自己と非自己を見分ける免疫の仕組み
私たちは、目には見えない無数の細菌やウイルスなどの病原体に囲まれて生活しています。これらの外敵から身を守るために、私たちの体には生まれながらにして免疫システムという精巧な防御システムが備わっています。免疫システムは、警察のように体内をパトロールし、自己と非自己を見分けることで、私たち自身の細胞や組織は攻撃せずに、病原体や異常な細胞だけを攻撃して排除します。
免疫システムが正常に機能するためには、自己と非自己を正確に認識することが非常に重要になります。もし、この認識がうまくいかず、免疫システムが自己を攻撃してしまうと、関節リウマチや1型糖尿病などの自己免疫疾患を引き起こす可能性があります。このような自己免疫疾患を防ぐために、私たちの体は免疫寛容という非常に重要な仕組みを持っています。免疫寛容とは、免疫システムが特定の抗原に対して反応しなくなる状態のことを指します。特に、自己に対する免疫反応を抑制し、自己を攻撃しないようにする仕組みを自己寛容と呼びます。
自己寛容は、免疫システムのバランスを維持する上で非常に重要な役割を担っています。自己寛容機構が破綻すると、免疫システムが自己の組織を攻撃し始め、様々な自己免疫疾患の発症につながることがあります。逆に、この自己寛容をうまく利用することで、臓器移植後の拒絶反応を抑えたり、アレルギー反応を抑制したりすることも可能になります。このように、免疫寛容と自己寛容は、私たちの健康を維持する上で欠かせない重要なメカニズムなのです。