免疫

血液

免疫の要!HLAと私たちの身体

- HLAとは何かHLAとは、ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen)の略称で、私たちの体を守る免疫システムにおいて、非常に重要な役割を担うものです。 私たちの体の中にある細胞は、それぞれ表面に「自分自身の細胞である」ことを示すマークをつけています。このマークがHLAであり、いわば細胞の「顔写真」のようなものです。免疫細胞は、体の中を常にパトロールして、侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体や、体内で発生した異常な細胞(がん細胞など)を見つけ出して攻撃します。この時、免疫細胞は細胞の表面に提示されたHLAをチェックします。自分自身の細胞が持つHLAであれば「味方」、そうでないHLAであれば「敵」と認識し、攻撃するかどうかを判断します。 つまり、HLAは免疫細胞が「自己」と「非自己」を区別するために不可欠なものであり、私たちの体を病気から守る上で非常に重要な役割を担っているのです。HLAは、非常に多くの種類が存在し、その組み合わせは個人によって異なります。そのため、HLAは臓器移植の際に、適合性を判断する重要な指標として用いられています。適合しないHLAを持つ者同士で臓器移植を行うと、拒絶反応が起こる可能性が高くなるためです。

免疫抑制薬:その役割と注意点

- 免疫抑制薬とは私たちの体には、細菌やウイルスといった外敵が侵入してきた際に、それらを排除して体を守る「免疫システム」が備わっています。通常、このシステムは体にとって非常に重要な役割を果たしています。しかし、免疫システムが何らかの原因で正常に機能しなくなった場合、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。これは、まるで本来守るべき味方を誤って攻撃してしまうようなもので、自己免疫疾患や移植拒絶反応といった深刻な病気を引き起こします。免疫抑制薬は、過剰に働きすぎた免疫システムを抑え、正常な状態に近づけることで、自己免疫疾患や移植拒絶反応などの症状を和らげることを目的とした薬です。免疫抑制薬には、作用の仕組みや対象となる免疫細胞の種類などが異なる様々な種類があります。例えば、ステロイド薬は免疫細胞全体に作用し、炎症を抑える効果があります。一方、特定の免疫細胞の働きだけを抑える薬や、免疫細胞が活性化するのを妨げる薬など、より選択的に免疫システムに作用する薬も開発されています。免疫抑制薬の使用は、自己免疫疾患や移植後の患者さんにとって、病気の管理や健康な生活を送る上で非常に重要です。しかし、免疫システムの働きを抑えるということは、感染症に対する抵抗力が弱まるというリスクも伴います。そのため、免疫抑制薬の使用は必ず医師の指示に従い、定期的な検査や生活上の注意点を守ることが大切です。
血液

移植後も油断大敵?移植片対宿主病

造血幹細胞移植は、白血病などの血液疾患を持つ患者さんにとって、根治を目指すための重要な治療法です。しかし、移植後には、提供された造血幹細胞がうまく生着しない、または再発といったリスク以外にも、「移植片対宿主病(GVHD)」と呼ばれる合併症が起こる可能性があります。 移植片対宿主病は、他人から提供された骨髄や臍帯血の中に含まれる免疫細胞であるリンパ球が、移植を受けた患者さんの体内の細胞を“異物”と認識し、攻撃してしまうことで起こります。 わかりやすく例えると、新しい家に引っ越しをした際に、その家の家具や内装が気に入らず、破壊してしまう人がいるとします。この場合、新しい家は患者さんの体、引っ越しをしてきた人はドナーさんから提供されたリンパ球、家具や内装は患者さん自身の細胞や組織に当たります。 リンパ球は、本来は体の中に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、私たちを守ってくれる役割を担っています。しかし、移植片対宿主病では、リンパ球が、本来攻撃すべきでない患者さん自身の正常な細胞を攻撃してしまうのです。 移植片対宿主病は、皮膚、肝臓、消化管など、体の様々な場所に症状が現れます。主な症状としては、皮膚のかゆみ、発疹、黄疸、下痢、腹痛などがあります。移植後早期に症状が現れる急性型と、数年後に症状が現れる慢性型に分けられます。 移植片対宿主病は、場合によっては命に関わることもあるため、移植後の注意深い経過観察と、早期発見、早期治療が非常に重要です。
血液

