総合健康ガイド

皮膚科

ハンセン病:正しく理解するその実態

- ハンセン病とはハンセン病は、らい菌という細菌が体に侵入することによって発症する、慢性の経過をたどる感染症です。古くから「らい」という名で知られ、恐れられてきた病気ですが、現代医学においては適切な治療を行うことで完全に治癒する病気となっています。 らい菌は、主に皮膚や手足の末梢神経に感染し、その部分に様々な症状を引き起こします。皮膚では、赤褐色の斑点ができたり、しこりができたりすることがあります。これらの斑点は、知覚が鈍くなったり、全く感じなくなったりすることがあります。また、末梢神経が侵されると、手足の感覚が鈍くなる、力が入らなくなるといった症状が現れます。さらに、病状が進行すると、顔面の変形や視力障害、手指の変形などの重い後遺症が残ってしまうこともあります。 ハンセン病は、感染した人から咳やくしゃみなどによって飛散するらい菌を、長期間にわたって大量に吸い込むことで感染すると考えられています。しかし、らい菌は感染力が弱いため、感染者と接触したとしても、すぐに発症するわけではありません。また、現在では効果の高い治療薬が開発されており、早期に発見し適切な治療を行えば、後遺症が残ることもほとんどありません。 ハンセン病は、決して過去の病気ではありません。正しい知識を持ち、偏見や差別をなくしていくことが大切です。
呼吸器

人体の守護者:肋骨の役割

私たちの胸部を守る、まるで鎧のような存在、それが肋骨です。肋骨は、薄い板状の形をした骨で、左右対称に12対、合計24本あります。これらが胸部を覆うように弓状に並び、かごのような形を作っています。この骨格は、呼吸や運動など、私たちの日常生活に欠かせない様々な役割を担っていますが、最も重要な役割は、心臓や肺といった重要な臓器を外部からの衝撃から守ることです。 例えば、私たちが転倒したり、何かにぶつかったりしたとき、肋骨はクッションのように作用します。衝撃を吸収することで、内臓へのダメージを最小限に抑え、心臓や肺を守ってくれるのです。また、肋骨は、その構造上、ある程度の柔軟性も持ち合わせています。そのため、呼吸の際にも胸郭を広げたり縮めたりすることができ、円滑な呼吸をサポートする役割も担っています。 このように、肋骨は私たちの体にとって非常に重要な役割を果たしています。この鎧のような骨格のおかげで、私たちは日々安心して生活を送ることができるのです。
産婦人科

おりもの:女性の身体を守る大切な役割

- おりものとは女性にとって馴染み深いおりもの。これは医学用語では「帯下」と呼ばれ、女性の膣から分泌される液体のことを指します。毎日のように下着に付着するおりものですが、一体どのような役割を担っているのでしょうか。おりものは、主に子宮頸部とバルトリン腺という部分から分泌されます。子宮頸部は子宮の入り口にあたり、バルトリン腺は膣の入り口付近に位置しています。これらの器官から分泌されるおりものは、細菌やウイルスなどの病原体から膣を守ったり、膣内を清潔に保つなど、重要な役割を担っています。おりものの状態は、性周期や体調、年齢などによって変化します。例えば、排卵期には受精しやすくなるよう、おりものの量が増え、粘り気が強くなります。また、妊娠中はホルモンバランスの変化によっておりものの量が増加します。色は透明、白、黄色など様々で、基本的に無臭です。ただし、おりものの量や色、臭い、性状に変化が現れた場合は、細菌感染症などの病気の可能性も考えられます。その場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。おりものは、決して恥ずべきものではありません。健康な女性であれば自然に分泌されるものであり、女性の身体を守るために重要な役割を果たしています。日頃からおりものの状態を観察することで、自身の健康状態を把握する一助となるでしょう。
看護技術

