T細胞

アレルギー

自己と非自己を見分ける力:中枢性免疫寛容

私たちの体は、常に外界から侵入を試みる病原体やウイルスなどの異物から身を守るために、免疫システムを備えています。このシステムは、まるで門番のように、体にとって何が「自己」であり、何が「非自己」であるかを常に監視し、見分けています。「非自己」と判断されたものに対しては、排除するために攻撃を仕掛けますが、「自己」に対しては攻撃しないように抑制する、精巧な仕組みが備わっています。 この、「自己」に対する免疫反応を抑え、攻撃しない状態を「免疫寛容」と呼びます。免疫寛容は、私たちの体が自分自身を攻撃してしまう「自己免疫疾患」を防ぐために非常に重要な役割を担っています。 特に、免疫寛容の中でも重要な概念として「自己寛容」があります。これは、体が本来持っている成分や組織に対して免疫反応を起こさないことを指します。自己寛容が破綻すると、免疫システムが自分自身の細胞や組織を「非自己」と誤って認識し、攻撃してしまうことがあります。その結果、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を発症してしまうのです。 このように、免疫寛容、特に自己寛容は、私たちの体が正常に機能するために欠かせないものです。この複雑な仕組みを理解することで、自己免疫疾患の予防や治療法の開発に繋がることが期待されています。
その他

免疫の鍵! リンパ節の「傍皮質」とその役割

私たちの体には、リンパ節と呼ばれる、大きさ数ミリメートルから数センチメートルほどの小さな器官が無数に存在しています。リンパ節は全身に分布しており、特に首、脇の下、足の付け根などに多く見られます。リンパ節は、リンパ管と呼ばれる細い管で網の目のようにつながっており、体の中を流れるリンパ液が通過する場所となっています。 リンパ節は、細菌やウイルスなどの病原体から体を守る免疫システムにおいて非常に重要な役割を担っています。リンパ液は、血液とともに体中を巡り、老廃物や病原体などを運びます。リンパ節は、リンパ液を濾過して、これらの異物を除去する働きを持っています。 リンパ節の内部は、皮質、傍皮質、髄質と呼ばれる3つの主要な領域に分けられます。皮質は、リンパ節の外側に位置し、リンパ球が集まったリンパ小節と呼ばれる構造が見られます。リンパ小節は、B細胞と呼ばれるリンパ球が多く存在し、抗体を作って病原体を攻撃します。傍皮質は、皮質と髄質の間に位置し、T細胞と呼ばれるリンパ球が多く存在します。T細胞は、ウイルス感染細胞やがん細胞を直接攻撃する働きがあります。髄質は、リンパ節の中心に位置し、リンパ球やマクロファージなど多くの免疫細胞が存在します。髄質では、病原体や異物が処理され、排除されます。 このように、リンパ節は免疫システムにおいて重要な役割を担っており、私たちの健康を守っています。
アレルギー

免疫の鍵!CD80/CD86分子の役割

私たちの体は、常に病原体や異常な細胞の脅威にさらされています。体内には、まるで精巧な防衛システムのように、それらの脅威から身を守るための免疫システムが備わっています。この免疫システムにおいて、様々な免疫細胞がそれぞれ重要な役割を担っていますが、その中でも特に重要なのが細胞同士の情報伝達です。まるで会話をするかのように、免疫細胞は互いに情報を交換し、協調して働いています。この細胞間コミュニケーションにおいて、司令塔のような役割を果たすのが抗原提示細胞(APC)です。APCは、体内に侵入した病原体や体内で発生した異常な細胞を見つけると、それらを捕獲し、その断片である抗原を細胞表面に提示します。これは、例えるなら、敵の情報が入った報告書を掲げているようなものです。この報告書を受け取るのが、T細胞と呼ばれる免疫細胞です。T細胞は、APCから提示された抗原を認識することで、敵の存在を認識し、攻撃の準備を始めます。しかし、T細胞は抗原を認識しただけでは、本格的な攻撃を開始することはありません。T細胞が完全に活性化し、効果的に敵を攻撃するためには、APCからの更なる指示、すなわち共刺激シグナルが必要となります。この共刺激シグナルは、APCからT細胞に送られる活性化のメッセージのようなものです。T細胞は、抗原の提示と共刺激シグナルの両方を受け取ることで、確信を持って敵を攻撃することができます。このように、抗原提示と共刺激シグナルという二つの重要なステップを踏むことで、私たちの体は効果的に病原体や異常な細胞を排除し、健康を維持することができるのです。
血液

