血液凝固を阻害するヘパリン
- ヘパリンの概要ヘパリンは、私たちの体内に自然に存在するムコ多糖体の一種です。ムコ多糖体とは、アミノ糖とウロン酸という物質が多数結合したもので、細胞と細胞の間をつなぐ結合組織や、体内で潤滑油のような役割をする粘液などに含まれています。ヘパリンは、1916年にアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究者によって偶然発見されました。その当時、血液凝固に関わる物質を探していた研究者たちは、肝臓からヘパリンを発見し、ギリシャ語で肝臓を意味する「hepar」にちなんで名付けました。ヘパリンは、血液凝固を防ぐ働き、つまり血液をサラサラにする働きを持つことが知られています。そのため、血栓症と呼ばれる、血管の中で血液が固まってしまう病気の予防や治療に広く使われています。深部静脈血栓症や肺塞栓症などの重篤な病気のリスクを減らすために、手術後や安静が必要な患者さんにも投与されます。また、心臓の手術や血液透析など、血液が体外を循環する際に血液が固まらないようにするためにも使用されます。ヘパリンは、長い間医薬品として使用されており、その効果と安全性が確認されています。しかし、出血傾向を高める可能性があるため、投与量や投与期間には注意が必要です。医師は、患者さんの状態に合わせて適切な投与量を決定します。ヘパリンは、私たちの健康を守る上で重要な役割を果たしている薬の一つと言えるでしょう。