PAO2とA-aDO2:低酸素血症の評価
- 肺胞気酸素分圧(PAO2)とは私たちの身体は、呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を排出することで生命を維持しています。このガス交換の重要な舞台となるのが、肺胞と呼ばれる小さな袋状の器官です。 肺胞気酸素分圧(PAO2)とは、この肺胞内における酸素の圧力を示す指標であり、呼吸機能の評価において重要な役割を担います。空気は窒素、酸素、二酸化炭素など様々な気体の混合物であり、それぞれの気体は固有の圧力を持っています。これを分圧と呼び、PAO2は肺胞内の酸素がどれだけの圧力を持っているかを表しています。単位としては、トル(Torr)や水銀柱ミリメートル(mmHg)、国際的にはパスカル(Pa)が用いられます。PAO2は、直接測定することが困難なため、吸入酸素濃度や動脈血二酸化炭素分圧などの数値を用いて計算によって求められます。例えば、私たちは呼吸によって大気中の酸素を取り込んでいますが、大気圧(約760Torr)における酸素の分圧は約160Torrです。しかし、実際には肺胞内には常に二酸化炭素や水蒸気が存在するため、PAO2は大気中の酸素分圧よりも低くなります。PAO2の値は、肺のガス交換機能を反映しており、呼吸器疾患の診断や治療効果の判定に広く活用されています。肺気腫や肺炎など、肺胞の機能が低下する病気では、PAO2の値が低下する傾向が見られます。