総合健康ガイド

呼吸器

ガス交換の壁:肺胞-毛細管ブロック症候群

私たちは、生きていくために絶えず呼吸をしています。この呼吸によって、体が必要とする酸素を取り込み、不要となった二酸化炭素を排出しています。この重要なガス交換の舞台となるのが、呼吸器系です。 呼吸器系の中で、特に重要な役割を担っているのが肺です。肺は、胸郭と呼ばれる肋骨で囲まれた空間に左右一対存在し、スポンジのような弾力性を持つ臓器です。肺の内部には、肺胞と呼ばれる小さな袋状の構造が無数に存在します。肺胞は、まるでブドウの房のように集まっており、その表面は毛細血管と呼ばれる細い血管でびっしりと覆われています。 肺胞と毛細血管の間は、非常に薄い壁で仕切られており、ガス交換はこの薄い壁を通して行われます。呼吸によって肺に取り込まれた空気中の酸素は、肺胞から毛細血管の中へと移動します。そして、酸素を多く含んだ血液は、心臓から全身へと送り届けられます。逆に、体の中で使われた血液は、二酸化炭素を多く含んでおり、毛細血管から肺胞へと移動します。そして、二酸化炭素は、肺胞から気道を通って体外へと排出されます。 このように、肺は、体中に酸素を供給し、二酸化炭素を排出するという重要な役割を担っています。
その他

ムンテラとは:医師の説明責任の変遷

- ムンテラの意味ムンテラという言葉は、医療現場において医師が患者に行う、病気や治療方針に関する説明を指します。 これは、ドイツ語で「口頭陳述」を意味する「ムントエルンク(mundelung)」に由来しています。 かつては、医師が自らの診断や治療方針を患者に口頭で説明することが一般的であり、ムンテラは医師の説明責任の中核を担っていました。患者は医師の説明に耳を傾け、医師の言葉に基づいて治療を受けることを選択していました。しかし、医療技術の進歩やインフォームド・コンセントの普及に伴い、ムンテラは単なる口頭説明にとどまらず、患者と医師が共に治療方針を決定するための重要なコミュニケーションの場として認識されるようになりました。現代のムンテラでは、医師は患者に対して、病名、症状、治療法の選択肢、それぞれの治療法のメリットやデメリット、治療に伴うリスクなどを丁寧に説明します。さらに、患者が自身の病気や治療について理解し、納得した上で治療方針を選択できるように、図や模型を用いたり、患者からの質問に時間をかけて答えたりするなど、分かりやすい説明を心がけることが重要視されています。ムンテラを通じて、患者と医師の信頼関係が築かれ、より良い医療の実現につながると考えられています。
小児科

側弯症治療の強い味方:ミルウォーキー・ブレース

- ミルウォーキー・ブレースとはミルウォーキー・ブレースは、成長期の子供の側弯症の進行を抑えるために使用される装具です。側弯症は、背骨が横に曲がるだけでなく、ねじれも伴う病気です。進行すると、見た目の問題だけでなく、呼吸困難や腰痛など、様々な症状を引き起こす可能性があります。ミルウォーキー・ブレースは、首から骨盤までを覆うように装着するコルセットのような形をしています。プラスチック製の支柱とベルトで構成されており、体の動きを制限することで背骨の湾曲を矯正し、正常な成長を促します。この装具は、特に首、背中、腰の変形が顕著な側弯症の若年患者に適用されます。一般的には、骨の成長が止まる10代後半まで使用されます。装着時間は医師の指示によって異なり、1日に20時間以上装着する場合もあるなど、日常生活で多くの時間を装具と共に過ごすことになります。ミルウォーキー・ブレースは、側弯症の進行を抑制する効果が期待できますが、装着には、皮膚の炎症や筋肉の衰えといったリスクも伴います。そのため、医師の指示に従って正しく装着し、定期的な診察を受けることが重要です。
看護技術

