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外科

掻爬:その役割と医療現場における適用例

- 掻爬とは何か掻爬とは、体表面や体腔内にある組織の一部を、専用の器具を使って削り取る医療行為のことを指します。この行為は、皮膚の表面から子宮内膜といった体の深部まで、様々な部位に対して行われます。掻爬に用いられる器具は、採取する組織や部位によって形状が異なります。例えば、皮膚表面の細胞を採取する場合は、へらのような形をした器具を用います。一方、子宮内膜を採取する場合は、細い管状の器具を用います。掻爬は、大きく分けて二つの目的で行われます。一つは、病気の診断です。採取した組織を顕微鏡で観察することで、癌などの病気の有無を調べることができます。もう一つは、治療です。例えば、子宮内膜症や子宮筋腫などの治療において、病変部を削り取る目的で掻爬が行われることがあります。掻爬は、一般的にメスで切開して病変部を切除する手術と比較して、身体への負担が少ない処置であると考えられています。しかし、体内に器具を挿入するため、出血や感染などのリスクが全くないわけではありません。掻爬を受ける際は、医師から施術の方法やリスクについて十分な説明を受け、納得した上で受けることが重要です。
外科

鼠径ヘルニアとは?

鼠径ヘルニアは、太ももの付け根の少し上、脚の付け根と下腹部の間にできる病気です。この部分は「鼠径部」と呼ばれ、お腹の中の腸などを支える筋肉や組織でできています。 通常、これらの筋肉や組織は強固で、お腹の中の臓器をしっかりと支えています。しかし、加齢や重いものを持つなどの負担、生まれつきの体質などが原因で、この部分が弱くなってしまうことがあります。 鼠径部の筋肉や組織が弱くなると、お腹の中の腸などが、その隙間から皮膚の下に飛び出してきてしまいます。これが鼠径ヘルニアです。飛び出した部分は、触ると柔らかく、押し戻せることもあります。 鼠径ヘルニアは、男性に多くみられます。これは、男性の鼠径部には、精巣に繋がる管が通っているため、構造的に弱くなっている部分があるためです。 鼠径ヘルニアは、自然に治ることはありません。治療には、一般的に手術が必要となります。鼠径ヘルニアかなと思ったら、早めに医療機関を受診しましょう。
外科

手術の進化:組織接着剤とその役割

組織接着剤は、手術や怪我の治療において、組織や臓器を繋ぎ合わせるために用いられる医療材料です。これは、例えるならば、体の中で傷口を塞ぐために働く血液凝固の仕組みを人工的に再現したものです。私たちの血液中には、トロンビンとフィブリノゲンと呼ばれる成分が含まれています。組織接着剤は、これらトロンビンとフィブリノゲンを主成分として作られています。組織や臓器の切断面に組織接着剤を塗布すると、トロンビンとフィブリノゲンが反応して、フィブリンと呼ばれる繊維状のタンパク質が生成されます。このフィブリンが網目状に組織を包み込み、接着力を発揮することで、傷口を素早く塞ぎます。このことから、組織接着剤はフィブリン糊とも呼ばれています。組織接着剤は、従来の縫合糸やホッチキスを用いる方法と比べて、出血や空気の漏れを効果的に防ぐことができます。また、手術時間を短縮できる、傷跡が目立ちにくいなどの利点もあります。そのため、近年、組織接着剤は、従来の方法に代わる、あるいは補完する手段として、多くの医療現場で注目されています。
看護技術

