抗リン脂質抗体症候群:自己免疫と血栓症の密接な関係
- 疾患の概要抗リン脂質抗体症候群は、自分の免疫システムが誤って自分自身を攻撃してしまう、自己免疫疾患の一種です。この病気では、血液が固まりやすくなるという特徴があります。通常、私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために免疫システムが備わっています。しかし、抗リン脂質抗体症候群を発症すると、この免疫システムが正常に機能しなくなります。免疫システムの一部である抗体が、本来攻撃すべきでないリン脂質という血液中の成分を攻撃してしまうのです。リン脂質は、細胞膜の構成成分であり、また血液凝固にも関与しています。抗リン脂質抗体がリン脂質に結合すると、血液が固まりやすくなり、血栓と呼ばれる血液の塊が血管内にできてしまいます。血栓は、血管を詰まらせてしまい、血液の流れを悪くします。これが、様々な臓器に影響を及ぼし、深刻な症状を引き起こす原因となるのです。例えば、脳の血管で血栓が生じると脳梗塞、心臓の血管で生じると心筋梗塞を引き起こす可能性があります。また、妊娠中の女性では、胎盤の血管に血栓ができやすくなるため、流産や早産のリスクが高まります。抗リン脂質抗体症候群は、根本的な治療法はまだ見つかっていません。しかし、血液が固まりにくくなる薬を服用することで、血栓の形成を防ぎ、症状の悪化を抑えることができます。