移植前処置:造血幹細胞移植の準備
- 移植前処置とは移植前処置とは、患者さんが造血幹細胞移植を受ける前に必ず行う、非常に大切な準備段階のことを指します。造血幹細胞移植は、病気やその治療の影響によって、自ら血液細胞を正常に作ることができなくなってしまった患者さんに対して行われます。具体的には、健康なドナーさんから提供された、血液細胞の元となる造血幹細胞を患者さんの体内に移植する治療法です。移植前処置は、移植の成功率を高め、合併症のリスクを抑えるために欠かせないプロセスです。大きく分けて、(1)病気の細胞を減らす、(2)免疫の働きを抑える、(3)ドナー由来の造血幹細胞が根付きやすいように準備をする、という三つの目的があります。まず、移植前に残っている病気の細胞を減らすことは、移植後に病気が再発するリスクを低下させるために重要です。次に、患者さんの免疫の働きを抑えることで、移植されたドナーさんの細胞を「異物」として攻撃する拒絶反応を防ぐことができます。そして、患者さんの骨髄をあらかじめ空けておくことで、移植されたドナーさんの造血幹細胞が、骨髄にスムーズに定着しやすくなるのです。移植前処置の内容は、患者さんの病気の種類や状態、移植の種類、ドナーさんとの相性などによって異なります。主な方法としては、抗がん剤や免疫抑制剤を投与する薬物療法や、全身に放射線を照射する放射線療法などがあります。それぞれの治療法は、単独で行われることもあれば、組み合わせて行われることもあります。移植前処置は、患者さんにとって身体的な負担が大きい場合もありますが、移植を成功させるために非常に重要なプロセスです。患者さん自身の病気や治療についての理解を深め、医師や医療スタッフとしっかりとコミュニケーションをとるように心がけましょう。