褥瘡:予防と早期発見のために

- 褥瘡とは 褥瘡は、寝たきり状態や車椅子生活など、長時間同じ姿勢を続けることで発生しやすくなります。体の特定の部位に体重が集中し続けることで、その部分の血流が悪くなってしまうのです。すると、皮膚やその下の組織(皮下組織)に必要な酸素や栄養が十分に届かなくなり、組織が損傷を受けてしまいます。これが褥瘡であり、一般的には「床ずれ」とよばれることもあります。 褥瘡は、誰でも発症する可能性がありますが、特に骨が出っ張っている部分にできやすいという特徴があります。なぜなら、骨が出っ張っている部分は、周りの組織よりも圧力がかかりやすく、血流が阻害されやすいためです。具体的には、お尻の尾骨の少し上の部分にある仙骨、かかと、くるぶし、肩甲骨などが挙げられます。 褥瘡は、初期段階では皮膚が赤くなる程度ですが、悪化すると皮膚がめくれてしまったり、潰瘍になったりすることがあります。さらに重症化すると、筋肉や骨まで損傷を受けることもあり、治療が困難になる場合もあります。そのため、褥瘡は早期発見と予防が非常に重要です。
血液

赤沈とは? 検査でわかること

- 赤沈の概要赤沈とは、赤血球沈降速度を省略した言葉で、血液検査の一つです。この検査では、採取した血液を細いガラス管に入れ、一時間静置した時に、赤血球がどのくらいの速さで沈んでいくかを測定します。健康な状態では、赤血球はゆっくりと沈んでいきます。しかし、体内で炎症が起きている場合、血液中のタンパク質のバランスが変化し、赤血球同士がくっつきやすくなります。その結果、赤血球は塊となりやすくなるため、沈む速度が速くなります。つまり、赤沈の値が高い場合は、体内で炎症反応が起こっている可能性を示唆しているのです。ただし、赤沈はあくまでも炎症反応の有無を調べるための検査の一つであり、これだけで特定の病気を診断することはできません。赤沈の値が高い場合は、医師が他の検査結果や症状も踏まえ、総合的に判断する必要があります。例えば、関節リウマチなどの膠原病や感染症、悪性腫瘍などが疑われる場合に、追加の検査が行われます。赤沈は簡便な検査でありながら、体の状態を知る上で重要な手がかりとなります。
看護技術

患者の身体を観察する技術:フィジカルアセスメント

- フィジカルアセスメントとはフィジカルアセスメントは、医療従事者が患者さんの健康状態を総合的に評価するために欠かせない診察方法です。これは、患者さんの訴えを丁寧に聞き取りながら、視診、触診、聴診、打診といった五感を駆使して身体の情報をくまなく集める作業を指します。このプロセスは、単に身体的な異常を発見するだけでなく、患者さんの言葉だけでは伝えきれない問題点や、病気の背景にある要因を明らかにする上で非常に重要です。例えば、患者さんが「頭が痛い」と訴えていたとします。フィジカルアセスメントによって、頭痛の原因が単なる風邪ではなく、頭部外傷や脳腫瘍といった深刻な疾患である可能性も見えてきます。また、患者さんの顔色や呼吸の状態を観察することで、貧血や呼吸器疾患などの隠れた病気を発見できることもあります。このように、フィジカルアセスメントは、患者さんの全体像を把握するためのパズルのピースを一つ一つ丁寧に集めていくような作業と言えるでしょう。そして、集めた情報に基づいて適切な検査や治療方針を決定することで、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供することに繋がります。
呼吸器

肺挫傷:胸部外傷による呼吸困難

- 肺挫傷とは肺挫傷は、交通事故や高所からの転落など、胸部に強い衝撃を受けた際に、肺に損傷が生じる病気です。 肺は呼吸に欠かせない臓器ですが、外部からの強い力によって傷つくことがあります。この傷によって、肺の中の毛細血管が破れ、血液や体液が肺胞(はいほう空気の入った小さな袋)に漏れ出てしまいます。すると、肺胞は酸素を十分に取り込めなくなり、呼吸が困難になります。 症状としては、息切れや胸の痛み、咳、血痰(けったん血の混じった痰)などが見られます。軽い場合は安静にしていれば自然に治癒することもありますが、重症化すると、呼吸不全に陥り、酸素マスクや人工呼吸器が必要になることもあります。さらに、肺挫傷が原因で肺炎などの合併症を引き起こす可能性もあります。そのため、胸に強い衝撃を受けた場合は、たとえ症状が軽くても、速やかに医療機関を受診することが重要です。 早期に適切な治療を受けることで、重症化を防ぎ、後遺症を残さずに治すことができます。
外科

