抗真菌薬:真菌感染症治療の進歩
私たちの身の回りには、肉眼では確認できないほどの数の菌類が生きています。これらの菌類の中には、カビやキノコのように、私たち人間に感染して病気を引き起こすものも少なくありません。このような菌による感染症は、真菌感染症と呼ばれ、近年、患者数が増加傾向にあり、医療現場において深刻な問題となっています。
真菌感染症は、健康な人にとっては、比較的軽症で治癒するケースが多いです。しかし、免疫力が低下している患者さんの場合、真菌感染症は命に関わる深刻な病態となる可能性があります。例えば、がん治療中や臓器移植後など、免疫抑制剤を使用している患者さんは、免疫力が低下しているため、真菌感染症のリスクが高まります。また、糖尿病やHIV感染症などの基礎疾患を持つ患者さんも、真菌感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。
真菌感染症の症状は、感染する部位や菌の種類によって異なります。皮膚や爪に感染する場合は、かゆみ、発疹、水ぶくれ、爪の変色や肥厚などの症状が現れます。肺に感染する場合は、咳、痰、発熱、呼吸困難などの症状が現れます。さらに、血液に侵入して全身に広がると、敗血症などの命に関わる重篤な状態を引き起こす可能性もあります。
真菌感染症の治療は、抗真菌薬を用いて行われます。しかし、近年、既存の抗真菌薬が効かない薬剤耐性菌が出現しており、治療が困難なケースも増えています。そのため、日頃から、手洗いやうがいを徹底するなど、真菌感染症の予防に努めることが重要です。