ウイルス

呼吸器

1957年世界を襲ったパンデミック:アジアかぜ

- アジアかぜとはアジアかぜは、1957年に初めて確認された、新型のインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。このウイルスは、それまで人間の体内に存在しなかった、A型インフルエンザウイルスのH2N2亜型として分類されました。この新型ウイルスは、鳥類の間で流行していたインフルエンザウイルスが変異し、人間にも感染する能力を獲得したことで出現したと考えられています。アジアかぜという名前が付けられた理由は、この病気が初めて確認された地域がアジアだったからです。具体的には、1957年2月に中国で最初の流行が報告され、その後、シンガポール、香港、そして世界中に感染が拡大していきました。アジアかぜの症状は、一般的な季節性インフルエンザと類似しており、高熱、咳、喉の痛み、筋肉痛、倦怠感などが挙げられます。多くの人々は1週間程度で回復しますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患を持つ人などでは、肺炎などの合併症を引き起こし、重症化するケースも見られました。アジアかぜのパンデミックは、世界中で多くの人々の命を奪いました。正確な死者数は不明ですが、世界保健機関(WHO)は、少なくとも100万人以上が死亡したと推定しています。このパンデミックは、新型インフルエンザウイルスに対する脅威を世界に知らしめ、公衆衛生対策の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

感染症治療の立役者:抗生物質

抗生物質は、微生物が作り出した、他の微生物の増殖を抑える物質です。例えるなら、目に見えない小さな生き物が、別の小さな生き物を退治する武器を作り出すようなものです。この武器は、人間にとって悪い影響を与える細菌を退治するために使われます。私達が普段かかる病気の中にも、抗生物質が有効なものがたくさんあります。例えば、肺炎は肺に炎症を起こす病気ですが、細菌が原因で起こる肺炎には抗生物質がよく効きます。また、おしっこを出す時に痛みを伴う尿路感染症や、皮膚に炎症を起こす病気も、抗生物質で治療できる場合があります。抗生物質は、細菌の種類によって効果が異なります。細菌を退治するための武器も、敵の種類に合わせて変える必要があるのです。ですから、自己判断で抗生物質を使うのは大変危険です。医師の診察を受け、適切な抗生物質を処方してもらうことが重要です。
その他

黄熱とは?症状と予防策

黄熱は、黄熱ウイルスという病原体によって引き起こされる、急性のウイルス性出血熱です。このウイルスは、主にネッタイシマカやヤブカなどの蚊によって媒介されます。感染すると、高熱や筋肉痛、頭痛、嘔吐などの症状が現れます。多くの場合、これらの症状は数日で治まりますが、一部の患者さんでは、出血や黄疸、腎不全などの重篤な症状を引き起こし、死に至ることもあります。黄熱は、主にアフリカや中南米の熱帯地域で流行しており、日本ではほとんど発生していません。しかし、近年では、海外旅行やビジネスなどでこれらの地域を訪れる人が増えているため、日本でも他人事ではありません。 黄熱は、ワクチンで予防できる病気です。流行地域に渡航する際には、事前にワクチン接種を受けることが重要です。また、蚊に刺されないように、長袖、長ズボンを着用する、虫よけスプレーを使用するなどの対策も有効です。黄熱は、早期に診断し、適切な治療を行えば、救命できる可能性があります。流行地域から帰国後、発熱などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、渡航歴を伝えてください。
検査

PCR検査:ウイルスの検出

近年、ニュースや新聞などで「PCR検査」という言葉を耳にする機会が増えましたね。では、PCR検査とは一体どのような検査なのでしょうか? PCR検査とは、「ポリメラーゼ連鎖反応」の略称で、特定のウイルスや細菌の遺伝物質を人工的に増幅させて、その有無を調べる検査方法です。 私たちの体の中には、細胞の中に遺伝情報をつかさどるDNAが存在しています。ウイルスも同様に、遺伝情報を持つDNAやRNAを持っています。PCR検査では、このウイルス特有のDNAやRNAを検出することで、感染の有無を判断します。 検査では、まず、鼻の奥や喉の粘膜を綿棒でこすり、検体を採取します。この検体には、もし感染していれば、ごくわずかな量のウイルスが含まれています。PCR検査では、このわずかな量のウイルス遺伝子を、試験管の中で増幅させることで、検出を容易にします。 PCR検査は、従来の検査方法と比べて、感度が高く、微量のウイルスでも検出することができるという特徴があります。そのため、感染初期の段階でもウイルスの有無を調べることができ、早期発見・早期治療に繋がると期待されています。
血液