医療におけるドレーンの役割

- ドレーンとは私たちの体には、常に不要な液体が溜まっています。これは、血液やリンパ液、あるいは炎症によって生じる膿などが挙げられます。このような体にとって不要な液体を体外に排出するために用いられる管のことを、ドレーンと言います。ドレーンは、体内に溜まった液体の種類や量、そして患者さんの状態に合わせて、様々な種類のものが使用されます。例えば、体腔内に直接留置するものもあれば、手術の際に切開部から挿入するものもあります。材質としては、主にゴムやシリコンといった、体に対して安全性が高いものが使用されます。これらの材質は、体内に挿入しても、アレルギー反応などの拒絶反応を起こしにくいという特徴があります。また、近年では、ドレーンの素材や形状にも工夫が凝らされており、体内での異物感を軽減し、患者さんの負担をより少なくすることに貢献しています。ドレーンは、患者さんの回復を早めるだけでなく、様々な合併症のリスクを減らす上でも非常に重要な役割を担っています。
看護技術

褥瘡治癒の客観的評価:DESIGN®

褥瘡は、寝たきりや車椅子での生活を長く続けることなどによって、体の同じ場所に体重がかかり続けることで起こる皮膚の損傷です。このような状態が続くと、皮膚やその下の組織が傷ついてしまい、痛みや炎症を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 褥瘡のケアにおいては、傷の治り具合を正しく見極め、適切な治療方針を立てることが非常に重要になります。しかし、褥瘡は見た目の変化がわかりにくく、経験の浅い医療従事者にとってはその評価が難しい場合もあります。 そこで開発されたのがDESIGN®というツールです。DESIGN®は、褥瘡の大きさや深さ、傷の状態などを数値化することで、褥瘡の治り具合を客観的に評価することを可能にしました。このツールは、医療従事者間での情報共有をスムーズにするだけでなく、患者さん自身にもわかりやすく褥瘡の状態を説明できるというメリットもあります。 現在、DESIGN®は日本の褥瘡ケアの現場で広く活用されており、多くの医療機関で褥瘡ケアの質向上に貢献しています。特に、高齢化社会が進む日本において、褥瘡は重要な医療問題となっており、DESIGN®のような効果的なツールの活用は、患者さんの生活の質の向上に大きく寄与するものと期待されています。
循環器

命を脅かす疾患:大動脈解離

- 大動脈解離とは心臓から送り出された血液は、全身に張り巡らされた血管を通って各組織へと運ばれます。その中でも大動脈は、心臓から直接血液を受け取り、全身に送り出すための最も太い血管です。この重要な血管に亀裂が生じ、重大な事態を引き起こす病気が「大動脈解離」です。大動脈は、内膜、中膜、外膜という3層構造でできています。大動脈解離は、このうち内膜に亀裂が生じることで始まります。すると、心臓から勢いよく送り出された血液が、この亀裂から血管壁の層間に入り込んでしまいます。これが、「解離」と呼ばれる状態です。解離が起こると、大動脈の壁は薄くなり、血管が破裂する危険性が高まります。大動脈が破裂すると、大量出血を起こし、死に至る可能性もあります。また、解離によって血管が狭くなったり、閉塞したりすることで、心臓や脳など、重要な臓器への血流が阻害されることもあります。大動脈解離は、突然発生し、激しい胸や背中の痛みを伴うことが特徴です。適切な処置を行わないと命に関わる危険性が高いため、早期発見と迅速な治療が非常に重要です。
呼吸器

喘息について

- 喘息とは喘息は、空気の通り道である気管支に炎症が起こり、気道が狭くなることで、息苦しさや咳などの症状が出る病気です。この炎症は慢性的に続くもので、一時的な風邪などとは異なります。気道が狭くなると、息を吸ったり吐いたりするのが難しくなり、特に息を吐く際に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が聞こえることがあります。これが喘鳴と呼ばれる喘息の特徴的な症状です。咳もまた一般的な症状で、特に夜間や早朝に悪化することがあります。喘息の症状は、発作的に起こることが特徴です。症状がない状態が続くこともあれば、ある日突然、激しい咳や息苦しさに襲われることもあります。発作の引き金となるものは人それぞれで、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛、タバコの煙、気温や湿度の変化、運動などが挙げられます。喘息は、乳幼児期から成人まで、どの年齢でも発症する可能性があります。また、日本を含む先進国で増加傾向にあり、現代では国民病の1つとされています。喘息は完治が難しい病気ですが、適切な治療を続けることで症状をコントロールし、日常生活に支障なく過ごすことが可能です。
看護技術