医療現場における側臥位の重要性

- 側臥位とは側臥位とは、その名の通り、身体を横にしている姿勢のことを指します。多くの人にとって、眠るときや休んでいるときに、自然とる姿勢の一つでしょう。 右側を下にするか左側を下にするかで、「右側臥位」「左側臥位」と区別することもあります。この姿勢は、楽に呼吸ができる、身体への負担が少ないといった利点があるため、リラックスするのに適しています。 実際、多くの人が、無意識のうちに睡眠中にこの姿勢をとっているのではないでしょうか。しかしながら、医療の現場においては、患者さんの状態によっては、注意が必要な姿勢となる場合もあります。 例えば、体の片側に麻痺がある患者さんや、褥瘡(床ずれ)のリスクが高い患者さんの場合、体重がかかる部分に負担が集中し、症状が悪化する可能性があります。 そのため、医療従事者は、患者さんの状態を適切に判断し、必要があれば、枕やクッションなどを用いて身体を支え、負担を軽減するなどの配慮を行う必要があります。また、妊娠中の女性、特に後期には、左側臥位が推奨されることがあります。 これは、左側臥位をとることで、心臓への負担を軽減し、胎児への血流を良くする効果があるとされているためです。このように、側臥位は、自然で楽な姿勢である一方、医療現場においては、患者さんの状態に合わせて、注意深く対応していく必要があります。
産婦人科

一度は妊娠経験があっても?続発性不妊症について

- 続発性不妊症とは 「続発性不妊症」とは、過去に妊娠や出産を経験していながらも、その後は妊娠に至らない状態のことを指します。 例えば、「一人目は比較的スムーズに授かったのに、二人目がなかなかできない」、「一度流産を経験してから、妊娠しなくなった」というような場合が、続発性不妊症に当てはまります。 妊娠・出産経験があることから、周囲からは「またそのうちできるでしょ」「一人いるんだから大丈夫」などと思われがちで、悩みを打ち明けにくいという側面も持ち合わせています。 実は、不妊治療を受けている方の約半数は、この続発性不妊症に該当すると言われています。決して珍しいものではなく、多くの方が抱える悩みの一つなのです。
循環器

血管の危険!塞栓症とは?

私たちの体の中には、まるで網の目のように張り巡らされた血管があり、血液が体内をくまなく巡っています。この血液は、生命維持に欠かせない酸素や栄養を体の隅々まで運び届ける役割を担っています。しかし、何らかの原因でこの血管が詰まってしまうことがあります。その結果、血液が行き渡らなくなった組織は酸素や栄養が不足し、深刻な状態に陥ってしまうのです。 では、一体何が血管を詰まらせてしまうのでしょうか?血管を塞いでしまう物質を塞栓子と呼びますが、その正体は様々です。 最も一般的な塞栓子は、血液の塊である血栓です。血管が傷ついたり、血流が悪くなったりすると、血液が固まって血栓ができやすくなります。この血栓が血管から剥がれて流れ出し、細い血管に詰まってしまうことがあります。 また、悪性腫瘍の一部が剥がれ落ち、血流に乗って別の場所に運ばれて血管を詰まらせることもあります。さらに、脂肪や空気なども塞栓子となることがあります。例えば、骨折をした際に骨髄中の脂肪が血管に入り込んだり、医療ミスで血管内に空気が入ってしまったりすることがあります。 このように、血管を塞ぐ原因は多岐に渡り、命に関わる危険性も孕んでいます。日頃から血管の健康を意識し、血流を良好に保つことが重要です。
産婦人科

掻爬:その役割と医療現場での活用

- 掻爬とは何か掻爬(そうは)とは、体表面や体腔内の組織の一部を、専用の器具を使って削り取る医療行為です。 この際用いられる器具には、主に「キュレット」と「ルーメン」の二種類があります。「キュレット」は、先端がスプーンのような形をしており、その縁に鋭い刃が付いています。 一方、「ルーメン」は、先端にループ状の刃が付いており、組織を切除する際に用いられます。 これらの器具は、患部や目的に応じて使い分けられます。掻爬は、主に病変部や不要な組織を取り除く目的で行われます。 例えば、子宮頸がんの検査や治療、子宮内膜ポリープの切除、中絶手術など、様々な場面で用いられます。 また、皮膚の病変部を採取して検査する際にも、掻爬が行われることがあります。掻爬は、比較的簡便な処置ではありますが、体内に器具を挿入するため、痛みや出血を伴うことがあります。 また、稀に感染症などの合併症を引き起こす可能性もあります。 施術を受ける際には、医師から事前に説明を受け、疑問点や不安な点は解消しておくようにしましょう。
循環器

