その原因や症状、治療法などを詳しく解説していきます。B型肝炎の予防についても触れていきますので、ぜひ最後までお読みください。
耳鼻科

音声治療の最先端:ラリンゴマイクロサージェリー

- 声帯病変に光明を人は誰でも呼吸をし、話すことで日々を過ごしています。これらに欠かせない器官である「声帯」ですが、酷使や加齢、喫煙などの影響により、様々な病気を患ってしまうことがあります。声帯に生じる病気には、声帯結節や声帯ポリープなどがあり、これらを総称して「声帯病変」と呼びます。声帯病変になると、声のかすれや喉の違和感、声の出しにくさなどの症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。このような声帯病変の治療法として注目されているのが、「ラリンゴマイクロサージェリー」と呼ばれる喉頭顕微鏡下手術です。これは、耳鼻咽喉科領域における最先端の治療法の一つであり、顕微鏡を用いて声帯を拡大することで、より精密な手術が可能となります。従来の手術では、病変だけでなく周囲の健康な組織も大きく切除する必要がありましたが、ラリンゴマイクロサージェリーでは、病変のみをピンポイントで切除することができるため、術後の声や発声機能への影響を抑え、患者さんの負担を軽減することが期待できます。ラリンゴマイクロサージェリーは、声帯結節や声帯ポリープ以外にも、声帯腫瘍や声帯麻痺など、様々な声帯病変の治療に用いられます。また、手術は全身麻酔下で行われることが多く、患者さんは痛みを感じることなく治療を受けることができます。もし、声のかすれや喉の違和感など、声帯病変が疑われる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、専門医に相談することをお勧めします。
検査

SCC抗原:扁平上皮がんを見つける手がかり

- SCC抗原とはSCC抗原は、子宮頸部扁平上皮がんの細胞から発見されたタンパク質の一種です。がん細胞は、正常な細胞とは異なるタンパク質を作る場合があり、SCC抗原もその一つです。このタンパク質は、子宮頸部の扁平上皮がんになると、血液中に多く放出されるという特徴があります。血液検査でこのSCC抗原の量を調べることで、子宮頸部扁平上皮がんの診断や治療効果の判定、経過観察などを行うことができます。このような、がん細胞が作り出す物質で、血液検査などで測定できるものを腫瘍マーカーと呼びます。SCC抗原は、子宮頸部扁平上皮がんの腫瘍マーカーとして重要な役割を担っています。ただし、SCC抗原は子宮頸部扁平上皮がん以外の病気でも、量がわずかに増えることがあります。そのため、SCC抗原の値が上昇していたとしても、必ずしも子宮頸部扁平上皮がんであると断定できるわけではありません。他の検査結果と合わせて総合的に判断する必要があります。SCC抗原は、子宮頸部扁平上皮がんの早期発見や治療効果の判定、再発の兆候を捉えるための重要な指標となります。定期的な検査を受けることで、早期発見・早期治療に繋げることが期待できます。
消化器

ありふれた症状の奥に潜むもの:腹痛

お腹が痛むということは、誰しもが経験するありふれた症状です。医学用語では「腹痛」と呼びますが、これはみぞおちからおへその下あたりまでの腹部と呼ばれる領域に感じる痛みのことを指します。 腹痛の原因は非常に多岐に渡り、その程度も軽いものから命に関わる重篤なものまで様々です。例えば、食べ過ぎや飲み過ぎ、脂っこいものを食べた後などに感じる鈍い痛みは、多くが一過性の消化不良によるものであり、通常はあまり心配する必要がありません。また、緊張やストレスを感じた時にみぞおちのあたりがキリキリと痛む神経性胃炎なども、比較的よく見られる腹痛の一つです。 一方、急な激しい痛みや、発熱、吐き気、嘔吐、下痢、血便などを伴う場合は注意が必要です。これらの症状は、虫垂炎や胆石症、腸閉塞、 pancreatitis (膵臓の炎症)などの病気のサインである可能性があり、早急な医療処置が必要となることもあります。 自己判断は危険ですので、少しでも気になる症状がある場合は、我慢せずに医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。
目・眼科