新生児の小さな寝台:コット

- コットとは病院の新生児室や小児科でよく見かける、赤ちゃん用の小さなベッドをコットと呼びます。このベッドは移動式で、新生児の安全な睡眠場所として、病院で広く使われています。コットの特徴は何と言っても、透明なケース状の上段部分でしょう。これは、赤ちゃんをあらゆる角度から観察できるように設計されたもので、医療従事者は赤ちゃんの様子を常に確認することができます。呼吸の様子や顔色、体の動きなどを細かく観察することで、赤ちゃんの健康状態を素早く把握することができるのです。また、コットは移動式であるため、病院内での移動もスムーズに行えます。検査や処置のために赤ちゃんを移動させる必要がある場合でも、コットごと移動させることができるので、赤ちゃんへの負担を最小限に抑えられます。これは、繊細な新生児にとって大きなメリットと言えるでしょう。このように、コットは新生児の安全と快適さ、そして医療従事者の業務効率化を両立させた、病院にとって欠かせない設備なのです。
小児科

新生児特定集中治療室:小さな命を守るための最先端医療

新生児特定集中治療室(NICU)は、生まれたばかりの赤ちゃんの中でも、病気や発達上の問題を抱え、特別な治療が必要な赤ちゃんのための専門的な施設です。まるで大きな病院の中に作られた小さな病院のように、高度な医療機器と、新生児医療に精通した医師や看護師が24時間体制で赤ちゃんたちのケアにあたっています。 NICUでは、呼吸に問題がある赤ちゃんのための人工呼吸器、栄養を補うための点滴、体温を一定に保つ保育器など、赤ちゃんの命を守るための様々な医療機器が揃っています。その他にも、心臓の動きを監視するモニターや、黄疸治療のための光線療法装置など、赤ちゃんの状態に合わせて必要な機器が常に使用されています。 この集中治療室は、医師や看護師だけでなく、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなど、様々な専門家がチームを組んで赤ちゃんをサポートする体制が整っています。生まれて間もない時期に適切な治療やケアを受けることで、赤ちゃんの命を守り、健やかな成長を支援することを目的としています。
外科

手術室の頼れる存在:メイヨー剪刀

- メイヨー剪刀とはメイヨー剪刀は、外科手術において組織を切開するために用いられる、無くてはならない医療器具の一つです。 その名の由来は、20世紀初頭にアメリカで活躍した医師であり、世界的に有名なメイヨークリニックを創設した、メイヨー兄弟に由来します。数ある剪刀の中でも、メイヨー剪刀は特に組織を切開する能力に優れており、その切れ味の鋭さから、外科医にとって信頼のおける道具となっています。刃先は、組織をスムーズに切開できるよう、鋭く滑らかな曲線を描いており、先端は尖っているものと丸みを帯びているものの二種類があります。 この形状の違いにより、それぞれ用途が異なってきます。例えば、尖った先端のものは、皮膚のように比較的硬い組織を切開する際に使用されます。一方、丸みを帯びた先端のものは、血管や神経など、繊細な組織を傷つけずに周囲の組織だけを切開する際に使用されます。このように、メイヨー剪刀は、その用途に合わせて形状が工夫されており、外科医は手術の内容や部位に応じて使い分けることで、安全かつ正確な手術を行うことができるのです。 メイヨー剪刀は、まさに外科医にとって無くてはならない「右手」とも呼べる存在と言えるでしょう。

