器官

耳鼻科

聴覚の要:蝸牛の役割

私たちの耳の奥には、音の世界への入り口である鼓膜が存在します。鼓膜のさらに奥、まるで秘密の部屋のように隠されているのが内耳と呼ばれる場所で、その中に蝸牛は静かに佇んでいます。その名の通り、小さなカタツムリのような形をした蝸牛は、聴覚にとって非常に重要な役割を担っています。 蝸牛は、ただ小さな空間を満たしているだけではありません。その内部はリンパ液と呼ばれる液体で満たされており、音の振動が伝わると、まるでさざ波のように、リンパ液が優しく揺れ動きます。このリンパ液の動きが、蝸牛の内部にぎっしりと並んだ有毛細胞を刺激します。 有毛細胞は、その名の通り、表面に非常に繊細な毛のような構造を持っています。リンパ液の動きによってこの毛が揺れると、音の振動は電気信号に変換されます。まるで、風のささやきを言葉に変換する通訳者の役割を、有毛細胞は担っているのです。 こうして蝸牛の中で生まれた電気信号は、聴神経を通じて脳へと届けられます。脳は、届けられた信号を瞬時に分析し、私たちはそのおかげで、鳥のさえずりや、風の音、そして何よりも大切な家族の声を聞き取ることができるのです。
皮膚科

人体を守る防護壁:皮膚

人間の体は、一番外側を皮膚という薄い膜で覆われています。まるで洋服のように体全体を包み込む皮膚は、単なる体の表面を覆うものではなく、私達が健康に生きていく上で、非常に重要な役割を担っています。 まず、皮膚は外界と体内を隔てる壁の役割を果たし、体にとって有害な細菌やウイルスなどの侵入を防いでいます。もし皮膚がなかったら、私達の体は無防備な状態に置かれ、あらゆる病原体が容易に侵入してしまうでしょう。また、皮膚は、強い日差しや寒暖差、乾燥といった外部環境の変化からも体を守っています。 さらに、皮膚は触覚、圧覚、温度覚、痛覚といった感覚器としての役割も担っています。熱いものに触れたときに瞬時に手を引っ込めることができるのも、皮膚が温度を感じ取って脳に信号を送っているからです。また、物体に触れたときの感触や、痛みを感じることによって危険を察知し、体を守ることもできます。 このように皮膚は、私達が健康で安全な生活を送るために、非常に重要な役割を果たしているのです。
耳鼻科

平衡感覚の鍵、内耳の迷路

私たちは、無意識のうちに体のバランスを取って生活しています。たとえば、電車の中で急ブレーキがかかっても、すぐに体勢を立て直すことができます。また、目をつぶっていても、体がどちらに傾いているのかを感じ取ることができます。 この体の傾きを感じる感覚を「平衡感覚」と呼びますが、この感覚を司っているのが、耳の奥深くに存在する「迷路」と呼ばれる器官です。迷路は、複雑な形をした小さな器官で、その中には「三半規管」と「耳石器」と呼ばれる感覚器官が存在します。 三半規管は、体の回転を感知する器官です。三半規管は、それぞれが異なる方向にループ状に配置されており、体の回転する方向や速度を感知します。 一方、耳石器は、体の傾きや直線運動を感知する器官です。耳石器は、炭酸カルシウムでできた小さな石「耳石」を持っています。体が傾いたり、動きが変化したりすると、この耳石が重力によって移動し、その刺激が神経を通じて脳に伝えられます。 このように、迷路は体の傾きや回転、直線運動といった情報を感知し、脳に伝えています。脳は、これらの情報に基づいて体のバランスを保つために必要な指令を筋肉に送り、私たちがスムーズに動くことができるように調節しているのです。
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