瞳孔の大きさの謎:瞳孔不同

私たちの目は、カメラとよく似た仕組みで周囲のものを見ています。カメラでレンズが光を集めるように、私たちの目では瞳孔と呼ばれる部分がその役割を担っています。瞳孔は、ちょうどカメラの絞りのように、周囲の環境に合わせて開いたり閉じたりして、眼球に入る光の量を調整しています。 明るい場所では、たくさんの光が目の中に入ってきます。このとき、瞳孔は小さくなって、必要以上の光が入りすぎるのを防ぎます。逆に、暗い場所では、目に入る光が少なくなってしまうため、瞳孔は大きく開いて、より多くの光を取り込もうとします。 この瞳孔の大きさの変化は、瞳孔括約筋と瞳孔散大筋という2つの筋肉の働きによってコントロールされています。瞳孔括約筋は瞳孔を縮める役割を、瞳孔散大筋は瞳孔を広げる役割を担っており、これらの筋肉がそれぞれ収縮と弛緩を繰り返すことで、瞳孔は周囲の明るさに応じて瞬時に大きさを変え、私たちがものを見るのに最適な光の量を調整しているのです。
脳・神経

てんかん:脳の電気信号の乱れが引き起こす発作

- てんかんとはてんかんは、脳の神経細胞が異常に興奮することで、様々な症状が現れる病気です。脳は、神経細胞が電気信号を発することで、体を動かしたり、考えたり、感じたりする指令を出しています。てんかんの場合、この電気信号が過剰に発生することで、発作と呼ばれる症状が起こります。多くの人は、てんかんと聞くと、手足が硬直したり、激しく痙攣する姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、てんかんの発作は、意識、動作、感覚など、実に多様な症状を引き起こします。例えば、意識がぼーっとして周囲の状況が分からなくなる、体の一部がピクピクと勝手に動く、実際にはしないにおいや味を感じるなど、症状は人によって様々です。重要なのは、これらの症状が繰り返し起こるかどうかです。例えば、十分な睡眠が取れなかったり、強いストレスを感じたりした場合、一時的に意識を失うことは誰にでも起こり得ます。しかし、てんかんの場合は、特別なきっかけがなくても、繰り返し発作が起こるのが特徴です。てんかんは、適切な治療を行うことで、発作を抑え、日常生活を送ることができる病気です。発作が疑われる場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
外科

飛び出した臓器:ヘルニアを理解する

- ヘルニアとは? 私たちの体は、骨や筋肉、そして様々な組織によって支えられています。これらの組織は、まるで壁のように臓器を正しい位置に保つ役割を担っています。しかし、様々な要因によって、この「壁」の一部が弱くなってしまったり、隙間ができてしまうことがあります。 ヘルニアとは、このような体の壁にできた異常な開口部から、本来そこにはないはずの臓器の一部が飛び出してしまう状態を指します。 例えるなら、中身がいっぱい詰まった丈夫な袋を想像してみてください。この袋の一部が、何らかの原因で薄くなってしまったり、穴が開いてしまったとします。すると、袋の中身は、その薄くなった部分や穴から外に押し出されてしまいますよね。ヘルニアもこれと同じように、弱くなった体の壁から、臓器の一部が押し出されるようにして飛び出してきてしまうのです。 飛び出した臓器は、触ると柔らかいことが多いですが、常に痛みがあるわけではありません。しかし、飛び出した部分が大きくなったり、周囲の組織を圧迫したりすると、痛みや違和感を感じることがあります。また、場合によっては、飛び出した臓器への血流が悪くなり、緊急を要するケースも考えられます。
血液

知っておきたい血液型の話:Rh血液型とは?

私達が普段「血液型」と呼んで、A型、B型、AB型、O型と分類しているものは、正式には「ABO式血液型」と言います。これは、血液中の赤血球の表面にある抗原の違いによって分類されるものです。A型の人はA抗原を、B型の人はB抗原を、AB型の人はA抗原とB抗原の両方を、そしてO型の人はどちらの抗原も持っていません。 しかし、血液型はABO式血液型だけではありません。他にも様々な分類方法が存在し、その一つが「Rh式血液型」です。Rh式血液型は、血液中にRh因子と呼ばれる抗原を持っているかどうかにより、Rh陽性とRh陰性に分けられます。Rh因子は、ABO式血液型のA抗原やB抗原とは全く異なる種類の抗原です。Rh陽性の人はRh因子を持っており、Rh陰性の人はRh因子を持っていません。 日本では、約99%の人がRh陽性で、Rh陰性の人は約1%と非常に少数です。そのため、輸血が必要な場合、Rh陰性の人はRh陰性の血液を探すのが難しい場合があります。 このように、血液型には様々な種類が存在し、それぞれが重要な意味を持っています。輸血など、医療現場においては、血液型を正しく把握することが非常に重要になります。
脳・神経

