造血幹細胞移植と肝中心静脈閉塞症
病院での用語を教えて
先生、「肝中心静脈閉塞症」って、どんな病気なんですか?
体の健康研究家
肝臓にある、たくさんの細い血管が詰まってしまう病気だよ。特に、骨髄移植を受けた後に起こることが多いんだ。
病院での用語を教えて
血管が詰まると、どうなるんですか?
体の健康研究家
肝臓の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなって、肝臓の働きが弱くなってしまうんだ。だから、黄疸が出たり、お腹に水が溜まったりすることがあるんだよ。
肝中心静脈閉塞症とは。
「肝中心静脈閉塞症」は、医学や健康の分野で使われる言葉です。簡単に言うと、肝臓にある細い血管「類洞」に血のかたまりができてしまい、周りの肝臓の細胞が傷ついてしまう病気のことです。これは、血液のもとになる細胞を移植した後に起こる合併症の一つで、「肝類洞閉塞症候群」とも呼ばれます。
肝中心静脈閉塞症とは
– 肝中心静脈閉塞症とは肝中心静脈閉塞症(SOS)は、生命維持に欠かせない臓器である肝臓に起こる深刻な病気です。肝臓は、無数の小さな血管が網の目のように張り巡らされた構造をしています。その中でも特に、肝小葉の中心に位置し、そこから血液を送り出す役割を担うのが「中心静脈」です。肝中心静脈閉塞症では、この中心静脈、あるいはそこから枝分かれしたさらに細い血管である「類洞」と呼ばれる部分に血の塊(血栓)ができてしまいます。血液は、酸素や栄養を体の隅々まで運ぶ役割を担っています。しかし、肝臓内の血管に血栓ができてしまうと、血液の流れが滞り、肝臓の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなってしまいます。その結果、肝細胞が徐々にダメージを受け、壊死してしまうのです。以前は「肝類洞閉塞症候群(VOD)」とも呼ばれていたこの病気は、造血幹細胞移植後に起こる合併症の一つとして知られています。造血幹細胞移植は、血液のがんなどで正常な血液細胞を作れなくなった患者さんに対して行われる治療法ですが、移植後、一定の確率でこの肝中心静脈閉塞症を発症することがあります。移植を受けた患者さんにとって、肝中心静脈閉塞症は、治療の成功を左右する重大な合併症となり得るのです。
項目 | 説明 |
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肝中心静脈閉塞症(SOS)とは | 肝臓の中心静脈や類洞に血栓が生じることで、肝臓の細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、肝細胞が壊死してしまう病気。 |
中心静脈 | 肝小葉の中心に位置し、血液を送り出す役割を担う血管。 |
類洞 | 中心静脈から枝分かれした細い血管。 |
原因 | 造血幹細胞移植後の合併症の一つとして知られる。 |
旧称 | 肝類洞閉塞症候群(VOD) |
影響 | 肝臓の細胞が壊死するため、生命維持に深刻な影響を及ぼす可能性がある。 |
主な症状と経過
– 主な症状と経過肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、病気の初期段階では自覚症状が現れにくいという特徴があります。肝中心静脈閉塞症も例外ではなく、初期にはほとんど症状が現れないことが一般的です。そのため、自覚症状がないまま病気が進行してしまうケースも少なくありません。しかし、病気が進行すると、徐々に様々な症状が現れてきます。代表的な初期症状としては、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、みぞおちの右側あたりに感じる鈍い痛みが特徴の腹痛、お腹に水が溜まる腹水貯留などが挙げられます。これらの症状は、肝臓の機能が低下し始めているサインと言えるでしょう。さらに病状が進むと、全身倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐など、より強い自覚症状が現れるようになります。また、肝臓は意識にも関与しているため、意識がもうろうとする、集中力が低下するといった意識障害が現れることもあります。重症化すると、肝臓の機能が著しく低下し、生命を維持することが困難になる肝不全に陥る危険性があります。肝不全は、命に関わる非常に危険な状態です。肝中心静脈閉塞症と診断された場合は、医師の指示に従い、適切な治療を受けることが重要です。また、定期的な検査を受けるなど、早期発見、早期治療を心がけることが大切です。
段階 | 症状 |
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初期 |
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進行期 |
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重症化 |
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発症のメカニズム
肝中心静脈閉塞症は、肝臓の静脈に血栓(血の塊)が生じ、血液の流れが滞ってしまうことで起こります。この病気は、特に造血幹細胞移植を受けた後に発症することが知られていますが、その詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていません。