ハイドロキノン:美白効果の源

- ハイドロキノンとはハイドロキノンは、イチゴ、麦芽、コーヒーなど、私たちが普段口にする食品にも含まれている、自然界に存在する有機化合物です。その分子構造はシンプルですが、メラニンの生成を抑え、シミ、そばかす、肝斑などの色素沈着を薄くする効果があります。ハイドロキノンは、メラノサイトと呼ばれる色素細胞内のチロシナーゼという酵素の働きを阻害することで、メラニンの生成を抑制します。メラニンは、紫外線から肌を守るために生成される色素ですが、過剰に生成されるとシミやそばかすの原因となります。ハイドロキノンは、このメラニンの生成を抑えることで、肌のトーンを明るくし、透明感を引き出す効果が期待できます。その高い美白効果から、ハイドロキノンは医薬品や化粧品に広く配合されています。医薬品では、医師の処方箋が必要な「ハイドロキノン製剤」として、より高濃度のものが処方されます。一方、化粧品には、比較的低濃度のハイドロキノンが配合されており、ドラッグストアなどでも購入することができます。しかし、ハイドロキノンは使用方法を誤ると、肌への刺激や副作用が生じる可能性もあります。使用前に必ず説明書をよく読み、自分の肌質に合った濃度や使用方法を守ることが大切です。また、使用中に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
循環器

心臓から左肺へ: 左肺動脈の役割

心臓から送り出された血液は、全身に酸素を供給するために重要な役割を担っています。この血液を心臓から肺に運ぶのが肺動脈です。肺動脈は心臓から出た後、左右に分岐し、それぞれ右肺と左肺へと向かいます。左肺動脈は、心臓の右心室から続く肺動脈幹が左右に分かれる部分において、左側へと伸びる血管のことを指します。 左肺動脈は、左の肺へと血液を送るために、さらに二つの枝に分岐します。この二つの枝は、肺の上下に広がる形状に合わせて、それぞれ上葉枝と下葉枝と呼ばれています。上葉枝は左肺の上半分へ、下葉枝は左肺の下半分へと血液を届けます。このように、左肺動脈は心臓から送り出された血液を左肺全体に行き渡らせるための重要な役割を担っており、私たちの呼吸と生命維持に欠かせない血管と言えるでしょう。
呼吸器

睡眠時無呼吸症候群:静かなる脅威とその影響

- 睡眠時無呼吸症候群とは睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まる、あるいは浅くなる病気です。これは、単にいびきがうるさいという問題とは大きく異なります。睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まることで体内の酸素レベルが低下し、心臓や血管に大きな負担をかけてしまいます。自覚症状としては、大きないびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛などが挙げられます。しかし、多くの人は自分が睡眠時無呼吸症候群であることに気づいていません。そのため、健康診断などで指摘されるまで、放置してしまうケースも少なくありません。睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病などのリスクを高めることが知られています。また、日中の眠気により、集中力や注意力が低下し、仕事や学業に支障をきたすだけでなく、交通事故のリスクも高まります。睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、医療機関を受診し、検査を受けることが重要です。検査では、睡眠中の呼吸状態や血液中の酸素濃度などを測定します。治療法としては、生活習慣の改善、マウスピースの装着、CPAP(経鼻的陽圧換気療法)などがあります。睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を行うことで、症状を改善し、合併症のリスクを減らすことができます。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
産婦人科

かゆみの原因?外陰真菌症について解説

- 外陰真菌症とは?外陰真菌症は、女性の外陰部に真菌(一般的にカビと呼ばれる微生物)が感染することで起こる病気です。 この病気は、外陰部のかゆみを主な症状とするため、外陰部掻痒症とも呼ばれます。外陰真菌症の原因となる真菌の中で最も多いのはカンジダという種類です。カンジダは、健康な人の口の中や消化管、膣などにもともと存在している常在菌ですが、体の抵抗力が落ちたり、ホルモンバランスが乱れたりすると、過剰に増殖してしまい、外陰真菌症を引き起こします。外陰真菌症は、性感染症ではありませんが、性交渉によって感染することがあります。また、免疫力の低下や抗生物質の使用、糖尿病などの基礎疾患によって発症しやすくなることもあります。外陰真菌症の主な症状としては、強いかゆみ、外陰部のヒリヒリ感、腫れ、発赤などがあります。また、おりものの量が増えたり、性交痛を感じたりすることもあります。これらの症状は、生理前や妊娠中に悪化することがあります。外陰真菌症は、適切な治療を行えば、多くの場合、完全に治癒する病気です。自己判断で市販薬を使用するのではなく、医療機関を受診し、医師の診断と適切な治療を受けるようにしましょう。
その他