移植片対腫瘍効果:希望の治療法

- 移植片対腫瘍効果とは移植片対腫瘍効果とは、骨髄移植などの造血幹細胞移植を受けた後に、移植されたドナー由来の免疫細胞が、患者の体内に残存する腫瘍細胞を攻撃し、排除しようとする現象を指します。造血幹細胞移植は、血液のがんや免疫不全症などの治療法として行われます。この治療では、まず、患者さん自身のもしくはドナーからの健康な造血幹細胞を移植します。造血幹細胞は、血液中の様々な免疫細胞の元となる細胞です。移植された造血幹細胞は、患者の骨髄に定着し、新たな血液細胞を作り出すようになります。この時、ドナーの免疫細胞は、患者の体内環境を「異物」として認識することがあります。特に、がん細胞は、正常な細胞とは異なる特徴的なタンパク質(抗原)を持つため、ドナーの免疫細胞によって攻撃されやすくなります。例えるなら、新しい兵士(ドナーの免疫細胞)が、敵が潜む地域(患者の体内)に送り込まれ、潜んでいる敵(腫瘍細胞)を攻撃するイメージです。移植片対腫瘍効果は、従来の抗がん剤治療とは異なるメカニズムで作用するため、新たな治療法として期待されています。しかし、一方で、ドナーの免疫細胞が患者の正常な組織を攻撃してしまう「移植片対宿主病」といったリスクも存在します。このため、移植片対腫瘍効果を高めつつ、副作用を抑制するための研究が進められています。

免疫抑制薬:その役割と注意点

- 免疫抑制薬とは私たちの体は、細菌やウイルスなどの病原体が侵入してくると、それらを排除しようと攻撃する仕組みが備わっています。これを免疫と呼びます。免疫は、健康な体を維持するために非常に重要な働きをしています。しかし、時にこの免疫システムが過剰に働きすぎたり、誤って自分自身の細胞を攻撃してしまうことがあります。これが、自己免疫疾患や移植臓器への拒絶反応です。免疫抑制薬は、このような免疫システムの過剰な反応を抑え、病気の症状を和らげるために用いられる薬です。具体的には、免疫細胞の増殖や働きを抑えたり、免疫反応を引き起こす物質の産生を抑えることで効果を発揮します。免疫抑制薬は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、臓器移植後、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患など、様々な病気の治療に用いられています。免疫抑制薬は、感染症にかかりやすくなる、悪性腫瘍のリスクが高まるなど、いくつかの副作用も知られています。そのため、医師は、患者さんの病気の状態や体質などを考慮して、慎重に免疫抑制薬を選択し、使用していく必要があります。また、患者さん自身も、免疫抑制薬を使用する際には、医師から十分な説明を受け、正しく理解しておくことが大切です。

免疫抑制薬:その役割と注意点

- 免疫抑制薬とは私たちの体は、常に細菌やウイルスなどの外敵の侵入から身を守るために働いています。その防御システムの中心的な役割を担っているのが免疫です。免疫は、体内に侵入してきた異物を攻撃し、排除することで健康を維持しています。 しかし、この免疫システムが何らかの原因で過剰に働いてしまうことがあります。その結果、本来は攻撃する必要のない自分の体の一部を攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫疾患と呼ばれる病気です。 自己免疫疾患には、関節リウマチや炎症性腸疾患など、様々な種類があります。これらの病気では、免疫細胞が自分の体の組織を攻撃することで、関節に痛みや腫れが生じたり、消化管に炎症を起こしたりします。 また、臓器移植の際にも、免疫システムが過剰に働くことで問題が起こることがあります。移植された臓器は、たとえ適合性を厳密に検査したとしても、体にとっては「異物」と認識されてしまいます。そのため、免疫細胞が移植された臓器を攻撃し、拒絶反応と呼ばれる現象が起こります。 免疫抑制薬は、このような免疫システムの過剰な反応を抑える働きを持つ薬です。自己免疫疾患の治療では、免疫抑制薬を用いることで、過剰に働く免疫細胞の働きを抑え、自己組織への攻撃を抑制することができます。これにより、病気の症状を和らげ、進行を遅らせる効果が期待できます。 また、臓器移植の際にも、免疫抑制薬は重要な役割を担います。移植された臓器への拒絶反応を抑えることで、臓器が体にとって「異物」と認識されるのを防ぎ、臓器が正常に機能するよう促します。 このように、免疫抑制薬は、免疫システムの過剰な反応を抑えることで、自己免疫疾患や臓器移植に伴う問題を解決する重要な役割を担っています。
アレルギー