免疫の司令塔:CD4陽性T細胞

私たちの身体は、外界から常に細菌やウイルスなどの病原体の侵入を受けています。体内では、これらの病原体から身を守るために、免疫と呼ばれる防御システムが働いています。免疫システムは、体内に侵入した病原体を異物として認識し、攻撃する仕組みです。この免疫システムにおいて、中心的な役割を担う細胞の一つがT細胞です。T細胞は、骨髄で造られた後、胸腺という器官で成熟します。 胸腺での成熟過程を経て、T細胞は自己と非自己を区別し、非自己である病原体のみを攻撃できるようになります。 成熟したT細胞は、血液に乗って全身を巡回し、病原体が侵入していないかパトロールを続けます。この時、T細胞は、体内の他の細胞が「自分」であることを示すマークを認識することで、自分自身を攻撃することはありません。 T細胞は、大きく分けて、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞の3つの種類に分けられます。ヘルパーT細胞は、病原体を認識すると、他の免疫細胞を活性化する物質を放出し、免疫反応を促進します。キラーT細胞は、病原体に感染した細胞やがん細胞を直接攻撃して破壊します。制御性T細胞は、免疫反応が過剰になりすぎないように抑制する役割を担います。 このように、T細胞は、それぞれの種類が独自の役割を持つことで、協調して働き、私達の体を病原体から守っているのです。
検査

免疫の主役、T細胞を見つける鍵:CD3

私たち人間は、目には見えないウイルスや細菌など、健康を脅かす様々な外敵に常に囲まれながら生活しています。しかし、多くの人は病気にかかることなく、健康的な毎日を送ることができています。それは、私たちの体内に、生まれながらに備わっている「免疫」という優れた防御システムが備わっているからです。 免疫システムは、体内に侵入してきた異物を常に監視し、見つけ次第排除しようとします。この複雑な免疫システムにおいて、司令塔のような重要な役割を担っているのが「T細胞」です。T細胞は、血液中の白血球の一種で、体内をくまなくパトロールし、外敵の侵入を監視しています。 T細胞は、侵入者を発見すると、自ら攻撃を仕掛けるだけでなく、他の免疫細胞に攻撃を指示するなど、状況に応じて適切な対応を行います。 例えば、ウイルスに感染した細胞を見つけると、T細胞は、その細胞を直接攻撃して破壊します。また、細菌などの異物を発見した場合には、B細胞と呼ばれる免疫細胞に指令を出し、抗体と呼ばれる攻撃物質を作らせます。 このように、T細胞は、状況に応じて的確に判断し、他の免疫細胞とも連携しながら、私たちの体を守ってくれています。免疫の司令塔であるT細胞が、正しく機能することで、私たちは健康を維持することができるのです。
血液