血管の脅威:塞栓症とは

私たちの体内には、全身に酸素や栄養を運ぶために、網の目のように血管が張り巡らされています。まるで、体の中を流れる「生命の道」とも言えるでしょう。しかし、この重要な血管が何らかの原因で詰まってしまうことがあります。これを塞栓症と呼びます。 では、一体何が血管を塞いでしまうのでしょうか?その原因となる物質を塞栓子と呼びます。 塞栓子には、いくつかの種類があります。 まず、血液が固まってできる血栓が挙げられます。これは、血管の内側に傷ができたり、血流が悪くなったりすることで形成されやすくなります。 また、腫瘍が原因となることもあります。腫瘍の一部が剥がれ、血流に乗って別の場所に運ばれ、血管を塞いでしまうのです。 さらに、脂肪も塞栓子となることがあります。骨折などをした際に、骨の中の脂肪が血管に入り込み、塞栓症を引き起こす場合があるのです。 その他にも、空気が血管内に侵入することで塞栓症が起こるケースもあります。これは、医療行為中の事故などで起こることがあります。 このように、塞栓子には様々なものが考えられます。塞栓症は命に関わることもあるため、予防や早期発見、適切な治療が非常に重要です。
その他

肩こりの原因にも? 僧帽筋の構造と働き

首の付け根から肩、背中の上部にかけて大きく広がる僧帽筋は、その名の通り、僧侶がかぶる帽子(頭巾)に似た形をしていることから名付けられました。英語では「台形」を意味する"Trapezius"と呼ばれ、こちらは台形に似た形に由来しています。 僧帽筋は、肩や首の動きに関わる重要な筋肉です。肩甲骨を上下左右に動かすことで、腕を様々な方向に動かすことを可能にしています。例えば、重い物を持ち上げる時、洗濯物を干す時、バンザイをする時など、日常生活の様々な動作で活躍しています。 また、僧帽筋は姿勢を維持するためにも重要な役割を担っています。デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、僧帽筋が緊張し、肩こりや首こりの原因になることがあります。こりを解消し、美しい姿勢を保つためには、僧帽筋のストレッチや筋トレなど、適切なケアを行うことが大切です。
循環器

血管の危険!塞栓症とは?

私たちの体の中には、網の目のように血管が張り巡らされています。血管は、体中に酸素や栄養を運ぶために、休みなく血液を送り届けるという重要な役割を担っています。 しかし、この血管が何らかの原因で詰まってしまうことがあります。これを塞栓症といいますが、一体何が原因で血管は詰まってしまうのでしょうか? 血管を詰まらせてしまう原因となる物質を、塞栓子といいます。塞栓子は、血液の流れに乗って体内を移動し、血管よりも細い部分に差し掛かると、そこで詰まってしまいます。その結果、血液の流れが滞り、酸素や栄養が臓器や組織に届かなくなってしまいます。 塞栓子には、いくつかの種類があります。最も多いのは、血液中にできた血のかたまりである血栓です。その他にも、脂肪や空気、腫瘍細胞の一部などが塞栓子となることがあります。 塞栓症は、詰まった血管の種類や場所によって、様々な症状を引き起こします。例えば、脳の血管が詰まると脳梗塞、心臓の血管が詰まると心筋梗塞、肺の血管が詰まると肺塞栓症を発症します。 塞栓症は命に関わることもあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
看護技術

安全な側臥位:患者さんのための基礎知識

- 側臥位とは?側臥位とは、身体を横に向けて寝る姿勢のことを指します。 楽な姿勢に思えますが、患者さんの状態によっては注意が必要です。特に、全身麻酔後や集中治療室に入室中の患者さんの場合、意識が朦朧としていたり、身体を動かす力が入らなかったりすることがあります。 また、脳梗塞などで片麻痺のある患者さんの場合も、自分の意思で身体を動かすことが難しい場合があります。 このような場合、長時間同じ姿勢を続けていると、体重で圧迫される部分に負担がかかり続け、血流が悪くなってしまいます。 その結果、皮膚が赤くなったり、水ぶくれができたりする褥瘡(床ずれ)や、神経が圧迫されることによる神経障害などの合併症のリスクが高まります。そのため、患者さんが楽な姿勢だと感じていても、定期的に体位変換を行うことが重要です。 体位変換を行うことで、身体への負担を分散し、褥瘡や神経障害などの合併症を予防することができます。 また、体位変換は、呼吸を楽にしたり、誤嚥を予防したりする効果も期待できます。患者さんの状態に合わせて、適切なケアを行うように心がけましょう。
その他

