合併症

看護技術

回復期:病気からの復活を支える大切な期間

病気は、その経過によって大きく三つの段階に分けられます。まず、発症直後で、最も症状が激しく、命の危険さえ伴う可能性のある時期を急性期と呼びます。この山場ともいえる急性期を乗り越えると、次の段階である回復期に入ります。回復期に入ると、症状は落ち着きをみせ、危険な状態からは脱します。この時期は、低下した身体の機能を回復させることに専念できる時期といえます。そして、回復期は、その後の人生を健やかに過ごすため、また、社会復帰を果たすために非常に重要な時期となります。ただし、病気によっては、完全に回復せず、長期間にわたって症状が続く慢性期に移行する場合もあります。慢性期は、急性期のような命の危険は少ないものの、病気と長く付き合っていくための工夫や、生活の質を維持するための努力が必要となります。
外科

生命を支えるパイプライン:シャント機能不全とその対処

私たちの体は、血管やリンパ管など、体液を循環させるための重要な管が隅々まで張り巡らされています。これらの管は、まるで体中に張り巡らされた水道管のように、血液やリンパ液といった体液を必要な場所に送り届ける役割を担っています。しかし、病気や怪我によって、これらの重要な管が詰まったり、機能しなくなったりすることがあります。水道管が壊れて水が流れなくなってしまうように、体液を運ぶ管が正常に機能しなくなると、私たちの体は栄養や酸素を十分に受け取ることができなくなり、生命維持に支障をきたす可能性も出てきます。 このような事態に対処するために開発されたのが「シャント」です。シャントとは、人工的に作ったバイパスルート、つまり体液の流れ道のことを指します。体内に細い管を通したり、血管同士をつなぎ合わせたりすることで、本来のルートが機能しなくても体液をスムーズに流すことができるようになります。これは、まるで壊れた水道管を迂回して新しい水道管を敷設するようなものです。シャントによって体液の流れを確保することで、栄養や酸素を体の各部に届け、正常な生命活動を維持することが可能になります。シャントは、心臓外科手術や透析治療など、様々な医療分野で重要な役割を果たしています。
血液

移植後も油断大敵?移植片対宿主病

造血幹細胞移植は、白血病などの血液疾患を持つ患者さんにとって、根治を目指すための重要な治療法です。しかし、移植後には、提供された造血幹細胞がうまく生着しない、または再発といったリスク以外にも、「移植片対宿主病(GVHD)」と呼ばれる合併症が起こる可能性があります。 移植片対宿主病は、他人から提供された骨髄や臍帯血の中に含まれる免疫細胞であるリンパ球が、移植を受けた患者さんの体内の細胞を“異物”と認識し、攻撃してしまうことで起こります。 わかりやすく例えると、新しい家に引っ越しをした際に、その家の家具や内装が気に入らず、破壊してしまう人がいるとします。この場合、新しい家は患者さんの体、引っ越しをしてきた人はドナーさんから提供されたリンパ球、家具や内装は患者さん自身の細胞や組織に当たります。 リンパ球は、本来は体の中に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、私たちを守ってくれる役割を担っています。しかし、移植片対宿主病では、リンパ球が、本来攻撃すべきでない患者さん自身の正常な細胞を攻撃してしまうのです。 移植片対宿主病は、皮膚、肝臓、消化管など、体の様々な場所に症状が現れます。主な症状としては、皮膚のかゆみ、発疹、黄疸、下痢、腹痛などがあります。移植後早期に症状が現れる急性型と、数年後に症状が現れる慢性型に分けられます。 移植片対宿主病は、場合によっては命に関わることもあるため、移植後の注意深い経過観察と、早期発見、早期治療が非常に重要です。
血液

造血幹細胞移植後のリスク:移植合併症

- 移植合併症とは移植手術は、病気や事故によって機能を失ってしまった臓器や組織を、健康な臓器や組織に入れ替えることで、患者さんの命を救ったり、生活の質を向上させたりする画期的な治療法です。しかし、体にとって「自分以外のもの」が入ってくるため、どうしても避けられない問題が起こることがあります。これが「移植合併症」です。移植合併症は、大きく分けて二つの原因によって起こります。一つ目は、移植された臓器や組織に対する拒絶反応です。私たちの体は、生まれつき「自己」と「非自己」を見分ける力を持っています。これは、細菌やウイルスなどの病原体から体を守るために非常に重要な機能です。しかし、この機能が、移植された臓器や組織に対しても働いてしまうことがあります。免疫細胞が、移植された臓器や組織を「非自己」と認識し、攻撃してしまうことで、様々な症状が現れます。二つ目は、移植手術に伴う感染症です。移植手術後には、免疫抑制剤と呼ばれる薬を使って、拒絶反応を抑える必要があります。しかし、免疫抑制剤を使うことで、体の免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなってしまいます。また、移植された臓器や組織自体が、ウイルスや細菌に感染している場合もあります。移植合併症は、発症時期や症状も様々です。発熱や痛み、倦怠感といった比較的軽い症状から、臓器機能の低下や、命に関わるような重篤な症状まで、様々なものが知られています。移植合併症のリスクを減らすためには、患者さん自身が健康的な生活習慣を心がけること、担当医の指示に従ってきちんと薬を服用することが重要です。また、定期的な検査を受けることで、早期発見・早期治療に繋げることが大切です。
血液