自己と非自己を見分ける力:中枢性免疫寛容

- 免疫寛容とは私たちの体は、常に外界から侵入を試みる細菌やウイルスなどの病原体にさらされています。これらの病原体から身を守るために、体内には免疫システムと呼ばれる精巧な防御システムが備わっています。免疫システムは、まるで門番のように体内をパトロールし、自己と非自己を正確に見分けることで、私たち自身の体を守っています。自己とは、自分の体のことです。一方、非自己とは、細菌やウイルスなどの病原体のように、自分の体ではないもののことです。免疫システムは、この自己と非自己を正確に見分けることで、非自己である病原体のみを攻撃し、排除します。 一方、自己である自分の体に対しては攻撃を行いません。この、自己を攻撃せずに非自己のみを攻撃する巧妙な仕組みを免疫寛容と呼びます。免疫寛容は、免疫システムが正常に機能するために非常に重要なメカニズムです。もし、免疫寛容が何らかの原因で破綻してしまうと、免疫システムは自己と非自己を正しく認識できなくなり、自分の体を攻撃してしまうことがあります。これが、自己免疫疾患と呼ばれる病気です。自己免疫疾患では、免疫システムが自分の体の細胞や組織を、あたかも病原体であるかのように攻撃してしまうため、様々な症状が現れます。免疫寛容は、健康な体を維持するために欠かせない、免疫システムの重要な働きの一つと言えるでしょう。
アレルギー

自己と非自己を見分ける力:中枢性免疫寛容

私たちは、日常生活で目には見えない多くの細菌やウイルスに囲まれながら過ごしています。これらの外敵から体を守るために、体内には免疫システムと呼ばれる精巧な防御システムが備わっています。免疫システムは、まるで国境警備隊のように、体内へ侵入してくる異物を常に監視し、私たち自身の細胞や組織と、細菌やウイルスなどの外敵を正確に見分けることで、体を守ってくれています。 この、自己と非自己を見分ける能力こそが「免疫寛容」と呼ばれる重要な機能です。免疫寛容は、例えるならば、訓練された番犬が、家族には友好的に接し、見知らぬ他人だけにしつけられたとおりに吠えるのと似ています。免疫システムは、この免疫寛容によって、自己に対しては攻撃せず、非自己である外敵だけを攻撃することができるのです。 しかし、免疫寛容の仕組みに異常が生じると、免疫システムは自分自身の細胞や組織を誤って攻撃し始めてしまいます。これが、関節リウマチや1型糖尿病などの自己免疫疾患と呼ばれる病気の原因です。自己免疫疾患では、本来、体を守るべき免疫システムが、敵味方の区別がつかなくなり、自分自身を攻撃してしまうため、様々な症状が現れ、健康な生活を送ることが困難になることもあります。 このように、免疫寛容は私たちの健康を守る上で非常に重要な役割を担っています。免疫寛容のメカニズムをより深く理解することで、自己免疫疾患などの病気の予防や治療法の開発に繋がることが期待されています。
その他