免疫の精鋭部隊:CD8陽性T細胞

私たちの体には、まるで門番のように、外から侵入してくる病原体から体を守る仕組みが備わっています。これを免疫と呼びますが、この免疫システムにおいて中心的な役割を担っているのが、血液中に存在する白血球の一種であるリンパ球です。 リンパ球の中でも、胸腺と呼ばれる器官で成熟し、体内に侵入してきた病原体や、ウイルスに感染した細胞、がん細胞などを攻撃するのがT細胞です。T細胞は、免疫の司令塔として、そして最前線の戦士として活躍しています。 T細胞の表面には、T細胞受容体(TCR)と呼ばれる特殊なタンパク質が存在します。このTCRは、まるで鍵と鍵穴の関係のように、特定の抗原のみを認識することができます。抗原とは、細菌やウイルスなどの病原体の一部、あるいは、自分自身の細胞が変化した際に現れる物質のことを指します。 T細胞は、このTCRを用いて、体内をパトロールし、抗原を発見すると活性化します。活性化したT細胞は、攻撃用のタンパク質を放出して、病原体や感染細胞を直接攻撃したり、他の免疫細胞に攻撃を指示したりします。 このように、T細胞は、体内を常に監視し、病原体などの脅威から私たちを守ってくれる、まさに「免疫の守護者」と言えるでしょう。
血液

免疫細胞を制御するCD25

- CD25とは私たちの体には、体内に入ってきた異物や、体内で発生した異常な細胞から身を守るための、免疫と呼ばれる仕組みが備わっています。この免疫システムは、様々な種類の細胞が複雑に連携することで成り立っており、その中でも特に重要な役割を担っているのが、免疫細胞です。免疫細胞は、体の中をパトロールし、異物や異常な細胞を見つけると攻撃を仕掛けます。この時、免疫細胞は、それぞれの細胞が持つ特有のタンパク質を目印にして、敵か味方かを判断しています。この目印となるタンパク質のことを、一般的に表面抗原と呼びますが、CD25もこの表面抗原の一つです。CD25は、インターロイキン-2受容体α鎖とも呼ばれ、細胞の表面に存在しています。このCD25は、全ての免疫細胞に均等に存在するわけではなく、特定の種類の免疫細胞に多く発現しています。その代表例が制御性T細胞と呼ばれる細胞です。制御性T細胞は、その名の通り、免疫の働きを抑制的に制御する役割を担っています。免疫は、私たちの体を守るために非常に重要なシステムですが、過剰に働いてしまうと、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。このような自己免疫疾患の発症を抑えるためには、免疫の働きを適切に制御することが重要であり、制御性T細胞は、その役割を担う重要な細胞です。CD25は、この制御性T細胞の表面に多く発現していることから、制御性T細胞を識別するための重要な指標として用いられています。医学研究の分野では、血液中のCD25の発現量を調べることで、自己免疫疾患の発症リスクや、免疫抑制療法の効果などを予測する試みなどが行われています。
血液

免疫の要: CD40の役割

私たちの体には、体内に入り込もうとする細菌やウイルスなどの病原体から身を守る、巧妙な仕組みが備わっています。これを免疫システムと呼びますが、このシステムでは、様々な種類の細胞がまるで会話をするように情報をやり取りすることで、効果的に病原体を排除しています。 細胞同士の情報伝達の手段はいくつかありますが、その中でも重要な役割を担っているのが、細胞の表面に突き出たタンパク質です。こうしたタンパク質は、細胞の種類ごとに異なっており、特定の相手とだけ結合することで、情報をやり取りします。 CD40も細胞表面に存在するタンパク質の一つで、抗体を作る役割を担うB細胞という細胞の表面に特に多く存在しています。抗体とは、特定の病原体のみに結合して、それを無力化する働きを持つタンパク質です。B細胞は、体内をパトロール中に病原体を発見すると、その病原体にぴったりの形の抗体を作り出し、攻撃を仕掛けます。 しかし、B細胞は一人で働くことはできません。B細胞が抗体を効率よく作り出すためには、他の免疫細胞からの指示が必要です。この指示を出す役割を担うのが、ヘルパーT細胞と呼ばれる細胞です。ヘルパーT細胞は、B細胞に結合し、活性化シグナルと呼ばれる特別な情報を伝えます。 CD40は、まさにこの活性化シグナルを受け取るためのアンテナとして機能します。ヘルパーT細胞の表面には、CD40にピッタリと結合するタンパク質(CD40リガンドと呼ばれます)が存在します。このCD40リガンドとCD40が結合することで、B細胞は活性化し、抗体を効率的に産生することができるようになるのです。
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