肋骨骨折後の強い味方:バストバンドの効果と使い方

- バストバンドとはバストバンドは、骨折した肋骨を固定し、胸部の安定性を保つために使われる医療用の帯状の装具です。別名でチェストバンドやリブバンドとも呼ばれます。 -# 使用目的と効果バストバンドは、主に肋骨を骨折した場合に用いられます。折れた骨が動いてしまうのを防ぎ、周辺の組織へのダメージを最小限に抑えることが目的です。また、骨折による痛みを和らげ、呼吸を楽にする効果もあります。-# 適応となる症状バストバンドは肋骨骨折以外にも、様々な状況で使用されます。例えば、胸部の手術後や鎖骨骨折、上腕骨の付け根の骨折などにも用いられます。さらに、胸郭の変形を防いだり、関節を正しい位置に保ったりする効果も期待できるため、幅広い症状に適応できます。-# 使用上の注意点バストバンドは医師の指示に従って、正しく装着することが重要です。締め付け過ぎると血行が悪くなる可能性がありますし、緩すぎると固定効果が十分に得られません。また、長時間の使用は筋肉の衰えや皮膚のトラブルに繋がる可能性もあるため、医師の指示に従って使用期間や装着時間を調整する必要があります。バストバンドは、怪我や手術後の回復を助ける上で重要な役割を果たします。正しく使用することで、痛みや不快感を軽減し、スムーズな回復を促すことができるでしょう。
皮膚科

顔の左右対称のシミ、肝斑とは?

- 肝斑の概要肝斑は、顔面に現れる色素斑の一種です。左右対称にできることが特徴で、まるで蝶が羽を広げたような形に現れることもあります。特に頬骨の高い位置、額、鼻の下、あごなどによく見られ、輪郭がぼんやりとしていることが多いです。色は、薄い褐色から濃い褐色まで、個人差があります。肝斑の原因は完全には解明されていませんが、紫外線、女性ホルモン、遺伝などが関係していると考えられています。そのため、20代後半から40代の女性に多く見られます。妊娠や経口避妊薬の使用がきっかけで発症したり、悪化したりすることもあります。肝斑自体は、健康に害を与えるものではありません。しかし、見た目の問題から、自分に自信が持てなくなったり、精神的なストレスを抱えたりする方も少なくありません。そのため、気になる場合は、皮膚科専門医を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。治療には、トラネキサム酸やビタミンCなどの内服薬や、ハイドロキノンやトレチノインなどの外用薬が用いられます。また、レーザー治療が行われることもあります。肝斑の治療には、根気強く続けることが大切です。
検査

がんの進行度を示すTNM分類

- TNM分類とはTNM分類とは、がんがどの程度進行しているかを判断するための国際的な基準です。この分類は、がんの治療方針を決定したり、将来的な経過の見通しを予測したりする際に非常に役立ちます。TNMは、それぞれ「腫瘍(Tumor)」「リンパ節転移(Node)」「遠隔転移(Metastasis)」の頭文字から来ており、これら三つの要素を組み合わせてがんのステージを評価します。まず、「腫瘍」はその大きさや広がり方を評価します。初期のがんでは腫瘍が小さく、周囲の組織への浸潤も limited ですが、進行するにつれて腫瘍は大きくなり、周囲の組織に深く入り込んでいきます。次に、「リンパ節転移」は、がん細胞がリンパ液の流れに乗って近くのリンパ節に転移しているかどうかを評価します。リンパ節転移は、がんが進行していることを示す重要なサインとなります。最後に、「遠隔転移」は、がん細胞が血液やリンパ液の流れに乗って、肺や肝臓などの離れた臓器に転移しているかどうかを評価します。遠隔転移は、がんがさらに進行していることを示し、治療がより困難になる可能性があります。TNM分類は、これらの要素をそれぞれ段階的に評価することで、がんの進行度合いを客観的に示します。この分類によって、医師は患者さん一人ひとりに最適な治療法を選択し、より適切な経過観察を行うことが可能になります。
その他

