感情

脳・神経

心に生じる歪み:統合失調症を知る

- 統合失調症とは統合失調症は、思考、感情、行動といった、私たちが普段当たり前に使っている心の働きに影響を及ぼす病気です。複雑な形で症状が現れるだけでなく、経過も人によってさまざまで、完治が難しい病気として知られています。この病気では、脳の情報処理機能に乱れが生じることで、周囲の状況を正しく理解したり、筋道立てて考えたりすることが困難になります。そのため、現実と異なることを考えてしまったり、周囲の人々に理解されないような発言をしてしまったりすることがあります。統合失調症の症状は、陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つのグループに分けられます。「幻覚」や「妄想」といった、健康な時には見られない症状が現れるのが陽性症状です。一方、感情の動きが乏しくなったり、意欲が低下したりといった、本来あるべき状態から減ってしまう症状を陰性症状と呼びます。さらに、注意や記憶、計画といった認知機能に障害が生じることもあります。日本では約80万人が統合失調症を抱えていると推定されており、決して珍しい病気ではありません。早期に診断を受け、薬物療法や精神療法といった適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、社会生活を送ることも十分に可能です。統合失調症は、周りの理解と適切な治療によって、より良い方向へ進んでいける病気なのです。
心の問題

嫉妬という感情について

誰でも一度は感じたことのある、胸がチクチクと痛むような、複雑な感情、それが嫉妬です。この感情は、自分と他人を比べてしまい、自分が劣っていると感じてしまったり、大切な人に奪われてしまうのではないかという不安や恐怖から生まれてきます。 例えば、恋人や親友が、自分以外の誰かと仲良くしているのを見た時、言いようのないモヤモヤした感情に襲われることがあります。これは、もしかしたら自分は相手にとって、それほど大切な存在ではないのかもしれない、と不安に思ったり、このままでは二人の関係が壊れてしまうのではないか、という恐怖を感じたりするからです。 この嫉妬の感情は、決して悪いものばかりではありません。 嫉妬心は、時に自分自身を見つめ直し、成長するための原動力となることがあるからです。 例えば、仕事で同僚が昇進したとします。その時、ただ羨むのではなく、なぜ自分は昇進できなかったのか、自分に足りないものは何なのかを真剣に考えることで、次の昇進へと繋がるかもしれません。 しかし、嫉妬の感情に振り回されすぎると、大切な人間関係を壊してしまうことにもなりかねません。 嫉妬を感じた時は、まず、なぜそのような気持ちになるのか、自分の心に問いかけてみましょう。そして、その気持ちをバネに、自分自身を磨く努力をすることが大切です。
心の問題

心の天気図:情緒を読み解く

- 情緒とは何か 私たちは日々、様々な感情を経験しています。嬉しいことがあれば喜びを感じ、悲しいことがあれば悲しみに暮れる。怒りや恐れ、安心や期待など、これらの心の動きを総称して「情緒」と呼びます。 情緒は、まるで天気のように変わりやすいものです。朝起きた時は晴れやかだった気分も、仕事で失敗すれば一気に曇り空のように沈んでしまうこともあるでしょう。逆に、落ち込んでいた気分も、友人からの励ましの言葉で明るい光が差し込むように、希望に満ち溢れることもあります。このように、情緒は一瞬一瞬で変化し、私たちの心の状態を彩るものです。 情緒は、私たちの感じ方や行動に大きな影響を与えます。例えば、楽しい気分の時は周囲の世界も輝いて見え、積極的に行動できるようになります。反対に、悲しい気持ちに支配されている時は、何事にも意欲がわかず、周囲の景色さえも色あせて見えてしまうことがあります。 情緒は、私たちが人間らしく生きる上で欠かせないものです。喜怒哀楽を味わい、豊かな感情表現を通じて周囲の人々と心を通わせることは、人生をより深く、そして意味のあるものにしてくれるのです。
心の問題

怒り:その正体と影響

私たちは日々、喜びや悲しみ、そして怒りといった、様々な感情を経験しながら生きています。こうした感情の中でも、「怒り」は特に強いエネルギーを持つ感情と言えるでしょう。 では、この「怒り」とは一体どのような感情なのでしょうか。心理学者の湯川進太郎氏の著書『バイオレンス ―攻撃と怒りの臨床社会心理学―』では、怒りとは「自己もしくは社会への不当なもしくは故意による、物理的もしくは心理的な侵害に対する自己防衛もしくは社会維持のために喚起された心身の準備状態」と定義されています。 少し難しい言い回しですが、簡単に言うと、自分自身や大切なものが攻撃されたと感じた時、私たちは自分を守るために、あるいは社会の秩序を守るために、自然と怒りの感情を抱くということです。 例えば、大切な人に嘘をつかれた時、理不尽な扱いを受けた時、私たちは攻撃されたと感じ、怒りを感じます。これは、自分自身や大切な関係を守るための自然な反応と言えるでしょう。また、社会のルールを破る行為を見た時にも、私たちは怒りを感じることがあります。これは、社会の秩序や正義を維持しようとする気持ちから生まれる怒りと言えるでしょう。
脳・神経