免疫の破壊者、HIVの脅威

- HIVとはHIVは「ヒト免疫不全ウイルス」と呼ばれるウイルスの略称です。このウイルスは、私たちの体を病気から守る免疫システムを標的にして攻撃するという特徴を持っています。免疫システムは、体の中に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体から私たちを守ってくれる、いわば「体の防衛部隊」です。風邪をひいたときや、インフルエンザにかかったときに、熱が出たり、咳が出たりするのは、この免疫システムが病原体と戦っている証拠です。HIVはこの免疫システムの中で、特に重要な役割を担う「リンパ球」という細胞を破壊してしまいます。リンパ球は、例えるなら「体の防衛部隊の司令塔」のような役割を果たしています。司令塔であるリンパ球が破壊されてしまうと、免疫システムからの指令がうまく伝わらなくなり、体は防衛力を失ってしまいます。その結果、通常では感染症を引き起こさないような弱い病原体にも感染しやすくなってしまうのです。HIVは、血液、精液、膣分泌液、母乳などを介して感染します。HIVに感染しても、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、ウイルスは体の中で静かに増殖を続け、免疫システムを徐々に破壊していきます。そして、免疫力が著しく低下した状態になると、「後天性免疫不全症候群(AIDS)」を発症します。
血液

免疫力を奪うHIVとは?

- HIVとはHIVは「ヒト免疫不全ウイルス」の略称で、人間の免疫システムを攻撃するウイルスです。免疫システムは、私たちの体を病気から守るために非常に重要な役割を担っています。HIVはこの免疫システムの中で、特に重要な役割を果たす「CD4陽性T細胞」という細胞に感染します。CD4陽性T細胞は、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し、排除する司令塔のような役割を担っています。HIVはこのCD4陽性T細胞に感染し、細胞の中で増殖を繰り返します。その結果、CD4陽性T細胞は破壊され、免疫システムが正常に機能しなくなってしまいます。HIVは、感染した人の血液、精液、膣分泌液、母乳などの体液に含まれており、これらの体液が他の人に移ることによって感染します。具体的には、性交渉、血液を介した感染(注射針の共用など)、母子感染(妊娠中、出産時、授乳時)などの経路で感染します。HIVは空気感染や接触感染はしません。日常生活で感染する可能性は極めて低いと言えます。
皮膚科

牛痘:人にも感染する動物由来の感染症

- 牛痘とは牛痘は、牛痘ウイルスによって感染する病気です。主に牛などの動物がかかりますが、人間にも感染することがあります。このウイルスは、オルソポックスウイルスというグループに属しており、かつて猛威を振るった天然痘ウイルスと同じ仲間です。しかし、人間にとって命に関わることもある天然痘とは異なり、牛痘は比較的症状が軽く、ほとんどの場合、重症化することはありません。牛痘の症状として、まず、感染した場所にかゆみのある赤い発疹が現れます。これは通常、手にできることが多いですが、顔や体など、体の他の部分に現れることもあります。その後、発疹は水ぶくれになり、かさぶたとなって治っていきます。発熱や倦怠感などの全身症状が現れることもありますが、多くは軽度です。牛痘は、感染した動物との接触によって感染します。具体的には、感染した牛の乳を搾ったり、傷口に触れたりすることで感染する可能性があります。また、ウイルスが付着した物に触れることによっても間感染することがあります。かつて、牛痘は人間にとって身近な病気でしたが、現在では、世界中で牛の予防接種が進み、人間への感染は非常にまれになっています。ただし、牛などの動物を扱う職業の人や、動物園や牧場などで動物と触れ合う機会が多い人は、感染のリスクに注意する必要があります。牛痘は通常、特別な治療を必要とせず、自然に治癒します。症状を和らげるために、かゆみ止めや解熱鎮痛剤を使用することもできます。ただし、症状が重い場合や、心配な症状がある場合は、医療機関を受診してください。
消化器

B型肝炎:沈黙のウイルスとの闘い

- ウイルスによる肝臓の病気肝臓は、栄養の分解や貯蔵、有害物質の解毒など、生命維持に欠かせない役割を担う重要な臓器です。この肝臓は、沈黙の臓器とも呼ばれ、初期段階では自覚症状が出にくいという特徴があります。しかし、ウイルスなどの影響で炎症が起き、放置すると徐々に機能が低下し、肝硬変や肝臓がんといった重い病気へと進行する可能性があります。ウイルスによる肝臓の病気の一つに、B型肝炎が挙げられます。これは、B型肝炎ウイルス(HBV)が血液や体液を介して肝臓に感染することで発症する病気です。HBVに感染すると、肝臓に炎症が起こり、倦怠感や食欲不振、黄疸などの症状が現れます。HBVの主な感染経路は、血液感染、性行為感染、母子感染の3つです。血液感染は、HBVに汚染された血液を輸血したり、注射針を共用したりすることで感染します。性行為感染は、HBVに感染している人と性交渉を持つことで感染します。母子感染は、HBVに感染している母親から出産時に赤ちゃんに感染します。B型肝炎は、慢性化すると肝硬変や肝臓がんのリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要となります。ワクチンを接種することで、HBVの感染を予防することができますので、医療機関に相談するようにしてください。
消化器