インフォームド・コンセント:医療における共同意思決定

- インフォームド・コンセントとは医療現場において、患者さんが自身の病気や治療について十分に理解し、納得した上で治療方針を決めていくために非常に重要なプロセス、それがインフォームド・コンセントです。従来の医療では、医師が患者さんに最善の治療法を一方的に提示することが一般的でした。しかし、現代医療においては、患者さんの価値観や人生観を尊重し、患者さん自身が主体的に治療に参加していくことが重要視されています。インフォームド・コンセントを実現するためには、医師は患者さんに対して、病気の状態や治療法、それぞれの治療法のメリット・デメリット、治療に伴うリスクや副作用などを分かりやすく説明する必要があります。患者さんは、医師の説明に対して疑問点があれば質問し、十分に納得できるまで話し合うことが大切です。インフォームド・コンセントは、単に医師の説明を受け、同意書にサインをするだけの手続きではありません。患者さんと医師がお互いを尊重し、信頼関係を築きながら、より良い治療を目指していくための共同作業と言えるでしょう。インフォームド・コンセントは、患者さんの自己決定権を尊重するだけでなく、患者さんの治療への参加意識を高め、治療効果を高めることにも繋がると期待されています。
呼吸器

ガス交換を阻む壁:肺胞-毛細管ブロック症候群

私たちは、生きていくために常に呼吸をし続けています。呼吸によって、体の中に酸素を取り込み、代わりに二酸化炭素を体の外に出しています。この、酸素と二酸化炭素の入れ替えは、肺という臓器の奥深くで行われます。 肺の中には、肺胞と呼ばれる小さな袋状のものが無数に存在します。肺胞の壁は非常に薄く、そのすぐ外側には、体中に張り巡らされた血管の中でも特に細い毛細血管が網の目のように広がっています。 呼吸によって肺の中に取り込まれた酸素は、この薄い肺胞の壁を通り抜け、毛細血管の中に入ります。そして、酸素を含んだ血液は、心臓のポンプ作用によって全身に送り届けられます。 一方、体の中で酸素が使われると、代わりに二酸化炭素が発生します。二酸化炭素を多く含んだ血液は、再び心臓のポンプ作用によって肺まで運ばれ、今度は毛細血管から肺胞の中へと移動します。そして、肺胞の中に移動した二酸化炭素は、呼吸によって体の外へと排出されます。 このように、肺は、体に取り入れた酸素を全身に送り届け、代わりに発生した二酸化炭素を排出するという、生きていく上で欠かせない重要な役割を担っています。
救急

怪我の応急処置に必須!アルミ副子の役割と使い方

- アルミ副子とはアルミ副子とは、骨折や捻挫といった怪我をした際に、損傷部分を固定し、安静を保つために使用する医療用具です。薄いアルミニウムの板に、クッションとなるウレタンフォームが貼り合わされているものが一般的です。アルミ副子の最大の特徴は、その軽さと丈夫さにあります。 アルミニウムは軽量であると同時に、外部からの力にも強く、変形しにくいという特性を持っています。そのため、患部をしっかりと固定することができます。また、ウレタンフォームがクッションの役割を果たすことで、患部への負担を軽減し、痛みをやわらげる効果も期待できます。アルミ副子は、様々な形状とサイズがあり、患部や症状に合わせて選択します。指のような小さな部位に使用するものから、腕や脚全体を固定するものまで、多岐にわたります。「アルフェンス」や「アルミスプリント」といった名称を耳にすることがありますが、これらは特定のメーカーの商品名です。 一般的には「アルミ副子」と呼ばれます。アルミ副子は、医療機関だけでなく、スポーツ現場や災害現場など、様々な場面で使用されています。適切な使用方法を理解しておくことで、怪我の悪化を防ぎ、回復を早めることに繋がります。
外科