続発性について

- 続発性とは何かがきっかけとなって、その後もずっと症状や影響が出続けることを「続発性」と言います。これは、病気や怪我の後遺症、薬の副作用、心の傷による影響など、様々な場面で見られます。例えば、交通事故で頭を強く打ったとします。その時は意識が戻っても、後になってから頭痛や記憶障害、めまいなどが続くことがあります。これは事故による脳へのダメージが原因で起こる「続発性」の症状です。また、風邪薬を飲んだ後に、眠気やだるさ、吐き気などの症状が出ることもあります。これも薬の作用が体に影響を与え続ける「続発性」の副作用です。心の傷の場合、つらい経験をした後に、その時の記憶や感情がフラッシュバックしたり、悪夢にうなされたりすることがあります。これも過去の出来事が心に影を落とし続ける「続発性」の影響と言えるでしょう。このように、「続発性」は、最初の原因から時間が経ってから現れることもあります。そのため、いつもと違う症状や変化があれば、過去の出来事と関連づけて医師に相談することが大切です。
その他

足裏から健康を支える:足底板の役割と効果

- 足底板とは?足の裏に装着する装具のことを、足底板と呼びます。靴の中敷きのような形をしていますが、単なる中敷きとは異なり、一人ひとりの足の形状や症状に合わせて作られます。足底板を装着する主な目的は、足のアーチを支え、足にかかる負担を軽減することです。人間の足には、縦と横にアーチ状の構造があり、体重を分散させたり、歩行や運動時の衝撃を吸収したりする役割を担っています。しかし、アーチの構造が崩れてしまうと、足の裏や踵、膝、腰などに痛みが出たり、疲れやすくなったりすることがあります。足底板は、靴の中敷きとして使用される場合が一般的です。スポーツ選手や立ち仕事をする人など、足に負担がかかりやすい人が、パフォーマンスの向上や疲労軽減のために使用することが多く見られます。また、扁平足や外反母趾、足底筋膜炎などの足のトラブルを抱えている人にとっても、症状の改善や痛みの緩和に役立ちます。さらに、裸足で使用するタイプの足底板もあり、こちらは主にリハビリテーションや運動療法などに用いられます。素材も、硬質のプラスチックや革、クッション性の高いものなど、様々な種類があります。医師や義肢装具士などの専門家が、足の状態や症状、目的に合わせて最適な素材を選び、形状を調整します。
皮膚科

そばかす:太陽の贈り物?

- そばかすとはそばかすは、医学的には雀卵斑(じゃくらんはん)と呼ばれる、皮膚に現れる小さな茶色の斑点のことを指します。 その大きさは直径1~5ミリ程度で、円形や楕円形をしていることが多いです。色は薄い茶色から濃い茶色まで、人によって様々です。そばかすは顔にできやすく、特に鼻筋や頬の高い位置、額など、日光に当たりやすい場所に集中して見られる傾向があります。 紫外線を浴びると、肌は自らを防御するためにメラニン色素を生成します。そばかすは、このメラニン色素が皮膚の一箇所に集中して沈着することで生じます。遺伝的な要因も大きく、生まれつきそばかすができやすい体質の人もいます。 幼少期からそばかすが目立つ場合もありますが、思春期になるとともに濃くなることもあります。 また、日焼け後などに一時的にそばかすが濃くなることもありますが、これは紫外線への防御反応の一種です。そばかす自体は無害で、健康に影響を与えることはありません。 むしろ、チャームポイントとして捉える人も多くいます。 しかし、気になる場合は、紫外線対策をしっかり行うことが大切です。 日焼け止めクリームを塗ったり、帽子や日傘を使用したりして、紫外線から肌を守りましょう。
外科