痛みに特化した医療機関:ペインクリニックとは

「痛みに苦しむ患者さんのためのクリニック」という看板を掲げた医療機関を目にする機会が増えました。これは、痛みを専門的に治療するクリニック、いわゆる「ペインクリニック」のことです。 ペインクリニックは、肩や腰の痛み、神経に走る痛み、関節の痛み、頭の痛みなど、様々な痛みに苦しむ患者さんを対象にしています。単に痛みを抑えるだけでなく、その原因を突き止め、患者さんが痛みから解放されることを目指した治療を行っています。 一般的な内科や整形外科でも痛みの治療は行っていますが、ペインクリニックは、特に慢性的な痛みや原因不明の痛みに対応している点が特徴です。長年痛みに悩まされ、他の医療機関で十分な治療効果が得られなかった患者さんにとって、ペインクリニックは最後の砦とも言えるでしょう。 ペインクリニックでは、薬物療法、神経ブロック療法、理学療法など、様々な治療法を組み合わせることで、患者さん一人ひとりの痛みの状態に合わせた最適な治療を提供しています。
循環器

肺動脈圧:沈黙のうちに心臓を蝕む病気

心臓から血液が送り出され、全身に酸素を供給するために、肺は重要な役割を担っています。心臓から肺へと血液を運ぶ血管を肺動脈といいますが、この肺動脈内の圧力のことを肺動脈圧と呼びます。肺動脈圧は、心臓が円滑に血液を循環させるために、重要な指標の一つとなっています。 心臓が収縮し、血液を送り出す時の肺動脈圧を収縮期圧と呼びます。また、心臓が拡張し、血液を再び心臓に取り込む時の肺動脈圧は拡張期圧と呼ばれます。これらの圧力は、心臓の活動と深く関連しており、健康な状態を保つためには、それぞれの圧力が適切な範囲内に収まっている必要があります。収縮期圧は30~15mmHg、拡張期圧は8~2mmHgが正常範囲とされています。 さらに、肺動脈圧を平均化した平均圧も重要な指標です。平均圧は、心臓が一回拍動する間に、肺動脈にかかる圧力を平均化したもので、18~9mmHgが正常範囲とされています。これらの数値はあくまでも目安であり、年齢や体格、健康状態などによって個人差があります。 肺動脈圧は、肺高血圧症などの病気と密接に関係しています。肺高血圧症は、肺動脈の圧力が異常に高くなる病気で、息切れや動悸、疲れやすさなどの症状が現れます。肺動脈圧の変化に注意することで、こうした病気の早期発見・治療に繋がることが期待されます。

ステロイド外用薬の強さ:ミディアムとは?

湿疹やアトピー性皮膚炎など、かゆみや炎症を伴う皮膚疾患の治療に欠かせないステロイド外用薬ですが、その種類は一つではありません。ステロイド外用薬は、その効果の強さによって細かく分類されています。具体的には、弱い方から順に「弱效」「very weak」「weak」「medium」「strong」「very strong」の7段階に分けられます。 この強さの段階は、あくまでも目安として設定されたものです。なぜなら、同じ強さのステロイド外用薬であっても、軟膏やクリーム、ローションなど、剤形の違いや、顔、体、陰部など使用する部位によって、効果に違いが現れることがあるからです。 例えば、顔の皮膚は体と比べて薄いため、同じ強さのステロイドを塗った場合でも、顔の方が効果が強く現れやすい傾向があります。また、薬が浸透しやすい部位とそうでない部位によっても、効果は異なってきます。 このようにステロイド外用薬は、その種類や使い方によって効果が大きく変わる可能性があるため、自己判断で使用せず、必ず医師の指示に従って正しく使用することが大切です。
呼吸器