炎症反応の司令塔:炎症性サイトカイン

- 炎症性サイトカインとは 私たちの体は、細菌やウイルスなどの病原体が侵入してくると、これらを排除し体を守るために防御反応を起こします。この防御反応は「炎症反応」と呼ばれ、発熱、痛み、腫れ、赤みなどの症状を伴います。そして、この炎症反応において中心的な役割を担うのが、「炎症性サイトカイン」と呼ばれるタンパク質です。 炎症性サイトカインは、免疫細胞から分泌され、細胞間の情報伝達を司る重要な役割を担っています。例えるなら、体内で起こる炎症という戦場において、司令塔から各部隊へ指示を出す役割を担っているのが炎症性サイトカインと言えるでしょう。 炎症性サイトカインは、種類によって作用が異なり、標的となる細胞も異なります。例えば、TNF-αやIL-1βといった炎症性サイトカインは、血管内皮細胞に作用し、白血球を炎症部位に呼び寄せます。また、IL-6は肝臓に作用し、発熱を引き起こす物質の産生を促します。 炎症反応は、本来、体を守るための重要な反応です。しかし、炎症性サイトカインが過剰に産生されたり、慢性的に分泌され続けたりすると、関節リウマチや炎症性腸疾患などの自己免疫疾患、アレルギー疾患、動脈硬化症、糖尿病などの生活習慣病など、様々な病気の原因となることが知られています。そのため、炎症性サイトカインの働きを適切に制御することが、これらの病気の予防や治療に繋がると考えられています。
検査

免疫の記憶を探る:抗体検査とは

- 抗体検査とは抗体検査とは、血液などを用いて、体の中に特定の病原体に対する抵抗力となる物質が存在するかどうかを調べる検査です。私たちの体には、外から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体から身を守る仕組みが備わっています。この仕組みを「免疫」と呼びます。病原体が体内に侵入してくると、私たちの体はそれと戦うための特別な物質を作ります。これを「抗体」と言います。抗体は、特定の病原体だけを攻撃する性質を持っています。例えば、はしかウイルスに対する抗体は、はしかウイルスだけを攻撃し、インフルエンザウイルスには作用しません。このように、抗体は鍵と鍵穴の関係のように、特定の病原体だけにぴったりと結合して、それを攻撃します。一度病気に感染すると、その病原体に対する抗体が体の中に作られ、その後も長い間、体内に残る場合があります。このため、再び同じ病原体に感染したときに、体はすばやく病原体を撃退することができます。これを「免疫記憶」と呼びます。抗体検査は、この免疫記憶を利用した検査です。血液中に特定の病原体に対する抗体が存在するかどうかを調べることで、過去にその病気に感染したことがあるかどうかを調べることができます。ただし、抗体検査はあくまでも過去の感染の可能性を示唆するものであり、現在の感染状態や病気の診断を確定するために行うものではありません。
血液

急性GVHD:移植後の免疫反応を知る

- 急性GVHDとは造血幹細胞移植は、血液のがんや難病の治療法として大きな期待が寄せられています。しかし、移植後には、提供された造血幹細胞(ドナー)と、移植を受けた患者さん(レシピエント)の身体の間で、様々な免疫反応が起こることがあります。その中でも、急性GVHD(移植片対宿主病)は、移植後の合併症として特に注意が必要とされています。急性GVHDは、一体どのような病気なのでしょうか?簡単に言うと、移植されたドナー由来の免疫細胞が、患者さんの身体を「異物」と認識し攻撃してしまう病気です。通常、私たちの体内には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守る免疫細胞が存在します。ところが、他人から提供された造血幹細胞は、患者さんから見ると「非自己」と認識されてしまうことがあります。そのため、ドナー由来の免疫細胞は、本来攻撃すべきでない患者さんの臓器や組織を攻撃してしまうのです。急性GVHDは、主に皮膚、肝臓、消化管といった臓器に炎症を引き起こします。具体的には、皮膚の発疹やかゆみ、黄疸、下痢、腹痛などの症状が現れます。これらの症状は、移植後100日以内に発症することが多く、重症化すると命に関わるケースもあります。急性GVHDの発症リスクや重症度は、移植する細胞の種類や量、ドナーとレシピエントのHLA(ヒト白血球抗原)の適合度、患者さんの年齢や基礎疾患など、様々な要因が影響します。そのため、移植前に、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、予防対策を検討することが重要となります。
血液