ガス壊疽:脅威の感染症

- ガス壊疽とはガス壊疽は、体内に侵入した特定の種類の細菌が原因で発症する、深刻な感染症です。主に、土壌などに広く生息するクロストリジウム属の細菌が、傷口などから体内に入り込むことで感染します。 この細菌は、酸素が少ない環境を好み、筋肉や皮下組織といった体の深い部分で増殖する特徴があります。そして、増殖する過程で、組織を壊死させる毒素と、特徴的な悪臭を放つガスを発生させることが、ガス壊疽の大きな特徴です。 ガス壊疽は急速に進行し、発症すると、患部が腫れ上がり、激しい痛みを伴います。 皮膚の色は、時間の経過とともに赤紫色から青黒く変化し、触ると皮下にガスが溜まっているため、パチパチという音がする場合もあります。 ガス壊疽は、命に関わることもあるため、早期の診断と治療が非常に重要です。
呼吸器

人工呼吸器の様々な換気モード:患者さんの呼吸を支える技術

- 換気モードとは呼吸器が必要なほど呼吸機能が低下した患者さんにとって、人工呼吸器はまさに命綱です。人工呼吸器は、自発的に呼吸することが難しい、あるいは不可能な患者さんの代わりに、肺に空気を入れたり出したりする機械です。この人工呼吸器の働き方を細かく設定するのが「換気モード」です。簡単に言えば、換気モードは「人工呼吸器が呼吸のどの部分を、どのようにサポートするか」を決める指示書のようなものです。呼吸は、息を吸い込む「吸気」と、息を吐き出す「呼気」という二つの動作を繰り返すことで成り立っています。換気モードは、この吸気と呼気のどちらを、どの程度の強さで補助するか、また、患者さんが自発的に呼吸しようとしたときにどのように反応するかなどを細かく調整することができます。例えば、ある換気モードは、あらかじめ設定した圧力で常に呼吸を補助し、患者さんの自発呼吸を制限するのに対し、別の換気モードは、患者さんが自発的に呼吸しようとするときにのみサポートし、自発呼吸を促すように設計されています。このように、様々な換気モードが存在し、患者さんの病状や呼吸状態に合わせて、最適なモードを選択することが重要となります。適切な換気モードを選択することで、患者さんの呼吸を効果的にサポートし、回復を促すことができるのです。
看護技術

看護の質を高めるカギ!~看護サマリーの効果と課題~

- 看護サマリーとは何か看護サマリーとは、患者さんの重要な情報を分かりやすくまとめた書類のことです。患者さんが入院中に受けた医療や看護の内容が記録されており、病院内の関係者以外でも、患者さんの診療に携わる人が誰でも見られるようになっています。このサマリーは、患者さんが他の病院へ転院する場合や、退院して自宅療養に移る場合などに作成されます。例えば、入院中に使用していた薬の名前や量、あるいは日常生活で注意すべきことなどが具体的に書かれています。これは、患者さんが転院先や自宅でも安心して治療や療養を続けられるように、そして、次の担当者へ重要な情報が正しく伝わるように作成されます。看護サマリーには、「看護要約」や「退院時サマリー」、「退院時要約」など、様々な呼び方があります。いずれも内容はほぼ同じで、患者さん一人ひとりに合わせた医療や看護を提供するために欠かせない情報共有ツールと言えるでしょう。 看護師が中心となって作成しますが、医師や薬剤師、理学療法士など、他の医療従事者も情報を書き加えることがあります。このように、看護サマリーは患者さんの円滑な治療と療養を支える上で、重要な役割を担っていると言えるでしょう。
外科

人工股関節:痛みのない生活を取り戻す

- 人工股関節とは人工股関節とは、股関節の機能が損なわれた際に、その一部または全部を人工物で置き換える手術のことです。加齢や病気、怪我などが原因で股関節に痛みや動きの制限が生じ、日常生活に支障をきたす場合に検討されます。股関節は、骨盤側の臼蓋と呼ばれる受け皿と、大腿骨側の骨頭と呼ばれる球状の部分が組み合わさってできています。この関節部分の表面は軟骨と呼ばれる弾力のある組織で覆われており、滑らかな動きを可能にしています。しかし、変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨骨頭壊死症、骨折などが原因で股関節に障害が生じると、軟骨がすり減ったり、骨の形が変形したりして、激しい痛みや関節の動きが悪くなることがあります。このような場合、人工股関節置換術が有効な治療法となります。この手術では、損傷を受けた股関節を、耐久性に優れた金属やセラミック、ポリエチレンなどの素材で作られた人工関節に置き換えます。具体的には、骨盤側の臼蓋には人工臼蓋、大腿骨側の骨頭には人工骨頭を埋め込みます。人工骨頭は、ステムと呼ばれる棒状の部分に接続されており、このステムは大腿骨の骨髄内にしっかりと固定されます。人工股関節置換術によって、痛みが軽減され、股関節の動きが改善されるため、歩行動作や日常生活動作が楽になります。その結果、患者さんの生活の質(QOL)の向上に大きく貢献することができます。
小児科

