命を支える管:シャント機能不全とは?
病院での用語を教えて
先生、「シャント機能不全」って、どういう意味ですか?
体の健康研究家
いい質問ですね。「シャント」というのは、本来繋がっていない血管や臓器などを、人工的に繋ぐことを指します。で、「シャント機能不全」は、その繋いだ部分がうまく機能しなくなることなんです。
病院での用語を教えて
繋いだ部分がうまく機能しない、というとどうなるんですか?
体の健康研究家
例えば、血液透析の患者さんの場合、シャントを使って血液を体外に出してきれいにするんだけど、機能不全が起きると、血液がうまく流れなくなってしまったり、漏れてしまったりするんだ。そうすると、透析治療がうまくいかなくなってしまうんだよ。
シャント機能不全とは。
病気の治療のために、血管や体液の通り道となる管を人工的に作ったとき、詰まったり漏れたりして、本来の役割を果たせなくなっている状態を「シャント機能不全」といいます。人工的に作った管を「シャント」と呼び、血液透析や水頭症の治療などで使われています。しかし、このシャントがうまく機能しなくなってしまった状態を指す言葉が「シャント機能不全」です。
シャントとは
– シャントとは私たちの体には、血液や体液が流れるための血管や臓器など、様々な管が張り巡らされています。これらの管は、通常はそれぞれ独立して機能しており、血液や体液は決められた経路を通って全身を循環しています。しかし、病気や怪我などによって、これらの管が正常に機能しなくなることがあります。例えば、腎臓病になると、血液をきれいにする働きが低下し、体内に老廃物が溜まってしまいます。また、水頭症になると、脳の中の脳脊髄液が過剰に溜まり、脳を圧迫してしまいます。このような場合に、人工的に管をつないで、体液の迂回路を作ったり、流れを調整したりする医療技術があります。これが「シャント」です。シャントは、本来つながっていない血管や臓器の間に、人工的に作った経路のことを指します。体液を迂回させたり、流れを調整したりするために用いられます。例えば、血液透析が必要な腎臓病の患者さんの場合、血液を浄化する装置(人工透析器)にスムーズに血液を送り込むために、腕の動脈と静脈の間にシャントを作ります。このシャントは、人工透析を受ける上で欠かせないものです。また、脳に水がたまる水頭症の患者さんの場合、過剰に溜まった脳脊髄液を腹腔(お腹の中)などに流すシャントが用いられます。脳脊髄液は、このシャントを通して腹腔に吸収され、脳の圧迫を軽減することができます。このように、シャントは様々な病気の治療に役立つ重要な医療技術です。患者さんの状態や治療目的に合わせて、適切なシャントが選択されます。
シャントの種類 | 目的 | 例 |
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血液透析用シャント | 血液を浄化する装置(人工透析器)にスムーズに血液を送り込む | 腎臓病の患者さんの腕の動脈と静脈の間にシャントを作る |
水頭症治療用シャント | 過剰に溜まった脳脊髄液を腹腔(お腹の中)などに流す | 脳に水がたまる水頭症の患者さんの脳脊髄液を腹腔に吸収させ、脳の圧迫を軽減する |
シャント機能不全の症状
– シャント機能不全の症状シャント機能不全とは、手術によって体内に作られたシャントと呼ばれるバイパス経路が、様々な原因で正常に機能しなくなる状態を指します。このシャント機能不全は、主に血液透析や水頭症の治療において用いられるシャントに見られ、その症状はシャントの種類や設置場所、機能不全の程度によって大きく異なります。血液透析に用いられるシャントの場合、シャント部分の血管が狭窄したり閉塞したりすることで血流が悪くなるため、十分な透析治療が行えなくなることがあります。具体的には、透析治療中に決められた量の血液が取り出せなくなったり、治療後にシャント部分に血液が逆流したりするなどの症状が現れます。また、シャント部分に腫れや痛みを感じたり、皮膚の色が変化したりする場合もあります。さらに、血流が悪くなることで血液が固まりやすくなり、血栓(血の塊)が生じることもあります。血栓は血管を詰まらせてしまう危険性があり、場合によっては命に関わることもあります。一方、水頭症の治療に用いられるシャントは、脳脊髄液を腹腔などに排出するための管を埋め込むことで、脳内の圧力を調整する役割を担っています。このシャントが機能不全を起こすと、排出が滞った脳脊髄液が再び脳内に貯留し、脳圧が上昇することで様々な症状が現れます。具体的には、激しい頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害、歩行障害、視力障害などが挙げられます。特に乳幼児の場合、頭囲が大きくなる、泉門(頭の柔らかい部分)が膨らむなどの症状が現れることもあります。いずれのシャント機能不全も早期発見・治療が重要です。少しでも異常を感じたら、速やかに医療機関を受診してください。