慢性GVHD:移植後の闘い

- 慢性GVHDとは慢性GVHD(まんせいじーぶいえいちでぃー)は、骨髄移植などを受けた後に起こる病気です。骨髄移植は、血液のがんや一部の難病の治療法として行われます。骨髄移植では、健康な人(ドナー)から提供された血液細胞を、患者さん(レシピエント)の体内に移植します。移植された血液細胞には、免疫細胞が含まれています。免疫細胞は、本来は体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して、体を守る働きをしています。しかし、骨髄移植の場合、提供されたドナーの免疫細胞が、レシピエントの体を「異物」と認識してしまうことがあります。その結果、ドナーの免疫細胞が、レシピエント自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうのです。これが、慢性GVHDと呼ばれる病気です。慢性GVHDでは、皮膚、口腔、消化管、肝臓、肺、眼、関節など、体の様々な部位が攻撃対象となる可能性があります。そのため、皮膚の発疹やかゆみ、口内炎、下痢、腹痛、呼吸困難、視力低下、関節痛など、多岐にわたる症状が現れます。慢性GVHDは、移植後3ヶ月以降に発症することが多く、長期にわたる経過をたどることが特徴です。症状の程度は患者さんによって異なり、軽い場合は経過観察のみで済むこともありますが、重症化すると生命に関わることもあります。
血液

免疫の破壊者、HIVの脅威

- HIVとはHIVは「ヒト免疫不全ウイルス」と呼ばれるウイルスの略称です。このウイルスは、私たちの体を病気から守る免疫システムを標的にして攻撃するという特徴を持っています。免疫システムは、体の中に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体から私たちを守ってくれる、いわば「体の防衛部隊」です。風邪をひいたときや、インフルエンザにかかったときに、熱が出たり、咳が出たりするのは、この免疫システムが病原体と戦っている証拠です。HIVはこの免疫システムの中で、特に重要な役割を担う「リンパ球」という細胞を破壊してしまいます。リンパ球は、例えるなら「体の防衛部隊の司令塔」のような役割を果たしています。司令塔であるリンパ球が破壊されてしまうと、免疫システムからの指令がうまく伝わらなくなり、体は防衛力を失ってしまいます。その結果、通常では感染症を引き起こさないような弱い病原体にも感染しやすくなってしまうのです。HIVは、血液、精液、膣分泌液、母乳などを介して感染します。HIVに感染しても、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、ウイルスは体の中で静かに増殖を続け、免疫システムを徐々に破壊していきます。そして、免疫力が著しく低下した状態になると、「後天性免疫不全症候群(AIDS)」を発症します。
血液

血球貪食症候群:免疫の暴走とその脅威

私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために免疫システムが備わっています。通常、免疫細胞はこのシステムを通じて、侵入してきた外敵を攻撃し、排除する働きをしています。しかし、まれに、この免疫システムが過剰に反応し、自分自身の細胞を攻撃してしまうことがあります。これが、過剰な免疫反応が引き起こす病気と呼ばれるものです。 血球貪食症候群は、このような過剰な免疫反応が原因で起こる病気の一つです。この病気では、免疫細胞が正常な血液細胞を、あたかも外敵であるかのように誤って認識し、攻撃を加えてしまいます。その結果、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞が破壊され、様々な症状が現れます。 発熱、全身倦怠感、リンパ節の腫れといった風邪に似た症状が見られることがありますが、貧血、出血傾向、感染症の悪化など、より重篤な症状が現れることもあります。原因は未だはっきりとは解明されていませんが、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患などが発症の引き金となる可能性が示唆されています。 血球貪食症候群は、命に関わることもある病気です。早期の診断と適切な治療が重要となります。
アレルギー

ヒスタミン: 体内の多機能メッセンジャー

- ヒスタミンとは私達の体の中には、様々な機能を調整するために、ごく微量でありながら重要な働きをする物質がたくさん存在します。その中の一つがヒスタミンと呼ばれる物質です。ヒスタミンは、体内の様々な細胞で作られ、必要に応じて放出されます。ヒスタミンは、細胞間のコミュニケーションを司るメッセンジャーのような役割を担っています。特定の細胞から放出されたヒスタミンは、別の細胞の表面にあるヒスタミン受容体と呼ばれる場所に結合することで、その細胞に情報を伝達します。ヒスタミンが特に重要な役割を担っているのが、炎症反応やアレルギー反応です。例えば、私達の体が、体に害を与える可能性のある細菌やウイルスに感染すると、ヒスタミンが放出されます。ヒスタミンは、血管を広げて血液の流れを良くすることで、免疫細胞が患部に到達しやすくなるように働きかけます。また、ヒスタミンには、神経を刺激してかゆみを引き起こす作用もあり、これは、異物を体外に排出しようとする体の防御反応の一つです。一方、アレルギー反応は、本来無害な花粉やダニなどの物質に対して、体が過剰に反応してしまうことで起こります。この場合もヒスタミンが放出され、くしゃみ、鼻水、皮膚の発疹など、様々な不快な症状を引き起こします。ヒスタミンは、炎症やアレルギー以外にも、胃酸の分泌や神経伝達など、様々な生理機能に関わっています。このように、ヒスタミンは私達の体にとって非常に重要な役割を担っている物質と言えるでしょう。