ウィルムス腫瘍とWT1遺伝子

- ウィルムス腫瘍とはウィルムス腫瘍は、腎臓にできる悪性腫瘍です。悪性腫瘍は、一般的に「がん」と呼ばれる病気です。 小さいお子さんに発症することが多く、腎臓にできる腫瘍の中では最も多くみられます。日本では、毎年約100人の子供がウィルムス腫瘍と診断されています。ウィルムス腫瘍は、初期の段階では、ほとんど症状が現れません。そのため、健康診断や他の病気の検査で偶然発見されることも少なくありません。しかし、腫瘍が大きくなってくると、以下のような症状が現れるようになります。* お腹にしこりを触れる* 尿に血が混じる(血尿)* お腹の痛み* 発熱ウィルムス腫瘍は、早期に発見し、適切な治療を行えば治癒が期待できる病気です。そのため、お子さんに上記のような症状がみられる場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。ウィルムス腫瘍の治療は、手術、抗がん剤を使った治療(化学療法)、放射線を使った治療(放射線療法)などを組み合わせて行います。治療法は、腫瘍の大きさや進行度、お子さんの年齢や全身状態などを考慮して決定されます。
呼吸器

呼吸のデッドスペース:死腔

私たちは生きるために、常に呼吸を繰り返しています。息を吸うことで体内に酸素を取り込み、反対に息を吐くことで二酸化炭素を排出しています。この一連の動作を呼吸と呼びますが、体内に入った酸素と体外へ排出される二酸化炭素の交換が行われるのは、肺という臓器の中にある、肺胞という小さな袋状の器官です。 肺胞はブドウの房のように無数に存在し、毛細血管と呼ばれる細い血管が網の目のように張り巡らされています。吸い込んだ空気は、まず鼻や口から気管を通って肺へ、そしてさらに細かく枝分かれした気管支を通って肺胞へと届けられます。肺胞に届けられた空気中の酸素は、肺胞を取り巻く毛細血管に取り込まれ、血液によって全身へと運ばれていきます。同時に、体内で使われた後の二酸化炭素は、血液によって肺胞まで運ばれ、肺胞から気管支、気管を通って体外へ排出されます。 さて、ここで「死腔」について説明しましょう。空気の通り道である気管支は、肺の中で幾重にも枝分かれして、最終的に肺胞へとつながっています。しかし、気管支の一部の領域では、ガス交換が行われません。このガス交換に関与しない気道の部分を「死腔」と呼びます。
看護技術

看護の基本: ベッドバスで快適な療養を

- ベッドバスとは病気や怪我によって、浴室まで移動して入浴することが難しい患者さんにとって、清潔を保つことは容易ではありません。このような場合に、医療現場では「ベッドバス」と呼ばれるケアが行われます。これは、温めたタオルやクロスを用いて、患者さんの体を拭くことで清潔を保つ方法で、「清拭(せいしき)」とも呼ばれます。ベッドバスは、単に体を清潔にする以上の効果をもたらします。たとえば、体を拭かれることで、患者さんは爽やかな気分になり、精神的なリフレッシュにつながります。また、皮膚の汚れや古い角質が除去されることで、皮膚の呼吸が促進され、健康な状態を保つことができます。さらに、温めたタオルやクロスの刺激によって血行が促進され、体の機能維持にも役立ちます。ベッドバスを実施する際には、室温や水温に注意し、患者さんの体に負担をかけないように優しく行うことが重要です。また、プライバシーにも配慮し、体を拭いている部分以外はタオルやシーツで覆うなどして、安心してケアを受けられるようにすることが大切です。
その他

