褥瘡治癒の客観的評価:DESIGN®
病院での用語を教えて
先生、DESIGN®って何ですか?聞いたことはあるんですけど、よく分からなくて…
体の健康研究家
DESIGN®はね、簡単に言うと、床ずれがどれくらいひどいか、治りそうかを見るための道具のことだよ。褥瘡(じょくそう)って言うんだけど、床ずれの治り具合を判断するために、日本褥瘡学会が作ったんだ。
病院での用語を教えて
道具っていうのは、何を使うんですか?
体の健康研究家
DESIGN®自体は道具じゃなくて、見るポイントがいくつか決まっていて、そのポイントごとに点数をつけて、合計点で床ずれの深さや治りやすさを判断するんだよ。例えば、傷の深さや大きさ、滲出液の量、周りの皮膚の状態などを観察して点数をつけるんだね。
DESIGNとは。
「DESIGN」とは、床ずれについて考える時によく使われる言葉で、「デザイン」と読みます。これは、2002年に日本の床ずれの専門家たちが作った、床ずれがどれくらい治ってきたかを判断するための道具です。床ずれが悪化している最中の時は、この道具は使わないことになっています。
褥瘡ケアにおけるDESIGN®の役割
褥瘡は、寝たきりや車椅子での生活を長く続けることなどによって、体の同じ場所に体重がかかり続けることで起こる皮膚の損傷です。このような状態が続くと、皮膚やその下の組織が傷ついてしまい、痛みや炎症を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
褥瘡のケアにおいては、傷の治り具合を正しく見極め、適切な治療方針を立てることが非常に重要になります。しかし、褥瘡は見た目の変化がわかりにくく、経験の浅い医療従事者にとってはその評価が難しい場合もあります。
そこで開発されたのがDESIGN®というツールです。DESIGN®は、褥瘡の大きさや深さ、傷の状態などを数値化することで、褥瘡の治り具合を客観的に評価することを可能にしました。このツールは、医療従事者間での情報共有をスムーズにするだけでなく、患者さん自身にもわかりやすく褥瘡の状態を説明できるというメリットもあります。
現在、DESIGN®は日本の褥瘡ケアの現場で広く活用されており、多くの医療機関で褥瘡ケアの質向上に貢献しています。特に、高齢化社会が進む日本において、褥瘡は重要な医療問題となっており、DESIGN®のような効果的なツールの活用は、患者さんの生活の質の向上に大きく寄与するものと期待されています。
項目 | 説明 |
---|---|
褥瘡とは | 寝たきりや車椅子生活などで、体重が体の同じ場所にかかり続けることで起こる皮膚の損傷 |
褥瘡ケアの課題 | 傷の治り具合の評価が難しく、適切な治療方針を立てるのが困難 |
DESIGN®とは | 褥瘡の大きさ、深さ、状態などを数値化し、客観的に評価できるツール |
DESIGN®の効果 | – 褥瘡の治り具合を客観的に評価可能 – 医療従事者間での情報共有をスムーズ化 – 患者への褥瘡の状態の説明をわかりやすくする |
DESIGN®の現状と期待 | – 日本の褥瘡ケアの現場で広く活用 – 高齢化社会における褥瘡ケアの質向上に貢献 – 患者さんの生活の質の向上に寄与 |
DESIGN®の特徴
– DESIGN®の特徴DESIGN®は、褥瘡の治癒過程を評価するための観察指標であり、その名称は、評価の際に注目すべき六つの重要な要素の頭文字から名付けられました。 褥瘡の大きさ(Size)、滲出液の量(Exudate)、創部の深さ(Depth)、炎症の程度(Inflammation)、肉芽の状態(Granulation tissue)、壊死組織の有無(Necrotic tissue)の六つです。それぞれの要素について、観察項目が細かく設定されており、例えば大きさであれば、長さと幅を測定し、面積を計算します。滲出液であれば、量だけでなく、色や粘性なども評価します。創部の深さについては、最も深い部分を測定します。炎症の程度は、発赤や腫脹の範囲、熱感などを観察します。肉芽の状態は、色や量、性状などを評価します。壊死組織については、有無だけでなく、色や量、性状なども評価します。このように、DESIGN®では、それぞれの要素について詳細な観察項目が設定されており、点数化することで客観的な評価を可能にしています。従来は、医療従事者によって褥瘡の評価が異なってしまう場合がありましたが、DESIGN®を用いることで、医療従事者間で統一的な評価が可能となり、情報共有がスムーズになります。その結果、患者さんに対して、より適切で質の高い治療を提供できるようになります。
評価項目 | 詳細 |
---|---|
Size (大きさ) | 長さ、幅、面積を測定 |
Exudate (滲出液) | 量、色、粘性を評価 |
Depth (深さ) | 最も深い部分を測定 |
Inflammation (炎症) | 発赤、腫脹の範囲、熱感を観察 |
Granulation tissue (肉芽) | 色、量、性状を評価 |
Necrotic tissue (壊死組織) | 有無、色、量、性状を評価 |
DESIGN®の活用場面
