フィブリン糊

外科

手術の進化:組織接着剤とその役割

組織接着剤は、手術や怪我の治療において、組織や臓器を繋ぎ合わせるために用いられる医療材料です。これは、例えるならば、体の中で傷口を塞ぐために働く血液凝固の仕組みを人工的に再現したものです。私たちの血液中には、トロンビンとフィブリノゲンと呼ばれる成分が含まれています。組織接着剤は、これらトロンビンとフィブリノゲンを主成分として作られています。組織や臓器の切断面に組織接着剤を塗布すると、トロンビンとフィブリノゲンが反応して、フィブリンと呼ばれる繊維状のタンパク質が生成されます。このフィブリンが網目状に組織を包み込み、接着力を発揮することで、傷口を素早く塞ぎます。このことから、組織接着剤はフィブリン糊とも呼ばれています。組織接着剤は、従来の縫合糸やホッチキスを用いる方法と比べて、出血や空気の漏れを効果的に防ぐことができます。また、手術時間を短縮できる、傷跡が目立ちにくいなどの利点もあります。そのため、近年、組織接着剤は、従来の方法に代わる、あるいは補完する手段として、多くの医療現場で注目されています。
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