足裏から健康を支える:足底板の役割と効果

- 足底板とは?足の裏に装着する装具のことを、足底板と呼びます。靴の中敷きのような形をしていますが、単なる中敷きとは異なり、一人ひとりの足の形状や症状に合わせて作られます。足底板を装着する主な目的は、足のアーチを支え、足にかかる負担を軽減することです。人間の足には、縦と横にアーチ状の構造があり、体重を分散させたり、歩行や運動時の衝撃を吸収したりする役割を担っています。しかし、アーチの構造が崩れてしまうと、足の裏や踵、膝、腰などに痛みが出たり、疲れやすくなったりすることがあります。足底板は、靴の中敷きとして使用される場合が一般的です。スポーツ選手や立ち仕事をする人など、足に負担がかかりやすい人が、パフォーマンスの向上や疲労軽減のために使用することが多く見られます。また、扁平足や外反母趾、足底筋膜炎などの足のトラブルを抱えている人にとっても、症状の改善や痛みの緩和に役立ちます。さらに、裸足で使用するタイプの足底板もあり、こちらは主にリハビリテーションや運動療法などに用いられます。素材も、硬質のプラスチックや革、クッション性の高いものなど、様々な種類があります。医師や義肢装具士などの専門家が、足の状態や症状、目的に合わせて最適な素材を選び、形状を調整します。
その他

沈黙の脅威:アミロイドーシスとは

アミロイドーシスとは、体内で通常とは異なる構造に変化したタンパク質が、臓器や組織に蓄積することで発症する病気です。この異常なタンパク質は「アミロイド」と呼ばれ、繊維状に固まって臓器に沈着します。この沈着によって、臓器の機能が徐々に低下し、様々な症状が現れます。 アミロイドーシスは、まるで静かに忍び寄る影のように、初期の段階では自覚症状が現れにくいことが多く、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。しかし、病状が進行すると、心臓、腎臓、肝臓、神経など、体の様々な臓器に深刻な障害を引き起こし、生命を脅かすこともあります。 早期発見と適切な治療が、アミロイドーシスによる臓器障害の進行を遅らせ、患者さんの生活の質を維持するために非常に重要となります。そのため、少しでも気になる症状がある場合は、ためらわずに医療機関を受診し、専門医による診察を受けることが大切です。
呼吸器

肺挫傷:胸部外傷による呼吸困難

- 肺挫傷とは肺挫傷は、胸部に強い衝撃や圧力が加わることで、肺に損傷が生じる状態を指します。交通事故や高所からの転落、スポーツ中の接触など、胸に強い衝撃を受けることで発生しやすくなります。私たちの肺は、呼吸をするための重要な臓器であり、無数の小さな空気の袋(肺胞)で構成されています。肺挫傷では、この肺胞や周囲の組織、血管が損傷を受けます。その結果、損傷した血管から血液や体液が肺胞に漏れ出し、肺胞内に出血やむくみが生じます。肺胞に血液や体液が溜まると、酸素を十分に取り込めなくなり、呼吸困難を引き起こします。症状としては、息切れや胸の痛み、咳、血痰などがみられます。重症の場合には、呼吸不全に陥り、生命に関わることもあります。肺挫傷は、胸部レントゲンやCT検査によって診断されます。治療は、安静と酸素吸入が基本となります。重症例では、人工呼吸器による呼吸管理が必要になることもあります。肺挫傷は、早期に発見し適切な治療を行うことが重要です。胸部に強い衝撃を受けた場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。
看護技術

看護師が使う「トランス」って?

病院で働く看護師や医師などが、よく口にする「トランス」という言葉をご存知でしょうか?日常生活では耳にする機会は少ないかもしれませんが、病院では患者さんの移動や移送、転院などを指す医療用語として頻繁に使われています。 例えば、手術室から病室へ患者さんを移動する際や、検査のためにレントゲン室へ移動する際に、「トランスする」といった表現が使われます。また、他の病院へ転院する場合にも、「明日、トランスの予定です」といった具合に用いられます。 「トランス」は「トランスファー」を省略した言葉で、医療現場では業務を簡潔に伝えるために、このような略語がよく使われています。患者さんにとっては聞き慣れない言葉かもしれませんが、医療従事者にとっては、円滑な業務遂行のために欠かせない言葉の一つと言えるでしょう。
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