記憶の番人、海馬の謎を探る

脳の深部には、記憶を司る重要な領域が存在します。それが、側頭葉の奥底に左右対称に位置する海馬です。海馬という名前は、その形がギリシャ神話に登場する海神ポセイドンの馬車に由来しています。海馬は、まるで巻貝のような、あるいは三日月のような、独特の湾曲した形状をしています。この特徴的な形から、ギリシャ語で「馬」を意味する「ヒポス」と「海の怪物」を意味する「カンポス」を組み合わせた「ヒポカンパス」とも呼ばれています。小さく見える海馬ですが、実は脳の働きの中でも特に複雑な記憶の形成に深く関わっています。海馬は、新しい情報の学習や記憶の固定、空間記憶、感情的な出来事の記憶など、多岐にわたる記憶プロセスにおいて重要な役割を担っています。この小さな器官が、私たちの豊かな記憶体験を支えているのです。
消化器

脱腸:腹腔内容が飛び出す病気

- 脱腸とは脱腸は、本来お腹の中に収まっているべき腸などの臓器が、何らかの原因で弱くなった腹壁の隙間から外へ飛び出してしまう病気です。体の一部が本来あるべき場所から飛び出してしまう状態を「ヘルニア」と呼びますが、脱腸は「腹壁ヘルニア」とも呼ばれます。お腹の中には、胃や腸などの消化器官をはじめ、肝臓や脾臓などの重要な臓器が詰まっています。これらの臓器は、腹筋や筋膜などからなる腹壁によって守られています。しかし、加齢や肥満、妊娠、重い物を持ち上げる動作、慢性的な咳などによって腹壁が弱くなると、組織の隙間から臓器が飛び出しやすくなります。特に、お腹の中の圧力が高まった時に、その圧力に耐えきれず、組織の弱い部分が押し出されるようにして脱腸が起こります。脱腸は、飛び出す場所や原因によっていくつかの種類に分けられます。例えば、太ももの付け根に起こる「鼠径(そけい)ヘルニア」、おへその周辺に起こる「臍(さい)ヘルニア」、手術の傷跡に起こる「瘢痕(はんこん)ヘルニア」などがあります。脱腸は、放置すると飛び出した臓器への血流が悪くなったり、腸閉塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。治療法としては、飛び出した臓器を元の位置に戻し、弱くなった腹壁を修復する手術が行われます。近年では、体に負担の少ない腹腔鏡手術が普及してきています。
脳・神経

髄膜炎:脳と脊髄を守る膜の炎症

- 髄膜炎とは私たちの脳と脊髄は、髄膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。この髄膜は、外部からの衝撃をや病原菌から脳や脊髄を守る、いわば鎧のような役割を担っています。 髄膜炎は、この重要な髄膜に炎症が起こる病気です。髄膜炎の原因として最も多いのは、細菌やウイルスなどの病原体による感染です。その他、真菌や寄生虫、特定の薬剤や病気によって引き起こされることもあります。髄膜炎は、初期症状として発熱、頭痛、吐き気など、風邪に似た症状が現れることが多く、注意が必要です。症状が進むにつれて、首の硬直、意識障害、けいれん、光過敏など、より重い症状が現れることもあります。乳幼児の場合は、これらの典型的な症状が現れにくく、機嫌が悪い、ミルクの飲みが悪いといった症状が見られることもあります。髄膜炎は、重症化すると命に関わる可能性もある病気です。特に細菌性髄膜炎は、早期に適切な治療を行わないと、後遺症が残ったり、最悪の場合死に至ることもあります。そのため、髄膜炎の疑いがある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。早期に診断し、適切な治療を開始することで、重症化を防ぐことができます。
循環器