誤嚥性肺炎を防ぐために

- 誤嚥性肺炎とは誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物、唾液などが誤って食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥」が原因で起こる肺炎です。通常、私たちは食べ物を口にすると、それが食道を通って胃へと運ばれていきます。しかし、加齢や病気などによって飲み込む機能が低下すると、食べ物などが誤って気管に入ってしまうことがあります。気管に入った食べ物や唾液などは、細菌を含んでいることが多く、これが肺に炎症を引き起こします。これが誤嚥性肺炎です。健康な方の場合は、体内に入ろうとする異物を排除しようとする働きが活発なため、誤嚥性肺炎を発症することは稀です。しかし、ご高齢の方や病気で体力が低下している方の場合、免疫力が低下しているため、誤嚥によって肺炎を発症しやすくなります。誤嚥性肺炎は、高齢者施設などに入っている方や、脳卒中などで寝たきりの状態にある方によくみられます。肺炎は、日本人の死因の上位に位置する病気であり、その中でも誤嚥性肺炎は増加傾向にあります。高齢化社会が進むにつれて、今後も患者数が増加することが懸念されています。
産婦人科

アンドロゲン不応症:男性なのに女性?性の決定の複雑さ

- アンドロゲン不応症とは?アンドロゲン不応症は、生まれ持った性染色体が男性(XY染色体)であるにもかかわらず、身体的な特徴が女性として現れる病気です。通常、人間はそれぞれ決まった組み合わせの性染色体を持っています。女性はXX染色体、男性はXY染色体を持っており、これが身体的特徴の性差に繋がっています。アンドロゲン不応症の患者さんは、男性と同じXY染色体を持っているにもかかわらず、身体は女性として発達します。これは、男性ホルモンであるアンドロゲンが関係しています。アンドロゲンは、男性の身体的な特徴(男性器の発達や筋肉の成長など)を促すために重要な役割を果たしています。しかし、アンドロゲンは、それ単独では効果を発揮することができません。身体の細胞には、アンドロゲンと結びつくことで、初めてその効果を発揮できる「受容体」と呼ばれる部分が存在します。アンドロゲン不応症の患者さんの場合、このアンドロゲン受容体に異常があるため、アンドロゲンが正常に作用しません。その結果、XY染色体を持って生まれてきても、身体は男性として発達せず、女性の特徴を持つようになるのです。アンドロゲン不応症は、原因となる遺伝子の異常の程度によって、症状の程度に幅があります。外見上は完全に女性と変わらない場合もあれば、わずかに男性的な特徴が現れる場合もあります。また、思春期になっても月経が来ないなど、二次性徴に関連した症状が現れることもあります。
皮膚科

紫外線と健康:その影響と対策

太陽から降り注ぐ光は、私たち人間にとって欠かせないものです。この光には、私たちに見えているものと見えていないものが含まれています。人間の目には見えない光の一つに、紫外線と呼ばれるものがあります。紫外線は、人間の目に見える光よりも波長が短いという特徴があります。波長が短いということは、その分エネルギーが強いことを意味します。 紫外線は、浴びる量によっては私たちの体に様々な影響を与えます。適量の紫外線を浴びることは、体内でビタミンDを生成するために必要なため、骨の健康を保つ上で重要です。しかし、過度な紫外線を浴びると、肌に炎症を起こし、赤く腫れたり、水ぶくれができたりすることがあります。これがいわゆる「日焼け」です。さらに、長期間にわたって過度な紫外線を浴び続けると、シミやそばかすの原因となり、皮膚がんのリスクも高まると言われています。また、目に対しても影響があり、白内障などの眼病を引き起こす可能性も指摘されています。 このように、紫外線は私たちの健康に大きな影響を与える可能性があるため、その特性を理解し、適切な対策をすることが重要です。
呼吸器

