身体像:自己と身体の関係
病院での用語を教えて
「身体像」って、自分の体のことですよね?でも、医学や健康の分野では、どんなふうに考えられているんですか?
体の健康研究家
良い質問ですね。その通り、「身体像」は自分の体についてのイメージのことです。医学や健康の分野では、このイメージが病気の感じ方や、治療の効果にも影響を与えると考えられています。
病院での用語を教えて
イメージが、病気や治療に関係するんですか?
体の健康研究家
例えば、足を失ってしまった人が、ないはずの足に痛みを感じる「幻肢痛」も、身体像と関係が深いと考えられています。また、拒食症なども、自分の体のイメージと現実のギャップが影響していると考えられていますね。
身体像とは。
「身体像」というのは、自分が自分自身の体についてどんな風に思っているか、ということだよ。これは、自分が「自分」と思うために大切なもので、見た目やできることについて、心の中でどんな風に感じているかを決めるものなんだ。
「身体像」と似た言葉に「身体図式」がある。「身体像」が頭の中で意識的に体がどんなものかイメージするのに対し、「身体図式」は、頭で考えるのではなく、実際に体で感じたり、経験を通して無意識に体がどんなものか分かっている状態のことを指すんだ。
「身体像」が乱れてしまうと、実際の体と、自分が思っている体のイメージが大きくずれてしまう。例えば、病気や怪我で体が不自由になったとき、以前の体のイメージと現実の体の間で折り合いがつかなくなり、混乱してしまうんだ。
「身体像」や「身体図式」の障害には、次のようなものがあるよ。
* 幻肢痛:怪我や病気で体の一部がなくなってしまった後も、ないはずの場所に痛みを感じること。
* 醜形恐怖:自分の体の一部分が実際よりも大きく感じたり、見た目を極端に悪く感じてしまうこと。
* 摂食障害:食べる量を極端に減らしたり(拒食症)、反対にたくさん食べてしまったり(過食症)する病気。
* 身体失認:目や触覚などの感覚には問題がないのに、自分の体や体の一部を認識することができない障害。
* 心気症:病気にかかっていると思い込んでしまったり、実際よりも症状を重くとらえてしまう精神的な病気。
* 離人症:自分と周囲の間に距離を感じたり、自分が自分でないような感覚になること。
* 体感幻覚:特に体に異常がないのに、痛みやかゆみなどの体の感覚に異常を感じること。
身体像とは
– 身体像とは私たちは鏡を見なくても、頭の中に自分の姿を描くことができます。これが身体像であり、いわば心の目に映る自分の姿と言えるでしょう。身体像は、単に身長や体重、顔立ちといった外面的な要素だけで形作られるのではありません。たとえば、運動が得意な人は自分の身体をたくましく感じ、音楽家は繊細な指先を持っていると自覚するように、身体像には動作や感覚、そして身体能力に対する評価も含まれています。さらに、身体像は過去の経験や感情、周囲からの評価とも密接に関係しています。幼い頃に「背が高いね」と褒められた経験は、自分の身体に対する肯定的なイメージを形成するでしょうし、反対に運動が苦手でからかわれた経験は、自分の身体に自信を持てなくなることに繋がるかもしれません。このように、身体像は過去の経験や感情、そして自己評価によって絶えず変化していくものなのです。このように、身体像は単なる身体の姿形という枠を超え、「自分」という概念を形成する上で重要な要素となっています。身体像は、私たちが自分自身をどのように認識し、世界とどのように関わっていくのかを決定づける、心の地図と言えるかもしれません。
身体像の要素 | 説明 |
---|---|
外面的な要素 | 身長、体重、顔立ちなど、視覚的に捉えられる身体の特徴 |
動作や感覚、身体能力に対する評価 | 運動能力や感覚、身体スキルに対する自己評価。例:運動神経が良いと感じる、手が器用だと思うなど |
過去の経験や感情 | 過去の身体に関する経験や、それに伴う感情。例:幼少期の体型に関する褒め言葉、運動が苦手なためにからかわれた経験など |
周囲からの評価 | 他人から受ける身体に関する評価。例:家族や友人からの体型に関するコメント、メディアが提示する理想像など |
身体像と身体図式の比較
– 身体像と身体図式の比較
私たちは、自分の身体の形や大きさを認識しています。そして、その認識に基づいて、服を選んだり、身だしなみを整えたりしています。この、自分の身体に対するイメージのことを「身体像」と言います。
一方、階段を上るとき、私たちは段の高さや足の上げ方をいちいち意識していません。それでもスムーズに歩くことができるのはなぜでしょうか?