– DESIGN®の活用場面DESIGN®は、褥瘡の治癒に向けた経過を評価し、適切な治療方針を決定するために用いられる有効なツールです。しかし、その適用範囲は、治癒過程にある慢性期の褥瘡に限定されます。褥瘡は、発生初期の急性期には、炎症反応が強く、組織の損傷が進行している状態です。この時期には、DESIGN®の評価項目である、創面の大きさ、深さ、滲出液の量などが大きく変動しやすく、正確に評価することが困難です。そのため、DESIGN®は急性期の褥瘡には適していません。一方、褥瘡が慢性期に移行すると、炎症反応が落ち着き、創面は治癒に向かっていきます。この時期の褥瘡に対してDESIGN®を用いることで、創面の大きさや深さの変化、肉芽組織の形成状況、滲出液の量や性状などを経時的に評価することができます。これらの情報は、褥瘡の治癒過程を客観的に把握し、適切な治療を選択する上で非常に重要となります。定期的にDESIGN®を用いて評価を行うことで、治癒の進捗状況を把握することができます。もし、DESIGN®による評価の結果、治癒が遅延している場合や、逆に悪化の兆候が見られる場合には、速やかに治療内容を見直す必要があります。このように、DESIGN®は、慢性期の褥瘡の経過観察や治療方針の決定に活用されることで、より効果的な褥瘡治療に貢献します。
褥瘡の段階 | DESIGN® の適用 | 特徴 | DESIGN® による評価 |
---|---|---|---|
急性期 | ❌ 適用不可 | – 炎症反応が強い – 組織損傷が進行中 – 創面の状態が不安定 |
– 評価項目が大きく変動しやすく、正確な評価が困難 |
慢性期 | ✅ 適用可能 | – 炎症反応が落ち着いている – 創面は治癒に向かっている |
– 創面の大きさや深さの変化 – 肉芽組織の形成状況 – 滲出液の量や性状 – 治癒の進捗状況 |
DESIGN®の限界
DESIGN®は、褥瘡の治療効果を客観的に評価するための指標として、医療現場で広く活用されています。これは、傷の大きさや深さ、滲出液の量といった、具体的な観察項目に基づいて数値化することで、傷の状態をより正確に把握できるという利点があります。
しかしながら、DESIGN®はあくまで褥瘡の治癒過程の一側面を捉えたものに過ぎず、この点数だけに基づいて治療方針を決定してしまうことには限界があります。
褥瘡の治療においては、DESIGN®の点数に加えて、患者さん一人ひとりの全身状態や生活環境、褥瘡が発生した部位や原因などを総合的に判断することが不可欠です。例えば、糖尿病や栄養状態が悪いなどの基礎疾患を抱えている患者さんの場合、DESIGN®の点数だけでは治癒が遅延する可能性を十分に評価できないことがあります。また、体の同じ部位に繰り返し褥瘡が発生するような場合は、体位変換の方法や頻度を見直すなど、褥瘡の原因そのものを取り除くためのケアが重要になります。
このように、褥瘡の治療は、DESIGN®の点数のみで判断できるほど単純ではありません。DESIGN®は、あくまで様々な要素を判断する上での参考情報の一つとして捉え、患者さんにとって最適な治療方針を決定するために活用していくことが大切です。
項目 | 内容 |
---|---|
DESIGN®のメリット | 傷の大きさ、深さ、滲出液の量を数値化することで、褥瘡の状態を客観的に評価できる。 |
DESIGN®の限界 | 褥瘡の治癒過程の一側面しか捉えられないため、点数だけで治療方針を決定するには限界がある。 |
褥瘡治療で考慮すべき要素 |
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DESIGN®との適切な付き合い方 | あくまで参考情報の一つとして捉え、患者にとって最適な治療方針決定に役立てる。 |
DESIGN®の普及と今後の展望
2002年に日本褥瘡学会が提唱したDESIGN®は、日本の褥瘡ケアの現場に急速に浸透し、現在では無くてはならない存在となっています。これは、褥瘡の治癒過程を評価する上で、医療従事者にとって使いやすく、かつ客観的な指標となるツールとして、DESIGN®が広く受け入れられたことを意味しています。
DESIGN®は、今後もさらに普及し、進化していくことで、日本の褥瘡ケアの質の向上に大きく貢献していくことが期待されています。特に、近年進展が著しいICT技術を活用した褥瘡管理システムの開発によって、DESIGN®の評価結果を電子カルテと連携させることが可能となり、より効率的かつ精度の高い褥瘡ケアの実現が期待されます。
褥瘡ケアは、患者の生活の質を大きく左右する重要なケアです。DESIGN®の普及と進化は、医療従事者一人ひとりが質の高い褥瘡ケアを提供することへの意識向上を促し、患者さんがより快適な入院生活を送れるようサポートすることに繋がると考えられています。
項目 | 内容 |
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概要 | 2002年に日本褥瘡学会が提唱した褥瘡の治癒過程を評価するツール。医療従事者にとって使いやすく、客観的な指標として広く受け入れられている。 |
現状 | 日本の褥瘡ケアの現場に急速に浸透し、無くてはならない存在となっている。 |
将来展望 | ICT技術を活用した褥瘡管理システムとの連携により、より効率的かつ精度の高い褥瘡ケアの実現が期待される。 |
意義 | 医療従事者の褥瘡ケアに対する意識向上を促し、患者の快適な入院生活をサポートする。 |