心機能の重要な指標:心係数

- 心臓の働きを数値で表す指標心係数 心臓は、体中に血液を循環させるために休むことなく動き続ける、いわば体内のエンジンとも呼べる重要な臓器です。この心臓が一回の拍動で送り出す血液の量を心拍出量といい、心臓のポンプとしての能力を示す指標の一つとなっています。しかし、心臓のポンプ機能は、体の大きさによって異なり、体が大きい人ほど多くの血液を必要とするため、心拍出量も大きくなるのが自然です。そこで、体の大きさを考慮した上で、より正確に心臓のポンプ機能を評価するために用いられるのが「心係数」です。 心係数は、心拍出量を体表面積で割ることで求められます。体表面積とは、読んで字の如く体の表面の面積のことで、身長と体重から計算されます。心係数は、通常、1分間に体が1平方メートルあたりにどれだけの血液を送り出せるかという形で表され、単位はリットル/分/平方メートル(L/min/㎡)を用います。 心係数は、心臓のポンプ機能を評価する上で非常に重要な指標であり、心不全などの心臓病の診断や治療効果の判定に用いられます。健康な人の心係数は、安静状態で2.5~4.0 L/min/㎡程度ですが、心機能が低下するとこの値は小さくなります。例えば、激しい運動後や、興奮状態などでは、心拍出量が増加するため、心係数も高くなることがあります。逆に、心筋梗塞や心不全など、心臓のポンプ機能が低下している場合は、心係数は低下します。 心係数は、心臓の状態を知る上での重要な指標の一つですが、あくまで目安であり、心係数が正常範囲内であっても、心臓病が隠れている可能性もあります。そのため、動悸や息切れなどの自覚症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、医師の診断を受けることが大切です。
外科

よくある鼠径ヘルニア:外鼠径ヘルニアを理解する

- 外鼠径ヘルニアとは私たちのお腹の中には、胃や腸などの臓器が収まっています。これらの臓器は、いくつかの筋肉の層で覆われており、正常な状態ではその位置がずれることはありません。しかし、何らかの原因でこの筋肉の層に隙間や弱くなった部分が生じると、臓器の一部がその隙間から飛び出してしまうことがあります。これが「ヘルニア」と呼ばれる状態です。ヘルニアは、発生した場所によって様々な種類に分けられます。その中でも、お腹の一部が鼠径部(脚の付け根)の皮膚の下に突き出すものを「鼠径ヘルニア」と呼びます。そして、鼠径ヘルニアの中でも特に多いのが「外鼠径ヘルニア」です。外鼠径ヘルニアは、お腹の中の臓器が「鼠径管」という管を通って、鼠径部の皮膚の下にまで達してしまうことで起こります。鼠径管は、男性では精索(精管や血管などが通る管)、女性では子宮を支える靭帯が通る管で、生まれつきこの部分が大きい場合や、加齢によって鼠径管周辺の筋肉が衰えることで、ヘルニアが起こりやすくなると考えられています。外鼠径ヘルニアは、男性に多くみられるのも特徴です。これは、男性の方が鼠径管が大きく、構造的にヘルニアが起こりやすいという点が関係しています。また、重いものを持つ仕事や、慢性的な咳、便秘など、お腹に負担がかかる状態も、ヘルニアのリスクを高める要因となります。
生活習慣病

内臓脂肪と健康リスク

内臓脂肪とは 食べ過ぎや運動不足が続くと、体に脂肪が蓄えられます。特に、お腹周りにつく脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪の二種類があります。皮下脂肪は皮膚の下に蓄えられる脂肪のことですが、内臓脂肪は腹腔内、つまり胃や腸、肝臓といった臓器の周囲に蓄えられる脂肪のことを指します。 内臓脂肪は、皮下脂肪と比べて体に様々な悪影響を及ぼしやすいという特徴があります。内臓脂肪が蓄えられると、血液中に遊離脂肪酸と呼ばれる物質が多く放出されるようになります。この遊離脂肪酸が、血管を傷つけたり、インスリンの働きを悪くしたりすることで、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めてしまうのです。また、内臓脂肪の蓄積は、高血圧や脂質異常症、高尿酸血症、脂肪肝などを引き起こし、心臓病や脳卒中のリスクを高めることにも繋がります。 食生活の欧米化や運動不足に伴い、現代人において内臓脂肪の蓄積は増加傾向にあります。内臓脂肪を減らすためには、バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動を習慣づけることが大切です。
外科

