脱腸:腹腔内容が飛び出す病気
- 脱腸とは脱腸は、本来お腹の中に収まっているべき腸などの臓器が、何らかの原因で弱くなった腹壁の隙間から外へ飛び出してしまう病気です。体の一部が本来あるべき場所から飛び出してしまう状態を「ヘルニア」と呼びますが、脱腸は「腹壁ヘルニア」とも呼ばれます。お腹の中には、胃や腸などの消化器官をはじめ、肝臓や脾臓などの重要な臓器が詰まっています。これらの臓器は、腹筋や筋膜などからなる腹壁によって守られています。しかし、加齢や肥満、妊娠、重い物を持ち上げる動作、慢性的な咳などによって腹壁が弱くなると、組織の隙間から臓器が飛び出しやすくなります。特に、お腹の中の圧力が高まった時に、その圧力に耐えきれず、組織の弱い部分が押し出されるようにして脱腸が起こります。脱腸は、飛び出す場所や原因によっていくつかの種類に分けられます。例えば、太ももの付け根に起こる「鼠径(そけい)ヘルニア」、おへその周辺に起こる「臍(さい)ヘルニア」、手術の傷跡に起こる「瘢痕(はんこん)ヘルニア」などがあります。脱腸は、放置すると飛び出した臓器への血流が悪くなったり、腸閉塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。治療法としては、飛び出した臓器を元の位置に戻し、弱くなった腹壁を修復する手術が行われます。近年では、体に負担の少ない腹腔鏡手術が普及してきています。