免疫の立役者:CCL2 chemokine

- CCL2とは私たちの体は、常に細菌やウイルスなどの外敵の侵入の脅威にさらされています。 これらの外敵から身を守るために、私たちの体には免疫システムが備わっています。免疫システムは、様々な種類の細胞が連携して働くことで、外敵を排除し、私たちの健康を守っています。その中でも、免疫細胞と呼ばれる細胞は、体内をパトロールし、外敵を見つけ次第攻撃する役割を担っています。CCL2は、この免疫細胞の働きを調整する上で、非常に重要な役割を担うタンパク質の一つです。正式名称は「CCケモカインリガンド2」と言い、ケモカインと呼ばれる、細胞の動きをコントロールするタンパク質の一種です。 CCL2は、体内で炎症反応が起こると、免疫細胞を炎症部位に誘導する信号として働きます。例えば、風邪を引いて喉が炎症を起こすと、CCL2が分泌され、その信号を受け取った免疫細胞が喉の炎症部位に集まってきます。そして、集まってきた免疫細胞が、炎症の原因となっているウイルスなどを攻撃し、排除することで、私たちは病気から回復することができます。このように、CCL2は免疫細胞を必要な場所に誘導することで、私たちの体を病気から守るために重要な役割を担っているのです。
血液

免疫の主役:顆粒球の種類と役割

私たちの体は、まるで外敵の侵入を防ぐ城塞のように、様々な防御機構を備えています。細菌やウイルスといった病原体は、常に私たちの体への侵入を試みており、健康を脅かす存在です。この目に見えない敵から身を守るため、体内では様々な種類の細胞が活躍しています。その中でも、血液中に存在する白血球は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体と戦う、いわば「兵士」のような役割を担っています。 白血球にはいくつかの種類がありますが、その中でも「顆粒球」は、細胞内に小さな顆粒と呼ばれる袋状の構造を多数持ち、その中に様々な物質を蓄えているという特徴があります。顆粒球は、体内を常に巡回し、パトロールを行いながら、病原体や異物が侵入してくると、すかさず現場に駆けつけます。そして、顆粒の中に蓄えられた殺菌作用のある物質を放出し、病原体や異物を攻撃します。この殺菌物質は、例えるならば、敵を倒すための武器のようなものです。さらに顆粒球は、炎症反応を引き起こす物質も放出します。炎症反応は、傷ついた組織を修復するために必要なプロセスであり、他の免疫細胞を呼び寄せる役割も担っています。このように、顆粒球は、免疫システムの最前線で活躍する重要な役割を担っています。
血液

免疫の主役:顆粒球の役割

- 顆粒球とは私たちの体内には、細菌やウイルスなどの病原体から身を守る「免疫」というシステムが備わっています。その免疫システムにおいて、最前線で活躍する重要な役割を担っているのが白血球です。白血球は、血液中に存在する細胞の一種で、体内をパトロールし、病原体を見つけると攻撃して排除します。 顆粒球は、この白血球の一種で、細胞内に小さな顆粒と呼ばれる袋状の構造を多数持っていることが特徴です。この顆粒の中には、病原体を撃退するための様々な物質が蓄えられています。顕微鏡で観察すると、顆粒球の細胞質には、まるで小さな粒を散りばめたように顆粒が存在している様子がよくわかります。 顆粒球は、さらに、顆粒の染色性や働きによって「好中球」「好酸球」「好塩基球」の3種類に分類されます。 * 好中球は、顆粒球の中で最も数が多く、細菌や真菌を貪食することで感染防御に重要な役割を果たします。 * 好酸球は、寄生虫感染やアレルギー反応に関与し、寄生虫の排除やアレルギー症状の抑制に働きます。 * 好塩基球は、炎症反応に関与し、ヒスタミンなどの化学物質を放出して炎症を引き起こします。 このように、顆粒球は、それぞれの種類によって異なる役割を担い、私たちの体を病原体から守るために活躍しています。
アレルギー