内鼠径ヘルニア:その詳細と理解

- 内鼠径ヘルニアとはお腹の中には、胃や腸など、食べ物を消化吸収するための臓器が詰まっています。これらの臓器は、通常、筋肉や筋膜と呼ばれる組織でできた壁に囲まれていて、正しい位置に保たれています。しかし、この壁の一部が弱くなると、お腹の中の臓器がその隙間から皮膚の下に飛び出してしまうことがあります。これが「ヘルニア」と呼ばれる病気です。ヘルニアは体の様々な場所で起こりますが、お腹の下の方、特に太ももの付け根近くにできるものを「鼠径ヘルニア」と呼びます。鼠径ヘルニアは、生まれたときから筋肉や筋膜が弱い場合と、加齢や重いものを持ち上げるなどの負担によって後天的に弱くなる場合があります。鼠径ヘルニアの中でも、「内鼠径ヘルニア」は、お腹の中の臓器が「ヘッセルバッハ三角」と呼ばれる、血管の内側にある、筋膜の特に弱い部分から飛び出すことで起こります。このヘッセルバッハ三角は、生まれつき筋膜が薄くなっていることが多く、内鼠径ヘルニアは男性に多くみられます。内鼠径ヘルニアになると、鼠径部にしこりや膨らみができ、立ったときやお腹に力を入れたときに目立つようになります。痛みを感じることもありますが、痛みがなく、膨らみだけが症状として現れることもあります。
脳・神経

脳腫瘍:頭の中の静かな脅威

- 脳腫瘍とは人間の頭蓋骨の内側には、思考や感情、身体の動きや五感など、生命活動の中枢を担う重要な器官である脳が存在します。脳腫瘍とは、この脳にできる腫瘍のことを指します。腫瘍とは、本来は新しい細胞が生まれて古い細胞と入れ替わるべき場所で、細胞が無秩序に増殖し続けることで発生する異常な組織塊です。脳は硬い頭蓋骨に囲まれた閉鎖的な空間にあるため、腫瘍が大きくなると周囲の正常な脳組織を圧迫し始めます。さらに、腫瘍が大きくなり続けると、脳を構成する重要な神経細胞を破壊してしまうこともあります。その結果、身体の麻痺や言語障害、視覚障害、激しい頭痛、意識障害など、様々な神経症状が現れます。脳腫瘍は、その発生源によって大きく2つに分類されます。1つは、脳を構成する神経細胞やその周囲の細胞から発生する「原発性脳腫瘍」です。もう1つは、肺や乳房など、身体の他の部位で発生したがん細胞が血液などに乗って脳に転移し、増殖する「転移性脳腫瘍」です。脳腫瘍は早期発見が重要であり、早期に治療を開始することで、症状の進行を抑えたり、生活の質を維持したりすることが期待できます。少しでも気になる症状がある場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
検査

徒手筋力検査:MMTとは?

- MMTの概要MMT(徒手筋力検査)とは、医療従事者が自分の手を用いて、患者の筋力を評価する検査方法です。複雑な機械や装置は使用せず、検査を行う人の手の感覚を頼りに、筋肉がどれだけの力を発揮できるかを評価します。この検査方法は、整形外科、リハビリテーション科、神経内科など、様々な診療科で広く活用されています。 なぜなら、特別な機器を必要とせず、比較的簡単に行えるからです。検査自体は短時間で終了しますが、患者さんの体の状態や、検査する筋肉によって、患者さんの体勢や検査方法を調整する必要があります。検査者は、患者さんの筋肉の動きや抵抗を感じながら、その強さを6段階の等級で評価します。MMTは、筋力低下の程度を把握したり、治療の効果を判定したりする上で、非常に重要な検査です。 さらに、患者さん自身の体の状態への理解を深め、適切なリハビリテーション計画を立てる上でも役立ちます。
検査

心電図モニター:心臓の鼓動を見守る

- 心電図モニターとは心電図モニターは、心臓の動きを電気信号として捉え、その変化を波形として画面に表示する医療機器です。私たちの心臓は、全身に血液を送るために休むことなく動き続けています。この心臓の動きは、電気信号によってコントロールされており、心電図モニターは、この電気信号を体の表面に付けた電極で読み取ることで、心臓の状態を把握します。心電図モニターで得られた波形は、心臓の活動状態を視覚的に表現したものであり、医師はこの波形の形やリズムを分析することで、心臓の健康状態を評価します。例えば、波形に異常な乱れや不規則なリズムが見られる場合は、不整脈などの心臓病の可能性を示唆しています。また、波形の高さや幅の変化は、心臓の筋肉の酸素不足や心臓肥大などの兆候を示していることもあります。心電図モニターは、病院の診察室だけでなく、救急車の中や手術室など、様々な医療現場で使用されています。さらに、近年では小型で持ち運び可能な心電図モニターも開発され、家庭での健康管理にも役立てられています。このように、心電図モニターは、心臓病の早期発見や治療、そして健康管理に大きく貢献している重要な医療機器と言えるでしょう。
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