怪我の基礎知識:創傷の種類と適切な処置

私たちの体は、薄い皮膚という一枚の膜で覆われています。この皮膚は、体を守る大切な役割を果たしていますが、外部からの強い力によって傷ついてしまうことがあります。この、皮膚やその下の組織が損傷を受けた状態のことを「創傷」と呼びます。 創傷には、実に様々な種類があります。鋭い刃物で切ってしまった場合には「切創」、物が擦れて皮膚がむげてしまった場合には「擦過傷」、とがったもので刺してしまった場合には「刺創」、そして、高温の物体に触れて組織が損傷した場合には「熱傷」と呼ばれます。 これらの創傷は、日常生活のあらゆる場面で起こり得るものです。例えば、料理中にうっかり包丁で指を切ってしまったり、転倒して膝を擦りむいてしまったり、熱い鍋に触れて火傷を負ってしまったりすることがあります。また、スポーツ中にボールや相手にぶつかって怪我をすることもありますし、交通事故など、予期せぬ出来事によって大きな創傷を負ってしまう場合もあります。 このように、創傷は私たちの身近に潜む危険です。創傷の種類や程度によっては、適切な処置が必要となります。小さな創傷であれば、自宅で消毒や保護をすることで治癒を促せますが、深い傷や広範囲の傷、出血がひどい場合には、医療機関を受診する必要がある場合があります。
その他

肩こりの原因にも? 僧帽筋の構造と働き

首の付け根から肩、背中の上部にかけて大きく広がる僧帽筋は、その名の通り、まるで頭巾のように私たちの背中を覆っている筋肉です。その大きさは、背中側の筋肉の中でも群を抜いており、肩や首を動かす際に重要な役割を担っています。 僧帽筋は、肩甲骨を動かすことで、腕を様々な方向に動かすことを可能にしています。例えば、腕を上げたり、下げたり、回したり、肩をすくめたりする動作など、日常生活の様々な動作に関わっています。また、重い物を持ったり、長時間デスクワークをする際にも、僧帽筋は大きな負担を強いられます。 この筋肉の名前の由来は、カトリック教フランシスコ会の一派であるカプチン修道会の修道士が身につけていた長頭巾とされています。僧帽筋全体の形が、その頭巾にとてもよく似ていたことから、その名が付けられたと言われています。また、英語では「Trapezius」と呼ばれますが、これは僧帽筋の形が台形に似ていることに由来しています。
その他

足の指の秘密:足趾の基礎知識

- 足趾とは?私たちが普段何気なく「足の指」と呼んでいる部分は、医学用語では「足趾(そくし)」または「足指(あしゆび)」と呼ばれます。日常生活ではあまり意識することがないかもしれませんが、足趾は歩く、走る、立つといった動作において、非常に重要な役割を担っています。足趾は、親指、人差し指、中指、薬指、小指の5本で構成されています。それぞれの足趾は、複数の小さな骨(骨片)が関節でつながり、靭帯や筋肉によって支えられています。この複雑な構造によって、足趾は地面をしっかりと掴むことができ、歩行時の蹴り出しやバランス調整を可能にしています。親指は、歩行時に地面を蹴り出すために特に重要な役割を担っており、他の4本の指よりも太く、力強い構造となっています。また、他の指と協力して、地面からの情報を感知し、体のバランスを保つ役割も担っています。現代社会では、靴を履くことが当たり前になっていますが、窮屈な靴やハイヒールなど、足に負担をかける靴を履くことで、外反母趾や内反小趾、巻き爪、タコ、魚の目といった足のトラブルを引き起こす可能性があります。健康な歩行を維持し、足のトラブルを防ぐためには、足に合った靴を選び、足の指をしっかりと使って歩くことが大切です。また、足の指を動かす体操などを取り入れ、足趾の柔軟性を保つことも重要です。
外科