シャントの種類 | 症状 | |
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血液透析用シャント |
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水頭症治療用シャント |
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シャント機能不全の原因
体内にシャントと呼ばれる人工的な血液の通り道を作ると、様々な理由でその機能が低下してしまうことがあります。これをシャント機能不全と呼びますが、その原因は多岐に渡ります。
最も多いのは、シャントの一部である血管が狭くなってしまう、もしくは完全に閉じてしまうことです。これは、血液中の成分が固まってできる血栓が血管内につまることで起こることがあります。また、シャントは人工物であるがゆえに、周囲の組織が過剰に増殖してしまい、血管を圧迫してしまうことも原因の一つとして挙げられます。
その他、シャントを血管に接続した部分から血液が漏れてしまうことや、シャントに細菌が感染することなども、機能不全を引き起こす要因となります。このように、シャント機能不全の原因は多岐に渡るため、原因を特定し適切な治療を行うことが重要となります。
シャント機能不全の原因 | 詳細 |
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血管の狭窄・閉塞 | シャントの一部である血管が、血栓の形成や周囲組織の過剰増殖によって狭くなったり、完全に閉じてしまうこと。 |
シャントからの血液漏出 | シャントを血管に接続した部分から血液が漏れてしまうこと。 |
シャントの感染 | シャントに細菌が感染すること。 |
シャント機能不全の診断
– シャント機能不全の診断
シャント機能不全は、血液透析患者さんにとって、命に関わることもある深刻な合併症です。そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要になります。
シャント機能不全が疑われる場合、医師はまず、患者さんの訴えに耳を傾け、症状を詳しく確認します。
具体的には、シャントの穿刺部位の痛みや腫れ、皮膚の発赤、透析中の血圧低下や痙攣などが挙げられます。また、シャントの聴診や触診を行い、スリル(震え)や血管音の確認を行います。
これらの診察に加えて、画像検査や血液検査を行い、機能不全の原因や程度を詳しく調べます。
超音波検査は、シャントの血流の状態や血管の狭窄、閉塞などを評価する上で非常に有用な検査です。レントゲン検査では、シャントの走行や石灰化の有無などを確認することができます。さらに詳細な検査が必要な場合は、CT検査やMRI検査を行うこともあります。
血液検査では、腎機能や貧血の程度などを評価します。これらの検査結果に基づいて、シャント機能不全の原因を特定し、適切な治療方針を決定します。
診断 | 方法 | 詳細 |
---|---|---|
臨床症状および診察 | 問診 | 穿刺部位の痛み、腫れ、皮膚の発赤、透析中の血圧低下や痙攣など |
視診・触診 | シャントの視診、聴診、触診を行い、スリル(震え)や血管音を確認 | |
聴診 | シャント上を聴診し、血管雑音の有無や強さを確認 | |
画像検査 | 超音波検査 | シャントの血流の状態、血管の狭窄、閉塞などを評価 |
レントゲン検査 | シャントの走行や石灰化の有無などを確認 | |
CT検査 | 必要に応じて、より詳細な血管の状態を評価 | |
MRI検査 | 必要に応じて、より詳細な血管の状態を評価 | |
血液検査 | 血液検査 | 腎機能や貧血の程度などを評価 |
シャント機能不全の治療