急性GVHD:移植後の免疫反応を知る

- 急性GVHDとは造血幹細胞移植は、血液のがんや難病の治療法として大きな期待が寄せられています。しかし、移植後には、提供された造血幹細胞(ドナー)と、移植を受けた患者さん(レシピエント)の身体の間で、様々な免疫反応が起こることがあります。その中でも、急性GVHD(移植片対宿主病)は、移植後の合併症として特に注意が必要とされています。急性GVHDは、一体どのような病気なのでしょうか?簡単に言うと、移植されたドナー由来の免疫細胞が、患者さんの身体を「異物」と認識し攻撃してしまう病気です。通常、私たちの体内には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守る免疫細胞が存在します。ところが、他人から提供された造血幹細胞は、患者さんから見ると「非自己」と認識されてしまうことがあります。そのため、ドナー由来の免疫細胞は、本来攻撃すべきでない患者さんの臓器や組織を攻撃してしまうのです。急性GVHDは、主に皮膚、肝臓、消化管といった臓器に炎症を引き起こします。具体的には、皮膚の発疹やかゆみ、黄疸、下痢、腹痛などの症状が現れます。これらの症状は、移植後100日以内に発症することが多く、重症化すると命に関わるケースもあります。急性GVHDの発症リスクや重症度は、移植する細胞の種類や量、ドナーとレシピエントのHLA(ヒト白血球抗原)の適合度、患者さんの年齢や基礎疾患など、様々な要因が影響します。そのため、移植前に、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、予防対策を検討することが重要となります。
血液

慢性GVHD:移植後の闘い

- 慢性GVHDとは慢性GVHD(まんせいじーぶいえいちでぃー)は、骨髄移植などを受けた後に起こる病気です。骨髄移植は、血液のがんや一部の難病の治療法として行われます。骨髄移植では、健康な人(ドナー)から提供された血液細胞を、患者さん(レシピエント)の体内に移植します。移植された血液細胞には、免疫細胞が含まれています。免疫細胞は、本来は体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、体を守る働きをしています。しかし、骨髄移植の場合、提供されたドナーの免疫細胞が、レシピエントの体を「異物」と認識してしまうことがあります。その結果、ドナーの免疫細胞が、レシピエント自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうのです。これが、慢性GVHDと呼ばれる病気です。慢性GVHDでは、皮膚、口腔、消化管、肝臓、肺、眼、関節など、体の様々な部位が攻撃対象となる可能性があります。そのため、皮膚の発疹やかゆみ、口内炎、下痢、腹痛、呼吸困難、視力低下、関節痛など、多岐にわたる症状が現れます。慢性GVHDは、移植後3ヶ月以降に発症することが多く、長期にわたる経過をたどることが特徴です。症状の程度は患者さんによって異なり、軽い場合は経過観察のみで済むこともありますが、重症化すると生命に関わることもあります。
その他

糖尿病が引き起こす足病変:糖尿病足病変とは?

- 糖尿病足病変とは糖尿病は、血液中の糖分を調節するインスリンというホルモンが十分に働かなくなる、あるいは体がインスリンをうまく利用できなくなることで発症する病気です。このインスリンの作用不足によって、血液中に過剰な糖分が滞ってしまう状態が高血糖です。糖尿病足病変は、この高血糖状態が長く続くことで引き起こされる合併症の一つで、足にさまざまな症状が現れます。糖尿病によって高血糖状態が続くと、足の神経や血管に障害が生じます。神経障害によって足の感覚が鈍くなり、痛みや温度を感じにくくなってしまうため、知らず知らずのうちに足に傷を負ってしまっても気づかないことがあります。また、血管の障害によって血流が悪くなると、傷の治りが遅くなり、細菌などに感染しやすくなります。こうした状態が悪化すると、足には潰瘍や壊疽といった深刻な病変が生じます。潰瘍は皮膚や皮下組織が欠損した状態で、細菌感染を伴うことが多く、強い痛みを伴います。壊疽は組織が壊死した状態で、黒く変色したり、悪臭を放ったりします。糖尿病足病変は、放置すると日常生活に支障をきたすだけでなく、最悪の場合は足を切断しなければならなくなることもあるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。そのため、糖尿病と診断された方は、足の症状に注意し、定期的な検査を受けるように心がけましょう。
脳・神経