造血幹細胞移植の前には、患者の体内に残っているがん細胞や異常な血液細胞を 없애기 위해、大量の抗がん剤や放射線を用いた治療が行われます。この治療は、正常な細胞にもダメージを与えてしまうことがあり、特に血管の内側を覆っている内皮細胞も影響を受けます。内皮細胞は、血液が固まりにくくする役割を担っていますが、ダメージを受けるとその機能が低下し、血栓ができやすくなってしまうのです。
また、造血幹細胞移植後には、移植されたドナー由来の免疫細胞が、患者の臓器を攻撃してしまうことがあります。これは移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれる合併症の一つで、肝臓もその標的臓器となることがあります。GVHDによって肝臓に炎症が起こると、これもまた血栓形成のリスクを高める要因となります。
このように、肝中心静脈閉塞症の発症には、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。詳しいメカニズムの解明は、より効果的な予防法や治療法の開発に繋がるため、今後の研究が期待されています。
要因 | メカニズム | 結果 |
---|---|---|
造血幹細胞移植の前処置 | 抗がん剤・放射線により内皮細胞がダメージを受ける | 血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなる |
移植片対宿主病(GVHD) | ドナー由来の免疫細胞が肝臓を攻撃し、炎症が起こる | 血栓形成のリスクが高まる |
診断と治療
– 診断と治療肝中心静脈閉塞症と診断するためには、様々な検査結果を総合的に判断する必要があります。まず、血液検査では、肝臓の炎症や機能の状態を把握します。次に、画像検査を行います。超音波検査では肝臓の形態的な変化を、CT検査やMRI検査ではより詳細な血管の状態を把握することができます。これらの検査である程度の疑いが持たれた場合、最終的な確定診断のために肝生検が検討されます。肝生検は、肝臓の組織を採取して顕微鏡で調べることで、より正確な診断を可能にする検査です。しかし、肝臓に針を刺す侵襲性の高い検査であるため、患者さんの状態や年齢、他の病気の有無などを考慮し、慎重に判断する必要があります。肝中心静脈閉塞症の治療は、症状の程度や原因、病気の進行度合いによって異なり、画一的な治療法は存在しません。基本的には、現在の症状を和らげ、病気の進行を遅らせることを目的とした対症療法が中心となります。 例えば、脱水症状が見られる場合には輸液によって水分を補給します。また、腹水が溜まっている場合には、利尿薬を用いて体内の余分な水分を排出します。肝臓は栄養を貯蔵し、代謝する働きを持つため、肝臓への負担を軽減し、機能をサポートするために栄養療法も重要となります。肝中心静脈閉塞症の原因となっている病気や合併症がある場合は、それぞれの治療も並行して行われます。
検査 | 目的 | 備考 |
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血液検査 | 肝臓の炎症や機能の状態を把握する | – |
超音波検査 | 肝臓の形態的な変化を把握する | – |
CT検査、MRI検査 | 詳細な血管の状態を把握する | – |
肝生検 | 肝臓の組織を採取し、顕微鏡で調べることで、より正確な診断を行う | 侵襲性の高い検査のため、慎重に判断する必要がある |
予防と今後の展望
肝中心静脈閉塞症は、早期発見と適切な治療が肝要となる疾患です。発症すると命に関わる可能性もあり、早期発見と適切な治療開始が予後を大きく左右します。
肝中心静脈閉塞症は、造血幹細胞移植の前後に発症することが多いため、移植前後の定期的な検査が重要となります。具体的には、肝臓の機能を調べる血液検査や、肝臓の状態を画像で確認する超音波検査、MRI検査などを定期的に実施することで、早期発見を目指します。
肝中心静脈閉塞症の発症リスクを低減するため、様々な研究が進められています。例えば、移植前の準備段階における処置方法の改善や、移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤の選択など、様々な角度からの研究が進んでいます。これらの研究によって、将来的にはより安全かつ効果的な予防法や治療法が確立されることが期待されます。
肝中心静脈閉塞症は、まだ原因や発症の仕組みが完全には解明されていない病気です。しかし、世界中の医療機関で研究が進められており、新たな治療法や予防法の開発が期待されています。
項目 | 詳細 |
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重要性 | 早期発見と適切な治療が肝要 (予後を大きく左右) |
発症時期 | 造血幹細胞移植の前後 |
早期発見のための検査 | – 血液検査 (肝臓の機能) – 超音波検査 (肝臓の状態) – MRI検査 (肝臓の状態) |
発症リスク低減のための研究 | – 移植前の準備段階における処置方法の改善 – 移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤の選択 |
今後の展望 | – 新たな治療法や予防法の開発 |