知っておきたい肺気腫:症状と予防

- 肺気腫とは肺気腫は、呼吸をする上で重要な役割を担う肺の組織が壊れてしまう病気で、長い期間にわたって症状が現れます。肺は、体の中に酸素を取り込み、不要な二酸化炭素を排出する役割を担っています。この働きを担うのが「肺胞」と呼ばれる小さな空気の袋で、肺の中に無数に存在しています。肺気腫では、この肺胞の壁が壊れて弾力を失ってしまうため、うまく空気を出し入れすることが難しくなります。まるで、使い古して伸びてしまった風船のように、肺胞は膨らんだ状態になり、十分に縮まなくなってしまいます。そのため、息を吐くことが特に困難になります。新鮮な空気を取り込むことができず、息苦しさを感じるようになります。肺気腫は、長年の喫煙習慣や有害な物質の吸入、また、まれに遺伝などが原因で発症すると考えられており、一度壊れてしまった肺胞は元に戻ることはありません。そのため、早期発見と治療、そして禁煙などの予防策が非常に重要となります。
血液

動脈血:酸素を運ぶ血液

私たちの体内を流れる血液には、体の各部に酸素を運ぶ役割を担う動脈血と、全身から心臓へ戻る際に二酸化炭素を多く含む静脈血があります。 動脈血は、酸素を豊富に含んでいるため、鮮やかな赤色をしています。これは、赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が酸素と結びつくことで、鮮やかな赤色に変化するためです。一方、静脈血は、酸素が少ない代わりに、二酸化炭素を多く含んでいるため、暗赤色をしています。 よく、手の甲に見られる青っぽい血管を「静脈」と呼ぶことがありますが、これは、血管自体が青い色をしているのではありません。血管の中を流れる血液の色が、皮膚を通して見えることで、青っぽく見えているのです。実際には、動脈も静脈も、血管自体に色はありません。 動脈血の鮮やかな赤色は、私たちの体が正常に酸素を運搬できている証と言えるでしょう。
外科

手術後の頼もしい味方:スキンステープラー

- スキンステープラーとは? 手術後などに傷ついた皮膚を縫い合わせる方法として、昔から糸を用いた縫合が行われてきました。しかし近年、糸の代わりに金属製の針を用いる「スキンステープラー」と呼ばれる医療器具が普及しています。 スキンステープラーは、その名の通り、まるでホッチキスのように皮膚を金属製の針で留めていくことから、医療現場では「ステープラー」と簡略化して呼ばれることも少なくありません。 従来の糸を用いた縫合と比べて、スキンステープラーには以下のような利点があります。 * 手術時間の短縮糸を通すという細かい作業が不要になるため、迅速に皮膚を閉じることができます。 * 患者さんの負担軽減手術時間の短縮は、麻酔の時間短縮にも繋がり、患者さんの体への負担を軽減することに繋がります。 * 傷跡が目立ちにくい糸で縫合するよりも傷跡が小さく、目立ちにくくなる傾向があります。 これらの利点から、スキンステープラーは、近年多くの医療機関で採用されており、患者さんにとってもメリットの大きい医療器具と言えるでしょう。
産婦人科

意外と知らない?医療用語「ギネ」の意味

病院を舞台にしたドラマや小説で、「ギネ」という言葉を見聞きしたことはありませんか? この「ギネ」は、実は「産婦人科」を指す医療現場で使われている用語なのです。 「ギネ」の由来は、ドイツ語で婦人科を意味する「Gynäkologie(ギュネコロギー)」にあります。 日本語では「婦人科」と訳されますが、医療現場ではドイツ語由来の「ギネ」が広く使われています。医師や看護師などの医療従事者の間では、「ギネ」は専門用語として日常的に飛び交っている言葉です。 「ギネ」は「産婦人科」を指す言葉として使われていますが、「産科」と「婦人科」は診療科目が異なります。「産科」は妊娠や出産に関する診療を行うのに対し、「婦人科」は女性特有の病気や月経に関する診療を行います。しかし、多くの病院では「産科」と「婦人科」が一体となって診療を行っているため、「ギネ」という言葉で「産婦人科」全体を表すことが多いようです。 医療ドラマなどで「ギネ」という言葉が出てきたら、医療従事者たちがどのような状況で、どのような患者さんを診療しているのか想像しながら見ると、より一層作品を楽しむことができるかもしれません。
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