知って守る、アレルギーの基礎知識

- アレルギーとは? 私たちの体は、ウイルスや細菌など、外部から侵入してくる異物から身を守るために免疫という機能を持っています。通常、免疫は体にとって有害な異物だけに反応し、無害なものは攻撃しません。しかし、この免疫システムが何らかの原因で誤作動を起こし、本来無害な物質に対して過剰に反応してしまうことがあります。これがアレルギー反応です。 アレルギー反応は、特定の物質と接触したり、吸い込んだり、摂取したりすることで引き起こされます。これらの物質はアレルゲンと呼ばれ、私たちにとって身近なものに多く存在します。例えば、食べ物であれば、卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、甲殻類などが挙げられます。また、花粉症の原因となるスギやヒノキの花粉、家の中のダニやハウスダスト、ペットの毛なども代表的なアレルゲンです。 アレルギー反応が起こると、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみ、皮膚の発疹やかゆみ、咳、呼吸困難など、様々な症状が現れます。症状の程度は人によって異なり、軽度の場合もあれば、アナフィラキシーショックのように命に関わる重篤な症状を引き起こす場合もあります。 アレルギーは、現代社会において増加傾向にあると言われています。その原因は、食生活の変化や住環境の変化、大気汚染など、様々な要因が考えられています。アレルギー反応は、完全に治すことは難しい場合も多いですが、アレルゲンを特定し、適切な治療や対策を行うことで、症状をコントロールし、日常生活に支障が出ないようにすることが可能です。
その他

免疫の指揮役:CXCケモカイン

私たちの体には、体内に入ってきた harmful な細菌やウイルスなどの異物から体を守る、免疫という優れたシステムが備わっています。この免疫システムは、様々な種類の細胞が互いに協力し合うことで、私達の体を守っています。その中でも、免疫細胞は体内をパトロールし、異物を発見すると攻撃をしかけるという重要な役割を担っています。 ケモカインは、このような免疫細胞を必要な場所に誘導する、いわば「道案内」のような役割をする小さなタンパク質です。ケモカインは、感染や炎症が起こっている場所から放出され、まるで信号のように遠くの免疫細胞を呼び寄せます。免疫細胞は、このケモカインの信号を感知し、濃度の濃い方向へと移動することで、的確に感染部位や炎症部位に到達することができます。 ケモカインは、免疫細胞の種類によって異なる組み合わせで受容体と結合することで、特定の免疫細胞だけを誘導することができます。これは、例えば、ある特定の細菌に効果的な免疫細胞だけを感染場所に呼び寄せるなど、より効率的かつ的確な免疫応答を引き出すために非常に重要な仕組みです。このように、ケモカインは、私達の体を守る免疫システムにおいて、なくてはならない重要な役割を担っているのです。
血液

免疫力を奪うHIVとは?

- HIVとはHIVは「ヒト免疫不全ウイルス」の略称で、人間の免疫システムを攻撃するウイルスです。免疫システムは、私たちの体を病気から守るために非常に重要な役割を担っています。HIVはこの免疫システムの中で、特に重要な役割を果たす「CD4陽性T細胞」という細胞に感染します。CD4陽性T細胞は、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し、排除する司令塔のような役割を担っています。HIVはこのCD4陽性T細胞に感染し、細胞の中で増殖を繰り返します。その結果、CD4陽性T細胞は破壊され、免疫システムが正常に機能しなくなってしまいます。HIVは、感染した人の血液、精液、膣分泌液、母乳などの体液に含まれており、これらの体液が他の人に移ることによって感染します。具体的には、性交渉、血液を介した感染(注射針の共用など)、母子感染(妊娠中、出産時、授乳時)などの経路で感染します。HIVは空気感染や接触感染はしません。日常生活で感染する可能性は極めて低いと言えます。
その他