生まれ持った心の傾向:気質について

私たちは皆、それぞれ異なる個性を持っています。明るい人もいれば、物静かな人もいます。楽観的な人もいれば、心配性の人もいます。このような一人ひとりの個性を形作る要素の一つに、「気質」があります。 気質とは、生まれながらに備わっている、心の反応の傾向のことです。外界からの刺激に対して、どのように感じ、どのように行動するかという、その人本来の反応パターンと言えるでしょう。 例えば、同じ出来事に遭遇したとします。ある人は、それを乗り越えられる試練だと捉え、前向きに乗り越えようとするかもしれません。一方、別の人は、その出来事に深く傷つき、なかなか立ち直れないかもしれません。このように、同じ出来事に対して異なる感じ方や反応の仕方をするのは、気質の違いによると言えるでしょう。 気質は、遺伝的な要素が大きく影響すると考えられています。しかし、育った環境や経験によっても変化する可能性があります。幼少期の親の育て方や、学校や社会での経験を通して、気質は少しずつ形作られていきます。 気質は、私たちの考え方や行動パターンに大きな影響を与えます。しかし、気質はあくまでも傾向であり、絶対的なものではありません。自分の気質を理解し、その特徴を踏まえた上で、より良い行動を選択していくことが大切です。
心の問題

愛着障害:幼少期の愛情不足がもたらす影

- 愛着障害とは幼少期、特に乳幼児期は、周囲の人との信頼関係を育み、心の安定を築くための重要な時期です。この期間に、主な養育者である保護者との間で、愛情に満ちた安定した関係を築くことが、その後の健やかな成長に大きく影響します。しかし、様々な事情により、保護者と子が安定した愛着関係を築けない場合があります。虐待やネグレクトといった過酷な養育環境だけでなく、保護者の病気や長期的な不在、あるいは十分に子どもの気持ちに応えられないといった場合でも、子どもは保護者との間に安心できる関係を築くことができず、愛着障害を引き起こす可能性があります。愛着障害は、特定の病気の名前ではなく、愛着形成における問題が、その後の対人関係や心の安定に影響を及ぼす状態を指します。具体的な症状としては、他人と親密な関係を築きにくくなる、感情のコントロールが難しくなる、不安や恐怖を感じやすくなる、などがあります。また、場合によっては、反社会的な行動や自傷行為といった問題行動に繋がることもあります。愛着障害は、早期に発見し、適切な対応をとることで改善が見込めると言われています。周囲の大人が、子どもの様子に注意を払い、愛情深く接することで、子どもが安心できる環境を作り出すことが重要です。
脳・神経

感情:心の風景

私たちは毎日、様々な出来事に遭遇し、喜怒哀楽といった様々な心の動きを感じながら生活しています。この心の動きこそが感情と呼ばれるものであり、喜びや楽しみ、怒りや悲しみといった、いわば心の風景のようなものです。 この心の風景は、常に同じ場所にとどまっているわけではなく、状況や周囲の人間関係、あるいは自分自身の体調などによって、まるで景色が移り変わるように変化していきます。そして、この変化は私たちの思考や行動に大きな影響を与えています。例えば、大好きな人からプレゼントをもらって嬉しいと感じた時には、自然と笑顔がこぼれ、優しい言葉をかけてしまうでしょう。反対に、理不尽な扱いを受けたり、大切なものを壊されたりして怒りを感じた時には、相手に厳しい言葉を投げかけたり、場合によっては手が出てしまうこともあるかもしれません。 このように、感情は私たちの行動を強く突き動かす原動力のひとつであり、周囲の人間関係や自分自身の行動、ひいては人生そのものに大きな影響を与える可能性を秘めているのです。
脳・神経

思考と行動の司令塔:前頭葉

私たちの脳は、まるで精巧な機械のように、多くの部位が複雑に連携し合って様々な機能を果たしています。その中でも、額のすぐ後ろに位置する前頭葉は、人間の思考や行動を司る最高司令官と例えられます。 前頭葉は、脳全体の約3分の1を占める、最も大きく発達した領域です。この領域は、まるで巨大なオーケストラを統率する指揮者のように、他の脳の部位からの情報を統合し、思考、判断、計画、実行といった高度な認知機能をコントロールしています。 具体的には、何かを考えたり、計画を立てたり、問題を解決したりする際には、前頭葉が中心的な役割を担います。また、周囲の状況を理解し、適切な行動を選択するのも前頭葉の重要な機能です。さらに、喜怒哀楽といった感情をコントロールし、社会的な場面で適切な行動をとる際にも、前頭葉は深く関わっています。 このように、前頭葉は、私たちが人間らしく思考し、行動するために欠かせない、非常に重要な役割を担っているのです。
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