よくある鼠径ヘルニア:外鼠径ヘルニアを理解する

- 外鼠径ヘルニアとは私たちのお腹の中には、胃や腸などの臓器が収まっています。これらの臓器は、いくつかの筋肉の層で覆われており、正常な状態ではその位置がずれることはありません。しかし、何らかの原因でこの筋肉の層に隙間や弱くなった部分が生じると、臓器の一部がその隙間から飛び出してしまうことがあります。これが「ヘルニア」と呼ばれる状態です。ヘルニアは、発生した場所によって様々な種類に分けられます。その中でも、お腹の一部が鼠径部(脚の付け根)の皮膚の下に突き出すものを「鼠径ヘルニア」と呼びます。そして、鼠径ヘルニアの中でも特に多いのが「外鼠径ヘルニア」です。外鼠径ヘルニアは、お腹の中の臓器が「鼠径管」という管を通って、鼠径部の皮膚の下にまで達してしまうことで起こります。鼠径管は、男性では精索(精管や血管などが通る管)、女性では子宮を支える靭帯が通る管で、生まれつきこの部分が大きい場合や、加齢によって鼠径管周辺の筋肉が衰えることで、ヘルニアが起こりやすくなると考えられています。外鼠径ヘルニアは、男性に多くみられるのも特徴です。これは、男性の方が鼠径管が大きく、構造的にヘルニアが起こりやすいという点が関係しています。また、重いものを持つ仕事や、慢性的な咳、便秘など、お腹に負担がかかる状態も、ヘルニアのリスクを高める要因となります。

がん治療における奏効率:治療効果を測る指標

- 奏効率とは 奏効率とは、がん治療の効果を判断する上で非常に重要な指標の一つです。簡単に言うと、あるがん治療を行った結果、がんがどれくらい小さくなったのか、あるいは完全に消えてしまったのかを割合で示したものです。 例えば、100人の患者さんに同じがん治療を行ったとします。その結果、がんが完全に消えてしまった人が20人、小さくなった人が30人だったとします。この場合、治療の効果があったと考えられるのは合計50人です。そして、奏効率は(効果があった人数 ÷ 治療を受けた人数 × 100)で計算できるので、この場合は50%となります。 奏効率の値が大きければ大きいほど、その治療の効果が高かったと判断することができます。つまり、奏効率は、新しいがん治療法の開発や、患者さん一人ひとりに最適な治療法を選択する上で、非常に重要な役割を担っていると言えます。
血液

驚異の細胞!造血幹細胞の秘密

私たちの体を巡る血液は、体の隅々まで酸素を届ける役割を担う赤血球、外部からの侵入者から体を守る免疫の役割を担う白血球、そして怪我をしたときに傷口を塞いで出血を止める血小板など、異なる働きを持つ様々な種類の細胞で構成されています。では、これらの多様な血液細胞は、一体どこでどのようにして作られているのでしょうか? その答えとなるのが、「造血幹細胞」と呼ばれる特別な細胞です。造血幹細胞は、骨髄と呼ばれる骨の中心部に存在し、そこで盛んに細胞分裂を繰り返すことで、様々な血液細胞を生み出しています。 例えるなら、造血幹細胞は、あらゆる種類の血液細胞を製造できる万能工場のようなものです。この工場では、まず造血幹細胞が分裂して、いくつかの異なる種類の血液細胞のもとになる細胞が作られます。そして、それらの細胞がさらに分化・成熟することで、最終的に赤血球、白血球、血小板といった私たちに馴染み深い血液細胞へと成長を遂げるのです。 このように、たった一つの造血幹細胞から、私たちの体を支える多種多様な血液細胞が生み出されているというのは、まさに生命の神秘と言えるでしょう。
循環器

脳への血液供給路:総頚動脈

人間の頭部、特に脳は、生命維持や日々の活動に欠かせない重要な器官です。脳が正常に機能するためには、酸素や栄養を豊富に含んだ血液を常に供給する必要があります。この重要な役割を担っているのが、左右の首筋に1本ずつ、合計2本通っている総頚動脈です。 総頚動脈は、心臓から送り出された血液を脳へと運ぶ、いわば生命の太いパイプラインと言えるでしょう。心臓から上半身へと向かう大動脈から枝分かれした総頚動脈は、首の部分を通りながら頭部へと血液を送り届けます。そして、脳に到達した血液は、脳の隅々まで行き渡り、思考や記憶、運動機能など、人間らしさを支える様々な活動に必要な酸素や栄養を供給します。 もしも、事故や病気などで総頚動脈が損傷したり、血流が途絶えてしまうと、脳への酸素供給が滞り、脳細胞がダメージを受けてしまいます。最悪の場合、意識障害や運動麻痺などの重い後遺症が残ったり、死に至る可能性もあるのです。このように、総頚動脈は、私たちが健康な状態で日常生活を送る上で、極めて重要な役割を担っていると言えるでしょう。
その他