肉芽腫:免疫の戦場

「肉芽腫」という名前には「腫」という字が含まれていて、腫瘍と混同されがちですが、実際には全く異なるものです。腫瘍は、細胞が制御を失って無限に増殖してしまう病気ですが、肉芽腫は、私たちの体を病気から守る免疫システムが、体にとって有害な異物に対して起こす反応の結果として現れます。 肉芽腫は、例えるなら、敵を囲んで戦う、免疫細胞が集まってできた砦のようなものです。この砦の中心となるのは、マクロファージと呼ばれる白血球です。マクロファージは、体内に侵入してきた細菌や異物を食べて消化してくれる、いわば体の掃除屋さんのような役割を担っています。 肉芽腫は、このマクロファージに加えて、リンパ球などの様々な免疫細胞が集まってできています。これらの免疫細胞たちは、力を合わせて、体にとって有害な異物と戦い、排除しようとします。 肉芽腫は、感染症だけでなく、膠原病や特定の薬剤への反応など、様々な原因で発生する可能性があります。肉芽腫自体は病気ではありませんが、その原因や部位によっては、治療が必要になる場合があります。もし、医師から肉芽腫と診断された場合には、その原因や治療法について、よく相談することが大切です。
血液

体を守る勇敢な兵士: ナチュラルキラー細胞

私たちは、目に見えない脅威に常に囲まれながら日々を過ごしています。空気中にはウイルスや細菌が漂い、体内では、正常な細胞が突然変異を起こし、体にとって害をなす存在へと変貌を遂げることがあります。このような、私たちの健康を脅かす存在から身を守るため、体内には複雑かつ精巧な防御システムが備わっています。それが免疫システムです。 免疫システムは、体内に侵入した異物や、体内で発生した異常な細胞をいち早く認識し、攻撃、排除することで、私たちの体を守ってくれています。この免疫システムにおいて、最前線に立ち、勇敢に戦う兵士と例えられる細胞が存在します。それが、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)です。NK細胞は、生まれながらに備わっている免疫システムである自然免疫の中心的役割を担い、常に体内をパトロールし、異物や異常細胞を攻撃します。驚くべきことに、NK細胞は、標的となる細胞を事前に認識しておく必要がありません。まるで、訓練された兵士のように、独自の能力で敵を見分け、即座に攻撃を仕掛けることができるのです。 NK細胞の攻撃方法は、まさに「細胞爆弾」と呼ぶにふさわしいものです。彼らは、パーフォリンとグランザイムという、強力なタンパク質を分泌します。パーフォリンは、標的となる細胞の膜に穴を開け、グランザイムはその穴から細胞内へと侵入し、細胞を内部から破壊します。このように、NK細胞は、体内を常に監視し、見つけた敵を即座に排除することで、私たちの健康を守ってくれているのです。

人類を救った種痘:天然痘の歴史とワクチンの偉業

- 種痘とは?種痘は、かつて人類を恐怖に陥れた天然痘という恐ろしい病気を予防するための、画期的な方法でした。天然痘は、高い熱と体中にできる特徴的な発疹が特徴で、多くの人が命を落としたり、後遺症に苦しんだりしていました。種痘は、天然痘ウイルスと似たウイルスを持つ牛の病気「牛痘」を利用します。 牛痘に感染した人の膿を、健康な人の体に少しだけ入れることで、軽い症状で済む牛痘にかからせるのです。すると、不思議なことに、一度牛痘にかかった人は、その後天然痘にかかっても発症を防ぐか、軽症で済むようになることが分かりました。種痘は、18世紀後半にイギリスの医師ジェンナーによって発見されました。そして、その有効性が世界中に広まると、人々はこぞって種痘を受けました。その後、長い時間をかけて世界中で種痘の普及が進められました。20世紀に入り、世界保健機関(WHO)が中心となって天然痘の撲滅活動が本格化すると、種痘はその大きな効果を発揮し、ついに1980年、WHOは天然痘の根絶を宣言しました。これは、人類が感染症を地球上から完全に消し去った初めての例であり、現在でも唯一の例です。 種痘は、人類の歴史を大きく変えた医学の偉大な功績の一つと言えるでしょう。
PAGE TOP