沈黙の脅威: C型肝炎を理解する

- C型肝炎とはC型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)が血液を介して肝臓に感染し、炎症を引き起こす病気です。感染すると、急性肝炎と慢性肝炎の二つの段階があります。急性肝炎は、HCVに感染してから約2週間~6ヶ月の間に発症します。症状としては、だるさや食欲不振、吐き気、発熱、黄疸などがみられます。しかし、自覚症状が現れない場合も多く、気づかないうちに慢性肝炎に移行してしまうケースが多い点が特徴です。慢性肝炎は、急性肝炎から移行した状態が6か月以上続いている状態を指します。慢性肝炎も、初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、長期間にわたって肝臓で炎症が続くことで、徐々に肝臓の細胞が破壊され、肝臓が硬くなってしまう肝硬変や、肝臓がんを発症するリスクが高まります。C型肝炎は、早期発見と適切な治療によって、慢性肝炎への移行や、肝硬変、肝臓がんへの進行を予防できる可能性があります。そのため、過去にC型肝炎ウイルスに感染した可能性がある人や、肝機能検査で異常値がでた人は、医療機関を受診し、検査を受けることが重要です。
消化器

沈黙の臓器の悲鳴:肝炎とは?

- 肝炎とは肝臓は、人体にとって重要な役割を担っています。食べ物を消化するために必要な胆汁を作ったり、アルコールや薬を分解したり、血液をきれいにしたりと、休むことなく働き続けています。 肝炎とは、この重要な臓器である肝臓に炎症が起こる病気です。肝臓に炎症が起こると、本来の働きが十分にできなくなり、様々な症状が現れます。初期症状としては、だるさや食欲不振、吐き気、発熱などが挙げられます。 また、黄疸と呼ばれる、皮膚や白目が黄色くなる症状が現れることもあります。 これは、肝臓の機能低下によって、血液中のビリルビンという黄色い色素がうまく処理できずに、体内に溜まってしまうために起こります。肝炎の原因は様々ですが、大きく分けてウイルスによるものと、ウイルス以外のものがあります。 ウイルス性肝炎は、A型、B型、C型などのウイルスに感染することで引き起こされます。 一方、ウイルス性ではない肝炎は、アルコールの飲み過ぎや、脂肪肝、自己免疫疾患などが原因で起こることがあります。肝炎は、早期発見・早期治療が大切な病気です。 放置すると、肝硬変や肝臓がんといった重い病気につながる可能性もあります。 定期的な健康診断を受けたり、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
消化器

食中毒を防ぐために

食中毒とは、食べ物に付着した細菌やウイルス、有害な化学物質などを口にすることで起こる病気のことです。普段私たちが口にする食品は、安全に食べられるように様々な工夫が凝らされていますが、それでも食品の栽培・製造・加工・調理・保存などの過程において、様々な原因で有害な物質が混入してしまうことがあります。 食中毒の原因となる有害物質として代表的なものは、細菌やウイルスです。サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌O157、ノロウイルスなどがこれにあたります。これらの微生物が食品中で増殖すると、食後数時間から数日のうちに、腹痛や下痢、嘔吐などの症状を引き起こします。 また、魚介類に寄生する寄生虫や、毒キノコなどの自然毒も食中毒の原因となります。寄生虫は、加熱が不十分な魚介類を生で食べることで体内に入り込み、腹痛や下痢、アレルギー症状などを引き起こします。毒キノコは、食用と間違えて摂取してしまうことで、嘔吐や下痢、発熱、神経麻痺などの深刻な症状を引き起こすことがあります。 さらに、食品添加物や農薬などの化学物質も、過剰に摂取すると食中毒の原因となることがあります。食中毒を予防するためには、食品の適切な取り扱いが重要です。食品は清潔な環境で保管し、十分に加熱してから食べるようにしましょう。また、調理器具は清潔に保ち、生肉や魚介類を触った後はよく手を洗いましょう。
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