免疫の鍵! リンパ節の「傍皮質」とその役割

私たちの体には、リンパ節と呼ばれる、大きさ数ミリメートルから数センチメートルほどの小さな器官が無数に存在しています。リンパ節は全身に分布しており、特に首、脇の下、足の付け根などに多く見られます。リンパ節は、リンパ管と呼ばれる細い管で網の目のようにつながっており、体の中を流れるリンパ液が通過する場所となっています。 リンパ節は、細菌やウイルスなどの病原体から体を守る免疫システムにおいて非常に重要な役割を担っています。リンパ液は、血液とともに体中を巡り、老廃物や病原体などを運びます。リンパ節は、リンパ液を濾過して、これらの異物を除去する働きを持っています。 リンパ節の内部は、皮質、傍皮質、髄質と呼ばれる3つの主要な領域に分けられます。皮質は、リンパ節の外側に位置し、リンパ球が集まったリンパ小節と呼ばれる構造が見られます。リンパ小節は、B細胞と呼ばれるリンパ球が多く存在し、抗体を作って病原体を攻撃します。傍皮質は、皮質と髄質の間に位置し、T細胞と呼ばれるリンパ球が多く存在します。T細胞は、ウイルス感染細胞やがん細胞を直接攻撃する働きがあります。髄質は、リンパ節の中心に位置し、リンパ球やマクロファージなど多くの免疫細胞が存在します。髄質では、病原体や異物が処理され、排除されます。 このように、リンパ節は免疫システムにおいて重要な役割を担っており、私たちの健康を守っています。
血液

造血幹細胞移植:新たな希望を告げる治療法

私たちの体内を流れる血液は、全身に酸素を届けたり、外部から侵入した細菌やウイルスと戦ったりと、生命維持に欠かせない重要な役割を担っています。この血液は、骨髄という組織で作られます。骨髄には、造血幹細胞と呼ばれる、様々な血液細胞を生み出す能力を持った細胞が存在します。造血幹細胞は、赤血球、白血球、血小板など、それぞれ異なる役割を持つ血液細胞を作り出し、健康な状態を保っています。 しかし、白血病や再生不良性貧血などの病気にかかると、この造血幹細胞が正常に働かなくなり、十分な量の健康な血液を作ることができなくなってしまいます。その結果、貧血や感染症などを引き起こし、命に関わる危険性も出てきます。 このような血液の病気に対する治療法の一つとして、「造血幹細胞移植」があります。これは、健康な人から提供された造血幹細胞を患者に移植することで、再び正常な血液を作れるようにする治療法です。造血幹細胞移植は、血液の病気で苦しむ多くの患者にとって、希望の光となる治療法と言えるでしょう。
循環器

側頭動脈炎:巨細胞が織りなす血管の炎症

- あまり聞き馴染みのない病気?側頭動脈炎側頭動脈炎、この病名を耳にしたことがあるでしょうか?おそらく、多くの人にとってあまり聞き馴染みがない病気かもしれません。しかし、これは私たちが普段何気なく触れている、こめかみの少し上を通る血管、側頭動脈に起こる炎症性疾患なのです。側頭動脈炎は、中高年以降、特に50歳以上の人に多く発症する病気です。男女差はありますが、女性に多く見られ、また、北欧系の人に発症が多いという報告もあります。具体的な原因は未だ解明されていませんが、免疫の異常が関係していると考えられています。自覚症状としては、こめかみ周辺の痛みや頭痛が挙げられます。その他、発熱や食欲不振、体重減少、視力障害などの症状が現れることもあります。特に、視力障害は放置すると失明に至る可能性もあるため、早期発見と適切な治療が重要となります。側頭動脈炎は、比較的稀な病気ではありますが、決して他人事ではありません。もし、こめかみ周辺に原因不明の痛みや、その他関連する症状が現れた場合には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
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