– シャント機能不全の治療シャント機能不全の治療法は、原因や症状、シャントの種類、そして患者さんの状態によって一人一人異なります。血液の流れを阻害する血栓(血の塊)が原因の場合は、血栓を溶解する薬剤を投与する薬物療法や、カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に通して血栓を取り除く治療が行われます。カテーテル治療は、薬剤を患部に直接送り届けたり、風船状の器具で血管を広げたりする治療にも応用されます。血管の狭窄や閉塞が原因でシャントが機能不全に陥っている場合は、カテーテルを用いて血管内部から狭窄部分を拡張する治療が行われます。さらに、狭窄した血管内に金属製の網目状の筒であるステントを留置することで、血管を押し広げて血流を改善する治療法もあります。ステントは体内に入れるため、材質や形状など様々な種類があります。シャント部に感染が疑われる場合は、原因となる細菌を特定し、適切な抗生物質を投与します。抗生物質は、細菌の増殖を抑えたり、殺菌することで感染の拡大を防ぎます。感染の程度が重症の場合や、他の治療法で効果が得られない場合は、シャントを作成し直す再手術が必要となることもあります。シャント機能不全の治療は、患者さんの負担を軽減し、シャントを長持ちさせることを目的としています。そのため、患者さんの状態を綿密に観察しながら、最適な治療法を選択することが重要です。
原因 | 治療法 | 詳細 |
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血栓(血の塊) | 薬物療法 | 血栓を溶解する薬剤を投与 |
血栓(血の塊) | カテーテル治療 | カテーテルで血栓を取り除く、薬剤を患部に直接送り届ける、風船状の器具で血管を広げる |
血管の狭窄や閉塞 | カテーテル治療 | カテーテルを用いて血管内部から狭窄部分を拡張する |
血管の狭窄や閉塞 | ステント留置 | 狭窄した血管内にステントを留置し、血管を押し広げて血流を改善する |
シャント部の感染 | 抗生物質投与 | 細菌の増殖を抑えたり、殺菌することで感染の拡大を防ぐ |
重症の感染、他の治療法で効果がない場合 | 再手術 | シャントを作成し直す |
シャント機能不全の予防
– シャント機能不全の予防
シャント手術は、血液透析患者さんにとって、生命を維持するために欠かせない治療法の一つです。
この手術によって、体内に人工的な血液の通り道であるシャントが作られますが、
シャントは、機能不全を起こしてしまうことがあります。
シャント機能不全は、透析治療に支障をきたし、患者さんの生活の質を低下させてしまう可能性もあるため、
日頃から予防に努めることが非常に大切です。
シャント機能不全の予防には、まず第一に清潔を保つことが重要です。
シャント部分は、細菌感染を起こしやすい状態にあるため、毎日石鹸を使って優しく洗い、清潔に保ちましょう。
また、傷口が完全に塞がっていない場合は、医師の指示に従って適切な処置を行う必要があります。
さらに、シャント部分への負担を軽減することも大切です。
重いものを持つことや、血圧を急上昇させるような激しい運動は、
シャントに負担をかけ、機能不全のリスクを高める可能性があります。
日常生活では、シャントを作った側の腕で重い荷物を持つことは避け、
激しい運動は控えめに、医師と相談しながら行うようにしましょう。
そして、定期的な診察を必ず受けるようにしましょう。
医師による定期的な診察は、シャントの状態をチェックし、
早期に問題を発見するために非常に重要です。
その他、日常生活を送る上で注意すべき点や、
少しでも気になることや不明な点がある場合は、
自己判断せずに、医師や看護師に相談するようにしてください。
シャント機能不全予防 | 具体的な方法 |
---|---|
清潔を保つ | 毎日石鹸を使って優しく洗い、清潔に保つ。傷口が完全に塞がっていない場合は、医師の指示に従って適切な処置を行う。 |
シャント部分への負担を軽減する | 重いものを持つことや、血圧を急上昇させるような激しい運動は避ける。シャントを作った側の腕で重い荷物を持つことは避け、激しい運動は控えめに、医師と相談しながら行う。 |
定期的な診察 | 医師による定期的な診察を受ける。 |
その他 | 日常生活を送る上で注意すべき点や、少しでも気になることや不明な点がある場合は、自己判断せずに、医師や看護師に相談する。 |