目に見えない脅威: ウイルスの世界
- ウイルスの定義ウイルスは、他の生物の細胞に寄生することでしか増殖できない、とても小さな感染性因子です。そのサイズは非常に小さく、一般的な細菌と比べてもはるかに微小です。あまりにも小さいため、光学顕微鏡で観察することは不可能であり、ウイルスを観察するためには電子顕微鏡が必要となります。生物は一般的に、自ら細胞分裂を行うことで数を増やしていきます。しかし、ウイルスは自己複製能力を持たないため、他の生物の細胞を利用しなければ増殖することができません。ウイルスは、まず宿主となる細胞に侵入します。そして、細胞内に自身の遺伝情報であるDNAやRNAを注入し、細胞の機能を乗っ取ってしまうのです。宿主細胞は、ウイルスの遺伝情報に従って新たなウイルスを作り出す工場と化し、大量のウイルスが細胞内で増殖していきます。最終的には、宿主細胞は破壊され、そこから新たなウイルスが放出され、他の細胞に感染していくのです。このように、ウイルスは他の生物の細胞を利用する特殊な増殖方法を持つため、生物と非生物の境界線上に位置づけられることもあります。生命活動に必要な独自の代謝系やエネルギー産生系を持たず、自己複製もできないという点では非生物に近い存在と言えるでしょう。しかし、遺伝情報を持ち、進化する能力を備えているという点では、生物的な側面も持ち合わせています。ウイルスは、微生物の世界においても非常に特異な存在であり、その存在は私たちに生命の定義について改めて考えさせるきっかけを与えてくれます。