精神医学

心の問題

自己愛:過剰な愛は毒?

- 自己愛とは何か自己愛とは、言葉の通りに解釈すれば「自分を愛すること」を意味します。心理学の分野では、自分がかけがえのない大切な存在であると認識し、自分の全体を肯定的に捉える性質を指します。 例えば、危険を察知して自分を守ろうとしたり、自分の得意なことや不得意なこと、長所や短所も含めて、ありのままの自分を受け入れることは、健全な自己愛の表れと言えるでしょう。 しかし、自己愛という言葉は、日常生活ではネガティブな意味で使われることが少なくありません。これは、過剰な自己愛が、周囲の人との摩擦を生み、良好な対人関係を築くことを難しくする場合があるからです。 自分を守るために危険を回避することと、自分の利益だけを優先して周りに迷惑をかけることは全く異なります。また、自分の長所や短所を理解し、自己肯定感を高めることと、他者を貶めることで優越感を得ようとすることも全くの別物です。 健全な自己愛は、自分と他者双方を尊重し、より良い人生を送るために必要な要素と言えるでしょう。一方で、過剰な自己愛は、対人関係のトラブルや精神的な不安定さを招く可能性があります。自己愛は、その程度によって、私たちにプラスにもマイナスにも作用すると言えるでしょう。
心の問題

子どもの心の発達:愛着の重要性

- 愛着とは人は誰しも、特定の人に対して特別な感情を抱き、その人と共にいたい、近くにいたいと感じる経験をすることがあります。この心の結びつきのことを、心理学では「愛着」と呼びます。特に、生まれたばかりの赤ちゃんが、自分を世話してくれる保護者に対して抱く特別な感情が愛着の始まりです。赤ちゃんは、まだ言葉を発することができません。しかし、泣いたり、笑ったり、抱っこをせがんだりすることで、保護者に自分の気持ちを伝えようとします。保護者は、そんな赤ちゃんのサインに気づき、優しく抱きしめたり、語りかけたりすることで、赤ちゃんの要求に応えようとします。このような相互のやり取りを通して、赤ちゃんは保護者との間に深い信頼関係を築いていくのです。そして、この保護者との特別な関係が、赤ちゃんの「愛着」となっていきます。愛着は、単なる感情的な結びつきではありません。愛着は、乳幼児期における心の成長にとって、非常に重要な役割を担っています。保護者との安定した愛着関係の中で育った子どもは、安心感や信頼感を抱き、情緒が安定していきます。その結果、周囲の環境にも積極的に関わり、様々なことを吸収し、健やかに成長していくことができるのです。反対に、幼少期に十分な愛着を形成できなかった場合は、情緒が不安定になりやすく、対人関係に問題が生じやすくなる可能性も指摘されています。愛着は、その後の人格形成や対人関係、社会性の発達に大きな影響を与えると言えるでしょう。
心の問題

心療内科とは:心と身体のつながりを診る医療

心療内科は、身体の不調を抱えて医療機関を訪れる患者さんにとって、その症状の奥に潜む心の問題にも目を向ける、非常に重要な役割を担っています。 たとえば、胃の痛みや頭痛、動悸やめまい、なかなか寝付けないといった不眠など、一見すると体の病気としか思えない症状でも、実は心のストレスが原因で引き起こされているケースは少なくありません。 従来の内科的な診察では、このような症状に対して検査を行っても異常が見つからず、患者さんは不安な気持ちを抱えたまま、適切な治療を受けられないままになってしまう可能性があります。 しかし、心療内科では、患者さんの訴えにじっくりと耳を傾け、身体症状の背景にある心理的な要因を丁寧に探っていきます。 そして、患者さんの抱えている不安やストレス、悩みなどを明らかにした上で、薬物療法や精神療法などを用いて、症状の改善を目指します。 つまり心療内科は、身体と心を総合的に診ることで、患者さんが抱える様々な問題を根本から解決へと導く、医療における重要な役割を担っていると言えるでしょう。
心の問題

落ち着きのない状態?:不穏について解説

- 不穏とは何か不穏とは、簡単に言うと「落ち着かない状態」のことを指します。まるで周囲に危険が潜んでいるかのように、常に警戒しているような状態を想像してみてください。このような状態では、気持ちは落ち着かず、集中力や注意力が散漫になりがちです。また、普段なら気にしないような些細なことでイライラの感情がこみ上げてきたり、周囲の人に対して怒りっぽくなってしまったりすることもあります。このような状態が長く続くと、不穏を感じている本人だけでなく、周囲の人々もまた疲弊してしまうことがあります。例えば、家族がいつもピリピリしていて、ちょっとしたことで怒り出すようになると、家庭内は緊張感に包まれ、他の家族も不安やストレスを感じるようになるでしょう。このように、不穏は本人だけでなく、周囲にも影響を及ぼす可能性があるのです。
心の問題