これは、「身体図式」という、無意識のうちに身体の動きを調整するシステムが働いているからです。身体図式は、身体の各部位の位置や動き、さらには周囲の空間との関係性を、瞬時に把握します。階段を上る際、私たちは無意識のうちに身体図式を用いて、足の運びや重心の移動を調整しているのです。
身体像と身体図式は、どちらも私たちの身体に関する認識ですが、その性質は大きく異なります。身体像は、視覚や触覚などの感覚情報に基づいて、意識的に形成されるものです。一方、身体図式は、過去の運動経験や感覚情報をもとに脳内で構築された、無意識的なシステムです。
身体図式は、主に脳の運動皮質や小脳などで処理されています。これらの部位は、身体の動きを計画したり、調整したりする役割を担っています。身体図式は、歩く、物を掴むといった日常的な動作から、スポーツのような複雑な動きまで、あらゆる場面で円滑な身体運動を可能にするために重要な役割を果たしているのです。
項目 | 身体像 | 身体図式 |
---|---|---|
定義 | 自分の身体の形や大きさについてのイメージ | 無意識のうちに身体の動きを調整するシステム |
特徴 | – 視覚や触覚などの感覚情報に基づく – 意識的に形成される |
– 過去の運動経験や感覚情報をもとに脳内で構築される – 無意識的なシステム |
役割 | 服選びや身だしなみなど、身体の外見に関わる行動を支える | 歩く、物を掴むなど、身体運動を円滑に行うことを可能にする |
脳の部位 | 視覚野、体性感覚野など | 運動皮質、小脳など |
身体像の変動要因
私たちの体型や顔つきといった身体的な特徴は、身体像と呼ばれ、生涯を通じて変化する柔軟なものです。特に思春期には、急激な身体の成長に伴い、身長や体重、体型が大きく変化します。このような変化は、戸惑いや不安定な感情を引き起こしやすく、自身の身体像を捉えにくくさせる要因となります。
身体像は、思春期の発達段階だけでなく、その後も様々な要因によって影響を受けます。病気や怪我、事故などは、身体機能に変化をもたらし、その結果として身体像にも大きな影響を与えることがあります。また、年齢を重ねるにつれて、身体機能は自然と衰え、体力低下や皮膚の老化などが生じます。このような加齢に伴う変化も、身体像に影響を与える要因の一つです。
さらに、現代社会においては、メディアや周囲の人々からの影響も無視できません。テレビや雑誌、インターネット上には、「痩せていること」「美しいこと」を強調する情報が溢れており、特に女性はそうした価値観にさらされやすいと言えます。周囲の人々からの何気ない言葉や態度も、無意識のうちに身体像に影響を与える可能性があります。このような社会的な圧力は、身体像を歪ませ、自己肯定感を低下させる要因となりかねません。
要因 | 詳細 |
---|---|
思春期 | 急激な身体の成長に伴い、身長や体重、体型が大きく変化する。 |
病気や怪我、事故 | 身体機能に変化をもたらし、身体像に大きな影響を与える。 |
加齢 | 身体機能の衰え、体力低下や皮膚の老化などが生じ、身体像に影響を与える。 |
メディアや周囲の人からの影響 | 「痩せていること」「美しいこと」を強調する情報や、周囲の人からの言葉や態度が、身体像を歪ませる可能性がある。 |
身体像混乱と看護の役割
事故や病気は、時に身体に大きな変化をもたらし、その変化は、それまでの人生で築き上げてきた身体のイメージと現実との間に大きな溝を生み出すことがあります。この状態は「身体像混乱」と呼ばれ、精神的な苦痛や抑うつを引き起こし、生活の質を著しく低下させる可能性があります。このような状況において、看護師は非常に重要な役割を担います。
看護師は、身体像混乱を抱える患者さんの心のケア、身体の変化への適応を支援する上で、欠かせない存在です。まず、患者さんの声にじっくりと耳を傾け、身体の変化によって生まれた不安や恐怖、悲しみ、怒りなどの感情を受け止めることが重要です。そして、患者さんが安心して自分の気持ちを打ち明けられるような、信頼関係を築くことが大切です。
身体的なケアとしては、必要に応じてリハビリテーションを提供し、患者さんが新たな身体機能を獲得し、再び日常生活を送れるようにサポートします。また、心理的なケアとして、カウンセリングなどを活用し、患者さんが変化した身体を受け入れ、新たな身体像を構築できるよう支援します。
看護師は、身体的側面と心理的側面の両面から患者さんを支えることで、患者さんが再び自分らしく、希望を持って生活できるよう、寄り添い続ける存在なのです。
役割 | 具体的な内容 |
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心のケア |
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身体的ケア | リハビリテーションを通して身体機能の獲得と日常生活への復帰を支援する |
心理的ケア | カウンセリングを通して変化した身体の受容と新たな身体像の構築を支援する |
身体像と関連する障害
私たちは、鏡に映る自分の姿や、他人から見た自分の姿を認識し、イメージを持っています。このイメージを身体像と呼びますが、様々な要因によって、この身体像が実際とは大きく異なって認識されてしまうことがあります。そして、その状態が長く続くと、精神的な問題を引き起こす可能性があります。
例えば、拒食症。これは、実際よりも自分は太っているという身体像の歪みから、過度な食事制限を行ってしまう摂食障害です。体重が減っても、その歪んだ認識は変わらず、痩せすぎの状態に陥ってしまいます。
一方、過食症は、体や体重への強い不安から、過剰に食べ物を口に入れてしまう摂食障害です。食べ過ぎた後に罪悪感から嘔吐を繰り返すことで、体重増加を防ごうとしますが、この行為自体が心身に大きな負担をかけてしまいます。
また、醜形恐怖症も、身体像の歪みが原因で起こる病気の一つです。これは、自分の顔や身体の一部分に、他人からは気づかれないようなわずかな欠点に過剰にこだわり、強い不安や恐怖を感じてしまう病気です。その結果、人前に出ることを避けたり、鏡を見ることを極端に恐れるようになります。
これらの病気は、身体像の問題だけでなく、自分自身を肯定的に捉えられない自己肯定感の低さや、周囲との良好な人間関係を築くことが難しいなど、対人関係の困難なども併発することが多く見られます。そのため、身体像の問題を抱えていると感じたら、一人で抱え込まず、早めに専門家の適切なサポートを受けることが重要です。
病気 | 概要 |
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拒食症 | 実際よりも自分は太っているという身体像の歪みから、過度な食事制限を行ってしまう摂食障害 |
過食症 | 体や体重への強い不安から、過剰に食べ物を口に入れてしまう摂食障害。食べ過ぎた後に罪悪感から嘔吐を繰り返す。 |
醜形恐怖症 | 自分の顔や身体の一部分に、他人からは気づかれないようなわずかな欠点に過剰にこだわり、強い不安や恐怖を感じてしまう病気 |