肝臓と臍をつなぐ遺構:肝円索
- 胎児期の名残肝円索
私たちのお腹には、「肝円索」と呼ばれる、胎児期の名残があります。これは、母親のお腹の中にいた頃に重要な役割を果たしていた血管の跡です。
胎児は、母親の胎盤から酸素や栄養を受け取って成長します。
この時、胎盤と胎児の肝臓を繋いでいたのが「臍静脈」と呼ばれる血管で、肝円索はこの臍静脈の名残です。
臍静脈は、胎児にとってまさに生命線とも言える重要な血管でした。
胎盤から運ばれてくる、酸素と栄養を豊富に含んだ血液を、ダイレクトに肝臓へと送り届けていたのです。
しかし、私たちが母親の胎外に出て、肺呼吸を始めるようになると状況は一変します。
肺が酸素を取り込む役割を担うようになるため、臍静脈の役割は必要なくなり、閉鎖してしまうのです。
そして、かつて血管であった部分は線維化し、細い紐のような組織へと変化します。これが、肝円索です。
肝円索は、私たちが母親のお腹の中で過ごした時間の、確かな証と言えるでしょう。