子どもの愛着:健やかな成長の土台

- 愛着とは何か愛着とは、特定の人に対して特別な感情を抱き、その人と共にいたいと強く感じる気持ちのことです。まるで目に見えない糸で結ばれているように、心の距離が縮まり、安心感や幸福感を覚えます。特に乳幼児期における愛着形成は、その後の子どもの情緒や社会性の発達に大きな影響を与えることが分かっています。生まれたばかりの赤ちゃんは、自分では何もできません。ミルクを飲ませてもらったり、おむつを替えてもらったり、抱っこしてもらったりと、周りの大人の世話が不可欠です。このような状況下で、赤ちゃんは自分を無条件に受け入れてくれ、愛情をかけてくれる特定の大人(多くの場合、母親)に対して、特別な感情を抱くようになります。これが愛着の始まりです。愛着が形成されると、子どもは特定の大人の存在によって安心感や安定感を得ることができ、周囲の世界を探索する意欲や好奇心を育むことができます。反対に、愛着形成がうまくいかないと、情緒不安定になったり、対人関係がうまく築けなかったりするなど、さまざまな問題が生じるリスクが高まると言われています。愛着形成は、子どもの将来を左右すると言っても過言ではありません。子どもの健やかな成長を促すためには、温かで愛情のこもった関わりを通して、子どもとの間に安定した愛着関係を築くことが重要です。
脳・神経

理解を超えた信念:一次妄想とは

心の病と聞いて、多くの人が不安や落ち込みといった症状を思い浮かべるかもしれません。しかし、それ以外にも、「妄想」といった、現実認識が歪んでしまう症状が現れることがあります。 妄想とは、実際にはあり得ないことを、真実だと強く信じ込んでしまう状態のことを指します。例えば、周りの人が自分を陥れようとしていると感じる「被害妄想」、誰かに見張られている、盗聴されていると感じる「関係妄想」、テレビやラジオを通して自分にメッセージが送られてくると感じる「注解釈」などが挙げられます。 このような妄想は、統合失調症などの精神疾患において多く見られる症状として知られています。統合失調症は、思考や感情、行動に影響を及ぼす深刻な病気であり、妄想はその症状の一つとして現れることがあります。また、うつ病や不安障害などの心の病でも、症状が重い場合に妄想が現れることがあります。 もし、自分や周りの人が妄想のような症状を持っていると感じる場合には、早めに医療機関に相談することが大切です。適切な治療を受けることで、症状を改善し、より良い生活を送ることができる可能性があります。
心の問題

二次妄想:理解可能な心の影

- 二次妄想とは何か 二次妄想とは、その人の性格や過去の経験、置かれている環境、精神状態など、様々な心理的な要因が複雑に絡み合って引き起こされると考えられる妄想のことです。妄想とは、客観的な証拠がないにもかかわらず、ある考えにとらわれてしまい、それを訂正することが難しい状態を指します。 例えば、仕事で大きな失敗をしてしまったり、大切な人と別れたり、過酷な状況に置かれたりすることで、極度の不安や強いストレスを感じることがあります。また、過去のつらい経験やトラウマが、ふとした瞬間に蘇ってくることもあるでしょう。 このような場合、心が不安定になり、現実を直視することが困難になることがあります。そして、その苦痛から逃れるために、あるいは心のバランスを保つために、現実とは異なる考えにとらわれてしまうことがあります。これが二次妄想です。 二次妄想の内容は、その人が抱えている心理的な問題と深く関連していることが多い点が特徴です。例えば、強い不安を抱えている人は、周りの人が自分を騙そうとしているという被害的な内容の妄想を抱きやすくなることがあります。 二次妄想は、誰にでも起こりうる可能性があります。しかし、だからといって、決して軽視して良いものではありません。もしも、自分自身や周りの人が、現実離れした考えにとらわれていると感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。
心の問題

病識:病気への気づきとその重要性

- 病識とは病識とは、自分が病気であると自覚することを指します。これは、単に体の不調や心の不安定さを感じるだけでなく、その状態が健康な状態とは異なり、治療が必要な状態であることを認識することを意味します。例えば、風邪を引いて熱が出た時、多くの人は「風邪を引いたらしい」「熱がある」と認識します。これは、普段とは違う体の状態を認識し、それが風邪という病気の症状であると理解しているからです。これが病識の一つの例です。病識は、病気の診断や治療を受ける上で非常に重要な役割を果たします。なぜなら、自分が病気であると自覚していなければ、医療機関を受診しようという気持ちにならなかったり、治療の必要性を感じなかったりするからです。病識は、病気の種類や重症度、性格や環境などによって大きく異なります。風邪のような分かりやすい病気であれば、比較的病識を持ちやすいですが、精神疾患や、症状が自覚しにくい病気の場合、病識を持つことが難しい場合があります。また、病気を認めたくないという気持ちや、治療に対する不安などから、病識があっても、それを否定したり、認めようとしない場合もあるでしょう。病識は、病気と向き合い、治療を進めていく上で欠かせないものです。しかし、病識は人によって異なり、簡単に持てるものではないということを理解しておく必要があります。
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