糖尿病神経障害:高血糖が引き起こす神経の合併症

- 糖尿病神経障害とは糖尿病神経障害は、長期間にわたる高血糖状態によって引き起こされる、神経の合併症です。私たちの体には、脳からの指令を全身に伝えたり、外部からの刺激や感覚を脳に届けたりする、神経という組織が張り巡らされています。この神経は、高血糖状態が続くことでダメージを受けたり、栄養を運ぶ血管が詰まったりすることで、その働きが鈍くなってしまうことがあります。これが糖尿病神経障害と呼ばれる状態です。神経は、大きく分けて感覚神経、運動神経、自律神経の3つに分類されます。糖尿病神経障害は、これらの神経のうちどれが障害されるかによって、現れる症状が異なってきます。例えば、感覚神経が障害されると、手足にしびれや痛み、感覚の鈍さなどが現れます。運動神経が障害されると、筋力低下や歩行障害などが起こりやすくなります。また、自律神経が障害されると、便秘や下痢、立ちくらみ、発汗異常など、様々な症状が現れることがあります。糖尿病神経障害は、糖尿病患者全体の約3割にみられると言われています。初期には自覚症状が出にくいこともありますが、症状が進行すると日常生活に支障をきたす場合もあります。そのため、早期発見と適切な治療、そして日々からの血糖コントロールが非常に重要です。
泌尿器

糖尿病と性機能: 知っておきたい関係性

糖尿病は、血液中の糖の濃度が高くなる病気で、全身に様々な影響を及ぼします。その影響は、体の大切な機能の一つである性機能にも及びます。 高血糖の状態が長く続くと、血管や神経が傷つけられ、それが性機能の低下につながることがあるのです。 男性の場合、糖尿病の影響で勃起障害や射精障害が起こることがあります。勃起障害とは、性的に興奮しても陰茎が硬くならない、または硬さを維持できない状態を指します。また、射精障害は、射精がうまくいかない、あるいは全くできない状態を指します。 一方、女性の場合は、膣の潤いが不足したり、性交時に痛みを感じたりすることがあります。膣の潤いが不足すると、性交時に痛みを感じやすくなるだけでなく、性感染症のリスクも高まります。 これらの症状は、性生活の満足度を低下させるだけでなく、精神的なストレスやパートナーとの関係悪化にもつながる可能性があります。 糖尿病と診断された方は、これらの症状が出現する可能性があることを理解し、気になることがあれば、医師に相談することが大切です。
目・眼科

糖尿病と目の合併症:糖尿病網膜症

- 糖尿病網膜症とは 糖尿病網膜症は、高血糖状態が長く続くことで発症する病気です。体内にある糖分は、通常、インスリンというホルモンの働きによってエネルギーに変換され、全身の細胞に行き渡ります。しかし、糖尿病の患者さんの場合、インスリンの分泌量が少なかったり、インスリンがうまく働かなかったりするため、血液中に糖分が過剰に存在する高血糖状態になってしまいます。 この高血糖状態が続くと、眼球の奥にある網膜という組織の血管が傷ついてしまいます。網膜は、カメラに例えるとフィルムの役割を果たす重要な組織です。外界から入ってきた光を感じて、それを電気信号に変換し、視神経を通して脳に視覚情報を送る役割を担っています。 この網膜に異常が生じると、視覚に様々な影響が出ます。初期段階では、物が歪んで見えたり、視界の中央がぼやけたりするなどの症状が現れます。さらに症状が進行すると、視力が低下し、最悪の場合、失明に至ることもあります。 糖尿病網膜症は、失明原因の上位に位置する病気です。早期発見、早期治療が非常に重要になりますので、糖尿病と診断された方は、定期的に眼科を受診し、網膜の状態を検査するようにしてください。
消化器

造血幹細胞移植と肝中心静脈閉塞症

- 肝中心静脈閉塞症とは肝中心静脈閉塞症(SOS)は、生命維持に欠かせない臓器である肝臓に起こる深刻な病気です。肝臓は、無数の小さな血管が網の目のように張り巡らされた構造をしています。その中でも特に、肝小葉の中心に位置し、そこから血液を送り出す役割を担うのが「中心静脈」です。肝中心静脈閉塞症では、この中心静脈、あるいはそこから枝分かれしたさらに細い血管である「類洞」と呼ばれる部分に血の塊(血栓)ができてしまいます。血液は、酸素や栄養を体の隅々まで運ぶ役割を担っています。しかし、肝臓内の血管に血栓ができてしまうと、血液の流れが滞り、肝臓の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなってしまいます。その結果、肝細胞が徐々にダメージを受け、壊死してしまうのです。以前は「肝類洞閉塞症候群(VOD)」とも呼ばれていたこの病気は、造血幹細胞移植後に起こる合併症の一つとして知られています。造血幹細胞移植は、血液のがんなどで正常な血液細胞を作れなくなった患者さんに対して行われる治療法ですが、移植後、一定の確率でこの肝中心静脈閉塞症を発症することがあります。移植を受けた患者さんにとって、肝中心静脈閉塞症は、治療の成功を左右する重大な合併症となり得るのです。
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